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離島編
第十六話 忍さんの女性らしい服
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大きな窓にかかっているカーテンが時折風で揺らめているのだけれど、そこまで強い風は吹いていないので外の様子がわかることは無かった。
天気も良くて外で何かして遊ぶには絶好の機会だとは思うのだけれど、忍さんの部屋はカーテンが閉められており外の様子をうかがう事も出来ないのであった。それは外から中をのぞくことが出来ないという事と同義であるのだ。
鵜崎先生はそんな忍さんの部屋で一人待っているのだ。忍さんは準備をしてくると言って出て行ってすでに十分は経っているように思えていた。虫の鳴き声も風の音も聞こえないこの島でただ黙って待っているという事は永遠にも近い時間に感じてしまうのだけれど、それは私だけが感じているのではなく真白先生もいつもとは違って落ち着きがない様子なので似たように感じている事なのだろう。
「すいません、お待たせしちゃいました」
音もなく扉を開けて忍さんが入ってきたのでそちらを振り向くと、そこに立っていたのはなぜかセーラー服を着ている忍さんだった。
「何でセーラー服なの?」
真白先生は明らかに動揺している様子なのだが、私も忍さんがなぜセーラー服を着ているのかという事を疑問に思っていたのでその答えは知りたかった。ただ、こうしてセーラー服を着ている忍さんは高校生や中学生と言っても信じてしまいそうなくらい幼さを残していたのである。
「えっと、僕が持ってる服の中で一番可愛くて女の子っぽいのは何だろうって考えてみたんですけど、一晩考えてみた結果これになりました。じいちゃんの手伝いをする事が多いから動きやすい服しかなくて、可愛いのって去年まで着てたこの制服しかなかったんですよ。でも、私服でも良かったんであんまり着てなかったんですけど似合ってないですよね」
「そんな事ないよ。一瞬本当に高校生かと思っちゃったからね。でも、制服が汚れたりしたら洗うの面倒じゃない?」
「大丈夫だと思います。たぶん、もう着る機会もないと思いますし。それに、少しでも鵜崎先生に可愛いって思ってもらいたいなって思ってますから。どうですか、僕はちゃんと女の子に見えますか?」
忍さんは髪が短かったり元気いっぱいなところがあったりで男の子っぽいところが多く感じてしまうのだけれど、こうしてスカートを履いている姿を見ると女の子なんだなって感じてしまう。
胸もお尻もそこまで大きいわけではないのだけれど、肩から腕にかけての感じやスラっと伸びた足も男性らしい直線的な感じというよりは女性らしい曲線のように見えているのだ。
「うん、忍さんは可愛いよ。女の子だって聞いてたんで最初にあった時は少し戸惑ったりもしたけどさ、こうして一緒に過ごしてみると可愛い女の子なんだなって感じてるしね。学校でもモテてたんじゃないの?」
「どうでしょうね。あんまりそう言った話題も無かったですよ。他の島の子とかも多かったですし、仲良くなっても学校以外で会うことってないですからね。みんな自分の家族の手伝いとかしてますから、こうして今みたいに二人で会うって事は無かったですよ。あ、二人じゃなかったですね」
その言葉を聞いて二人同時に私の事を見てきたんですけど、私は二人と目を合わさないように顔をそむけてしまいました。二人の事は見たいって思うんですけど、そんな二人に見られるのはちょっと恥ずかしいんですよね。私が見る分にはいいのかもなって思うんですけど、二人から見られるってのは何か違うんじゃないかなって思ってます。勝負ではないけど、何か負けてしまったような気がしちゃうんですよね。
『私の事は気にしないでください。ここに居ますけど、今更邪魔なんてしようとは思わないですから』
忍さんはきっとなんでこの部屋に居座っているんだろうって思ってますよね。私が忍さんの立場だったらそう思ってしまうだろうし、出来ることなら出て行って欲しいって思うでしょう。でも、私にはそれをすることが出来ないのです。窓は開いているので外に出ることも可能だとは思うんですけど、何かのタイミングで窓を閉められてしまうと大変なことになってしまうんですよ。
