34 / 64
離島編
第六話 鳥島の静けさ
しおりを挟む
幽霊だからと言って太陽が沈んでから活動を始めないといけないという決まりはない。現にこうして私が日中も活動しているというのがその証拠になると思うのだが、私以外の幽霊さん達も意外と時間に関係なく活動しているのだ。
夜になった方が人間の神経が研ぎ澄まされるのか幽霊側のアピール力が強まるのかわからないけれど、そこに幽霊がいると認識してもらえる確率も上がっているのだ。もしかすると、夜になると見える世界が狭くなってそこに幽霊がいるという事が認識しやすくなっているだけなのかもしれないですけどね。
「この島に無数にある鳥居なんだけど、一つ一つに何か印が彫ってあるんだよな。他のところの鳥居をじっくり見た事が無いんでコレが普通なのかわからないけど、鳥居ってこういう風に何か印をつけるのって普通なのかな?」
「どうなんでしょうね。僕はこんなに近くで鳥居を見た事が無かったのでわからないですよ。もしかしたら、何か特別な意味とかあるのかもしれないですけど、それが何なのかは僕にはさっぱりわからないですね」
私も鳥意をじっくり見た事が無かったので知らなかったけど、真白先生が見つけたこの小さな違いが重要なのかたまたまなのかわからなかった。どの鳥居も大きさも形も似ているので違いと言えばその印だけなのだけれど、建てる順番や場所の目印くらいにしか意味がないような気もしていたのだ。
「今の話声は聞こえた?」
急に真白先生がそう言って人差し指を唇に当てて静かにするようにという仕草をしてきたのだけれど、私には真白先生が聞こえたという話声は聞こえなかった。それは忍さんも同じだったようで、目を少し見開いて辺りをきょろきょろと見まわしていた。
「今度も機械っぽい声だったんだけど聞こえなかったんだね。この近くから聞こえてきたと思うんだけど、ヒナミにも聞こえてないって事は幽霊とは違う感じなのかな」
『私にも聞こえないって事は幽霊とも少し違う感じなのかもしれないですけど、真白先生にだけ聞こえるってのも不思議な話ですね。もしかしたら、その声の主は真白先生だけに来て欲しいって思ってるんじゃないですかね』
「俺だけに聞こえる声。会話が出来れば理由も確かめられると思うんだけど、今のままではそう言うのも無理そうなんだよな。この辺りから聞こえてくるとは思うんだけどね」
「僕が鵜崎先生から離れたらはっきり聞こえるようになるんですかね。もしそうだったとしたら、鵜崎先生からちょっと離れて行動してみようと思うんですけど」
「そうだね。ちょっと確かめてみようか。何かあっても困るから気を付けるんだよ」
「はい、この島には生き物も生息してないし、安全だと思うけど気を付けますね」
私と真白先生は忍さんが先へ進むのを見守っていたのだけれど、真白先生は私に向かって忍さんの方へと行くようにと手で合図を送ってきた。
「何かあったら困るから忍さんの様子を見守っててくれ。何も無いと思うけど、万が一という事もあるからな」
『わかりました。でも、真白先生も気を付けてくださいね』
それほど大きくない島を一周するのはそれほど時間がかからないと思うのだけれど、道がちゃんと整備されているわけではないので歩いて渡るのは意外と時間がかかるみたいだった。
鳥居の周りは不思議と草木も生えていないのだけれど、ちょっと離れた鳥居に向かうにはちょっとした茂みをかき分けていかないといけない。風の影響なのか草はほぼ海側から中心にむけて斜めに生えているのでそこそこ歩きやすそうに見えるのだが、それなりに足をあげて草を踏み越えなければいけないのは体力を使ってしまいそうだ。
後ろを振り向いても真白先生の姿が見えないので結構な距離を進んできた。緩やかな上り坂を進んできたのだけれど、一時間近くも歩いていたという事もあって海面からの高さもそれなりになっていたのだ。
「この島にくるのは久しぶりだけど、景色はいつも変わらないんだな。反対側だと亀島があるのがわかるのに、こっちにいると海しかなくて何も見えないってのが不思議だな。今日は天気もいいし、いつも以上に綺麗だよね」
『本当に綺麗ですね。こんなにキラキラしている海を見るのは初めてかもしれないです』
私には忍さんの声は聞こえているのだけれど、忍さんには私の声は届いていないはずです。それなのに、思わず私は忍さんに返事をしてしまいました。届いていない返事に忍さんが返してくれるはずもなく、ほんの少しの休憩の後にまた忍さんは前へと進んでいったのです。
真白先生から離れるという目的だけで進んでいるのですが、鳥居がある場所を真っすぐと進んでいった結果は島の中心部にたどり着くのでした。
