【R18】除霊の代金は体で支払ってもらうので気にしないでください

釧路太郎

文字の大きさ
上 下
44 / 64
離島編

第十六話 忍さんの女性らしい服

しおりを挟む
 大きな窓にかかっているカーテンが時折風で揺らめているのだけれど、そこまで強い風は吹いていないので外の様子がわかることは無かった。
 天気も良くて外で何かして遊ぶには絶好の機会だとは思うのだけれど、忍さんの部屋はカーテンが閉められており外の様子をうかがう事も出来ないのであった。それは外から中をのぞくことが出来ないという事と同義であるのだ。
 鵜崎先生はそんな忍さんの部屋で一人待っているのだ。忍さんは準備をしてくると言って出て行ってすでに十分は経っているように思えていた。虫の鳴き声も風の音も聞こえないこの島でただ黙って待っているという事は永遠にも近い時間に感じてしまうのだけれど、それは私だけが感じているのではなく真白先生もいつもとは違って落ち着きがない様子なので似たように感じている事なのだろう。
「すいません、お待たせしちゃいました」
 音もなく扉を開けて忍さんが入ってきたのでそちらを振り向くと、そこに立っていたのはなぜかセーラー服を着ている忍さんだった。
「何でセーラー服なの?」
 真白先生は明らかに動揺している様子なのだが、私も忍さんがなぜセーラー服を着ているのかという事を疑問に思っていたのでその答えは知りたかった。ただ、こうしてセーラー服を着ている忍さんは高校生や中学生と言っても信じてしまいそうなくらい幼さを残していたのである。
「えっと、僕が持ってる服の中で一番可愛くて女の子っぽいのは何だろうって考えてみたんですけど、一晩考えてみた結果これになりました。じいちゃんの手伝いをする事が多いから動きやすい服しかなくて、可愛いのって去年まで着てたこの制服しかなかったんですよ。でも、私服でも良かったんであんまり着てなかったんですけど似合ってないですよね」
「そんな事ないよ。一瞬本当に高校生かと思っちゃったからね。でも、制服が汚れたりしたら洗うの面倒じゃない?」
「大丈夫だと思います。たぶん、もう着る機会もないと思いますし。それに、少しでも鵜崎先生に可愛いって思ってもらいたいなって思ってますから。どうですか、僕はちゃんと女の子に見えますか?」
 忍さんは髪が短かったり元気いっぱいなところがあったりで男の子っぽいところが多く感じてしまうのだけれど、こうしてスカートを履いている姿を見ると女の子なんだなって感じてしまう。
 胸もお尻もそこまで大きいわけではないのだけれど、肩から腕にかけての感じやスラっと伸びた足も男性らしい直線的な感じというよりは女性らしい曲線のように見えているのだ。
「うん、忍さんは可愛いよ。女の子だって聞いてたんで最初にあった時は少し戸惑ったりもしたけどさ、こうして一緒に過ごしてみると可愛い女の子なんだなって感じてるしね。学校でもモテてたんじゃないの?」
「どうでしょうね。あんまりそう言った話題も無かったですよ。他の島の子とかも多かったですし、仲良くなっても学校以外で会うことってないですからね。みんな自分の家族の手伝いとかしてますから、こうして今みたいに二人で会うって事は無かったですよ。あ、二人じゃなかったですね」
 その言葉を聞いて二人同時に私の事を見てきたんですけど、私は二人と目を合わさないように顔をそむけてしまいました。二人の事は見たいって思うんですけど、そんな二人に見られるのはちょっと恥ずかしいんですよね。私が見る分にはいいのかもなって思うんですけど、二人から見られるってのは何か違うんじゃないかなって思ってます。勝負ではないけど、何か負けてしまったような気がしちゃうんですよね。
『私の事は気にしないでください。ここに居ますけど、今更邪魔なんてしようとは思わないですから』
 忍さんはきっとなんでこの部屋に居座っているんだろうって思ってますよね。私が忍さんの立場だったらそう思ってしまうだろうし、出来ることなら出て行って欲しいって思うでしょう。でも、私にはそれをすることが出来ないのです。窓は開いているので外に出ることも可能だとは思うんですけど、何かのタイミングで窓を閉められてしまうと大変なことになってしまうんですよ。
「ごめんね。ヒナミは俺と同じ空間に滞在してないといけないって決まりがあるんだよ。だから、この部屋にいることになるんだけどさ、気になるなら今日はお話だけして伝八さんの帰りを待つことにしようか」
「うーん、そんな決まりがあるのなら仕方ないですね。わかりました。僕はヒナミさんの事は幽霊なのに怖いって思ったこともないですし、特別な事情があるんだったら大丈夫です。でも、あんまりじっくり見られるのは恥ずかしいかもしれないです」
『そんなにじっくりは見ないですし、なるべく近付いたりもしないようにしますよ。二人の邪魔をすると私も大変なことになっちゃうかもしれないので、この辺で小さくなってます』
 この前みたいになっても困りますし、私は本当に邪魔にならないような場所で見守ることにしますよ。応援とかはしないですけど、せっかくの機会なので真白先生が気持ちいいと思うような場所を見付けられたらいいなと思います。
 でも、忍さんはあんまり経験も無さそうですし、真白先生を満足させることなんて出来るんでしょうかね。それだけがちょっと心配ですね。
「あの、最初に断っておくんですけど、僕って経験したことが無いんで、間違ってたり良くなかったりしたらごめんなさい」
「そんな事は気にしなくても大丈夫だよ。俺だって経験豊富なわけではないからさ、忍さんのしたいことを好きなようにしてくれたらいいからね」
「わかりました。あと、僕の事は忍さんじゃなくて忍か忍ちゃんって呼んでもらえたら嬉しいです」
 経験が少なそうだとは思っていたんですけど、未経験だとは思わなかったですね。でも、ちょっと前まで高校生だったんならおかしい話ではないですよね。その割には、真白先生のモノを口で上手にしてたような気もするんですが、それって天性の才能だったりするんでしょうかね。
 あと、忍さんじゃなくていいってのは私にも言ってるように思えるんですけど、私も忍ちゃんって呼んじゃってもいいんでしょうか。それは後で確認する事にしましょう。今はそんな事を聞いて変な空気にしない方が良いでしょうし、そうなったらあとで真白先生に怒られちゃうかもしれないですからね。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

