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離島編

第十四話 真白先生にエッチのお誘いはダメですって

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 おばあちゃんの話では十年に一度生贄を捧げなくてはならないという事になっていたそうなのだが、十年前に忍さんのお母さんが海難事故で亡くなってからは誰も事故に遭う事も無く今に至っているそうだ。
 最初のうちは誰も事故に遭う事も無かったので島自体に何か大きな災いがやってくるのではないかと思われていたのだが、何事も無く平和な時間だけが流れていたのだそうだ。
 そんな時に、この国で発生した大地震の影響で起きた大きな津波が亀島にも向かっているという情報もあったのだが、その予報は外れて忍さんの家の一階が少しだけ浸水した程度の被害でおさまったそうなのだ。
『水神様の祟りなんじゃなくて水神様が守ってくれてたのかもしれないですね』
「そうかもしれないな。でも、そうなると俺がここに呼ばれたのって何のためだったんだろうって思うけどな」
『たまにはそういう日もあっていいんじゃないですかね。真白先生はここで美味しいものもたくさん食べることが出来たみたいだし、もう思い残すことは無いと思いますから明日の朝一で帰れるようにお願いしておきましょうよ』
 このタイミングで帰ることが出来れば私も楽な気持ちで帰ることが出来るのだ。少しだけ変なものを見てしまったような気もするけれど、いつもに比べたら全然マシと思えるからね。鵜崎家から真白先生に次の仕事の依頼はまだないようだけど、家に帰って準備しておくってのは悪いことじゃないもんね。
「あの、ばあ様の話を聞く限りでは水神様はやっぱり生贄なんて必要としていないって事だったと思うんですよ。でも、僕はその話を聞いて犠牲になるなら僕しかいないんじゃないかなって思ったんです。今のままでもみんな楽しく幸せに暮らせてるんで問題はないと思うんですけど、僕が見た水神様は明らかに力を失ってるようでした。もしも、水神様の力が弱くなっている今のような時にまた津波が来てしまったら、もう奇跡なんて起こらないと思うんです。その時のためにも、僕はこの命を捧げようかと思うんです」
『ちょっとちょっと、何を言ってるんですか。そんなのダメですって。水神様も生贄なんて望んでないっておばあちゃんも言ってたじゃないですか。それなのに忍さんが命を捧げるだなんて良くないですって。命は一つしかないんですから大切にしなきゃダメですって』
 この子は急に何を言い出すんでしょうか。今のままでもみんな幸せだというのに、これから先に何か良くない事が起こった時のために命を捧げるなんてただのバカですよ。水神様の力が忍さんの命で強くなるって言う保証もないですし、そんな理由で忍さんが命を絶ってしまったら伝八さんは悔やんでも悔やみきれないと思いますよ。
 伝八さんは奥さんと娘さんを海難事故で亡くしてるんですし、その上忍さんまで亡くなってしまったらただの呪いになっちゃいますよ。
『命は大切にしなくちゃダメですよ。親子三代続けて海難事故に遭って亡くなるなんてただの呪いでしかないですよ。伝八さんは奥さんと娘を亡くしているのに、孫まで水神様のために亡くなってしまうなんて耐えられないと思います。他の人の中には忍さんが犠牲になることで安堵する人がいるかもしれないですけど、伝八さんは間違いなく残りの人生を後悔の念だけで過ごすことになっちゃうと思うんですよね。だから、自分が犠牲になるとか言っちゃダメですから』
「私はさ、幽霊ってもっと怖い存在かと思ってたんだ。ヒナミさんを見るまでは夜にトイレに行くのも怖かったりしたんだよね。太陽が沈んだ後はなるべく家から出たくないとも思ってたしね。でも、鳥島で鵜崎先生の精液を飲んでから見えたヒナミちゃんの姿に怖さなんて微塵も感じなかったんだ。それどころか、私の事も気遣ってくれる優しい幽霊だなって思ってたよ。そんなヒナミさんが命を大切にしろって言うんだったらさ、私は残りの人生を精一杯生きてやろうかなって思う。だからね、その為にもじいちゃんが漁に出かけたら私と本当のエッチをして欲しいな」
 やっぱりそう言うことになりますよね。正直に言って、今この状態で真白先生と忍さんがエッチをしたとしても、この島にも鳥島にも幽霊がいないんだから必要ないと言えば必要ないんですよね。
 でも、忍さんは完全にそっちのスイッチが入っちゃってるみたいなんです。自分からそんな風に男性を誘うようには見えない忍さんなので真白先生に直接お願いをしているという事は、それだけやる気になってるって事ですよね。
 一つだけ気になることがあるのですが、鳥島では未成年ではないという事を口で説明しただけの忍さんは本当に未成年じゃないのかという疑惑もあるんですよね。もしも、忍さんが未成年であって真白先生とエッチをしてしまった場合、真白先生は知らなかったと言い訳をしても、そんな言い訳なんて誰も信じたりしないんでしょうね。
「本当のエッチって何かな?」
「僕は全く経験ないんで詳しいことはわからないけど、出来ることなら鵜崎先生に教えてもらいたいな。僕はあんまり可愛くないし見た目も男っぽいから嫌かもしれないけど、鵜崎先生が僕の最初の相手になってくれたら嬉しいな」
 この流れは完全にダメなやつですよ。私がここからどうコントロールしたってこの二人は確実にエッチな事をしちゃうでしょう。それを阻止するためにはどうすればいいか、いっそのこと水神様にお願いしてみようかとも思うったのですが、私一人ではあの島に行くことが出来ないですし、そもそも私は水神様とお話なんて出来ないんですよね。
「後悔しないって言うんだったら、俺が相手になるよ。それにさ、忍さんは自分の事を男っぽくて可愛くないって思ってるかもしれないけどさ、俺はそんな忍さんの事も可愛いって思ってるからね」
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