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離島編
第二話 離島の離島
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漁業以外に目立った産業のないこの島に観光客がやってくることはまずないのだが、一部のマニアが極稀にやってくることがあるそうです。その目的はこの島に降り立って私が最初に気になった鳥居がたくさん並んでいる島だそうです。
忍さんの話によると、あの島はよくある女人禁制だったり立ち入り禁止区域だったりという事も無く自由に出入りする事が出来るのですが、島の近くにある無数の岩礁が船の侵入を拒むかのように乱立していてこの島にある漁船では近付くことも出来ないとのことです。泳いで渡るにしてもあの島の近くにはサメが多く生息しているのでかなり危険を伴うとのことでした。
「そんなわけで、鵜崎先生にはあの島で目撃されている女の人の幽霊の正体を見極めて欲しいんです」
「正体を見極めて欲しいって事は、その正体次第では祓って欲しいって解釈で良いのかな?」
「そうですと言いたいところなんですが、あの島にいる幽霊が僕のお母さんかばあちゃんだったらあっちの島からこの島に連れてきてもらいたいって思ってるんですよ」
「忍さんの家族かもしれないって思ってるみたいだけど、それには何か理由があるのかな?」
「僕が直接見たわけじゃないんですけど、漁の帰りにじいちゃんと近所のおじさんがあの島にいる幽霊を見たそうなんです。その姿は無くなる前のばあちゃんやお母さんに似ていたって事なんですよ。じいちゃんはそれ以来海が荒れていない時は毎日船に乗ってるんですけど、その時しか島の幽霊を目撃してないって言ってました。今も島の近くで漁をしていると思うんですけど、ばあちゃんかお母さんに会えてるんですかね?」
『私が見た幽霊って忍さんの家族の方だったんですかね。あんまり悪い印象は無かったですよ。遠くてよくわからなかったですけど、忍さんに似ているような気もしますね。表情とかっていうよりも、立っている姿が似てるって思いましたよ』
「忍さんのおじいさんが見た幽霊ってのは何時くらいの話なのかな?」
「じいちゃんは早朝に出かけて昼過ぎには帰ってくるので、その時間帯だと思いますよ。たぶん、鵜崎先生がこの島に着いた時間くらいじゃないかなって思います」
『それだと私が見た幽霊さんと同じかもしれないですね。同じ幽霊さんかはわかりませんけど、昼間にあらわれる幽霊さんがいるってのは間違いないです。まあ、私は一日中真白先生の側にいるんで昼間に幽霊が現れてもおかしくなって思いますけどね』
真白先生は私が見た幽霊さんの事を忍さんに伝えたのだが、真白先生の話が終わる前に忍さんはその大きな目からポロポロと涙を零れさせていた。忍さんは何度も何度も謝りながら涙を止めようとしているようなのだが、顔を上に向けてもゆっくりと深呼吸をして落ち着こうとしても忍さんの目から零れる涙が止まることは無かったのだった。
「ごめんなさい。鵜崎先生の教えてくれた女の人の特徴って、僕のお母さんが港で僕を見送ってくれていた時の姿と一緒なんです。中学生の時まで月に一度本島にある学校に通ってたんですけど、その時に見送ってくれていた姿が鵜崎先生の教えてくれた姿と一緒だったんですよ。その姿を知っているのは僕とじいちゃんだけだと思うのに、鵜崎先生は何で母さんが左手を腰に当てて右手を肩の高さで小さく左右に振ってるって知ってるんですか」
「そう言う風に見えてるって俺の助手が教えてくれているからかな。忍さんには正直に言うけど、俺は霊感はあるけど何でもかんでも見えるってわけじゃないんだよ。俺がハッキリ姿を見ることが出来るのはここに居るヒナミだけなんだ。ここに居るって言っても忍さんには見えないと思うけどね。でも、さっき言った女の幽霊の特徴を教えてくれたのは助手のヒナミであるし、そのヒナミが見た限りではあの島にいる幽霊から悪意や敵対心は感じないって話だよ」
『ちょっと待ってください。私は真白先生の助手だったんですか。そんな話初めて知りましたよ。そりゃ助手っぽいことは良くしてるなとか思ってましたけど、そんな風にハッキリ言われるとは思ってもみませんでした。でも、真白先生の助手ってのは悪くない立場ですよね。他の幽霊たちから羨ましがられるかもしれないですよ』
真白先生は私が見えない人と話をしている時には私の事を無視しちゃうところがあるのだけれど、今回に限っては私の事を完全に無視をする事も無く少しだけこっちを向いてくれたりもしていた。私に話しかけてくることは無いけれど、私の事をちゃんと意識してくれているという事だけでも嬉しかったりするのだ。
「ヒナミさんって幽霊なんですよね。鵜崎先生は幽霊が近くにいて怖くないんですか?」
「怖くはないね。幽霊が怖かったらこの仕事なんて出いないからね。忍さんは幽霊が怖いのかな?」
「そりゃ、普通に幽霊は怖いですよ。自分の力でどうにもできない相手だと思いますからね。どうにか出来るような相手だったとしても、幽霊って考えるとちょっと怖いですね。でも、お母さんとかばあちゃんが幽霊になって会いに来てくれてるんだとしたら、怖いっていうよりも嬉しいって気持ちの方が強いかもしれないですね」
