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アイドル編
第七話 支配人さんの覚醒の始まり
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そう言えば、霊能力者の精液を飲むと幽霊が見えるようになるって話はどうだったんだろう。その話が本当だったら、私の事も見えているという事になるのでは。もしかしたら、真白先生の先走り汁に含まれている成分で私の声が聞こえてしまったという可能性もあるのではないだろうか。そうだとしたら、支配人さんが口でしていた時に言った私のアドバイスも聞こえていたという事になってしまうのではないだろうか。
「使い終わったタオルはそのままカゴに入れておいて大丈夫ですから。誰が使ったかなんてわからないと思うんで気にしないでください」
「臭いとかついてそうな気もするんだけどいいの?」
「大丈夫ですよ。たぶん誰もそんなの気にしないですから」
『そんなこと気にするんだったらしなければいいのに』
真白先生はどうせまだ私の声を聞かないようにしてるんだろうなと思ったのでいつもより小さめの声で話してみたのだけれど、私の声に反応したのは真白先生ではなく支配人さんだった。
「え、え、ええ。今何か聞こえませんでした?」
「何か聞こえたんですか?」
「ハッキリとは聞き取れなかったんですけど、薄気味の悪い呻き声みたいなのが聞こえてきたんです。アイドルの子たちも時々幽霊の声が聞こえるって言ってたんですよ。もしかして、私も聞こえるようになっちゃったって事なんですか?」
「その可能性はありますね。私も聞こえるようにちょっとだけ感度を戻しておくことにしますね」
真白先生は幽霊を感じることが出来るような状態に戻したのだけれど、見えるようになったはずの私の事は一目見ただけで目を逸らしてしまっていた。私も真白先生のために色々とやってあげたのにそこまで怒らなくてもいいんじゃないかなと思いながら横を見てみると、部隊の近くにいた幽霊さんたちがみんな真白先生に向かって怨念を向けているのだ。
普通の人だったらこれだけの数の幽霊の怨念を浴びてしまうと呼吸すら出来なくなるくらい体が拒否反応を示すと思うのだけれど、そう言ったものに対しても耐性のある真白先生は何食わぬ様子で支配人さんと話をしているようだった。
支配人さんはこれだけの数の幽霊に囲まれても動揺していないところを見ると私の声は聞こえることがあっても他の幽霊の声は聞こえないっぽい感じだと思う。私はこういったタイプの怨念がこもった声を聞かないようにしているのだ。さすがに幽霊の私でもこんなにたくさんの恨みのこもった声を聞いてしまうと普通の状態を維持することが出来なくなってしまいそうに思えたのだ。
「見えなかったものや聞こえなかったものを感じることが出来るようになったのかもしれないですけど、後悔しなければいいですね」
「たぶん後悔すると思います。今まで存在すら感じることが出来なかったのに、さっきは変な声も聞こえてきたんですでに後悔してるかもです。でも、真白先生がいれば大丈夫なんじゃないかなって思うんですよね」
「その期待を裏切らないように頑張りますよ。じゃあ、ステージを見に行ってみましょうか。今まで楓さんが見てきた世界と違う世界が待っているかもしれないですよ」
真白先生が舞台のある部屋の扉を開けるとそこには事務所で見た映像の中にいた女の人が一人で椅子に座っていた。その女の人に見えているのかわからないけれど、すぐ近くに何人かの幽霊もいるのだ。真白先生と支配人さんはそこにいる女の人の事しか見ていないようなので幽霊が見えているのは同じ幽霊である私だけのようだ。
「支配人の隣にいる方は鵜崎さんですよね?」
椅子に座っていた女性は真白先生たちを見るとスッと立ち上がり、軽く頭を下げていた。私はこの女性が踊っているところしか見ていなかったので話している声は聞いたことが無かったのだけれど、近くにいる幽霊も驚くくらいに明るくまっすぐな声で真白先生たちに話しかけていた。
「はい、私が今回こちらの問題を解決するためにやってきた鵜崎真白です」
「私の記憶違いでなければ、霊能力者の鵜崎さんで力のある人は女性しかいないと聞いたことがあるんですが。男性の方もいらしたんですね。男性だとは知らなかったのでちょっと驚いてしまいました」
「良く言われるので気になさらないでください。私もそれなりに役には立つと思うので安心してくださいね。万が一私の手に負えない場合には鵜崎紗雪に頼むことになってますので」
「鵜崎紗雪さんは知ってます。テレビでも見たことがあるんですけど、結構きつい感じの方ですよね。性格はちょっときつく感じてしまったんですけど、霊能力は凄いものがあるなって思って見てました」
「紗雪は口は悪いかもしれないけど他人を思いやれるいい子ですからね。ちょっとまだ反抗期が抜けてないだけだと思えば可愛く見えてくるかもしれないですよ。やってることはちょっと過激ですけど」
真白先生の妹である紗雪さんは鵜崎美晴以来の天才と言われるほどの逸材なのだ。真白先生の後について鵜崎本家へ行った時の話なのだが、気配を殺したまま私の後ろまでやってきて一瞬で成仏させられそうになってしまったことがあった。
何の連絡も無しに鵜崎本家の敷居を幽霊が跨いでしまうと強制的に成仏させられることになるのは私も分かってはいたのだが、幽霊である私が近付いてきた事に全く気付くことも無くやられそうになったのは本当に驚いてしまった。心臓は無いけれど、胸の鼓動が早くなったような気がしていた。
その時は真白先生のお母さんに助けてもらったのだ。鵜崎家の女性は成仏だけではなくあの世から幽霊を呼び戻すことも出来るというのを初めて知ったのだが、知った理由が実際に体験してしまった事だというのは嘘みたいな本当の話なのだ。
「反抗期って、紗雪さんって私とそんなに変わらないような気がするんですけど」
「君が何歳かは知らないけど、そんなに離れてはいないと思うな。でも、紗雪に頼るような事態にはならないと思うよ」
「そんな事言いきって大丈夫なんですかね。私はこうしているだけでも不安で仕方ないのですが」
もしかしたら、この女性は見えるタイプの人なのかもしれない。ハッキリと見えているのかはわからないけれど、時々私の方を見ているのだから見えるか感じてはいると思う。
そんな彼女の周りにいる幽霊にも気付いているのかもしれないけど、あまりにも近くにいすぎるので刺激をしないようにしているのかもしれないですね。
『真白先生。あの女性の近くにいる幽霊さん達は敵意とかは無いみたいです。真白先生に対してはちょっと怒ってるみたいですけど、アイドルの人達には危害を加えないって言ってますよ』
私の声はきっと真白先生しかハッキリと聞き取れないんだろうな。支配人さんはまた私の声が聞こえて驚いているみたいだし、幽霊に囲まれている女性は私と真白先生の事を交互に見ていた。たぶん、私の言った言葉は理解していないと思うんだけど、感が良さそうな感じに見えちゃうんだよな。
「使い終わったタオルはそのままカゴに入れておいて大丈夫ですから。誰が使ったかなんてわからないと思うんで気にしないでください」
「臭いとかついてそうな気もするんだけどいいの?」
「大丈夫ですよ。たぶん誰もそんなの気にしないですから」
『そんなこと気にするんだったらしなければいいのに』
真白先生はどうせまだ私の声を聞かないようにしてるんだろうなと思ったのでいつもより小さめの声で話してみたのだけれど、私の声に反応したのは真白先生ではなく支配人さんだった。
「え、え、ええ。今何か聞こえませんでした?」
「何か聞こえたんですか?」
「ハッキリとは聞き取れなかったんですけど、薄気味の悪い呻き声みたいなのが聞こえてきたんです。アイドルの子たちも時々幽霊の声が聞こえるって言ってたんですよ。もしかして、私も聞こえるようになっちゃったって事なんですか?」
「その可能性はありますね。私も聞こえるようにちょっとだけ感度を戻しておくことにしますね」
真白先生は幽霊を感じることが出来るような状態に戻したのだけれど、見えるようになったはずの私の事は一目見ただけで目を逸らしてしまっていた。私も真白先生のために色々とやってあげたのにそこまで怒らなくてもいいんじゃないかなと思いながら横を見てみると、部隊の近くにいた幽霊さんたちがみんな真白先生に向かって怨念を向けているのだ。
普通の人だったらこれだけの数の幽霊の怨念を浴びてしまうと呼吸すら出来なくなるくらい体が拒否反応を示すと思うのだけれど、そう言ったものに対しても耐性のある真白先生は何食わぬ様子で支配人さんと話をしているようだった。
支配人さんはこれだけの数の幽霊に囲まれても動揺していないところを見ると私の声は聞こえることがあっても他の幽霊の声は聞こえないっぽい感じだと思う。私はこういったタイプの怨念がこもった声を聞かないようにしているのだ。さすがに幽霊の私でもこんなにたくさんの恨みのこもった声を聞いてしまうと普通の状態を維持することが出来なくなってしまいそうに思えたのだ。
