97 / 111
勇者の試練
勇者の試練 第十九話
しおりを挟む
大勇者連盟の試練を何とも言えない感じでクリアした俺は瑠璃と一緒に戻ってきたのだが、一緒に試練を受ける予定のうまなちゃんも柘榴ちゃんもまだ戻ってきていないようだった。二人がいないのでは次の試練を受けることも出来ないので休日扱いになったのだが、俺はただ散歩をしてきたような状態なので疲労などは特に溜まってもいなかった。
瑠璃も自分は何もしていないという事で疲れはないようなのだが、何かあっては困るのでゆっくり休んでもらうことにしたのだ。
「休むのは良いんだけど、部屋に一人でいるのはちょっと寂しいかなって思うんだよね。兄貴も休みみたいだし、せっかくだし兄妹で何か美味しいものでも食べに行こうよう」
「仲の良い兄妹で羨ましいですね。それでしたら、昔ここで働いていた方が経営しているレストランがあるのでそちらに行ってみてはいかがでしょう。私の紹介状を持っていけばそれなりにサービスもしてもらえると思いますよ」
俺たちの近くをたまたま通りかかったポンピーノ姫が紹介してくれたレストランに行くことにしたのだけれど、こんな偶然もあるものだなと思ってしまった。
ご飯を食べに行くには少し時間もあるようなので、ここはいったん自分の部屋に戻って準備をしてから待ち合わせをしようという事になった。
俺としては特に準備などする必要もないのだけれど、瑠璃はファミレスもファストフード店も好きなので軽くテンションが上がっているのかもしれないな。大人ぶってはいるけれど、レストランに行けるという事でテンションが上がっているのはまだまだ子供な証拠かもしれないな。
待ち合わせ時間よりも少し早めにやってきた俺よりも瑠璃は先に来ていた。
いつもとそれほど変わらない服装ではあるが、髪はいつもと違って後頭部でお団子にしていた。こちらの方が戦う時に邪魔にならなそうだなと思ったけれど、瑠璃も俺と一緒で自分自身が戦うわけではないのでどんな髪型でも戦闘には関係ないような気もしていた。
「お、待ち合わせよりも随分と早いね。ずっと引きこもりだったから兄貴は待ち合わせにちゃんと来るか不安だったけど、とりあえずは合格だね」
「合格って、待ち合わせに遅れたりなんてしないって。それよりも、瑠璃は俺よりも早く来てたみたいだけど何分くらい待ってたんだ?」
「うーん、ちょっとだけ待ってたくらいかな。お部屋にいると何か口にしちゃいそうだったし、それだったら外に出て待ってた方が余計なものを口にしなくて済むんじゃないかなって思ったんだよ。だから、そんなに待ってないと思うよ。部屋を出たのが二時間くらい前だから、大体二時間くらいしか待ってないと思うし」
「そんなに早くから待ってるんだったら一言俺に言いに来いって。二時間も待ってるの辛くなかった?」
「別に辛くないよ。兄貴と二人でご飯を食べに行くのなんてあの時以来だからね。そう考えるとちょっとだけワクワクしてたよ」
そんな会話をしていると本来の待ち合わせ時間になっていたので俺たちはポンピーノ姫が教えてくれたレストランに向かうことにした。
お城から出て少し歩いた場所にある路地を抜けた先にある公園の東側にある出口を抜けて道なりに進んで行くと川にぶつかるので、川をそのままを右手に見ながら進むと見えてくるという事だった。地図を見るとお城から出てすぐに東側の道を使った方が速そうなのだが、そこを通らないといけない理由でもあるんだろうな。深く考えないようにしよう。
「兄貴はさ、何か食べたいものとかあったりする?」
「どうだろう。こっちの世界では無理だと思うけど、出汁がきいてる蕎麦とか食べたいかもな。うどんでもいいとは思うけど、どちらかと言えば蕎麦がいいかな。瑠璃は何か食べたいものあるのか?」
「私も和食が食べたくなってきてるかも。普段はあんまり和食を食べたいなって思う事も無かったんだけど、こっちに来てここの料理ばっかりだから飽きちゃったってのもあるのかもしれないね。それに、この世界の料理ってあんまり味がしないような気がするんだよね。戦闘状態だから仕方ないのかもしれないけど、もう少し味の濃いものを食べたいなって思うんだよ。味が濃いって言っても、出汁がきいてる感じのやつね」
