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アイドル編
第二十三話 解決に向けてやるべきこと
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真白先生の用意してくれる食事はいつも二人分あるのだけれど、一人分を二つに分けているだけなので実質的には一人分と変わらないのだ。私は幽霊なのでご飯を食べることは出来ないのだけれど、そうやって用意してくれている真白先生の優しさに触れることが出来て満足はしていた。
だが、今日の朝ご飯はいつもより量も多くて明らかに私のために用意されているという感じではなかった。小さな体をベッドで大きく広げて遊び疲れて寝ている子供のようにしか見えない楓さんの分の朝食なのだろう。いつもと違ってパンが用意されているというのは多少面倒になったからなのか、ご飯の用意もしないで一晩中エッチをしていたからなのか聞いたりはしないけれど、そんな状態でもちゃんと起きて朝ご飯を作っている真白先生は立派な人だと改めて感じていた。
朝ご飯を食べて終えた真白先生と楓さんは順番にシャワーを浴びて一緒に家を出て行ったのだけれど、楓さんは着替えるために一度家へ帰り真白先生は喫茶店で時間を潰してから劇場へと向かうことにしたようだ。
二人の間に挨拶程度の会話はあったのだけれど、お互いに積極的に話すような事も無く別れ際も小さく手を振りあうだけであっさりとしたものであった。
『昨日の夜が嘘みたいに静かに過ごしてますけど、賢者タイムってやつですか?』
「そう言うわけでもないんだけどね。何となくお互いに気まずくなっちゃってるってのはあるかもしれないな。俺も楓さんも思いのほか盛り上がっちゃってたし、その反動でちょっと疲れが残ってるのかもしれない」
『ふーん、そう言うもんなんですね。あれだけ激しかったら疲れも残るのも当然ですよね』
私と真白先生も何となく気まずい感じになってしまった。私の聞き方が悪かったのか真白先生の疲れが取れていないからなのか喫茶店から出て劇場に向かう途中も会話が無いままであった。それでも、真白先生は私の事を気遣ってくれているのがわかるくらいに目と目が合ってはいたのだった。
「鵜崎先生おはようございます。支配人さんはちょっと用事で遅くなるみたいなんですが中に入って待っててくださいとのことです。今日でここの問題を解決出来そうですか?」
「そうなるといいんだけどね。もう少し調べたいこともあるからそれが終わってから考えるかも」
「私に協力出来ることがあったら何でも言ってくださいね。私はたぶん楓さんよりも役に立つと思いますから。だって、楓さんはここの支配人だけど何が起きてるか理解出来てなかったんですからね。楓さんよりも明里の方が何でも知ってますからね」
『明里さんって他の人よりは霊感強いみたいですよね。でも、残念なことに私の事は見えていないみたいです。私の事が見えていればよかったなって思うんですけど、もしかして真白先生は楓さんだけじゃなく明里さんともエッチな事をしようとしてませんよね?』
「そんな事ないって」
「え、そんなことあると思いますけど、私の力じゃまだまだ足手まといだって事だったりしますか?」
「ごめんごめん、そう言うことじゃないんだよ。ちょっと考え事をしちゃってたんだ。申し訳ない」
『本当に私の声が聞こえてないみたいですね。霊感はあるみたいですけど、普通の人よりちょっとだけ感度がいいってだけみたいですよ。それにしても、そんなに強く否定するなんて逆に怪しいですよね。楓さんは大人だから別にいいと思いますけど、明里さんはまだ大人じゃないんですからエッチな事したらダメですよ。それに、現役のアイドルなんですからいつもみたいに手を出したら大変なことになっちゃうと思いますよ』
「それならいいですけど。劇場とエントランスにいる怖い幽霊ってどうにかならないですかね。私は怖くて見ないようにしてるだけなんですけど、鵜崎先生みたいに全く相手にしない方が良いんですかね。時々驚かされて泣きそうになっちゃうこともあるんですよ」
「まあ、出来るだけ相手をしない方が良いと思うよ。ほら、向こうも見えていると感じたらちょっかいかけてきたりもするからね。そうなるとしなくてもいい苦労をしちゃうことがあるかもしれないよ」
『劇場にいる幽霊さんは悪い影響ありそうですけど、エントランスにいるこの幽霊さんはそんなに影響ないと思うんですよね。ただここに居るだけで外にいる幽霊を集めているというのは良くない事かもしれないですけど、いてもいなくても正直変らないと思うんですよ。だって、劇場の幽霊さんの方が影響力強いんでここにやってくる幽霊さん達はだれも見向きもしないで劇場に向かっちゃってますからね』
「えっと、劇場の幽霊は危険かもしれないけど、ここに居る幽霊はそこまででもないんじゃないかな。劇場の方を解決してから相手をしてもいいと思うよ。ほら、ずっとここに留まっているというだけで悪いことをしているわけでもないからね。劇場にいる方は明里ちゃん達にも悪い影響与えちゃってるし、そっちは解決策を見付けて完全に対処しないと後々まで影響を残しちゃう感じっぽいよ」
「鵜崎先生って本当に凄いですね。私はここに立っているだけでもちょっと気持ち悪いなって思うんですけど、全然動じてないですもんね。昨日も劇場であの状況今日でも平然としてましたし、やっぱり鵜崎の血ってのは私達一般人とは違うんだなって思いますよ」
『鵜崎先生は私以外の幽霊が見えないから平気なだけですもんね。声が聞こえたとしてもあれだけたくさんの幽霊さんがいたら何言ってるか聞き取ることも出来なかったと思いますし、それで強いって思われて良かったですね。明里さんも真白先生に惚れちゃってるみたいですけど、絶対に手を出したりなんてしたらダメですからね』
そんな事はするわけないだろうとでも言いたげに真白先生に睨まれてしまったけど、さっきみたいに明里ちゃんに誤解されないように言葉には出さないんだね。それにしても、楓さんは大丈夫なのかな。ちょっと心配になっちゃったよ。
だが、今日の朝ご飯はいつもより量も多くて明らかに私のために用意されているという感じではなかった。小さな体をベッドで大きく広げて遊び疲れて寝ている子供のようにしか見えない楓さんの分の朝食なのだろう。いつもと違ってパンが用意されているというのは多少面倒になったからなのか、ご飯の用意もしないで一晩中エッチをしていたからなのか聞いたりはしないけれど、そんな状態でもちゃんと起きて朝ご飯を作っている真白先生は立派な人だと改めて感じていた。
朝ご飯を食べて終えた真白先生と楓さんは順番にシャワーを浴びて一緒に家を出て行ったのだけれど、楓さんは着替えるために一度家へ帰り真白先生は喫茶店で時間を潰してから劇場へと向かうことにしたようだ。
二人の間に挨拶程度の会話はあったのだけれど、お互いに積極的に話すような事も無く別れ際も小さく手を振りあうだけであっさりとしたものであった。
『昨日の夜が嘘みたいに静かに過ごしてますけど、賢者タイムってやつですか?』
「そう言うわけでもないんだけどね。何となくお互いに気まずくなっちゃってるってのはあるかもしれないな。俺も楓さんも思いのほか盛り上がっちゃってたし、その反動でちょっと疲れが残ってるのかもしれない」
『ふーん、そう言うもんなんですね。あれだけ激しかったら疲れも残るのも当然ですよね』
私と真白先生も何となく気まずい感じになってしまった。私の聞き方が悪かったのか真白先生の疲れが取れていないからなのか喫茶店から出て劇場に向かう途中も会話が無いままであった。それでも、真白先生は私の事を気遣ってくれているのがわかるくらいに目と目が合ってはいたのだった。
「鵜崎先生おはようございます。支配人さんはちょっと用事で遅くなるみたいなんですが中に入って待っててくださいとのことです。今日でここの問題を解決出来そうですか?」
「そうなるといいんだけどね。もう少し調べたいこともあるからそれが終わってから考えるかも」
「私に協力出来ることがあったら何でも言ってくださいね。私はたぶん楓さんよりも役に立つと思いますから。だって、楓さんはここの支配人だけど何が起きてるか理解出来てなかったんですからね。楓さんよりも明里の方が何でも知ってますからね」
『明里さんって他の人よりは霊感強いみたいですよね。でも、残念なことに私の事は見えていないみたいです。私の事が見えていればよかったなって思うんですけど、もしかして真白先生は楓さんだけじゃなく明里さんともエッチな事をしようとしてませんよね?』
「そんな事ないって」
「え、そんなことあると思いますけど、私の力じゃまだまだ足手まといだって事だったりしますか?」
「ごめんごめん、そう言うことじゃないんだよ。ちょっと考え事をしちゃってたんだ。申し訳ない」
『本当に私の声が聞こえてないみたいですね。霊感はあるみたいですけど、普通の人よりちょっとだけ感度がいいってだけみたいですよ。それにしても、そんなに強く否定するなんて逆に怪しいですよね。楓さんは大人だから別にいいと思いますけど、明里さんはまだ大人じゃないんですからエッチな事したらダメですよ。それに、現役のアイドルなんですからいつもみたいに手を出したら大変なことになっちゃうと思いますよ』
「それならいいですけど。劇場とエントランスにいる怖い幽霊ってどうにかならないですかね。私は怖くて見ないようにしてるだけなんですけど、鵜崎先生みたいに全く相手にしない方が良いんですかね。時々驚かされて泣きそうになっちゃうこともあるんですよ」
「まあ、出来るだけ相手をしない方が良いと思うよ。ほら、向こうも見えていると感じたらちょっかいかけてきたりもするからね。そうなるとしなくてもいい苦労をしちゃうことがあるかもしれないよ」
『劇場にいる幽霊さんは悪い影響ありそうですけど、エントランスにいるこの幽霊さんはそんなに影響ないと思うんですよね。ただここに居るだけで外にいる幽霊を集めているというのは良くない事かもしれないですけど、いてもいなくても正直変らないと思うんですよ。だって、劇場の幽霊さんの方が影響力強いんでここにやってくる幽霊さん達はだれも見向きもしないで劇場に向かっちゃってますからね』
「えっと、劇場の幽霊は危険かもしれないけど、ここに居る幽霊はそこまででもないんじゃないかな。劇場の方を解決してから相手をしてもいいと思うよ。ほら、ずっとここに留まっているというだけで悪いことをしているわけでもないからね。劇場にいる方は明里ちゃん達にも悪い影響与えちゃってるし、そっちは解決策を見付けて完全に対処しないと後々まで影響を残しちゃう感じっぽいよ」
「鵜崎先生って本当に凄いですね。私はここに立っているだけでもちょっと気持ち悪いなって思うんですけど、全然動じてないですもんね。昨日も劇場であの状況今日でも平然としてましたし、やっぱり鵜崎の血ってのは私達一般人とは違うんだなって思いますよ」
『鵜崎先生は私以外の幽霊が見えないから平気なだけですもんね。声が聞こえたとしてもあれだけたくさんの幽霊さんがいたら何言ってるか聞き取ることも出来なかったと思いますし、それで強いって思われて良かったですね。明里さんも真白先生に惚れちゃってるみたいですけど、絶対に手を出したりなんてしたらダメですからね』
そんな事はするわけないだろうとでも言いたげに真白先生に睨まれてしまったけど、さっきみたいに明里ちゃんに誤解されないように言葉には出さないんだね。それにしても、楓さんは大丈夫なのかな。ちょっと心配になっちゃったよ。
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