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離島編
第十二話 ばあ様と忍さん
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おばあさんの突然の行動にこの場にいたみんなの視線が一気に集中したのですが、忍さんを抱きしめているおばあさんとそこから少し離れて座ってお刺身を黙々と食べている真白先生の姿を見てみんなは何が起きたのかわかっていない様子でした。
全員の視線がおばあさんに集中していて、その後に真白先生と忍さんの事を交互に見ている人は多くいたのですが、私の事を見ている人は誰もいませんでした。おばあさん以外には私の事が見えているのは真白先生と忍さんだけだという事になるんでしょうね。
「ばあちゃんどうしたのさ。蜂でもいたのかい?」
「まあそんなところだね」
「なんだよ、急に変な事言うからビックリしちゃったじゃないか。鵜崎先生が忍ちゃんに何かセクハラでもしようとしたのかと思ったでしょ」
『セクハラでもしようとしたのではなく、セクハラ以上の事はしてましたよね』
私の声が聞こえているのは真白先生と忍さんだけだと思ってつい口走ってしまったのですが、私の姿が見えているという事はこのおばあさんにも私の声が聞こえているかもしれないという事ですよね。私はその事に全く気付いていなかったのですが、忍さんを抱きしめるおばあさんの手が緩い感じだったのに強く抱きしめるように変わっているのを見てしまいました。
「二人ともお腹いっぱいになったらばあちゃんの部屋に来なさい。ちょっと教えておきたいことがあるんでね」
おばあさんはそう言うと部屋から出て行ってしまった。皆の視線を集めた忍さんは顔を真っ赤にしてうつむいてしまっていたのだけれど、その原因を作ったはずの真白先生は目の前にあるお刺身を全部食べつくすような勢いで次々と箸を伸ばしていっていたのだ。普段はこんなに食べる人ではないと思うんですが、余程ここの魚が気に入ったんですね。
一体その体のどこにそれだけの量の魚が入ってしまうのだろうと思ってはいたんですが、真白先生の食いっぷりには亀島の人達も驚いていたようで自分たちの目の前にあったお刺身も次から次へと真白先生の前へと持ってくるのでした。
「それだけ美味しそうに食べてくれるとこっちも嬉しくなっちゃうね。ここで取れた魚は美味しいかい?」
「凄く美味しいですよ。普段はあまり生ものって食べないんですけど、ここのは一つ食べたら次も食べたくなっちゃいますね。でも、さすがにもうお腹いっぱいです。食べすぎちゃったかもしれないですよ」
「で、鵜崎先生はどれくらいこの島に滞在してくれるんだい。鵜崎先生がいる間は毎日刺身作ってやるからさ」
「ちょっと、そんな事言ってあんた達は飲みたいだけでしょ。鵜崎先生だって次の仕事もあって話しだし、あんまり引き止めちゃダメだよ」
「そうは言うけどさ、こんだけ美味そうに食ってくれたらこっちも嬉しいじゃないか。お前だってつみれ汁お代わりしてもらって嬉しいって言ってただろ」
「それはそうだけどさ、そう言うことを言ってるんじゃないよ。鵜崎先生だって忙しいから無理な事言うもんじゃないって話だよ。ばあ様だって無理矢理引き止めちゃダメだって言ってたんだからね」
「ばあ様が言うならしょうがないな。でもな、明日の晩も刺身は食わせてやるからな」
真白先生が男性に好かれることなんて滅多にないんですが、自分たちがとってきた魚を美味しそうに食べている姿を見て嬉しくなったんですかね。それとも、自分の周りの女性が真白先生に惚れているそぶりを見せていないから余裕があるってだけの話なんですかね。でも、私が見た感じだと忍さんは完全に真白先生に惚れていると思うんですよ。まあ、あんなことが出来るのは惚れている証拠ともいえると思いますけど。
お腹がいっぱいになった真白先生は温かいお茶を貰って意を落ち着けているようです。忍さんは手作りのシュークリームを美味しそうに食べているのですが、いつもと違って上品に食べているという事を島の人にバラされて怒っていましたね。きっと、真白先生の前で可愛い女性であることをアピールしようとしたんでしょうが、それをばらした男の人の事を凄い目で睨んでますよ。あんなに恨みのこもった目は殺人現場でもなかなか見られるものではないですね。
「そろそろばあ様のところに行きますか。あんまり遅いとばあ様の寝る時間になっちゃうと思いますし、食べたりなかったら後でまたここに来ればいいですし」
「さすがにコレだけ食べたらもうしばらくはいいかな。それに、あんまり待たせてしまうのも良くないと思うからね」
「じゃあ、ちょっと竹下のお母さんにばあ様のところに行ってくるって言ってきますね。一応報告はしておかないと探されちゃうかもしれないので」
忍さんはスッと席を立つとキッチンの方へと歩いて行って、一番働いている女性に伝えているようでした。何を話しているのかは周りの音がうるさいので聞こえませんでしたが、真白先生に向かって頭を下げているのだけはわかりました。