レストランという事なので和食は期待できないとは思うが、それ以上に美味しいものを食べることが出来るだろう。ポンピーノ姫が美味しいと太鼓判を押してくれているのだから信用してもいいだろう。
「この世界に来て今みたいにゆっくりできるのって初めてかも。兄貴はいつもゆっくりしてるみたいだったけどね」
「そんなことないって、俺も俺なりに頑張ってはいるんだよ」
「それは知ってるけど、兄貴はみんなに助けられてばっかりだと思うよ。みんなの強さを考えると仕方ないとは思うけどね。それに、私達には無理で兄貴にしかできないこともあるもんね」
「魔王にとどめを刺すことが出来るってやつだろ。なんで俺だけが魔王にとどめを刺すことが出来るんだろうな。瑠璃は何か知ってる?」
「全然知らないかも。私だって兄貴と一緒で何も知らないんだからね。イザーさんなら何か知ってるような気もするけど、それが本当の事か確かめることも出来ないもんね」
俺と一緒で瑠璃もこの世界の事をよくわかっていないんだな。もしかしたら、うまなちゃんも愛華ちゃんも何も知らないのかもしれない。
イザーちゃんだけがこの世界の事を知ってるという事になるのかもしれない。
瑠璃は少し小走りをして俺の斜め前に出ると、そのまま振り返って俺に向かって手を伸ばしてきた。
「せっかくだし昔みたいに手を繋いでよ。今日くらいは良いよね?」
瑠璃も自分は何もしていないという事で疲れはないようなのだが、何かあっては困るのでゆっくり休んでもらうことにしたのだ。
「休むのは良いんだけど、部屋に一人でいるのはちょっと寂しいかなって思うんだよね。兄貴も休みみたいだし、せっかくだし兄妹で何か美味しいものでも食べに行こうよう」
「仲の良い兄妹で羨ましいですね。それでしたら、昔ここで働いていた方が経営しているレストランがあるのでそちらに行ってみてはいかがでしょう。私の紹介状を持っていけばそれなりにサービスもしてもらえると思いますよ」
俺たちの近くをたまたま通りかかったポンピーノ姫が紹介してくれたレストランに行くことにしたのだけれど、こんな偶然もあるものだなと思ってしまった。
ご飯を食べに行くには少し時間もあるようなので、ここはいったん自分の部屋に戻って準備をしてから待ち合わせをしようという事になった。
俺としては特に準備などする必要もないのだけれど、瑠璃はファミレスもファストフード店も好きなので軽くテンションが上がっているのかもしれないな。大人ぶってはいるけれど、レストランに行けるという事でテンションが上がっているのはまだまだ子供な証拠かもしれないな。
待ち合わせ時間よりも少し早めにやってきた俺よりも瑠璃は先に来ていた。
いつもとそれほど変わらない服装ではあるが、髪はいつもと違って後頭部でお団子にしていた。こちらの方が戦う時に邪魔にならなそうだなと思ったけれど、瑠璃も俺と一緒で自分自身が戦うわけではないのでどんな髪型でも戦闘には関係ないような気もしていた。
「お、待ち合わせよりも随分と早いね。ずっと引きこもりだったから兄貴は待ち合わせにちゃんと来るか不安だったけど、とりあえずは合格だね」
「合格って、待ち合わせに遅れたりなんてしないって。それよりも、瑠璃は俺よりも早く来てたみたいだけど何分くらい待ってたんだ?」
「うーん、ちょっとだけ待ってたくらいかな。お部屋にいると何か口にしちゃいそうだったし、それだったら外に出て待ってた方が余計なものを口にしなくて済むんじゃないかなって思ったんだよ。だから、そんなに待ってないと思うよ。部屋を出たのが二時間くらい前だから、大体二時間くらいしか待ってないと思うし」
「そんなに早くから待ってるんだったら一言俺に言いに来いって。二時間も待ってるの辛くなかった?」
「別に辛くないよ。兄貴と二人でご飯を食べに行くのなんてあの時以来だからね。そう考えるとちょっとだけワクワクしてたよ」
そんな会話をしていると本来の待ち合わせ時間になっていたので俺たちはポンピーノ姫が教えてくれたレストランに向かうことにした。
お城から出て少し歩いた場所にある路地を抜けた先にある公園の東側にある出口を抜けて道なりに進んで行くと川にぶつかるので、川をそのままを右手に見ながら進むと見えてくるという事だった。地図を見るとお城から出てすぐに東側の道を使った方が速そうなのだが、そこを通らないといけない理由でもあるんだろうな。深く考えないようにしよう。
「兄貴はさ、何か食べたいものとかあったりする?」
「どうだろう。こっちの世界では無理だと思うけど、出汁がきいてる蕎麦とか食べたいかもな。うどんでもいいとは思うけど、どちらかと言えば蕎麦がいいかな。瑠璃は何か食べたいものあるのか?」
「私も和食が食べたくなってきてるかも。普段はあんまり和食を食べたいなって思う事も無かったんだけど、こっちに来てここの料理ばっかりだから飽きちゃったってのもあるのかもしれないね。それに、この世界の料理ってあんまり味がしないような気がするんだよね。戦闘状態だから仕方ないのかもしれないけど、もう少し味の濃いものを食べたいなって思うんだよ。味が濃いって言っても、出汁がきいてる感じのやつね」
レストランという事なので和食は期待できないとは思うが、それ以上に美味しいものを食べることが出来るだろう。ポンピーノ姫が美味しいと太鼓判を押してくれているのだから信用してもいいだろう。
「この世界に来て今みたいにゆっくりできるのって初めてかも。兄貴はいつもゆっくりしてるみたいだったけどね」
「そんなことないって、俺も俺なりに頑張ってはいるんだよ」
「それは知ってるけど、兄貴はみんなに助けられてばっかりだと思うよ。みんなの強さを考えると仕方ないとは思うけどね。それに、私達には無理で兄貴にしかできないこともあるもんね」
「魔王にとどめを刺すことが出来るってやつだろ。なんで俺だけが魔王にとどめを刺すことが出来るんだろうな。瑠璃は何か知ってる?」
「全然知らないかも。私だって兄貴と一緒で何も知らないんだからね。イザーさんなら何か知ってるような気もするけど、それが本当の事か確かめることも出来ないもんね」
俺と一緒で瑠璃もこの世界の事をよくわかっていないんだな。もしかしたら、うまなちゃんも愛華ちゃんも何も知らないのかもしれない。
イザーちゃんだけがこの世界の事を知ってるという事になるのかもしれない。
瑠璃は少し小走りをして俺の斜め前に出ると、そのまま振り返って俺に向かって手を伸ばしてきた。
「せっかくだし昔みたいに手を繋いでよ。今日くらいは良いよね?」
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
男女比1:10。男子の立場が弱い学園で美少女たちをわからせるためにヒロインと手を組んで攻略を始めてみたんだけど…チョロいんなのはどうして?
悠
ファンタジー
貞操逆転世界に転生してきた日浦大晴(ひうらたいせい)の通う学園には"独特の校風"がある。
それは——男子は女子より立場が弱い
学園で一番立場が上なのは女子5人のメンバーからなる生徒会。
拾ってくれた九空鹿波(くそらかなみ)と手を組み、まずは生徒会を攻略しようとするが……。
「既に攻略済みの女の子をさらに落とすなんて……面白いじゃない」
協力者の鹿波だけは知っている。
大晴が既に女の子を"攻略済み"だと。
勝利200%ラブコメ!?
既に攻略済みの美少女を本気で''分からせ"たら……さて、どうなるんでしょうねぇ?
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
体育座りでスカートを汚してしまったあの日々
yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる