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アイドル編
第八話 アイドルの明里ちゃん
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どこかで見たことがあると思っていたのだけれど、真白先生と一緒に何度も見たあの映像で踊っていた人だという事に気付いたのだった。周りにいた幽霊さん達に気を取られていて踊っている人の顔までは覚えることが出来なかったのだけれど、この人だけは他の人達と違って明らかに幽霊さん達を避けているようなそぶりを見せていたのを思い出したのだ。
『真白先生、この人ってたぶん幽霊が見える人ですよ。私の事が見えてるかはわからない気ですけど、踊っている時に他の人と違って幽霊を避けているような感じでしたもん』
「一つ質問なんだけど、君って幽霊とか見えるタイプなのかな?」
「普段はそんなことも無いんですけど、あのステージに立って踊っていると何か近くにいるんじゃないかって思うことはあります。もしかして、今も私の近くに幽霊っていたりするんですか?」
女性は真白先生に対して不信感を抱いているのか、ちょっと疑っているような視線を送っています。まあ、真白先生は私以外の幽霊さんを見ることが出来ないので疑われても仕方ないんですけど、もう少し優しく見守ってくれてもいいのではないかと思うんですよね。あんまり真白先生が悪く思われるのも嬉しくないですし、私は真白先生の目の代わりになって説明してあげる事にしましょう。
『今はちょっと増えて八人くらいに囲まれてますね。手を伸ばせば触れるかもしれないって距離にいますけど、幽霊さん達から何かしようという気配はないですよ。私の事を警戒しているようですが、その女性が真白先生の方に近付くと幽霊さん達は真白先生から離れようとしてるみたいですね。もしかして、真白先生って私以外の幽霊には嫌われてるんですかね』
「何人かはいるけど、君に危害を加えようとしてるわけではないと思うよ。彼らの目的が何なのかは聞いてみないとわからないけど。でも、彼らは私の事を警戒しているみたいだからそれは難しいかもしれないな」
「彼らって事は、男性の幽霊って事ですか?」
『男性だけじゃなく女性も二人いますよ。その女性は彼女を守るみたいな感じで他の幽霊を牽制しているようにも見えますけど』
「男性の幽霊の方が多いけど女性の幽霊もいるね。ハッキリとはわからないんだけど、その女性の幽霊は君を守ろうとしてるみたいだよ」
真白先生の言葉を聞いた女性はなぜか泣き出してしまった。それを見た真白先生も支配人さんも狼狽えてしまっているのだが、女性は大粒の涙をこぼしてはいるのだがどこか嬉しそうに見えてしまった。
「その女性の幽霊って、口の左側にホクロがあったりしますか?」
女性は鼻を啜りながらもそう言うと、私は女の幽霊さんにホクロがあるのか確かめてることにした。幽霊さんは二人とも口元を隠すようなことは無かったのだけれど、そのどちらにも口元にホクロはついていなかった。私が今まで見てきた幽霊にもホクロがある人はいたので幽霊になるとホクロが取れるという事もないのだと思うのだが、この女性が気にしている口元のホクロはどちらの幽霊にも存在しなかったのだ。
『どっちの幽霊さんにもホクロは無いみたいです。関係ないと思いますけど、左耳にホクロがある幽霊さんならいますよ。口元じゃなくて耳たぶですけど』
「口元にはホクロは無いみたいだよ。関係ないと思うけど、左耳たぶにホクロが」
「左耳たぶですか?」
女性は真白先生の言葉を遮ってまで確認してきたのだが、幽霊さんも自分でアピールしてくるくらいなので何か関係があるのかもしれないですね。幽霊さんが見えない真白先生は女性の圧力にたじたじになっているようですが、さっきまでの少し疑っているような目つきではなくなっているのも気になっちゃいます。支配人室に誘った時の支配人さんみたいな目つきになってるんですけど、この女性は大丈夫ですよね?
「楓さんはあの子の事を鵜崎先生に話したんですか?」
「いえ、話してないわよ。私はこの劇場の件にあの子が関わってるなんて思いもしなかったからね」
アイドルの子は支配人さんと真白先生を交互に見ながら考え事しているようだ。真白先生に疑いの目を向けるのはまだ理解出来るのだが、支配人さんの事も疑っているように見えるのはどうしてだろう。
「左耳たぶにホクロがある女性だとしたら、私のファンの方かもしれないです。直接会ったことは無いのですが、ファンレターは何度か頂いたことがあるんです。先々週くらいに頂いたファンレターにはその方が亡くなったという事が記されていたのですが、私に出会ったことで最後の時まで幸せそうな笑顔を見せていたと手紙には書いてあったんです。病室でも私たちの歌を聞いてくれたりYouTubeにあげている動画を見てくれていたと聞きました。直接見に来てもらえなかったのは残念ですが、私たちの活動を喜んでもらえたというのは嬉しく思いました」
「そうなんですよ。私と社長と明里ちゃんの三人でお線香をあげに行ったんです。病気が良くなったら劇場に招待する約束もしていたのですけど、残念なことに亡くなってしまわれたんですよ。直接会ったことは無かったんですが、ファンレターや動画にコメントなんかもたくさんくれていたので私達も活動の励みになっていたんですよ」
「この劇場なら車いすとかでも大丈夫だと思ったんですけど、残念なことに招待することは出来なかったんですよ。幽霊騒動とかもあってちょっと怖いなって思ってた事はあったんですけど、あの子が私の事を守ってくれていると知った今は怖い気持ちなんて無くなりました。これからも頑張っていこうって思いますよ」
「もしかしたら、明里ちゃんが感じていた何かの気配ってあの子だったのかもしれないですね。私には何も感じなかったんですけど、霊感のあるこの中には明里ちゃんの近くに強い念を持った幽霊がいるとか言って怖がらせてたりもしたんですよ。強い念と言っても守る感じの念だったんですね」
ちょっと待ってください。よくよく見てみると、男性の幽霊の方が女性の幽霊の事を抑えようとしてませんか。もう一人の女性はホクロの女性をけしかけているようにも見えてきました。
『真白先生。なんかその女性の話と私が見てる女性の印象が違うんですけど。なんだか、この女性はその人をあっちの世界に連れて行こうとしているように見えます。凄く笑顔なんですけど、何か嫌な感じの笑顔に見えるんです』
『真白先生、この人ってたぶん幽霊が見える人ですよ。私の事が見えてるかはわからない気ですけど、踊っている時に他の人と違って幽霊を避けているような感じでしたもん』
「一つ質問なんだけど、君って幽霊とか見えるタイプなのかな?」
「普段はそんなことも無いんですけど、あのステージに立って踊っていると何か近くにいるんじゃないかって思うことはあります。もしかして、今も私の近くに幽霊っていたりするんですか?」
女性は真白先生に対して不信感を抱いているのか、ちょっと疑っているような視線を送っています。まあ、真白先生は私以外の幽霊さんを見ることが出来ないので疑われても仕方ないんですけど、もう少し優しく見守ってくれてもいいのではないかと思うんですよね。あんまり真白先生が悪く思われるのも嬉しくないですし、私は真白先生の目の代わりになって説明してあげる事にしましょう。
『今はちょっと増えて八人くらいに囲まれてますね。手を伸ばせば触れるかもしれないって距離にいますけど、幽霊さん達から何かしようという気配はないですよ。私の事を警戒しているようですが、その女性が真白先生の方に近付くと幽霊さん達は真白先生から離れようとしてるみたいですね。もしかして、真白先生って私以外の幽霊には嫌われてるんですかね』
「何人かはいるけど、君に危害を加えようとしてるわけではないと思うよ。彼らの目的が何なのかは聞いてみないとわからないけど。でも、彼らは私の事を警戒しているみたいだからそれは難しいかもしれないな」
「彼らって事は、男性の幽霊って事ですか?」
『男性だけじゃなく女性も二人いますよ。その女性は彼女を守るみたいな感じで他の幽霊を牽制しているようにも見えますけど』
「男性の幽霊の方が多いけど女性の幽霊もいるね。ハッキリとはわからないんだけど、その女性の幽霊は君を守ろうとしてるみたいだよ」
真白先生の言葉を聞いた女性はなぜか泣き出してしまった。それを見た真白先生も支配人さんも狼狽えてしまっているのだが、女性は大粒の涙をこぼしてはいるのだがどこか嬉しそうに見えてしまった。
「その女性の幽霊って、口の左側にホクロがあったりしますか?」
女性は鼻を啜りながらもそう言うと、私は女の幽霊さんにホクロがあるのか確かめてることにした。幽霊さんは二人とも口元を隠すようなことは無かったのだけれど、そのどちらにも口元にホクロはついていなかった。私が今まで見てきた幽霊にもホクロがある人はいたので幽霊になるとホクロが取れるという事もないのだと思うのだが、この女性が気にしている口元のホクロはどちらの幽霊にも存在しなかったのだ。
『どっちの幽霊さんにもホクロは無いみたいです。関係ないと思いますけど、左耳にホクロがある幽霊さんならいますよ。口元じゃなくて耳たぶですけど』
「口元にはホクロは無いみたいだよ。関係ないと思うけど、左耳たぶにホクロが」
「左耳たぶですか?」
女性は真白先生の言葉を遮ってまで確認してきたのだが、幽霊さんも自分でアピールしてくるくらいなので何か関係があるのかもしれないですね。幽霊さんが見えない真白先生は女性の圧力にたじたじになっているようですが、さっきまでの少し疑っているような目つきではなくなっているのも気になっちゃいます。支配人室に誘った時の支配人さんみたいな目つきになってるんですけど、この女性は大丈夫ですよね?
「楓さんはあの子の事を鵜崎先生に話したんですか?」
「いえ、話してないわよ。私はこの劇場の件にあの子が関わってるなんて思いもしなかったからね」
アイドルの子は支配人さんと真白先生を交互に見ながら考え事しているようだ。真白先生に疑いの目を向けるのはまだ理解出来るのだが、支配人さんの事も疑っているように見えるのはどうしてだろう。
「左耳たぶにホクロがある女性だとしたら、私のファンの方かもしれないです。直接会ったことは無いのですが、ファンレターは何度か頂いたことがあるんです。先々週くらいに頂いたファンレターにはその方が亡くなったという事が記されていたのですが、私に出会ったことで最後の時まで幸せそうな笑顔を見せていたと手紙には書いてあったんです。病室でも私たちの歌を聞いてくれたりYouTubeにあげている動画を見てくれていたと聞きました。直接見に来てもらえなかったのは残念ですが、私たちの活動を喜んでもらえたというのは嬉しく思いました」
「そうなんですよ。私と社長と明里ちゃんの三人でお線香をあげに行ったんです。病気が良くなったら劇場に招待する約束もしていたのですけど、残念なことに亡くなってしまわれたんですよ。直接会ったことは無かったんですが、ファンレターや動画にコメントなんかもたくさんくれていたので私達も活動の励みになっていたんですよ」
「この劇場なら車いすとかでも大丈夫だと思ったんですけど、残念なことに招待することは出来なかったんですよ。幽霊騒動とかもあってちょっと怖いなって思ってた事はあったんですけど、あの子が私の事を守ってくれていると知った今は怖い気持ちなんて無くなりました。これからも頑張っていこうって思いますよ」
「もしかしたら、明里ちゃんが感じていた何かの気配ってあの子だったのかもしれないですね。私には何も感じなかったんですけど、霊感のあるこの中には明里ちゃんの近くに強い念を持った幽霊がいるとか言って怖がらせてたりもしたんですよ。強い念と言っても守る感じの念だったんですね」
ちょっと待ってください。よくよく見てみると、男性の幽霊の方が女性の幽霊の事を抑えようとしてませんか。もう一人の女性はホクロの女性をけしかけているようにも見えてきました。
『真白先生。なんかその女性の話と私が見てる女性の印象が違うんですけど。なんだか、この女性はその人をあっちの世界に連れて行こうとしているように見えます。凄く笑顔なんですけど、何か嫌な感じの笑顔に見えるんです』
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