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勇者の試練
勇者の試練 第十九話
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大勇者連盟の試練を何とも言えない感じでクリアした俺は瑠璃と一緒に戻ってきたのだが、一緒に試練を受ける予定のうまなちゃんも柘榴ちゃんもまだ戻ってきていないようだった。二人がいないのでは次の試練を受けることも出来ないので休日扱いになったのだが、俺はただ散歩をしてきたような状態なので疲労などは特に溜まってもいなかった。
瑠璃も自分は何もしていないという事で疲れはないようなのだが、何かあっては困るのでゆっくり休んでもらうことにしたのだ。
「休むのは良いんだけど、部屋に一人でいるのはちょっと寂しいかなって思うんだよね。兄貴も休みみたいだし、せっかくだし兄妹で何か美味しいものでも食べに行こうよう」
「仲の良い兄妹で羨ましいですね。それでしたら、昔ここで働いていた方が経営しているレストランがあるのでそちらに行ってみてはいかがでしょう。私の紹介状を持っていけばそれなりにサービスもしてもらえると思いますよ」
俺たちの近くをたまたま通りかかったポンピーノ姫が紹介してくれたレストランに行くことにしたのだけれど、こんな偶然もあるものだなと思ってしまった。
ご飯を食べに行くには少し時間もあるようなので、ここはいったん自分の部屋に戻って準備をしてから待ち合わせをしようという事になった。
俺としては特に準備などする必要もないのだけれど、瑠璃はファミレスもファストフード店も好きなので軽くテンションが上がっているのかもしれないな。大人ぶってはいるけれど、レストランに行けるという事でテンションが上がっているのはまだまだ子供な証拠かもしれないな。
待ち合わせ時間よりも少し早めにやってきた俺よりも瑠璃は先に来ていた。
いつもとそれほど変わらない服装ではあるが、髪はいつもと違って後頭部でお団子にしていた。こちらの方が戦う時に邪魔にならなそうだなと思ったけれど、瑠璃も俺と一緒で自分自身が戦うわけではないのでどんな髪型でも戦闘には関係ないような気もしていた。
「お、待ち合わせよりも随分と早いね。ずっと引きこもりだったから兄貴は待ち合わせにちゃんと来るか不安だったけど、とりあえずは合格だね」
「合格って、待ち合わせに遅れたりなんてしないって。それよりも、瑠璃は俺よりも早く来てたみたいだけど何分くらい待ってたんだ?」
「うーん、ちょっとだけ待ってたくらいかな。お部屋にいると何か口にしちゃいそうだったし、それだったら外に出て待ってた方が余計なものを口にしなくて済むんじゃないかなって思ったんだよ。だから、そんなに待ってないと思うよ。部屋を出たのが二時間くらい前だから、大体二時間くらいしか待ってないと思うし」
「そんなに早くから待ってるんだったら一言俺に言いに来いって。二時間も待ってるの辛くなかった?」
「別に辛くないよ。兄貴と二人でご飯を食べに行くのなんてあの時以来だからね。そう考えるとちょっとだけワクワクしてたよ」
そんな会話をしていると本来の待ち合わせ時間になっていたので俺たちはポンピーノ姫が教えてくれたレストランに向かうことにした。
お城から出て少し歩いた場所にある路地を抜けた先にある公園の東側にある出口を抜けて道なりに進んで行くと川にぶつかるので、川をそのままを右手に見ながら進むと見えてくるという事だった。地図を見るとお城から出てすぐに東側の道を使った方が速そうなのだが、そこを通らないといけない理由でもあるんだろうな。深く考えないようにしよう。
「兄貴はさ、何か食べたいものとかあったりする?」
「どうだろう。こっちの世界では無理だと思うけど、出汁がきいてる蕎麦とか食べたいかもな。うどんでもいいとは思うけど、どちらかと言えば蕎麦がいいかな。瑠璃は何か食べたいものあるのか?」
「私も和食が食べたくなってきてるかも。普段はあんまり和食を食べたいなって思う事も無かったんだけど、こっちに来てここの料理ばっかりだから飽きちゃったってのもあるのかもしれないね。それに、この世界の料理ってあんまり味がしないような気がするんだよね。戦闘状態だから仕方ないのかもしれないけど、もう少し味の濃いものを食べたいなって思うんだよ。味が濃いって言っても、出汁がきいてる感じのやつね」
レストランという事なので和食は期待できないとは思うが、それ以上に美味しいものを食べることが出来るだろう。ポンピーノ姫が美味しいと太鼓判を押してくれているのだから信用してもいいだろう。
「この世界に来て今みたいにゆっくりできるのって初めてかも。兄貴はいつもゆっくりしてるみたいだったけどね」
「そんなことないって、俺も俺なりに頑張ってはいるんだよ」
「それは知ってるけど、兄貴はみんなに助けられてばっかりだと思うよ。みんなの強さを考えると仕方ないとは思うけどね。それに、私達には無理で兄貴にしかできないこともあるもんね」
「魔王にとどめを刺すことが出来るってやつだろ。なんで俺だけが魔王にとどめを刺すことが出来るんだろうな。瑠璃は何か知ってる?」
「全然知らないかも。私だって兄貴と一緒で何も知らないんだからね。イザーさんなら何か知ってるような気もするけど、それが本当の事か確かめることも出来ないもんね」
俺と一緒で瑠璃もこの世界の事をよくわかっていないんだな。もしかしたら、うまなちゃんも愛華ちゃんも何も知らないのかもしれない。
イザーちゃんだけがこの世界の事を知ってるという事になるのかもしれない。
瑠璃は少し小走りをして俺の斜め前に出ると、そのまま振り返って俺に向かって手を伸ばしてきた。
「せっかくだし昔みたいに手を繋いでよ。今日くらいは良いよね?」
瑠璃も自分は何もしていないという事で疲れはないようなのだが、何かあっては困るのでゆっくり休んでもらうことにしたのだ。
「休むのは良いんだけど、部屋に一人でいるのはちょっと寂しいかなって思うんだよね。兄貴も休みみたいだし、せっかくだし兄妹で何か美味しいものでも食べに行こうよう」
「仲の良い兄妹で羨ましいですね。それでしたら、昔ここで働いていた方が経営しているレストランがあるのでそちらに行ってみてはいかがでしょう。私の紹介状を持っていけばそれなりにサービスもしてもらえると思いますよ」
俺たちの近くをたまたま通りかかったポンピーノ姫が紹介してくれたレストランに行くことにしたのだけれど、こんな偶然もあるものだなと思ってしまった。
ご飯を食べに行くには少し時間もあるようなので、ここはいったん自分の部屋に戻って準備をしてから待ち合わせをしようという事になった。
俺としては特に準備などする必要もないのだけれど、瑠璃はファミレスもファストフード店も好きなので軽くテンションが上がっているのかもしれないな。大人ぶってはいるけれど、レストランに行けるという事でテンションが上がっているのはまだまだ子供な証拠かもしれないな。
待ち合わせ時間よりも少し早めにやってきた俺よりも瑠璃は先に来ていた。
いつもとそれほど変わらない服装ではあるが、髪はいつもと違って後頭部でお団子にしていた。こちらの方が戦う時に邪魔にならなそうだなと思ったけれど、瑠璃も俺と一緒で自分自身が戦うわけではないのでどんな髪型でも戦闘には関係ないような気もしていた。
「お、待ち合わせよりも随分と早いね。ずっと引きこもりだったから兄貴は待ち合わせにちゃんと来るか不安だったけど、とりあえずは合格だね」
「合格って、待ち合わせに遅れたりなんてしないって。それよりも、瑠璃は俺よりも早く来てたみたいだけど何分くらい待ってたんだ?」
「うーん、ちょっとだけ待ってたくらいかな。お部屋にいると何か口にしちゃいそうだったし、それだったら外に出て待ってた方が余計なものを口にしなくて済むんじゃないかなって思ったんだよ。だから、そんなに待ってないと思うよ。部屋を出たのが二時間くらい前だから、大体二時間くらいしか待ってないと思うし」
「そんなに早くから待ってるんだったら一言俺に言いに来いって。二時間も待ってるの辛くなかった?」
「別に辛くないよ。兄貴と二人でご飯を食べに行くのなんてあの時以来だからね。そう考えるとちょっとだけワクワクしてたよ」
そんな会話をしていると本来の待ち合わせ時間になっていたので俺たちはポンピーノ姫が教えてくれたレストランに向かうことにした。
お城から出て少し歩いた場所にある路地を抜けた先にある公園の東側にある出口を抜けて道なりに進んで行くと川にぶつかるので、川をそのままを右手に見ながら進むと見えてくるという事だった。地図を見るとお城から出てすぐに東側の道を使った方が速そうなのだが、そこを通らないといけない理由でもあるんだろうな。深く考えないようにしよう。
「兄貴はさ、何か食べたいものとかあったりする?」
「どうだろう。こっちの世界では無理だと思うけど、出汁がきいてる蕎麦とか食べたいかもな。うどんでもいいとは思うけど、どちらかと言えば蕎麦がいいかな。瑠璃は何か食べたいものあるのか?」
「私も和食が食べたくなってきてるかも。普段はあんまり和食を食べたいなって思う事も無かったんだけど、こっちに来てここの料理ばっかりだから飽きちゃったってのもあるのかもしれないね。それに、この世界の料理ってあんまり味がしないような気がするんだよね。戦闘状態だから仕方ないのかもしれないけど、もう少し味の濃いものを食べたいなって思うんだよ。味が濃いって言っても、出汁がきいてる感じのやつね」
レストランという事なので和食は期待できないとは思うが、それ以上に美味しいものを食べることが出来るだろう。ポンピーノ姫が美味しいと太鼓判を押してくれているのだから信用してもいいだろう。
「この世界に来て今みたいにゆっくりできるのって初めてかも。兄貴はいつもゆっくりしてるみたいだったけどね」
「そんなことないって、俺も俺なりに頑張ってはいるんだよ」
「それは知ってるけど、兄貴はみんなに助けられてばっかりだと思うよ。みんなの強さを考えると仕方ないとは思うけどね。それに、私達には無理で兄貴にしかできないこともあるもんね」
「魔王にとどめを刺すことが出来るってやつだろ。なんで俺だけが魔王にとどめを刺すことが出来るんだろうな。瑠璃は何か知ってる?」
「全然知らないかも。私だって兄貴と一緒で何も知らないんだからね。イザーさんなら何か知ってるような気もするけど、それが本当の事か確かめることも出来ないもんね」
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瑠璃は少し小走りをして俺の斜め前に出ると、そのまま振り返って俺に向かって手を伸ばしてきた。
「せっかくだし昔みたいに手を繋いでよ。今日くらいは良いよね?」
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