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勇者の試練
勇者の試練 第十七話
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大勇者連盟の本部はアフリカ大陸と同じような位置にあるようだ。
この世界の地図は地域ごとに分かれているので世界地図のようなものは無いので正確な位置は掴みにくいのだけれど、アフリカで言うところのルワンダあたりにあるそうだ。
ルワンダという国の名前は聞いたことがあったのだけれど、その国がどの辺にあるのかという事が全く分かっていない俺は地理が苦手なのだという事を思い出してしまった。
「連盟も連合も協会も評議会もやってることは何も変わらないみたいだよ。名前とトップが違うだけでやってることは何も変わらないんだって。それだったら、全部合わせて一つにしちゃえばいいのにって話なんだけど、それぞれのトップは力も似たようなもので誰か一人でもいなくなるとパワーバランスが崩壊して人間同士の戦争に発展しかねないんだってさ。どこの世界も似たようなことやってるんだね」
「他人を優先する人間なんていないって事だよ」
「兄貴がそういう風に言うと、なんか昔の事を思い出しちゃうね」
「色々あったからな。瑠璃が就職した流れで俺も一緒に働くことになったわけだけど、そのわずかな期間でも今まで生きてきた以上の事が起こってるような気がするよ」
「そうだね。兄貴がカフェで店長やってるなんて思わなかったよ。人生経験もないくせに人生相談を受けたりってのも驚いたな」
「瑠璃の場合は俺に勉強を教えてくれてた時から先生に向いてるなって思ってたよ。カフェに来る生徒に聞いても瑠璃は評判いいみたいだからね。俺に教えてくれていた時と同じように教えるのが上手なんだろうな」
「さすがに兄貴一人に教えるのとは違うけどさ、兄貴に勉強を教えていたのが今に活きてるかも」
「それ以上に驚いているのはこの世界にやってきたって事だよな。うまなちゃんが誘拐されたのも驚いたけど、それも比べ物にならないくらいこの世界は驚きの連続だよ。ほら、今も瑠璃の呼び出した巨人が良くわからない生物と戦ってるもんな」
「だよね。私もどうしてあの子たちを呼び出せてるのかわかってないんだよね。この世界にはこの世界の私の力があるみたいなんだけど、うまなさんや愛華さんや柘榴さんみたいに自分の力を使ってって感じじゃないんだよね。呼び出すためにちょっとだけ代償を支払っているんだよ。兄貴は知らなかったでしょ?」
「全然知らないけど。その代償ってのは命にかかわることなのか?」
「別に命にはかかわらないかな。ちょっと嫌だなって思う程度の事だよ」
「ちょっと嫌だなって、どんな事なの?」
「直接ではないんだけど、夢の中でお尻を触られるんだ。ちょっと触られる程度なんだけど、やたらと感触がリアルなんだよね。もしかして、私が寝てるときに兄貴が触ってるとかないよね?」
「そんなことして無いって。瑠璃が寝てるところに行ったこともないし」
「でも、私のお尻を触りたくなったらいつでも言ってくれていいんだからね。少しくらいなら触らせてあげてもいいよ」
「そんな事言わないから安心しろ」
俺たちが冗談を言い合っている間にも巨人は得体の知れない魔物を次々と倒していた。
似たような敵が何体も何体も出てきているのだが、瑠璃が呼び出している巨人とは強さも耐久力も何もかもが違うようで全く相手にならなかった。瑠璃の呼び出している巨人の圧倒的な強さに対して魔物たちはただ倒されるためだけに出てきているとしか思えなかった。
「それにしても、今回の巨人は今までと違って体が全部そろってるように見えるな」
「そうみたいだね。私も呼び出すまで心配だったんだけど、今回の巨人は体がちゃんとしているかわりに心が壊れてしまっているみたいだよ。だからなのかもしれないけど、常に全力で行動しちゃってるみたいだね」
「常に全力って、それであいつは大丈夫なのか?」