この島で一番高い場所にあるのは鳥居なんですが、その鳥居は今までくぐってきた鳥居とは違って腰を曲げなければ通れない位小さいものが八基中心を囲むように並んでいました。その中心に何がるのだろうと思って見てみたのですが、そこには普通の地面があるだけで、これと言って何か特別なものが祀られているという事も無かったのです。
「ここからだと亀島も見えるんだよね。他には何もないのがわかるんだけど、もしかしたらこの世界に取り残されちゃったのかな。なんて考えたりもするよね」
この位置からだと海を見渡すことも出来るのですけど、忍さんの言う通りで亀島意外な何も無い綺麗で落ち着いた海が広がっているだけですね。船も飛行機も通ってない静かな空間なんですけど、風の音も鳥の鳴き声も聞こえないってのは違和感しかありませんでした。
夜になった方が人間の神経が研ぎ澄まされるのか幽霊側のアピール力が強まるのかわからないけれど、そこに幽霊がいると認識してもらえる確率も上がっているのだ。もしかすると、夜になると見える世界が狭くなってそこに幽霊がいるという事が認識しやすくなっているだけなのかもしれないですけどね。
「この島に無数にある鳥居なんだけど、一つ一つに何か印が彫ってあるんだよな。他のところの鳥居をじっくり見た事が無いんでコレが普通なのかわからないけど、鳥居ってこういう風に何か印をつけるのって普通なのかな?」
「どうなんでしょうね。僕はこんなに近くで鳥居を見た事が無かったのでわからないですよ。もしかしたら、何か特別な意味とかあるのかもしれないですけど、それが何なのかは僕にはさっぱりわからないですね」
私も鳥意をじっくり見た事が無かったので知らなかったけど、真白先生が見つけたこの小さな違いが重要なのかたまたまなのかわからなかった。どの鳥居も大きさも形も似ているので違いと言えばその印だけなのだけれど、建てる順番や場所の目印くらいにしか意味がないような気もしていたのだ。
「今の話声は聞こえた?」
急に真白先生がそう言って人差し指を唇に当てて静かにするようにという仕草をしてきたのだけれど、私には真白先生が聞こえたという話声は聞こえなかった。それは忍さんも同じだったようで、目を少し見開いて辺りをきょろきょろと見まわしていた。
「今度も機械っぽい声だったんだけど聞こえなかったんだね。この近くから聞こえてきたと思うんだけど、ヒナミにも聞こえてないって事は幽霊とは違う感じなのかな」
『私にも聞こえないって事は幽霊とも少し違う感じなのかもしれないですけど、真白先生にだけ聞こえるってのも不思議な話ですね。もしかしたら、その声の主は真白先生だけに来て欲しいって思ってるんじゃないですかね』
「俺だけに聞こえる声。会話が出来れば理由も確かめられると思うんだけど、今のままではそう言うのも無理そうなんだよな。この辺りから聞こえてくるとは思うんだけどね」
「僕が鵜崎先生から離れたらはっきり聞こえるようになるんですかね。もしそうだったとしたら、鵜崎先生からちょっと離れて行動してみようと思うんですけど」
「そうだね。ちょっと確かめてみようか。何かあっても困るから気を付けるんだよ」
「はい、この島には生き物も生息してないし、安全だと思うけど気を付けますね」
私と真白先生は忍さんが先へ進むのを見守っていたのだけれど、真白先生は私に向かって忍さんの方へと行くようにと手で合図を送ってきた。
「何かあったら困るから忍さんの様子を見守っててくれ。何も無いと思うけど、万が一という事もあるからな」
『わかりました。でも、真白先生も気を付けてくださいね』
それほど大きくない島を一周するのはそれほど時間がかからないと思うのだけれど、道がちゃんと整備されているわけではないので歩いて渡るのは意外と時間がかかるみたいだった。
鳥居の周りは不思議と草木も生えていないのだけれど、ちょっと離れた鳥居に向かうにはちょっとした茂みをかき分けていかないといけない。風の影響なのか草はほぼ海側から中心にむけて斜めに生えているのでそこそこ歩きやすそうに見えるのだが、それなりに足をあげて草を踏み越えなければいけないのは体力を使ってしまいそうだ。
後ろを振り向いても真白先生の姿が見えないので結構な距離を進んできた。緩やかな上り坂を進んできたのだけれど、一時間近くも歩いていたという事もあって海面からの高さもそれなりになっていたのだ。
「この島にくるのは久しぶりだけど、景色はいつも変わらないんだな。反対側だと亀島があるのがわかるのに、こっちにいると海しかなくて何も見えないってのが不思議だな。今日は天気もいいし、いつも以上に綺麗だよね」