余命3ヶ月を言われたので静かに余生を送ろうと思ったのですが…大好きな殿下に溺愛されました

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のセイラは、ずっと孤独の中生きてきた。自分に興味のない父や婚約者で王太子のロイド。 特に王宮での居場所はなく、教育係には嫌味を言われ、王宮使用人たちからは、心無い噂を流される始末。さらに婚約者のロイドの傍には、美しくて人当たりの良い侯爵令嬢のミーアがいた。 ロイドを愛していたセイラは、辛くて苦しくて、胸が張り裂けそうになるのを必死に耐えていたのだ。 毎日息苦しい生活を強いられているせいか、最近ずっと調子が悪い。でもそれはきっと、気のせいだろう、そう思っていたセイラだが、ある日吐血してしまう。 診察の結果、母と同じ不治の病に掛かっており、余命3ヶ月と宣言されてしまったのだ。 もう残りわずかしか生きられないのなら、愛するロイドを解放してあげよう。そして自分は、屋敷でひっそりと最期を迎えよう。そう考えていたセイラ。 一方セイラが余命宣告を受けた事を知ったロイドは… ※両想いなのにすれ違っていた2人が、幸せになるまでのお話しです。 よろしくお願いいたします。 他サイトでも同時投稿中です。

マリナの再婚

maruko
恋愛
マリナは子爵家の子女だった。 学園を卒業後、騎士団の事務で働いていた。 上司の紹介でカイルと結婚したが親には反対された。 結婚して幸せだったが半年後に辺境の地で隣国との戦が勃発する。 カイルもその地へ出征して行った。 待っている間にマリナは妊娠がわかったが、出征した2ヶ月後からカイルからの手紙は来なくなっていた。 マリナの妊娠の報告の手紙への返信も来ない。 出征して1年半が経った頃、彼女の嘗ての上司が彼から預かったと言って離婚届を渡される。 離婚して3年後、カイルとマリナは街中でばったり会った。 マリナの離婚と再婚の物語 一章は1話ずつ登場人物の回想語りで話しは流れていきます。 元サヤアレルギーの方はそっと閉じられる事をお薦めします。 ✱作者の妄想の産物です 広い心でお読みください ☆2/20 HOT3位♡ありがとうございます! 🍀感想ありがとうございます 返信を直ぐにでもしたいのですがなかなか追いついていないのと作者の口の軽さでネタバレ防止のためお待たせしております🙏 ですが全て読ませて頂いてます! 励みになっておりますので今後も返信遅くても良かったらドシドシお寄せ下さい  (♥︎︎ᴗ͈ˬᴗ͈) ✱皆様いつも誤字報告ありがとうございます お気遣いにより承認しておりませんが感謝しております🙇‍♀

私のことはお気になさらず

みおな
恋愛
 侯爵令嬢のティアは、婚約者である公爵家の嫡男ケレスが幼馴染である伯爵令嬢と今日も仲睦まじくしているのを見て決意した。  そんなに彼女が好きなのなら、お二人が婚約すればよろしいのよ。  私のことはお気になさらず。

所詮は他人事と言われたので他人になります!婚約者も親友も見捨てることにした私は好きに生きます!

