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勇者の試練
勇者の試練 第二十五話
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真勇者評議会は勇者としてのあり方を重要視しているという事なのだが、詳しく話を聞いてみると全国勇者連合とも大勇者連盟ともそこまで違う事を評価の対象にしているわけではないみたいだ。
あくまでも、自分たちが納得する理由が欲しいというだけなのかもしれない。
実際にその話を聞いていた柘榴ちゃんがそう思ったのだから、間違いないことだろう。
「他の人達も私と同じ考えだと思うけど、みんな違う団体を作ることが目的で勇者がどうとかはどうでもいいことなのだと思うわ。魔王を倒せる人が勇者だっていう大前提があることでそれさえ守っていれば他は自分たちの都合でどうにでも出来るという事なんでしょうね。お兄ちゃんが現れなければこんな面倒なことにならなかったのにって思ってる感じが伝わってきたのも面白かったわよ。勇者が現れなければどうとでも出来ていたことも、お兄ちゃんがシュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世に勇者として認められちゃったことが各団体を面倒ごとに巻き込んでしまったという事なのかもしれないわね」
「俺は全然そんなつもりなんて無かったんだけどな。そもそも、俺が魔王にとどめを刺せるって言うのも意味が分からないんだけど」
「意味なんてどうでもいいのよ。お兄ちゃんが魔王を倒せることに理屈なんて必要ないんだって。大切なのは、魔王を倒したという結果だけなの。どのような過程を踏まえてその結果に至ったのかを考えるのが各団体の役割になっているという事なのよね。シュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世はお兄ちゃんの事を無条件で勇者と認めたのも、他の団体に縛りを付けないようにするための物だったのかもしれないわ」
あの王様がそこまで考えていたのかは疑問だが、結果的にはそうなってしまったのだと思う。もしかしたら、イザーちゃんはそこまで見越してあの王様を連れてきたのかもしれないけど、そうだとしたらとんでもない策士だという事になってしまうのではないだろうか。
「何よりも大切なのは、お兄ちゃんが魔王を倒したという事実を世界中の人が知ることだと思うのよ。この試練なんて何の意味もないとは言わないけど、試練を乗り越えたという結果はお兄ちゃんが勇者として相応しいという証明にもなると思うのよね。勇者の試練を全て乗り越えたってのは誰が聞いてもわかりやすいと思うのよね」
「確かに、そういった意味ではこの試練を乗り越えることは重要だと思うんだけど、俺がやったことなんてみんなの後をついて行ったり途中の休憩でコーヒーを入れたりしたくらいなんだけどね」
「お兄ちゃんが生きていれば道中の事なんてどうでもいいんだと思うよ。試練の中身は非公開になってるし、最後に待ち受けている野城圭窮だってこの試練から離れることが出来ないんだから誰もお兄ちゃんが何もしてないなんてわからないんだよ」
「ちょっと待ってもらっていいかな。最後に待ち受けてる野城君って野城圭重ではなく野城圭窮って事なの?」
「そうよ。野城圭重ではなく野城圭窮よ」
俺が今までの試練で見た野城君は俺が知っている野城君ではないという事なのか。
野城君が双子だったなんて知らなかったが、試練のボスとしてこの世界に召喚されているというのは少しだけ気の毒に思ってしまった。
という事は、この世界をくまなく探せば野城圭重もいるという事なんだろうな。
「たぶんだけど、お兄ちゃんはこの世界のどこかに野城圭重がいると思ってるんだろうけど、その可能性は全く無いわ。というよりも、野城圭窮がいるという時点で野城圭重の存在は無かったことになってるのよ。多分、彼と多く触れ合った私とお兄ちゃんくらいしか野城圭重の事を覚えていないと思うわよ。イザーちゃんも知っているかもしれないけど、野城君の事を変えたのはイザーちゃんだから何も答えてくれないと思うけどね」
「なんで柘榴ちゃんはそんな事を知ってるの?」
「さあ、なんでかしらね。ただ、私が今話していることは真実とは限らないんじゃないかしら。私はこの事をなぜ知っているのか理由はわかっていないし、どこで知ったのかも覚えていないのよ。もしかしたら、私がこの世界に転生させられた時にイザーちゃんに植え付けられた記憶という可能性もあるのよね。だから、お兄ちゃんは私の事も信じない方がいいんじゃないかな。ただ、私は自分の記憶に対して何一つ嘘はついていないからね。そこだけは信じてほしいな」
柘榴ちゃんが言っていることが本当か嘘なのか調べる方法なんてないとは思うけど、俺は今まで話したことに対して柘榴ちゃんは嘘を言っていないと思う。嘘をつくとすれば、野城君が違う人だなんてわざわざ説明する必要もないと思う。
ただ、俺が今まで見た野城君が本当に俺の知っている野城君とは別人だったとしても、見分けられる自信はない。もしかしたら、さっきまで一緒にいた妹の瑠璃も俺の知っている瑠璃ではなく別の瑠璃という可能性だってあるのではないだろうか。
俺が知っている瑠璃は一緒に寝るにしても布団は別々にしていたと思うし、どんな時でもあそこまで近付いてくることなんて無かったと思う。
もしかしたら、俺とイザーちゃん以外は全くの別人が転生しているという可能性もあるのではないだろうか。
俺はその可能性を肯定も否定も出来るだけの判断材料を持ち合わせていないのだ。
あくまでも、自分たちが納得する理由が欲しいというだけなのかもしれない。
実際にその話を聞いていた柘榴ちゃんがそう思ったのだから、間違いないことだろう。
「他の人達も私と同じ考えだと思うけど、みんな違う団体を作ることが目的で勇者がどうとかはどうでもいいことなのだと思うわ。魔王を倒せる人が勇者だっていう大前提があることでそれさえ守っていれば他は自分たちの都合でどうにでも出来るという事なんでしょうね。お兄ちゃんが現れなければこんな面倒なことにならなかったのにって思ってる感じが伝わってきたのも面白かったわよ。勇者が現れなければどうとでも出来ていたことも、お兄ちゃんがシュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世に勇者として認められちゃったことが各団体を面倒ごとに巻き込んでしまったという事なのかもしれないわね」
「俺は全然そんなつもりなんて無かったんだけどな。そもそも、俺が魔王にとどめを刺せるって言うのも意味が分からないんだけど」
「意味なんてどうでもいいのよ。お兄ちゃんが魔王を倒せることに理屈なんて必要ないんだって。大切なのは、魔王を倒したという結果だけなの。どのような過程を踏まえてその結果に至ったのかを考えるのが各団体の役割になっているという事なのよね。シュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世はお兄ちゃんの事を無条件で勇者と認めたのも、他の団体に縛りを付けないようにするための物だったのかもしれないわ」
あの王様がそこまで考えていたのかは疑問だが、結果的にはそうなってしまったのだと思う。もしかしたら、イザーちゃんはそこまで見越してあの王様を連れてきたのかもしれないけど、そうだとしたらとんでもない策士だという事になってしまうのではないだろうか。
「何よりも大切なのは、お兄ちゃんが魔王を倒したという事実を世界中の人が知ることだと思うのよ。この試練なんて何の意味もないとは言わないけど、試練を乗り越えたという結果はお兄ちゃんが勇者として相応しいという証明にもなると思うのよね。勇者の試練を全て乗り越えたってのは誰が聞いてもわかりやすいと思うのよね」
「確かに、そういった意味ではこの試練を乗り越えることは重要だと思うんだけど、俺がやったことなんてみんなの後をついて行ったり途中の休憩でコーヒーを入れたりしたくらいなんだけどね」
「お兄ちゃんが生きていれば道中の事なんてどうでもいいんだと思うよ。試練の中身は非公開になってるし、最後に待ち受けている野城圭窮だってこの試練から離れることが出来ないんだから誰もお兄ちゃんが何もしてないなんてわからないんだよ」
「ちょっと待ってもらっていいかな。最後に待ち受けてる野城君って野城圭重ではなく野城圭窮って事なの?」
「そうよ。野城圭重ではなく野城圭窮よ」
俺が今までの試練で見た野城君は俺が知っている野城君ではないという事なのか。
野城君が双子だったなんて知らなかったが、試練のボスとしてこの世界に召喚されているというのは少しだけ気の毒に思ってしまった。
という事は、この世界をくまなく探せば野城圭重もいるという事なんだろうな。
「たぶんだけど、お兄ちゃんはこの世界のどこかに野城圭重がいると思ってるんだろうけど、その可能性は全く無いわ。というよりも、野城圭窮がいるという時点で野城圭重の存在は無かったことになってるのよ。多分、彼と多く触れ合った私とお兄ちゃんくらいしか野城圭重の事を覚えていないと思うわよ。イザーちゃんも知っているかもしれないけど、野城君の事を変えたのはイザーちゃんだから何も答えてくれないと思うけどね」
「なんで柘榴ちゃんはそんな事を知ってるの?」
「さあ、なんでかしらね。ただ、私が今話していることは真実とは限らないんじゃないかしら。私はこの事をなぜ知っているのか理由はわかっていないし、どこで知ったのかも覚えていないのよ。もしかしたら、私がこの世界に転生させられた時にイザーちゃんに植え付けられた記憶という可能性もあるのよね。だから、お兄ちゃんは私の事も信じない方がいいんじゃないかな。ただ、私は自分の記憶に対して何一つ嘘はついていないからね。そこだけは信じてほしいな」
柘榴ちゃんが言っていることが本当か嘘なのか調べる方法なんてないとは思うけど、俺は今まで話したことに対して柘榴ちゃんは嘘を言っていないと思う。嘘をつくとすれば、野城君が違う人だなんてわざわざ説明する必要もないと思う。
ただ、俺が今まで見た野城君が本当に俺の知っている野城君とは別人だったとしても、見分けられる自信はない。もしかしたら、さっきまで一緒にいた妹の瑠璃も俺の知っている瑠璃ではなく別の瑠璃という可能性だってあるのではないだろうか。
俺が知っている瑠璃は一緒に寝るにしても布団は別々にしていたと思うし、どんな時でもあそこまで近付いてくることなんて無かったと思う。
もしかしたら、俺とイザーちゃん以外は全くの別人が転生しているという可能性もあるのではないだろうか。
俺はその可能性を肯定も否定も出来るだけの判断材料を持ち合わせていないのだ。
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