忍さんは真白先生に笑顔を向けていたのだけれど、その瞳にはまだ零れ落ちそうな涙が留まっているのであった。
忍さんの話によると、あの島はよくある女人禁制だったり立ち入り禁止区域だったりという事も無く自由に出入りする事が出来るのですが、島の近くにある無数の岩礁が船の侵入を拒むかのように乱立していてこの島にある漁船では近付くことも出来ないとのことです。泳いで渡るにしてもあの島の近くにはサメが多く生息しているのでかなり危険を伴うとのことでした。
「そんなわけで、鵜崎先生にはあの島で目撃されている女の人の幽霊の正体を見極めて欲しいんです」
「正体を見極めて欲しいって事は、その正体次第では祓って欲しいって解釈で良いのかな?」
「そうですと言いたいところなんですが、あの島にいる幽霊が僕のお母さんかばあちゃんだったらあっちの島からこの島に連れてきてもらいたいって思ってるんですよ」
「忍さんの家族かもしれないって思ってるみたいだけど、それには何か理由があるのかな?」
「僕が直接見たわけじゃないんですけど、漁の帰りにじいちゃんと近所のおじさんがあの島にいる幽霊を見たそうなんです。その姿は無くなる前のばあちゃんやお母さんに似ていたって事なんですよ。じいちゃんはそれ以来海が荒れていない時は毎日船に乗ってるんですけど、その時しか島の幽霊を目撃してないって言ってました。今も島の近くで漁をしていると思うんですけど、ばあちゃんかお母さんに会えてるんですかね?」
『私が見た幽霊って忍さんの家族の方だったんですかね。あんまり悪い印象は無かったですよ。遠くてよくわからなかったですけど、忍さんに似ているような気もしますね。表情とかっていうよりも、立っている姿が似てるって思いましたよ』
「忍さんのおじいさんが見た幽霊ってのは何時くらいの話なのかな?」
「じいちゃんは早朝に出かけて昼過ぎには帰ってくるので、その時間帯だと思いますよ。たぶん、鵜崎先生がこの島に着いた時間くらいじゃないかなって思います」
『それだと私が見た幽霊さんと同じかもしれないですね。同じ幽霊さんかはわかりませんけど、昼間にあらわれる幽霊さんがいるってのは間違いないです。まあ、私は一日中真白先生の側にいるんで昼間に幽霊が現れてもおかしくなって思いますけどね』
真白先生は私が見た幽霊さんの事を忍さんに伝えたのだが、真白先生の話が終わる前に忍さんはその大きな目からポロポロと涙を零れさせていた。忍さんは何度も何度も謝りながら涙を止めようとしているようなのだが、顔を上に向けてもゆっくりと深呼吸をして落ち着こうとしても忍さんの目から零れる涙が止まることは無かったのだった。
「ごめんなさい。鵜崎先生の教えてくれた女の人の特徴って、僕のお母さんが港で僕を見送ってくれていた時の姿と一緒なんです。中学生の時まで月に一度本島にある学校に通ってたんですけど、その時に見送ってくれていた姿が鵜崎先生の教えてくれた姿と一緒だったんですよ。その姿を知っているのは僕とじいちゃんだけだと思うのに、鵜崎先生は何で母さんが左手を腰に当てて右手を肩の高さで小さく左右に振ってるって知ってるんですか」
「そう言う風に見えてるって俺の助手が教えてくれているからかな。忍さんには正直に言うけど、俺は霊感はあるけど何でもかんでも見えるってわけじゃないんだよ。俺がハッキリ姿を見ることが出来るのはここに居るヒナミだけなんだ。ここに居るって言っても忍さんには見えないと思うけどね。でも、さっき言った女の幽霊の特徴を教えてくれたのは助手のヒナミであるし、そのヒナミが見た限りではあの島にいる幽霊から悪意や敵対心は感じないって話だよ」
『ちょっと待ってください。私は真白先生の助手だったんですか。そんな話初めて知りましたよ。そりゃ助手っぽいことは良くしてるなとか思ってましたけど、そんな風にハッキリ言われるとは思ってもみませんでした。でも、真白先生の助手ってのは悪くない立場ですよね。他の幽霊たちから羨ましがられるかもしれないですよ』
真白先生は私が見えない人と話をしている時には私の事を無視しちゃうところがあるのだけれど、今回に限っては私の事を完全に無視をする事も無く少しだけこっちを向いてくれたりもしていた。私に話しかけてくることは無いけれど、私の事をちゃんと意識してくれているという事だけでも嬉しかったりするのだ。
「ヒナミさんって幽霊なんですよね。鵜崎先生は幽霊が近くにいて怖くないんですか?」
「怖くはないね。幽霊が怖かったらこの仕事なんて出いないからね。忍さんは幽霊が怖いのかな?」
「そりゃ、普通に幽霊は怖いですよ。自分の力でどうにもできない相手だと思いますからね。どうにか出来るような相手だったとしても、幽霊って考えるとちょっと怖いですね。でも、お母さんとかばあちゃんが幽霊になって会いに来てくれてるんだとしたら、怖いっていうよりも嬉しいって気持ちの方が強いかもしれないですね」
忍さんは真白先生に笑顔を向けていたのだけれど、その瞳にはまだ零れ落ちそうな涙が留まっているのであった。
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