『本当に綺麗ですね。こんなにキラキラしている海を見るのは初めてかもしれないです』
私には忍さんの声は聞こえているのだけれど、忍さんには私の声は届いていないはずです。それなのに、思わず私は忍さんに返事をしてしまいました。届いていない返事に忍さんが返してくれるはずもなく、ほんの少しの休憩の後にまた忍さんは前へと進んでいったのです。
真白先生から離れるという目的だけで進んでいるのですが、鳥居がある場所を真っすぐと進んでいった結果は島の中心部にたどり着くのでした。
この島で一番高い場所にあるのは鳥居なんですが、その鳥居は今までくぐってきた鳥居とは違って腰を曲げなければ通れない位小さいものが八基中心を囲むように並んでいました。その中心に何がるのだろうと思って見てみたのですが、そこには普通の地面があるだけで、これと言って何か特別なものが祀られているという事も無かったのです。
「ここからだと亀島も見えるんだよね。他には何もないのがわかるんだけど、もしかしたらこの世界に取り残されちゃったのかな。なんて考えたりもするよね」
この位置からだと海を見渡すことも出来るのですけど、忍さんの言う通りで亀島意外な何も無い綺麗で落ち着いた海が広がっているだけですね。船も飛行機も通ってない静かな空間なんですけど、風の音も鳥の鳴き声も聞こえないってのは違和感しかありませんでした。
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
お客様が不在の為お荷物を持ち帰りました。
鞠目
ホラー
さくら急便のある営業所に、奇妙な配達員にいたずらをされたという不可思議な問い合わせが届く。
最初はいたずら電話と思われていたこの案件だが、同じような問い合わせが複数人から発生し、どうやらいたずら電話ではないことがわかる。
迷惑行為をしているのは運送会社の人間なのか、それとも部外者か? 詳細がわからない状況の中、消息を断つ者が増えていく……
3月24日完結予定
毎日16時ごろに更新します
お越しをお待ちしております

ill〜怪異特務課事件簿〜
錦木
ホラー
現実の常識が通用しない『怪異』絡みの事件を扱う「怪異特務課」。
ミステリアスで冷徹な捜査官・名護、真面目である事情により怪異と深くつながる体質となってしまった捜査官・戸草。
とある秘密を共有する二人は協力して怪奇事件の捜査を行う。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。

特別。
月芝
ホラー
正義のヒーローに変身して悪と戦う。
一流のスポーツ選手となって活躍する。
ゲームのような異世界で勇者となって魔王と闘う。
すごい発明をして大金持ちになる。
歴史に名を刻むほどの偉人となる。
現実という物語の中で、主人公になる。
自分はみんなとはちがう。
この世に生まれたからには、何かを成し遂げたい。
自分が生きた証が欲しい。
特別な存在になりたい。
特別な存在でありたい。
特別な存在だったらいいな。
そんな願望、誰だって少しは持っているだろう?
でも、もしも本当に自分が世界にとっての「特別」だとしたら……
自宅の地下であるモノを見つけてしまったことを境にして、日常が変貌していく。まるでオセロのように白が黒に、黒が白へと裏返る。
次々と明らかになっていく真実。
特別なボクの心はいつまで耐えられるのだろうか……
伝奇ホラー作品。
赤い部屋
山根利広
ホラー
YouTubeの動画広告の中に、「決してスキップしてはいけない」広告があるという。
真っ赤な背景に「あなたは好きですか?」と書かれたその広告をスキップすると、死ぬと言われている。
東京都内のある高校でも、「赤い部屋」の噂がひとり歩きしていた。
そんな中、2年生の天根凛花は「赤い部屋」の内容が自分のみた夢の内容そっくりであることに気づく。
が、クラスメイトの黒河内莉子は、噂話を一蹴し、誰かの作り話だと言う。
だが、「呪い」は実在した。
「赤い部屋」の手によって残酷な死に方をする犠牲者が、続々現れる。
凛花と莉子は、死の連鎖に歯止めをかけるため、「解決策」を見出そうとする。
そんな中、凛花のスマートフォンにも「あなたは好きですか?」という広告が表示されてしまう。
「赤い部屋」から逃れる方法はあるのか?
誰がこの「呪い」を生み出したのか?
そして彼らはなぜ、呪われたのか?
徐々に明かされる「赤い部屋」の真相。
その先にふたりが見たものは——。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる