27 / 64
アイドル編
第二十七話 紗雪さんがいれば何も問題なんてないんです
しおりを挟む
鵜崎家の力の本質を見た。三体いるという悪の親玉みたいな幽霊たちは紗雪さんに触れられただけで成仏していったのだ。それにつられる形で何体かの幽霊さん達も天に召されて言ったのだが、あまりにも自然すぎる動きを取る紗雪さんが何をしていたのかさっぱり理解する事は出来なかったのだ。
「じゃあ、ここの問題はもう片付いたし、帰ろうか」
「え、もう解決したんですか?」
「うん、霊感がある子がいるんなら聞いて欲しいんだけど、この部屋というか建物から変な感じは出てないかな?」
明里さんは仲間だけではなく見に来てくれているファンの人達にもここの雰囲気が少し変化したのではないかという事を聞いて回っていた。思っているよりも霊感のある人が何人もいるわけではないのだろうけれど,何となく前よりは空気が軽くなったような気がすると言っていたのだ。
明里さんはそのままここを離れてスタッフさん達にも聞きに行っていたみたいなのだけれど、明里さんが期待していたような答えは返ってきてないようである。
「意外なんですけど、私が質問をする前にここの空気が明るく澄んでいるように感じたって言ってもらえたんだよ。力が強い人はそう言うところも敏感に感じ取っちゃうって事なのかな」
「無意識のうちに感じ取ってるって可能性もあるかもね。あたしも小さい時は感じているのか感じさせられているのかわからなかったけど、今はその違いも関係無いってくらいバシバシ見えてるからね。ほっといても何とも無さそうな感じではあったけどさ、あの幽霊たちのせいで開催できなくなっても困るもんね」
「そうなんですよ。今もこうして熱心に通ってくれる人たちがいるからいいんですけど、本音を言えばもう少し新規の方にも見てもらいたいなって思いますよ」
「それならもう大丈夫だよ。あたしがちゃんと解決しといたからね。お兄ちゃんが迷惑かけたったお詫びって事で許してね。じゃあ、あたしはこれで帰るね。お兄ちゃんも行くよ」
紗雪さんはみんなに向かって律儀に頭を下げていたのだけれど、真白先生もそれに合わせるかのように頭を下げて回っていた。明里さん以外にも私達が呼ばれた理由を知っている子もいるのだろうけど、真白先生と紗雪さんが帰り支度をしている事に気付いた子は問題が解決したんだという事を一瞬で理解したようだ。
「そうそう、今回はお代金頂かないので社長さんが戻られたらお伝えください。支配人さんの方が戻るの早ければそちらでも構いませんので」
何事も無かったかのように紗雪さんは真白先生の家に上がり込んだのだが、部屋の惨状を見た紗雪さんは心の底から軽蔑しているようなまなざしを真白先生に向けて送っていた。
「ここはお兄ちゃん住んでいる部屋だからあたしは文句を言う義理も無いんだけどさ、さすがにこの状態のまま出て行くのはどうかと思うよ。ほら、空気も澱んじゃってるし、何よりもその辺に無造作に捨てられているティッシュのゴミが汚すぎる。この状況をママが見たらお兄ちゃんの事を指導しちゃうかもしれないよ」
「今日はちょっと朝からバタついてからね。ほら、楓さんも体調悪そうだったみたいだし」
「お兄ちゃん。お兄ちゃんは支配人さんが体調悪いなんて気付いていなかったでしょ。嘘は良くないと思うな。あと、ヒナミちゃんもこんな部屋で一緒にいたくないってちゃんと言った方が良いよ。窓は開けれないんで仕方ないと思うけど、空気を循環させるなり感染を回すなりはしておこうよ。あたしはお兄ちゃんがこの部屋でとんでもない幽霊を呼び寄せるんじゃないかって心配してるからね」
「さすがにそんな事にはならないと思うけど」
「物の例えだよ。でも、そんなお兄ちゃんに嬉しい報せと悲しい報せが有ります。どっちから聞きたいかな?」
「えっと、その二つなら悲しい方かな」
「じゃーん、お兄ちゃんは明日からヒナミちゃんと二人で離島に行ってもらいます。離島って言っても無人島じゃないんで安心してね。人口は三百人くらいって言ってたけど、島で働いている人のほとんどは船に乗って外に出てるから実際に住んでるのはそんなに多くないかもしれないよ」
「なんで急にそんな事になってるの?」
「なんでって、お兄ちゃんが失敗しちゃったからでしょ。もう一日遅かったら支配人さんが大変なことになってたかもしれないんだよ。今は叔母さん達が支配人さんの事を見ててくれてるから大丈夫だけど、あんまりヒナミちゃんにも迷惑かけちゃダメだからね」
私に触れることで支配人さんの元気を奪っていたという事は知らなかった。そもそも、私に触れることが出来る人がいてもそんな風にはなっていなかった。私に触れていた人達がみんな鵜崎家の人だったという事もやはりあるのだろうが、私に触れるという事はそれだけで大変な事なのだと認識させられた。
「じゃあ、嬉しい報せの方も発表しちゃいます。なんと、お兄ちゃんたちがこれから向かう島には若い女性は一人もいません。若い女性はみんな外に働きに出てるので誰もいません。いるのはおばあちゃんと子供だけです。良かったねお兄ちゃん」
紗雪さんは嬉しそうにそう言うと、私の方を向いてウインクをしてくれていた。体の小さな紗雪さんがそんな事をしてくれるなんて可愛らしすぎて抱きしめたいって思ってしまったけど、私が触れてしまうと大変なことになりそうだったので諦めることにした。
それにしても、次の行き先は離島なのか。離島がどんなところかわからないけど、真白先生と一緒に外に行けるのは素直に嬉しかった。私は幽霊なので手ぶらで大丈夫なのだけれど、今から真白先生と一緒に真白先生の荷物をまとめるのは楽しみであった。
「じゃあ、ここの問題はもう片付いたし、帰ろうか」
「え、もう解決したんですか?」
「うん、霊感がある子がいるんなら聞いて欲しいんだけど、この部屋というか建物から変な感じは出てないかな?」
明里さんは仲間だけではなく見に来てくれているファンの人達にもここの雰囲気が少し変化したのではないかという事を聞いて回っていた。思っているよりも霊感のある人が何人もいるわけではないのだろうけれど,何となく前よりは空気が軽くなったような気がすると言っていたのだ。
明里さんはそのままここを離れてスタッフさん達にも聞きに行っていたみたいなのだけれど、明里さんが期待していたような答えは返ってきてないようである。
「意外なんですけど、私が質問をする前にここの空気が明るく澄んでいるように感じたって言ってもらえたんだよ。力が強い人はそう言うところも敏感に感じ取っちゃうって事なのかな」
「無意識のうちに感じ取ってるって可能性もあるかもね。あたしも小さい時は感じているのか感じさせられているのかわからなかったけど、今はその違いも関係無いってくらいバシバシ見えてるからね。ほっといても何とも無さそうな感じではあったけどさ、あの幽霊たちのせいで開催できなくなっても困るもんね」
「そうなんですよ。今もこうして熱心に通ってくれる人たちがいるからいいんですけど、本音を言えばもう少し新規の方にも見てもらいたいなって思いますよ」
「それならもう大丈夫だよ。あたしがちゃんと解決しといたからね。お兄ちゃんが迷惑かけたったお詫びって事で許してね。じゃあ、あたしはこれで帰るね。お兄ちゃんも行くよ」
紗雪さんはみんなに向かって律儀に頭を下げていたのだけれど、真白先生もそれに合わせるかのように頭を下げて回っていた。明里さん以外にも私達が呼ばれた理由を知っている子もいるのだろうけど、真白先生と紗雪さんが帰り支度をしている事に気付いた子は問題が解決したんだという事を一瞬で理解したようだ。
「そうそう、今回はお代金頂かないので社長さんが戻られたらお伝えください。支配人さんの方が戻るの早ければそちらでも構いませんので」
何事も無かったかのように紗雪さんは真白先生の家に上がり込んだのだが、部屋の惨状を見た紗雪さんは心の底から軽蔑しているようなまなざしを真白先生に向けて送っていた。
「ここはお兄ちゃん住んでいる部屋だからあたしは文句を言う義理も無いんだけどさ、さすがにこの状態のまま出て行くのはどうかと思うよ。ほら、空気も澱んじゃってるし、何よりもその辺に無造作に捨てられているティッシュのゴミが汚すぎる。この状況をママが見たらお兄ちゃんの事を指導しちゃうかもしれないよ」
「今日はちょっと朝からバタついてからね。ほら、楓さんも体調悪そうだったみたいだし」
「お兄ちゃん。お兄ちゃんは支配人さんが体調悪いなんて気付いていなかったでしょ。嘘は良くないと思うな。あと、ヒナミちゃんもこんな部屋で一緒にいたくないってちゃんと言った方が良いよ。窓は開けれないんで仕方ないと思うけど、空気を循環させるなり感染を回すなりはしておこうよ。あたしはお兄ちゃんがこの部屋でとんでもない幽霊を呼び寄せるんじゃないかって心配してるからね」
「さすがにそんな事にはならないと思うけど」
「物の例えだよ。でも、そんなお兄ちゃんに嬉しい報せと悲しい報せが有ります。どっちから聞きたいかな?」
「えっと、その二つなら悲しい方かな」
「じゃーん、お兄ちゃんは明日からヒナミちゃんと二人で離島に行ってもらいます。離島って言っても無人島じゃないんで安心してね。人口は三百人くらいって言ってたけど、島で働いている人のほとんどは船に乗って外に出てるから実際に住んでるのはそんなに多くないかもしれないよ」
「なんで急にそんな事になってるの?」
「なんでって、お兄ちゃんが失敗しちゃったからでしょ。もう一日遅かったら支配人さんが大変なことになってたかもしれないんだよ。今は叔母さん達が支配人さんの事を見ててくれてるから大丈夫だけど、あんまりヒナミちゃんにも迷惑かけちゃダメだからね」
私に触れることで支配人さんの元気を奪っていたという事は知らなかった。そもそも、私に触れることが出来る人がいてもそんな風にはなっていなかった。私に触れていた人達がみんな鵜崎家の人だったという事もやはりあるのだろうが、私に触れるという事はそれだけで大変な事なのだと認識させられた。
「じゃあ、嬉しい報せの方も発表しちゃいます。なんと、お兄ちゃんたちがこれから向かう島には若い女性は一人もいません。若い女性はみんな外に働きに出てるので誰もいません。いるのはおばあちゃんと子供だけです。良かったねお兄ちゃん」
紗雪さんは嬉しそうにそう言うと、私の方を向いてウインクをしてくれていた。体の小さな紗雪さんがそんな事をしてくれるなんて可愛らしすぎて抱きしめたいって思ってしまったけど、私が触れてしまうと大変なことになりそうだったので諦めることにした。
それにしても、次の行き先は離島なのか。離島がどんなところかわからないけど、真白先生と一緒に外に行けるのは素直に嬉しかった。私は幽霊なので手ぶらで大丈夫なのだけれど、今から真白先生と一緒に真白先生の荷物をまとめるのは楽しみであった。
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
お客様が不在の為お荷物を持ち帰りました。
鞠目
ホラー
さくら急便のある営業所に、奇妙な配達員にいたずらをされたという不可思議な問い合わせが届く。
最初はいたずら電話と思われていたこの案件だが、同じような問い合わせが複数人から発生し、どうやらいたずら電話ではないことがわかる。
迷惑行為をしているのは運送会社の人間なのか、それとも部外者か? 詳細がわからない状況の中、消息を断つ者が増えていく……
3月24日完結予定
毎日16時ごろに更新します
お越しをお待ちしております

ill〜怪異特務課事件簿〜
錦木
ホラー
現実の常識が通用しない『怪異』絡みの事件を扱う「怪異特務課」。
ミステリアスで冷徹な捜査官・名護、真面目である事情により怪異と深くつながる体質となってしまった捜査官・戸草。
とある秘密を共有する二人は協力して怪奇事件の捜査を行う。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。

特別。
月芝
ホラー
正義のヒーローに変身して悪と戦う。
一流のスポーツ選手となって活躍する。
ゲームのような異世界で勇者となって魔王と闘う。
すごい発明をして大金持ちになる。
歴史に名を刻むほどの偉人となる。
現実という物語の中で、主人公になる。
自分はみんなとはちがう。
この世に生まれたからには、何かを成し遂げたい。
自分が生きた証が欲しい。
特別な存在になりたい。
特別な存在でありたい。
特別な存在だったらいいな。
そんな願望、誰だって少しは持っているだろう?
でも、もしも本当に自分が世界にとっての「特別」だとしたら……
自宅の地下であるモノを見つけてしまったことを境にして、日常が変貌していく。まるでオセロのように白が黒に、黒が白へと裏返る。
次々と明らかになっていく真実。
特別なボクの心はいつまで耐えられるのだろうか……
伝奇ホラー作品。
赤い部屋
山根利広
ホラー
YouTubeの動画広告の中に、「決してスキップしてはいけない」広告があるという。
真っ赤な背景に「あなたは好きですか?」と書かれたその広告をスキップすると、死ぬと言われている。
東京都内のある高校でも、「赤い部屋」の噂がひとり歩きしていた。
そんな中、2年生の天根凛花は「赤い部屋」の内容が自分のみた夢の内容そっくりであることに気づく。
が、クラスメイトの黒河内莉子は、噂話を一蹴し、誰かの作り話だと言う。
だが、「呪い」は実在した。
「赤い部屋」の手によって残酷な死に方をする犠牲者が、続々現れる。
凛花と莉子は、死の連鎖に歯止めをかけるため、「解決策」を見出そうとする。
そんな中、凛花のスマートフォンにも「あなたは好きですか?」という広告が表示されてしまう。
「赤い部屋」から逃れる方法はあるのか?
誰がこの「呪い」を生み出したのか?
そして彼らはなぜ、呪われたのか?
徐々に明かされる「赤い部屋」の真相。
その先にふたりが見たものは——。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる