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勇者の試練
勇者の試練 第十三話
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今までイザーちゃんが色々な世界へ行くことが出来るという話は聞いていたし、愛華ちゃんやうまなちゃんが他の世界でも一緒にいたというのは聞いていた。
だが、俺を殺していたという話は聞いたことが無かった。
俺を殺していたというのにも何か理由があるのだろうとは思うのだけれど、愛華ちゃんは俺に背を向けたまま何も答えることはなかった。
「どうしたんですか、先ほどまでの威勢はどこに行ったのですかね。あなただけではなく他の方もやってきたことなのですからそこまで気にする必要はないんじゃないでしょうかね。ココに一緒にいる真琴さんだってあなたに殺された過去の事なんて何も気にしていないように見えますけど、どうなんでしょうね。せっかくですし、自分を何度も殺した相手が目の前にいるというのはどういう気分なのか聞いてみましょうか?」
男は今まで全く気にもかけていなかった俺の方へと近付いてきたのだが、愛華ちゃんがその間に割って入ってきて両手を広げて制止していた。
「待って、それを聞くのはあなたではなく私です。真琴さんがどう思っているのか聞くのは私じゃないとダメだと思うんです」
「自分から聞くというのはとても勇気がいることだと思いますが、そんな事をしてもいいんでしょうかね。今のあなたは私とクイズで対決をしている状況なんですよ。あなたの敗北の条件の一つに、片岡真琴に答えを聞くというものがあるのを忘れているのでしょうか」
「忘れてなんかいない。そんなの忘れるわけない。でも、ここで私が真琴さんに聞かなくちゃダメだって思う。この勝負に負けて私が死んだとしても、自分から真琴さんに答えを聞かなくてはいけないんだ。だから、私は真琴さんに気持ちを聞くのは間違ってない」
「そうなんですか。あなたがそこまで思っているのなら仕方ないですね。この勝負は残念ながらあなたの負けとなってしまうんですが、潔いあなたに敬意を表して命は助けてあげますよ。ま、もともとあなたを殺すつもりなんて無かったんですけどね」
愛華ちゃんは体をクルリと回転させて俺に向かっていた。顔はうつむいているので目は合わないのだが、何となく固い意志のようなモノは感じられた。
俺から話しかけるのもおかしいのではないかと思って黙って待っていたのだけれど、ここで話しかけないのも変ではないかと思って話しかける言葉を探していた。
でも、俺には愛華ちゃんに賭ける言葉が見つけられなかった。
「どうしました? 今から真琴さんにどういう気持ちなのか聞くのではないのですか?」
俺と愛華ちゃんが向かい合ったまま何も話そうとしないことに業を煮やしたのか男は話しかけてきた。
もしかしたら、愛華ちゃんの質問には答えずにこの男の質問に答えれば愛華ちゃんは負けにならないのではないだろうか。
そんな屁理屈みたいなことを考えてみたけれど、この男もさすがにそこまではバカではないと思う。でも、一度試してみる価値はあるかもしれないな。
問題は、この男が俺に聞いてくるように誘導するにはどうしたらいいのだろうか。その点なのだ。
「あなたが真琴さんに聞くことはただ一つ。今まで自分が何度も何度も殺されてきたという事を聞いてどう思ったかという事だけですよ」
「そんな事を聞いたからといって別にどうも思ってないです。今までもそうだったけど、愛華ちゃんは理由もなく命を奪うような人ではないと思ってるし、そんな愛華ちゃんが俺を殺していたというのであればきっと何か深い理由があってのことだと思ってます。だから、俺は愛華ちゃんに殺されていたと聞いた時も恨んだりなんて事もなくそうなのかと思っただけだね」
「いやいやいや、そんな風に思ってるわけないでしょ。そもそも、私の質問ではなくこの女の質問に答えなさいよ。そうしないと意味ないでしょ。それに、口ではそんな事を言っていても本音はどうだからわからないですよね」
男は愛華ちゃん越しに俺の事をじっと見てきているのだが、値踏みされるようにじっくりと見られているというのはとても不愉快であった。
愛華ちゃんは俺と男の視線を避けるようにうつむいていたのだけれど、俺の言葉を聞いてから表情が明るくなっていつもの様子に戻っていた。
だが、少し不安そうにも見えていた。
「ちょっと待ちなさい。あなたは本気で何とも思っていないんですか? 自分の事を何度も何度も繰り返し繰り返し殺してきた女が目の前にいるというのに、あなたは本当に何も感じていないという事なんですか?」
「何度も俺を殺してきたと言ってもさ、殺された俺は俺自身とは違う俺で俺は一度も愛華ちゃんに殺されてないからな。仮に、俺が愛華ちゃんに殺される運命だったとしたら、俺は潔くその運命を受け入れるよ。今まで何度も助けてくれたことに感謝もあるし、その事が次の俺の幸せにつながるのかと思うと素直に受け入れることが出来るんだ」
「嘘……ではないようですね。こんなことがあっていいはずがない。自分を何度も殺している人間を信用することなんて普通じゃない。お前は絶対におかしい」
「真琴さんは私が何度も何度も自分を殺している事に関して、特に何も思っていない。それが私の……答えだ」
愛華ちゃんはそう答えると同時に男に銃を向けていた。
いつもの拳銃ではなく一回り大きな銃になっていたのだけれど、愛華ちゃんは今までと変わらずに何度も何度も男に向かって引き金を引いていた。
だが、俺を殺していたという話は聞いたことが無かった。
俺を殺していたというのにも何か理由があるのだろうとは思うのだけれど、愛華ちゃんは俺に背を向けたまま何も答えることはなかった。
「どうしたんですか、先ほどまでの威勢はどこに行ったのですかね。あなただけではなく他の方もやってきたことなのですからそこまで気にする必要はないんじゃないでしょうかね。ココに一緒にいる真琴さんだってあなたに殺された過去の事なんて何も気にしていないように見えますけど、どうなんでしょうね。せっかくですし、自分を何度も殺した相手が目の前にいるというのはどういう気分なのか聞いてみましょうか?」
男は今まで全く気にもかけていなかった俺の方へと近付いてきたのだが、愛華ちゃんがその間に割って入ってきて両手を広げて制止していた。
「待って、それを聞くのはあなたではなく私です。真琴さんがどう思っているのか聞くのは私じゃないとダメだと思うんです」
「自分から聞くというのはとても勇気がいることだと思いますが、そんな事をしてもいいんでしょうかね。今のあなたは私とクイズで対決をしている状況なんですよ。あなたの敗北の条件の一つに、片岡真琴に答えを聞くというものがあるのを忘れているのでしょうか」
「忘れてなんかいない。そんなの忘れるわけない。でも、ここで私が真琴さんに聞かなくちゃダメだって思う。この勝負に負けて私が死んだとしても、自分から真琴さんに答えを聞かなくてはいけないんだ。だから、私は真琴さんに気持ちを聞くのは間違ってない」
「そうなんですか。あなたがそこまで思っているのなら仕方ないですね。この勝負は残念ながらあなたの負けとなってしまうんですが、潔いあなたに敬意を表して命は助けてあげますよ。ま、もともとあなたを殺すつもりなんて無かったんですけどね」
愛華ちゃんは体をクルリと回転させて俺に向かっていた。顔はうつむいているので目は合わないのだが、何となく固い意志のようなモノは感じられた。
俺から話しかけるのもおかしいのではないかと思って黙って待っていたのだけれど、ここで話しかけないのも変ではないかと思って話しかける言葉を探していた。
でも、俺には愛華ちゃんに賭ける言葉が見つけられなかった。
「どうしました? 今から真琴さんにどういう気持ちなのか聞くのではないのですか?」
俺と愛華ちゃんが向かい合ったまま何も話そうとしないことに業を煮やしたのか男は話しかけてきた。
もしかしたら、愛華ちゃんの質問には答えずにこの男の質問に答えれば愛華ちゃんは負けにならないのではないだろうか。
そんな屁理屈みたいなことを考えてみたけれど、この男もさすがにそこまではバカではないと思う。でも、一度試してみる価値はあるかもしれないな。
問題は、この男が俺に聞いてくるように誘導するにはどうしたらいいのだろうか。その点なのだ。
「あなたが真琴さんに聞くことはただ一つ。今まで自分が何度も何度も殺されてきたという事を聞いてどう思ったかという事だけですよ」
「そんな事を聞いたからといって別にどうも思ってないです。今までもそうだったけど、愛華ちゃんは理由もなく命を奪うような人ではないと思ってるし、そんな愛華ちゃんが俺を殺していたというのであればきっと何か深い理由があってのことだと思ってます。だから、俺は愛華ちゃんに殺されていたと聞いた時も恨んだりなんて事もなくそうなのかと思っただけだね」
「いやいやいや、そんな風に思ってるわけないでしょ。そもそも、私の質問ではなくこの女の質問に答えなさいよ。そうしないと意味ないでしょ。それに、口ではそんな事を言っていても本音はどうだからわからないですよね」
男は愛華ちゃん越しに俺の事をじっと見てきているのだが、値踏みされるようにじっくりと見られているというのはとても不愉快であった。
愛華ちゃんは俺と男の視線を避けるようにうつむいていたのだけれど、俺の言葉を聞いてから表情が明るくなっていつもの様子に戻っていた。
だが、少し不安そうにも見えていた。
「ちょっと待ちなさい。あなたは本気で何とも思っていないんですか? 自分の事を何度も何度も繰り返し繰り返し殺してきた女が目の前にいるというのに、あなたは本当に何も感じていないという事なんですか?」
「何度も俺を殺してきたと言ってもさ、殺された俺は俺自身とは違う俺で俺は一度も愛華ちゃんに殺されてないからな。仮に、俺が愛華ちゃんに殺される運命だったとしたら、俺は潔くその運命を受け入れるよ。今まで何度も助けてくれたことに感謝もあるし、その事が次の俺の幸せにつながるのかと思うと素直に受け入れることが出来るんだ」
「嘘……ではないようですね。こんなことがあっていいはずがない。自分を何度も殺している人間を信用することなんて普通じゃない。お前は絶対におかしい」
「真琴さんは私が何度も何度も自分を殺している事に関して、特に何も思っていない。それが私の……答えだ」
愛華ちゃんはそう答えると同時に男に銃を向けていた。
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