「大丈夫だと思うよ。あの子たちは倒した相手の魔力を奪って体を維持しているからね。倒した相手によってはパワーアップすることもあるみたいだけど、強くなればなるほど体を維持するために必要な魔力も増えていっちゃうんだよね。なので、ほどほどに強くて燃費のいい子が一番いいかな」
「愛華ちゃんの銃もそうだけど、色々と理解しがたいシステムでおどろちゃうよな」
「うまなさんの持ってる斧もどこから取り出してるのか気になっちゃうよね。柘榴さんは何のためらいもなく魔法を使いこなしてると思うんだけど、元々魔法とか使ってたりしたのかな?」
「そんな事は無いんじゃないかな。魔法とか使えてそうな感じはしてたけど、さすがにこっちの世界に来る前は使えなかったと思うよ」
イザーちゃんの怪力はもともとだったと思う。
それ以前に、イザーちゃんは俺たちが住んでる世界とまた違う世界からやってきたという事だし、同じ人間とカウントしていいものなのか悩むところではある。
瑠璃もその事を知っているのであえてこの場では触れていないのかな。
巨人は勢いに乗って次々と魔物を倒している。出てくる魔物を全て倒した巨人はそのまま扉を開けて奥へと入っていったのだが、巨人に驚いて聞こえてきた聞き覚えのある悲鳴と聞き覚えのない断末魔が順番にフロアに響いていた。
「もしかして、全部やっちゃったのかな?」
「そうかもしれないな。聞き覚えのある声だったような気がするんだけど、瑠璃はどう思う?」
「さあ、私には聞き覚えなんてないけど。男の人の悲鳴なんて聞いたことないし」
普通はそうだろうなと思う。俺だって今まで生きてきて男の悲鳴を聞いたことなんて無かった。
人生のほとんどを部屋に引きこもっていたことを差し引いたとしても、普通は男性の悲鳴なんて聞く機会はないだろう。
うまなちゃんの誘拐事件以降は俺にとって他人の命の重さなんてものは、一枚の紙切れよりも軽くなっているような気もしていた。イザーちゃんが他の世界から同じ人を連れてくることもあるのかもしれないが、命の重さは日に日に軽くなっていっているような気もしていた。
この世界の地図は地域ごとに分かれているので世界地図のようなものは無いので正確な位置は掴みにくいのだけれど、アフリカで言うところのルワンダあたりにあるそうだ。
ルワンダという国の名前は聞いたことがあったのだけれど、その国がどの辺にあるのかという事が全く分かっていない俺は地理が苦手なのだという事を思い出してしまった。
「連盟も連合も協会も評議会もやってることは何も変わらないみたいだよ。名前とトップが違うだけでやってることは何も変わらないんだって。それだったら、全部合わせて一つにしちゃえばいいのにって話なんだけど、それぞれのトップは力も似たようなもので誰か一人でもいなくなるとパワーバランスが崩壊して人間同士の戦争に発展しかねないんだってさ。どこの世界も似たようなことやってるんだね」
「他人を優先する人間なんていないって事だよ」
「兄貴がそういう風に言うと、なんか昔の事を思い出しちゃうね」
「色々あったからな。瑠璃が就職した流れで俺も一緒に働くことになったわけだけど、そのわずかな期間でも今まで生きてきた以上の事が起こってるような気がするよ」
「そうだね。兄貴がカフェで店長やってるなんて思わなかったよ。人生経験もないくせに人生相談を受けたりってのも驚いたな」
「瑠璃の場合は俺に勉強を教えてくれてた時から先生に向いてるなって思ってたよ。カフェに来る生徒に聞いても瑠璃は評判いいみたいだからね。俺に教えてくれていた時と同じように教えるのが上手なんだろうな」
「さすがに兄貴一人に教えるのとは違うけどさ、兄貴に勉強を教えていたのが今に活きてるかも」
「それ以上に驚いているのはこの世界にやってきたって事だよな。うまなちゃんが誘拐されたのも驚いたけど、それも比べ物にならないくらいこの世界は驚きの連続だよ。ほら、今も瑠璃の呼び出した巨人が良くわからない生物と戦ってるもんな」
「だよね。私もどうしてあの子たちを呼び出せてるのかわかってないんだよね。この世界にはこの世界の私の力があるみたいなんだけど、うまなさんや愛華さんや柘榴さんみたいに自分の力を使ってって感じじゃないんだよね。呼び出すためにちょっとだけ代償を支払っているんだよ。兄貴は知らなかったでしょ?」
「全然知らないけど。その代償ってのは命にかかわることなのか?」
「別に命にはかかわらないかな。ちょっと嫌だなって思う程度の事だよ」
「ちょっと嫌だなって、どんな事なの?」
「直接ではないんだけど、夢の中でお尻を触られるんだ。ちょっと触られる程度なんだけど、やたらと感触がリアルなんだよね。もしかして、私が寝てるときに兄貴が触ってるとかないよね?」
「そんなことして無いって。瑠璃が寝てるところに行ったこともないし」
「でも、私のお尻を触りたくなったらいつでも言ってくれていいんだからね。少しくらいなら触らせてあげてもいいよ」
「そんな事言わないから安心しろ」
俺たちが冗談を言い合っている間にも巨人は得体の知れない魔物を次々と倒していた。
似たような敵が何体も何体も出てきているのだが、瑠璃が呼び出している巨人とは強さも耐久力も何もかもが違うようで全く相手にならなかった。瑠璃の呼び出している巨人の圧倒的な強さに対して魔物たちはただ倒されるためだけに出てきているとしか思えなかった。
「それにしても、今回の巨人は今までと違って体が全部そろってるように見えるな」
「そうみたいだね。私も呼び出すまで心配だったんだけど、今回の巨人は体がちゃんとしているかわりに心が壊れてしまっているみたいだよ。だからなのかもしれないけど、常に全力で行動しちゃってるみたいだね」
「常に全力って、それであいつは大丈夫なのか?」
「大丈夫だと思うよ。あの子たちは倒した相手の魔力を奪って体を維持しているからね。倒した相手によってはパワーアップすることもあるみたいだけど、強くなればなるほど体を維持するために必要な魔力も増えていっちゃうんだよね。なので、ほどほどに強くて燃費のいい子が一番いいかな」
「愛華ちゃんの銃もそうだけど、色々と理解しがたいシステムでおどろちゃうよな」
「うまなさんの持ってる斧もどこから取り出してるのか気になっちゃうよね。柘榴さんは何のためらいもなく魔法を使いこなしてると思うんだけど、元々魔法とか使ってたりしたのかな?」
「そんな事は無いんじゃないかな。魔法とか使えてそうな感じはしてたけど、さすがにこっちの世界に来る前は使えなかったと思うよ」
イザーちゃんの怪力はもともとだったと思う。
それ以前に、イザーちゃんは俺たちが住んでる世界とまた違う世界からやってきたという事だし、同じ人間とカウントしていいものなのか悩むところではある。
瑠璃もその事を知っているのであえてこの場では触れていないのかな。
巨人は勢いに乗って次々と魔物を倒している。出てくる魔物を全て倒した巨人はそのまま扉を開けて奥へと入っていったのだが、巨人に驚いて聞こえてきた聞き覚えのある悲鳴と聞き覚えのない断末魔が順番にフロアに響いていた。
「もしかして、全部やっちゃったのかな?」
「そうかもしれないな。聞き覚えのある声だったような気がするんだけど、瑠璃はどう思う?」
「さあ、私には聞き覚えなんてないけど。男の人の悲鳴なんて聞いたことないし」
普通はそうだろうなと思う。俺だって今まで生きてきて男の悲鳴を聞いたことなんて無かった。
人生のほとんどを部屋に引きこもっていたことを差し引いたとしても、普通は男性の悲鳴なんて聞く機会はないだろう。
うまなちゃんの誘拐事件以降は俺にとって他人の命の重さなんてものは、一枚の紙切れよりも軽くなっているような気もしていた。イザーちゃんが他の世界から同じ人を連れてくることもあるのかもしれないが、命の重さは日に日に軽くなっていっているような気もしていた。
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