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王様リセマラ
王様リセマラ 第十六話
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シュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世の死体を担いだイザーちゃんは小さくため息をつきはしたものの、特に何か小言を言ってくることはなかった。
愛華ちゃんは失敗したことを素直に謝っていたのだが、悪いのはシュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世で相性が絶望的に悪い愛華ちゃんの時に連れてきたイザーちゃんにも責任があるのではないかとポンピーノ姫が言ってくれた。
自分の父親であるシュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世が殺されるところを何度も何度も見ているはずのポンピーノ姫が愛華ちゃんをかばった事が決め手となったと思うのだが、イザーちゃんは特に責めることもなく新しいシュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世を探しに行ったのだ。
「次は私の番だね。今までのみんなの失敗を糧に私が成功に導いてあげるよ。お兄ちゃんが証人になってくれるよね?」
あまりにも自信満々なうまなちゃんの姿を見て感じたのは、ここまで自信を持っていると逆に失敗する未来しかないのではないかという事だ。
ただ、うまなちゃんが持っている自信は今までのみんなとは違うようにも感じていた。
未来を見通しているかのような自信に感じられたのだ。
それほど時間を空けずに現れたイザーちゃんとシュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世であったが、今までのシュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世と比べても何か違和感しかない。何がどう違うのか上手く説明することは出来ないのだが、今まで見てきたシュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世と何もかもが違うような気がしていた。
「あなたがうまなちゃんですね。お話はイザーさんから色々と伺っていますよ。何でも、今回私の力を使ってそちらの男性を真の勇者として覚醒させてほしいという事ですね。私一人の力ではそれを行うことは出来ないのですが、遠方におります古い知人の力を使えばそれも可能だと思いますよ。少し時間はかかってしまうかもしれませんが、よろしいでしょうか?」
少し違うと思っていたシュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世ではあったが、少しどころではなく何もかもが違っているようにしか思えない。こんなに腰の低い人になることもあるのかと驚いていた。
俺もうまなちゃんも驚いてはいたのだけれど、一番驚いていたのは娘であるポンピーノ姫だろう。もしかしたら彼女が見てきた中に今みたいな感じのシュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世がいたのかもしれないが、仮にも一国の王である彼が家族以外にこんな姿を見せても良いものなのだろうか。俺にはわからなかった。
「じゃあ、あとはうまなちゃんにお願いするね。私は少し疲れたから休んでくるけど、今度こそ失敗しないでね。お兄さんも変な風にかき乱したりしないようにしてね。お姫様もだよ」
シュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世は部屋から出ていったイザーちゃんに何度も何度も手を振っていた。その姿はクラスメイトと別れを惜しむ女子高生のようにも見えたのだが、今まで見ていたシュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世がどう考えてもそんなキャラではないという事もあって、ココに連れてくる前にイザーちゃんが何かやったんだと考えてしまった。
たぶん、うまなちゃんもそう考えているだろう。
「あの、人間って別の世界で暮らしているとこんなに性格が変わるものなのでしょうか。先ほどまでのお父様も私の知っているお父様とは違うような気はしていたのですが、今のように全くの別人だと思うことはありませんでした。ですが、今目の前にいるお父様は姿かたち声に雰囲気も私のよく知っているお父様なのですが、どうしても同じ人だとは思えないのです。いったいどういう事なんでしょう?」
「私は上手く説明できないし、お兄ちゃんも説明することは出来ないと思うんだけどね。私が見たり聞いてきた話をまとめると、無数にある並行世界の数だけ私が存在していて良い私もいれば悪い私もいるって事なんだよ。目が合っただけで人を襲うような私もいれば、誰にも会いたくなくて部屋に引きこもっている私もいるのかもしれない。同じ私でも住んでいる世界が違えば全く違う性格になっている事もあるって事なんだよ。だから、イザーちゃんにはその無数の世界の中から私たちに凄く協力的な王様を探してきてもらうって話になってるんだけど、これはちょっとやっちゃってるんじゃないかなって思うんだよ」
「そうなんですね。にわかには信じがたい話ではありますが、目の前で見てきたことを考えるとそれも間違いではないという事がわかりますね。でも、このお父様は私もやり過ぎなんじゃないかなって思ってます」
俺もそう思っているよと言いたいところではあったけれど、シュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世がうまなちゃんの前までやって来るともじもじながら上目遣いでうまなちゃんの事をチラチラと見ていた。
自分の娘がすぐ隣にいるという事がわかっていないのか、それをわかったうえでやっているのかわからないが、凄く恥ずかしそうにうまなちゃんに何かを耳打ちしていた。
うまなちゃんはやたらと瞬きをしたまま俺を見ると、そのままシュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世に足払いをして倒して足首を掴んでシュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世の体を持ち上げていた。
頭が地面についたままのシュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世は何か楽しいことでもあったのかと思うくらいに笑顔をうまなちゃんに向けていたのだが、うまなちゃんはシュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世の体を先ほど振り回していた斧と同じように扱っていた。
床や壁に何度も何度も叩きつけられたシュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世は見るも無残な姿になり果ててしまったが、ゆっくりと扉を開けて入ってきたイザーちゃんの手で回収されると何事も無かったかのような感じにおさまってしまった。
うまなちゃんが何を言われたのか気になったので聞こうとしたのだけれど、うまなちゃんはどんな聞き方をしても答えてはくれなかった。
ポンピーノ姫も別世界の自分の父親が殺されることにも慣れてしまったのか、特に何かを言う事もなくイザーちゃんを見送る時も小さく手を振っているだけであった。
愛華ちゃんは失敗したことを素直に謝っていたのだが、悪いのはシュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世で相性が絶望的に悪い愛華ちゃんの時に連れてきたイザーちゃんにも責任があるのではないかとポンピーノ姫が言ってくれた。
自分の父親であるシュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世が殺されるところを何度も何度も見ているはずのポンピーノ姫が愛華ちゃんをかばった事が決め手となったと思うのだが、イザーちゃんは特に責めることもなく新しいシュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世を探しに行ったのだ。
「次は私の番だね。今までのみんなの失敗を糧に私が成功に導いてあげるよ。お兄ちゃんが証人になってくれるよね?」
あまりにも自信満々なうまなちゃんの姿を見て感じたのは、ここまで自信を持っていると逆に失敗する未来しかないのではないかという事だ。
ただ、うまなちゃんが持っている自信は今までのみんなとは違うようにも感じていた。
未来を見通しているかのような自信に感じられたのだ。
それほど時間を空けずに現れたイザーちゃんとシュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世であったが、今までのシュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世と比べても何か違和感しかない。何がどう違うのか上手く説明することは出来ないのだが、今まで見てきたシュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世と何もかもが違うような気がしていた。
「あなたがうまなちゃんですね。お話はイザーさんから色々と伺っていますよ。何でも、今回私の力を使ってそちらの男性を真の勇者として覚醒させてほしいという事ですね。私一人の力ではそれを行うことは出来ないのですが、遠方におります古い知人の力を使えばそれも可能だと思いますよ。少し時間はかかってしまうかもしれませんが、よろしいでしょうか?」
少し違うと思っていたシュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世ではあったが、少しどころではなく何もかもが違っているようにしか思えない。こんなに腰の低い人になることもあるのかと驚いていた。
俺もうまなちゃんも驚いてはいたのだけれど、一番驚いていたのは娘であるポンピーノ姫だろう。もしかしたら彼女が見てきた中に今みたいな感じのシュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世がいたのかもしれないが、仮にも一国の王である彼が家族以外にこんな姿を見せても良いものなのだろうか。俺にはわからなかった。
「じゃあ、あとはうまなちゃんにお願いするね。私は少し疲れたから休んでくるけど、今度こそ失敗しないでね。お兄さんも変な風にかき乱したりしないようにしてね。お姫様もだよ」
シュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世は部屋から出ていったイザーちゃんに何度も何度も手を振っていた。その姿はクラスメイトと別れを惜しむ女子高生のようにも見えたのだが、今まで見ていたシュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世がどう考えてもそんなキャラではないという事もあって、ココに連れてくる前にイザーちゃんが何かやったんだと考えてしまった。
たぶん、うまなちゃんもそう考えているだろう。
「あの、人間って別の世界で暮らしているとこんなに性格が変わるものなのでしょうか。先ほどまでのお父様も私の知っているお父様とは違うような気はしていたのですが、今のように全くの別人だと思うことはありませんでした。ですが、今目の前にいるお父様は姿かたち声に雰囲気も私のよく知っているお父様なのですが、どうしても同じ人だとは思えないのです。いったいどういう事なんでしょう?」
「私は上手く説明できないし、お兄ちゃんも説明することは出来ないと思うんだけどね。私が見たり聞いてきた話をまとめると、無数にある並行世界の数だけ私が存在していて良い私もいれば悪い私もいるって事なんだよ。目が合っただけで人を襲うような私もいれば、誰にも会いたくなくて部屋に引きこもっている私もいるのかもしれない。同じ私でも住んでいる世界が違えば全く違う性格になっている事もあるって事なんだよ。だから、イザーちゃんにはその無数の世界の中から私たちに凄く協力的な王様を探してきてもらうって話になってるんだけど、これはちょっとやっちゃってるんじゃないかなって思うんだよ」
「そうなんですね。にわかには信じがたい話ではありますが、目の前で見てきたことを考えるとそれも間違いではないという事がわかりますね。でも、このお父様は私もやり過ぎなんじゃないかなって思ってます」
俺もそう思っているよと言いたいところではあったけれど、シュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世がうまなちゃんの前までやって来るともじもじながら上目遣いでうまなちゃんの事をチラチラと見ていた。
自分の娘がすぐ隣にいるという事がわかっていないのか、それをわかったうえでやっているのかわからないが、凄く恥ずかしそうにうまなちゃんに何かを耳打ちしていた。
うまなちゃんはやたらと瞬きをしたまま俺を見ると、そのままシュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世に足払いをして倒して足首を掴んでシュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世の体を持ち上げていた。
頭が地面についたままのシュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世は何か楽しいことでもあったのかと思うくらいに笑顔をうまなちゃんに向けていたのだが、うまなちゃんはシュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世の体を先ほど振り回していた斧と同じように扱っていた。
床や壁に何度も何度も叩きつけられたシュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世は見るも無残な姿になり果ててしまったが、ゆっくりと扉を開けて入ってきたイザーちゃんの手で回収されると何事も無かったかのような感じにおさまってしまった。
うまなちゃんが何を言われたのか気になったので聞こうとしたのだけれど、うまなちゃんはどんな聞き方をしても答えてはくれなかった。
ポンピーノ姫も別世界の自分の父親が殺されることにも慣れてしまったのか、特に何かを言う事もなくイザーちゃんを見送る時も小さく手を振っているだけであった。
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