そのまま戻ってきた忍さんに連れられて部屋を出て行く真白先生でしたが、真白先生が部屋を出ようとした瞬間にあれだけ騒々しかった人達が静まり返ったと思うと、全員の視線が真白先生に集中しているのでした。ほんの一瞬ではありましたが、みんなが無言になって真白先生を見つめているという構図が出来上がっており、その一瞬の静寂の後には先ほどのようにガヤガヤとした空間に戻っているのでした。
何度か角を曲がって家の一番奥にある離れの前に着くと、忍さんは軽く深呼吸をしてノックをしていました。
全員の視線がおばあさんに集中していて、その後に真白先生と忍さんの事を交互に見ている人は多くいたのですが、私の事を見ている人は誰もいませんでした。おばあさん以外には私の事が見えているのは真白先生と忍さんだけだという事になるんでしょうね。
「ばあちゃんどうしたのさ。蜂でもいたのかい?」
「まあそんなところだね」
「なんだよ、急に変な事言うからビックリしちゃったじゃないか。鵜崎先生が忍ちゃんに何かセクハラでもしようとしたのかと思ったでしょ」
『セクハラでもしようとしたのではなく、セクハラ以上の事はしてましたよね』
私の声が聞こえているのは真白先生と忍さんだけだと思ってつい口走ってしまったのですが、私の姿が見えているという事はこのおばあさんにも私の声が聞こえているかもしれないという事ですよね。私はその事に全く気付いていなかったのですが、忍さんを抱きしめるおばあさんの手が緩い感じだったのに強く抱きしめるように変わっているのを見てしまいました。
「二人ともお腹いっぱいになったらばあちゃんの部屋に来なさい。ちょっと教えておきたいことがあるんでね」
おばあさんはそう言うと部屋から出て行ってしまった。皆の視線を集めた忍さんは顔を真っ赤にしてうつむいてしまっていたのだけれど、その原因を作ったはずの真白先生は目の前にあるお刺身を全部食べつくすような勢いで次々と箸を伸ばしていっていたのだ。普段はこんなに食べる人ではないと思うんですが、余程ここの魚が気に入ったんですね。
一体その体のどこにそれだけの量の魚が入ってしまうのだろうと思ってはいたんですが、真白先生の食いっぷりには亀島の人達も驚いていたようで自分たちの目の前にあったお刺身も次から次へと真白先生の前へと持ってくるのでした。
「それだけ美味しそうに食べてくれるとこっちも嬉しくなっちゃうね。ここで取れた魚は美味しいかい?」
「凄く美味しいですよ。普段はあまり生ものって食べないんですけど、ここのは一つ食べたら次も食べたくなっちゃいますね。でも、さすがにもうお腹いっぱいです。食べすぎちゃったかもしれないですよ」
「で、鵜崎先生はどれくらいこの島に滞在してくれるんだい。鵜崎先生がいる間は毎日刺身作ってやるからさ」
「ちょっと、そんな事言ってあんた達は飲みたいだけでしょ。鵜崎先生だって次の仕事もあって話しだし、あんまり引き止めちゃダメだよ」
「そうは言うけどさ、こんだけ美味そうに食ってくれたらこっちも嬉しいじゃないか。お前だってつみれ汁お代わりしてもらって嬉しいって言ってただろ」
「それはそうだけどさ、そう言うことを言ってるんじゃないよ。鵜崎先生だって忙しいから無理な事言うもんじゃないって話だよ。ばあ様だって無理矢理引き止めちゃダメだって言ってたんだからね」
「ばあ様が言うならしょうがないな。でもな、明日の晩も刺身は食わせてやるからな」
真白先生が男性に好かれることなんて滅多にないんですが、自分たちがとってきた魚を美味しそうに食べている姿を見て嬉しくなったんですかね。それとも、自分の周りの女性が真白先生に惚れているそぶりを見せていないから余裕があるってだけの話なんですかね。でも、私が見た感じだと忍さんは完全に真白先生に惚れていると思うんですよ。まあ、あんなことが出来るのは惚れている証拠ともいえると思いますけど。
お腹がいっぱいになった真白先生は温かいお茶を貰って意を落ち着けているようです。忍さんは手作りのシュークリームを美味しそうに食べているのですが、いつもと違って上品に食べているという事を島の人にバラされて怒っていましたね。きっと、真白先生の前で可愛い女性であることをアピールしようとしたんでしょうが、それをばらした男の人の事を凄い目で睨んでますよ。あんなに恨みのこもった目は殺人現場でもなかなか見られるものではないですね。
「そろそろばあ様のところに行きますか。あんまり遅いとばあ様の寝る時間になっちゃうと思いますし、食べたりなかったら後でまたここに来ればいいですし」
「さすがにコレだけ食べたらもうしばらくはいいかな。それに、あんまり待たせてしまうのも良くないと思うからね」
「じゃあ、ちょっと竹下のお母さんにばあ様のところに行ってくるって言ってきますね。一応報告はしておかないと探されちゃうかもしれないので」
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何度か角を曲がって家の一番奥にある離れの前に着くと、忍さんは軽く深呼吸をしてノックをしていました。
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