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勇者の試練
勇者の試練 第十四話
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男の死体にも撃てるだけの弾丸を撃ち込んだ愛華ちゃんは何事も無かったかのように最後のフロアへと向かう扉を開けていた。
「ありがとうございます。私の事を信じてくれて嬉しいです」
「俺が愛華ちゃんを信じないわけないよね。あいつもきっと俺を動揺させようとしてあんなことを言ったんだと思うしね」
俺なりに愛華ちゃんをフォローするつもりで言ったのだけど愛華ちゃんは俺の言葉を遮るように話し出した。
「色々と理由や事情はあったんですけど、それでも真琴さんを殺していたという事実は変わらないです。私以外のみんなも同じだと思います」
「そうなんだ。愛華ちゃんとイザーちゃんが命を奪う事に対してためらいが無いのはそういったこともあったからなんだろうね。でも、瑠璃やうまなちゃんや柘榴ちゃんもこの世界では相手の事を気遣うとかせずに命を奪ってるもんね」
「やらないとこちらがやられてしまうかもしれないですからね。誤解の無いように言っておきますけど、柘榴さんは真琴さんの事を殺したことは一度も無いですよ。他の世界線でも姿を見かけたことはありましたけど、今みたいに一緒に行動したことはなかったと思います。うまなさんの親戚ってのはどこの世界でも同じですけど、今みたいに近い親戚って関係ではなかったですね。栗鳥院家の人間にうまなさんと同じくらいの年齢で優秀な人がいるって話を噂で聞いていたくらいですよ」
「って事は、柘榴ちゃんが一緒に行動しているという事が愛華ちゃんの知っている世界と異なるって事になるのかな?」
「そうですね。他にも色々と違うところはありますけど、大きく違うのはそこだと思います。私も瑠璃先生も柘榴さんの事をどう接していいのかわからなかったんですけど、それはうまなさんもイザーさんも変わらないと思いますよ」
俺の知らない世界で俺は何度も殺されている。それは別にどうでもいいことなのだが、愛華ちゃんが知っている世界と全く違う事が起きているというのは大丈夫なのだろうか。
世界が違えば同じ人でも性格や考え方が異なることもあるらしいのだが、良くも悪くも人付き合いというのは大きく変わらないという事だ。結婚する相手は変わらないけれど、その間に交際する人や期間が異なるという事はよくあることらしい。むしろ、全く同じ時間の過ごし方をする人の方が珍しいそうだ。
でも、柘榴ちゃんのように大きく人生が変わるというのはかなり珍しいことだそうだ。
過去にもそういったことがあったらしいのだが、そんな時はナニモノかの大きな力が働いて悪い影響を受けてしまう事がほとんどだったそうだ。
しかし、柘榴ちゃんが俺たちと一緒に行動することで何か悪いことが起こったとか辛い目に遭ったとかは無いので気にする必要はないのかもしれない。
「イザーさんもうまなさんも柘榴さんの事はまったく気にしてないみたいなんですけど、私と瑠璃先生はやっぱり悪いことが起きるんじゃないかって心配になってるんですよ。私達じゃない誰かの手によって真琴さんの命を奪われてしまうのではないかという恐ろしい考えが浮かんだりしてるんです」
「俺も殺されないように気を付けるけどさ、愛華ちゃんたちに襲われたとしたら抵抗することもなく受け入れちゃうかも」
空気を変えようと思って軽い冗談を言ったつもりだったのだけれど、俺の言葉を聞いた愛華ちゃんは真顔になっていた。
今まで見たことがないような冷たい目をしていたのだが、すぐにいつもの愛華ちゃんに戻っていた。
「私たちに襲われたら抵抗しても無駄ですからね。でも、今は瑠璃先生に全力で止められちゃうかもしれないですね。兄妹の固い絆ってやつで繋がってますしね」
「一つ気になったことがあるんで聞きたいんだけど、他の世界でも俺と瑠璃は兄妹なのかな?」
「真琴さんと瑠璃先生はどの世界でも兄妹ですよ。今みたいに血が繋がっている場合がほとんどですけど、時々血が繋がってない時もありますね。ご両親が子連れで再婚したとかどちらかが養子として迎え入れられたとかあったと思います。ただ、どの世界でも仲が良いのは変わらないですね」
どの世界でも瑠璃は俺に対して優しくしてくれているという事なんだろうな。
俺には他の世界の記憶なんて何も残ってないから仕方ないけれど、みんな仲良く楽しく過ごせていたんだったとしたら嬉しいな。
そんな事を話しながらいくつかの扉を開けて奥へと進んでいったのだ。
いくつ扉を開けたのか覚えていられないくらい多くの扉を開けていたところ、今までとは何もかもが違う重厚な扉が突然現れた。
「この扉の向こうに最後の相手がいるっぽいですね。準備は良いですか?」
俺は無言で頷いて扉に手をかけようとしたのだけれど、そんな俺を制して愛華ちゃんは扉を勢いよく開け放った。
部屋の中には一人の男が椅子に座って俺たちの事を見ていたのだ。
どこかで見たことがあるような気がしたのだけれど、俺が誰か理解する前に愛華ちゃんの銃によって顔が粉々に吹き飛ばされていた。
「ああ、やっちゃったね。先制攻撃もいいけどさ、相手の話もちゃんと聞いた方がいいよ」
急に現れたイザーちゃんは愛華ちゃんに言い聞かせるように話していたのだが、その顔は少し呆れているようにも見えてしまった。
「ありがとうございます。私の事を信じてくれて嬉しいです」
「俺が愛華ちゃんを信じないわけないよね。あいつもきっと俺を動揺させようとしてあんなことを言ったんだと思うしね」
俺なりに愛華ちゃんをフォローするつもりで言ったのだけど愛華ちゃんは俺の言葉を遮るように話し出した。
「色々と理由や事情はあったんですけど、それでも真琴さんを殺していたという事実は変わらないです。私以外のみんなも同じだと思います」
「そうなんだ。愛華ちゃんとイザーちゃんが命を奪う事に対してためらいが無いのはそういったこともあったからなんだろうね。でも、瑠璃やうまなちゃんや柘榴ちゃんもこの世界では相手の事を気遣うとかせずに命を奪ってるもんね」
「やらないとこちらがやられてしまうかもしれないですからね。誤解の無いように言っておきますけど、柘榴さんは真琴さんの事を殺したことは一度も無いですよ。他の世界線でも姿を見かけたことはありましたけど、今みたいに一緒に行動したことはなかったと思います。うまなさんの親戚ってのはどこの世界でも同じですけど、今みたいに近い親戚って関係ではなかったですね。栗鳥院家の人間にうまなさんと同じくらいの年齢で優秀な人がいるって話を噂で聞いていたくらいですよ」
「って事は、柘榴ちゃんが一緒に行動しているという事が愛華ちゃんの知っている世界と異なるって事になるのかな?」
「そうですね。他にも色々と違うところはありますけど、大きく違うのはそこだと思います。私も瑠璃先生も柘榴さんの事をどう接していいのかわからなかったんですけど、それはうまなさんもイザーさんも変わらないと思いますよ」
俺の知らない世界で俺は何度も殺されている。それは別にどうでもいいことなのだが、愛華ちゃんが知っている世界と全く違う事が起きているというのは大丈夫なのだろうか。
世界が違えば同じ人でも性格や考え方が異なることもあるらしいのだが、良くも悪くも人付き合いというのは大きく変わらないという事だ。結婚する相手は変わらないけれど、その間に交際する人や期間が異なるという事はよくあることらしい。むしろ、全く同じ時間の過ごし方をする人の方が珍しいそうだ。
でも、柘榴ちゃんのように大きく人生が変わるというのはかなり珍しいことだそうだ。
過去にもそういったことがあったらしいのだが、そんな時はナニモノかの大きな力が働いて悪い影響を受けてしまう事がほとんどだったそうだ。
しかし、柘榴ちゃんが俺たちと一緒に行動することで何か悪いことが起こったとか辛い目に遭ったとかは無いので気にする必要はないのかもしれない。
「イザーさんもうまなさんも柘榴さんの事はまったく気にしてないみたいなんですけど、私と瑠璃先生はやっぱり悪いことが起きるんじゃないかって心配になってるんですよ。私達じゃない誰かの手によって真琴さんの命を奪われてしまうのではないかという恐ろしい考えが浮かんだりしてるんです」
「俺も殺されないように気を付けるけどさ、愛華ちゃんたちに襲われたとしたら抵抗することもなく受け入れちゃうかも」
空気を変えようと思って軽い冗談を言ったつもりだったのだけれど、俺の言葉を聞いた愛華ちゃんは真顔になっていた。
今まで見たことがないような冷たい目をしていたのだが、すぐにいつもの愛華ちゃんに戻っていた。
「私たちに襲われたら抵抗しても無駄ですからね。でも、今は瑠璃先生に全力で止められちゃうかもしれないですね。兄妹の固い絆ってやつで繋がってますしね」
「一つ気になったことがあるんで聞きたいんだけど、他の世界でも俺と瑠璃は兄妹なのかな?」
「真琴さんと瑠璃先生はどの世界でも兄妹ですよ。今みたいに血が繋がっている場合がほとんどですけど、時々血が繋がってない時もありますね。ご両親が子連れで再婚したとかどちらかが養子として迎え入れられたとかあったと思います。ただ、どの世界でも仲が良いのは変わらないですね」
どの世界でも瑠璃は俺に対して優しくしてくれているという事なんだろうな。
俺には他の世界の記憶なんて何も残ってないから仕方ないけれど、みんな仲良く楽しく過ごせていたんだったとしたら嬉しいな。
そんな事を話しながらいくつかの扉を開けて奥へと進んでいったのだ。
いくつ扉を開けたのか覚えていられないくらい多くの扉を開けていたところ、今までとは何もかもが違う重厚な扉が突然現れた。
「この扉の向こうに最後の相手がいるっぽいですね。準備は良いですか?」
俺は無言で頷いて扉に手をかけようとしたのだけれど、そんな俺を制して愛華ちゃんは扉を勢いよく開け放った。
部屋の中には一人の男が椅子に座って俺たちの事を見ていたのだ。
どこかで見たことがあるような気がしたのだけれど、俺が誰か理解する前に愛華ちゃんの銃によって顔が粉々に吹き飛ばされていた。
「ああ、やっちゃったね。先制攻撃もいいけどさ、相手の話もちゃんと聞いた方がいいよ」
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