「見えなかったものや聞こえなかったものを感じることが出来るようになったのかもしれないですけど、後悔しなければいいですね」
「たぶん後悔すると思います。今まで存在すら感じることが出来なかったのに、さっきは変な声も聞こえてきたんですでに後悔してるかもです。でも、真白先生がいれば大丈夫なんじゃないかなって思うんですよね」
「その期待を裏切らないように頑張りますよ。じゃあ、ステージを見に行ってみましょうか。今まで楓さんが見てきた世界と違う世界が待っているかもしれないですよ」
真白先生が舞台のある部屋の扉を開けるとそこには事務所で見た映像の中にいた女の人が一人で椅子に座っていた。その女の人に見えているのかわからないけれど、すぐ近くに何人かの幽霊もいるのだ。真白先生と支配人さんはそこにいる女の人の事しか見ていないようなので幽霊が見えているのは同じ幽霊である私だけのようだ。
「支配人の隣にいる方は鵜崎さんですよね?」
椅子に座っていた女性は真白先生たちを見るとスッと立ち上がり、軽く頭を下げていた。私はこの女性が踊っているところしか見ていなかったので話している声は聞いたことが無かったのだけれど、近くにいる幽霊も驚くくらいに明るくまっすぐな声で真白先生たちに話しかけていた。
「はい、私が今回こちらの問題を解決するためにやってきた鵜崎真白です」
「私の記憶違いでなければ、霊能力者の鵜崎さんで力のある人は女性しかいないと聞いたことがあるんですが。男性の方もいらしたんですね。男性だとは知らなかったのでちょっと驚いてしまいました」
「良く言われるので気になさらないでください。私もそれなりに役には立つと思うので安心してくださいね。万が一私の手に負えない場合には鵜崎紗雪に頼むことになってますので」
「鵜崎紗雪さんは知ってます。テレビでも見たことがあるんですけど、結構きつい感じの方ですよね。性格はちょっときつく感じてしまったんですけど、霊能力は凄いものがあるなって思って見てました」
「紗雪は口は悪いかもしれないけど他人を思いやれるいい子ですからね。ちょっとまだ反抗期が抜けてないだけだと思えば可愛く見えてくるかもしれないですよ。やってることはちょっと過激ですけど」
真白先生の妹である紗雪さんは鵜崎美晴以来の天才と言われるほどの逸材なのだ。真白先生の後について鵜崎本家へ行った時の話なのだが、気配を殺したまま私の後ろまでやってきて一瞬で成仏させられそうになってしまったことがあった。
何の連絡も無しに鵜崎本家の敷居を幽霊が跨いでしまうと強制的に成仏させられることになるのは私も分かってはいたのだが、幽霊である私が近付いてきた事に全く気付くことも無くやられそうになったのは本当に驚いてしまった。心臓は無いけれど、胸の鼓動が早くなったような気がしていた。
その時は真白先生のお母さんに助けてもらったのだ。鵜崎家の女性は成仏だけではなくあの世から幽霊を呼び戻すことも出来るというのを初めて知ったのだが、知った理由が実際に体験してしまった事だというのは嘘みたいな本当の話なのだ。
「反抗期って、紗雪さんって私とそんなに変わらないような気がするんですけど」
「君が何歳かは知らないけど、そんなに離れてはいないと思うな。でも、紗雪に頼るような事態にはならないと思うよ」
「そんな事言いきって大丈夫なんですかね。私はこうしているだけでも不安で仕方ないのですが」
もしかしたら、この女性は見えるタイプの人なのかもしれない。ハッキリと見えているのかはわからないけれど、時々私の方を見ているのだから見えるか感じてはいると思う。
そんな彼女の周りにいる幽霊にも気付いているのかもしれないけど、あまりにも近くにいすぎるので刺激をしないようにしているのかもしれないですね。
『真白先生。あの女性の近くにいる幽霊さん達は敵意とかは無いみたいです。真白先生に対してはちょっと怒ってるみたいですけど、アイドルの人達には危害を加えないって言ってますよ』
私の声はきっと真白先生しかハッキリと聞き取れないんだろうな。支配人さんはまた私の声が聞こえて驚いているみたいだし、幽霊に囲まれている女性は私と真白先生の事を交互に見ていた。たぶん、私の言った言葉は理解していないと思うんだけど、感が良さそうな感じに見えちゃうんだよな。
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