ユウ
恋愛
辺境伯爵令嬢のリーゼロッテは幼馴染と婚約者に悩まされてきた。 幼馴染で親友であるアグネスは侯爵令嬢であり王太子殿下の婚約者ということもあり幼少期から王命によりサポートを頼まれていた。 婚約者である伯爵家の令息は従妹であるアグネスを大事にするあまり、婚約者であるサリオンも優先するのはアグネスだった。 王太子妃になるアグネスを優先することを了承ていたし、大事な友人と婚約者を愛していたし、尊敬もしていた。 しかしその関係に亀裂が生じたのは一人の女子生徒によるものだった。 貴族でもない平民の少女が特待生としてに入り王太子殿下と懇意だったことでアグネスはきつく当たり、婚約者も同調したのだが、相手は平民の少女。 遠回しに二人を注意するも‥ 「所詮あなたは他人だもの!」 「部外者がしゃしゃりでるな!」 十年以上も尽くしてきた二人の心のない言葉に愛想を尽かしたのだ。 「所詮私は他人でしかないので本当の赤の他人になりましょう」 関係を断ったリーゼロッテは国を出て隣国で生きていくことを決めたのだが… 一方リーゼロッテが学園から姿を消したことで二人は王家からも責められ、孤立してしまうのだった。 なんとか学園に連れ戻そうと試みるのだが…

【完結】略奪されるような王子なんていりません! こんな国から出ていきます!

かとるり
恋愛
王子であるグレアムは聖女であるマーガレットと婚約関係にあったが、彼が選んだのはマーガレットの妹のミランダだった。 婚約者に裏切られ、家族からも裏切られたマーガレットは国を見限った。

王弟様の溺愛が重すぎるんですが、未来では捨てられるらしい

めがねあざらし
BL
王国の誇りとされる王弟レオナード・グレイシアは優れた軍事司令官であり、その威厳ある姿から臣下の誰もが畏敬の念を抱いていた。 しかし、そんな彼が唯一心を許し、深い愛情を注ぐ相手が王宮文官を務めるエリアス・フィンレイだった。地位も立場も異なる二人だったが、レオは執拗なまでに「お前は私のものだ」と愛を囁く。 だが、ある日エリアスは親友の内査官カーティスから奇妙な言葉を告げられる。「近く“御子”が現れる。そしてレオナード様はその御子を愛しお前は捨てられる」と。 レオナードの変わらぬ愛を信じたいと願うエリアスだったが、心の奥底には不安が拭えない。 そしてついに、辺境の村で御子が発見されたとの報せが王宮に届いたのだった──。

【完結】愛が乗っ取られた私に手を差し伸べたのは領主様でした

ユユ
恋愛
幼い頃からずっと一緒に過ごし 必然かのように惹かれあった。 大人になったら結婚しようと 約束していた。 なのに “ローズマリーと結婚することにした” 親友だと思っていたローズマリーが 彼を騙していた。 私は喪失感が大きすぎて 彼を諦めた。 町から離れたくて 領主様のお屋敷の近くの町に行き 職探しを始めた。 身を寄せた伯父家族の家から 早く出なくてはならなくて 仕方なく住み込みの娼館の下女に 応募しようとしていたら 領主様に拾われた。 * 作り話です。 * ちょっと不快な従兄が出てきます。 * 少し大人表現あり

キャンピングカーで往く異世界徒然紀行

タジリユウ
ファンタジー
《第4回次世代ファンタジーカップ 面白スキル賞》 【コミカライズ企画進行中!】 コツコツとお金を貯めて念願のキャンピングカーを手に入れた主人公。 早速キャンピングカーで初めてのキャンプをしたのだが、次の日目が覚めるとそこは異世界であった。 そしていつの間にかキャンピングカーにはナビゲーション機能、自動修復機能、燃料補給機能など様々な機能を拡張できるようになっていた。 道中で出会ったもふもふの魔物やちょっと残念なエルフを仲間に加えて、キャンピングカーで異世界をのんびりと旅したいのだが… ※旧題)チートなキャンピングカーで旅する異世界徒然紀行〜もふもふと愉快な仲間を添えて〜 ※カクヨム様でも投稿をしております

処理中です...