「ごめんね。ヒナミは俺と同じ空間に滞在してないといけないって決まりがあるんだよ。だから、この部屋にいることになるんだけどさ、気になるなら今日はお話だけして伝八さんの帰りを待つことにしようか」
「うーん、そんな決まりがあるのなら仕方ないですね。わかりました。僕はヒナミさんの事は幽霊なのに怖いって思ったこともないですし、特別な事情があるんだったら大丈夫です。でも、あんまりじっくり見られるのは恥ずかしいかもしれないです」
『そんなにじっくりは見ないですし、なるべく近付いたりもしないようにしますよ。二人の邪魔をすると私も大変なことになっちゃうかもしれないので、この辺で小さくなってます』
この前みたいになっても困りますし、私は本当に邪魔にならないような場所で見守ることにしますよ。応援とかはしないですけど、せっかくの機会なので真白先生が気持ちいいと思うような場所を見付けられたらいいなと思います。
でも、忍さんはあんまり経験も無さそうですし、真白先生を満足させることなんて出来るんでしょうかね。それだけがちょっと心配ですね。
「あの、最初に断っておくんですけど、僕って経験したことが無いんで、間違ってたり良くなかったりしたらごめんなさい」
「そんな事は気にしなくても大丈夫だよ。俺だって経験豊富なわけではないからさ、忍さんのしたいことを好きなようにしてくれたらいいからね」
「わかりました。あと、僕の事は忍さんじゃなくて忍か忍ちゃんって呼んでもらえたら嬉しいです」
経験が少なそうだとは思っていたんですけど、未経験だとは思わなかったですね。でも、ちょっと前まで高校生だったんならおかしい話ではないですよね。その割には、真白先生のモノを口で上手にしてたような気もするんですが、それって天性の才能だったりするんでしょうかね。
あと、忍さんじゃなくていいってのは私にも言ってるように思えるんですけど、私も忍ちゃんって呼んじゃってもいいんでしょうか。それは後で確認する事にしましょう。今はそんな事を聞いて変な空気にしない方が良いでしょうし、そうなったらあとで真白先生に怒られちゃうかもしれないですからね。
天気も良くて外で何かして遊ぶには絶好の機会だとは思うのだけれど、忍さんの部屋はカーテンが閉められており外の様子をうかがう事も出来ないのであった。それは外から中をのぞくことが出来ないという事と同義であるのだ。
鵜崎先生はそんな忍さんの部屋で一人待っているのだ。忍さんは準備をしてくると言って出て行ってすでに十分は経っているように思えていた。虫の鳴き声も風の音も聞こえないこの島でただ黙って待っているという事は永遠にも近い時間に感じてしまうのだけれど、それは私だけが感じているのではなく真白先生もいつもとは違って落ち着きがない様子なので似たように感じている事なのだろう。
「すいません、お待たせしちゃいました」
音もなく扉を開けて忍さんが入ってきたのでそちらを振り向くと、そこに立っていたのはなぜかセーラー服を着ている忍さんだった。
「何でセーラー服なの?」
真白先生は明らかに動揺している様子なのだが、私も忍さんがなぜセーラー服を着ているのかという事を疑問に思っていたのでその答えは知りたかった。ただ、こうしてセーラー服を着ている忍さんは高校生や中学生と言っても信じてしまいそうなくらい幼さを残していたのである。
「えっと、僕が持ってる服の中で一番可愛くて女の子っぽいのは何だろうって考えてみたんですけど、一晩考えてみた結果これになりました。じいちゃんの手伝いをする事が多いから動きやすい服しかなくて、可愛いのって去年まで着てたこの制服しかなかったんですよ。でも、私服でも良かったんであんまり着てなかったんですけど似合ってないですよね」
「そんな事ないよ。一瞬本当に高校生かと思っちゃったからね。でも、制服が汚れたりしたら洗うの面倒じゃない?」
「大丈夫だと思います。たぶん、もう着る機会もないと思いますし。それに、少しでも鵜崎先生に可愛いって思ってもらいたいなって思ってますから。どうですか、僕はちゃんと女の子に見えますか?」
忍さんは髪が短かったり元気いっぱいなところがあったりで男の子っぽいところが多く感じてしまうのだけれど、こうしてスカートを履いている姿を見ると女の子なんだなって感じてしまう。
胸もお尻もそこまで大きいわけではないのだけれど、肩から腕にかけての感じやスラっと伸びた足も男性らしい直線的な感じというよりは女性らしい曲線のように見えているのだ。
「うん、忍さんは可愛いよ。女の子だって聞いてたんで最初にあった時は少し戸惑ったりもしたけどさ、こうして一緒に過ごしてみると可愛い女の子なんだなって感じてるしね。学校でもモテてたんじゃないの?」
「どうでしょうね。あんまりそう言った話題も無かったですよ。他の島の子とかも多かったですし、仲良くなっても学校以外で会うことってないですからね。みんな自分の家族の手伝いとかしてますから、こうして今みたいに二人で会うって事は無かったですよ。あ、二人じゃなかったですね」
その言葉を聞いて二人同時に私の事を見てきたんですけど、私は二人と目を合わさないように顔をそむけてしまいました。二人の事は見たいって思うんですけど、そんな二人に見られるのはちょっと恥ずかしいんですよね。私が見る分にはいいのかもなって思うんですけど、二人から見られるってのは何か違うんじゃないかなって思ってます。勝負ではないけど、何か負けてしまったような気がしちゃうんですよね。
『私の事は気にしないでください。ここに居ますけど、今更邪魔なんてしようとは思わないですから』
忍さんはきっとなんでこの部屋に居座っているんだろうって思ってますよね。私が忍さんの立場だったらそう思ってしまうだろうし、出来ることなら出て行って欲しいって思うでしょう。でも、私にはそれをすることが出来ないのです。窓は開いているので外に出ることも可能だとは思うんですけど、何かのタイミングで窓を閉められてしまうと大変なことになってしまうんですよ。
「ごめんね。ヒナミは俺と同じ空間に滞在してないといけないって決まりがあるんだよ。だから、この部屋にいることになるんだけどさ、気になるなら今日はお話だけして伝八さんの帰りを待つことにしようか」
「うーん、そんな決まりがあるのなら仕方ないですね。わかりました。僕はヒナミさんの事は幽霊なのに怖いって思ったこともないですし、特別な事情があるんだったら大丈夫です。でも、あんまりじっくり見られるのは恥ずかしいかもしれないです」
『そんなにじっくりは見ないですし、なるべく近付いたりもしないようにしますよ。二人の邪魔をすると私も大変なことになっちゃうかもしれないので、この辺で小さくなってます』
この前みたいになっても困りますし、私は本当に邪魔にならないような場所で見守ることにしますよ。応援とかはしないですけど、せっかくの機会なので真白先生が気持ちいいと思うような場所を見付けられたらいいなと思います。
でも、忍さんはあんまり経験も無さそうですし、真白先生を満足させることなんて出来るんでしょうかね。それだけがちょっと心配ですね。
「あの、最初に断っておくんですけど、僕って経験したことが無いんで、間違ってたり良くなかったりしたらごめんなさい」
「そんな事は気にしなくても大丈夫だよ。俺だって経験豊富なわけではないからさ、忍さんのしたいことを好きなようにしてくれたらいいからね」
「わかりました。あと、僕の事は忍さんじゃなくて忍か忍ちゃんって呼んでもらえたら嬉しいです」
経験が少なそうだとは思っていたんですけど、未経験だとは思わなかったですね。でも、ちょっと前まで高校生だったんならおかしい話ではないですよね。その割には、真白先生のモノを口で上手にしてたような気もするんですが、それって天性の才能だったりするんでしょうかね。
あと、忍さんじゃなくていいってのは私にも言ってるように思えるんですけど、私も忍ちゃんって呼んじゃってもいいんでしょうか。それは後で確認する事にしましょう。今はそんな事を聞いて変な空気にしない方が良いでしょうし、そうなったらあとで真白先生に怒られちゃうかもしれないですからね。
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