73 / 111
王様リセマラ
王様リセマラ 第十三話
しおりを挟む
柘榴ちゃんはシュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世を説得することは出来なかったのだが、次に挑戦する瑠璃はどこから出てくるのだろうと思うくらいに自信に満ち溢れていた。
「イザーさんにこれ以上迷惑かけないようにしなくちゃね。兄貴は私の邪魔をしないようにしてくれたらそれでいいから。変なことしないでよ」
「俺は見てるだけで何もしないよ。瑠璃に任せた方が失敗もしないと思うし」
「そうだよ。やっぱり兄貴はわかってくれてるね。じゃあ、サクッと終わらせてみんなでこの世界を楽しもうね」
新しいシュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世は先ほどまでとは見た目は一緒なのだが、歩き方や言葉遣いは別人ではないかと思ってしまうくらい変わっていた。
ポンピーノ姫もやってきたシュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世が自分の父親なのか確信が持てない様子であった。
「なんだお前らは、俺の娘の部屋で何をしている。返答次第では殺すぞ」
いきなり喧嘩腰で向かってくるシュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世に胸ぐらをつかまれた俺は少しだけビビってしまったが、瑠璃が俺たちの間に割って入ってシュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世を宥めようとしていた。
「勇者の称号を貰う前に陛下とお話をしておいた方が良いと思ってお姫様にご協力いただいていたんですよ。何もやましいことなどしてないですからね」
「そう言えばそんな話も聞いていたな。我が領土にいる魔王を倒したものが現れたという事だが、こいつのような軟弱物が魔王を倒したなど信じられぬな」
老人に近い年齢だと思われるシュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世ではあったが俺を掴む手は力強くこのまま抜け出すことは出来そうになかった。
俺の胸ぐらをつかんだままのシュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世は顔だけ瑠璃に向けると値踏みするようにつま先から頭の先までじっくりと見定めているようだ。
「お前はこの男の家族か?」
「そうですけど、それが何かありますか?」
「そうか、それは良いな。この男の罪を家族である貴様に償ってもらう事にしよう。たまには貴様のようなモノを相手にするのも良い余興となるであろうな」
「お父様、どうかそのようなことはおやめください。この方たちは魔王を討伐してくださったんですよ。そんな方を慰み者にしようなどと愚かなお考えはおやめください」
「案ずるな。お前のお前の思っているようなことはせぬ。魔王と戦って五体満足でいられるような強者だぞ、そんなモノたちに我が国の兵器を試させてもらうというのは良い案だと思うのだがな」
「いけません。それだけはダメです。そんな事をしても誰も幸せになりません」
「大丈夫だ。あの兵器が完成すればこの国は平和に近付くというものだ」
相変わらず俺の胸ぐらをつかんだままのシュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世ではあったが、俺の目の前であまり興奮してしゃべらないでほしいと心から願っていた。
瑠璃を使って兵器を試したいと言っているみたいだが、いったいどんな兵器が出てくるのだろうと少しだけ心躍らせてしまった。
何歳になっても男子というものは平気という言葉に心惹かれてしまうようだ。
俺の胸ぐらをつかんだまま部屋を出ようとしたシュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世ではあったが、さすがに俺を持ったまま部屋を出るのは面倒になったようで俺を壁に向かって投げていなくなってしまった。
俺は壁に当たったときに受け身をとったのでそこまでダメージは無かったのだ。壁に向かって投げられるという経験は過去にもしたことがあったので受け身をとることが出来たのかもしれないが、そんな経験をしたことに当然感謝などするはずも無かった。
「兄貴大丈夫か?」
瑠璃はシュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世には目もくれずに俺のもとへと駆け寄ってくれた。
どんな時でも俺の事を心配してくれる良い妹だと思いながら見ていたのだが、その事が気に入らなかったのか瑠璃は俺の顔を軽く押しのけると気まずそうに視線を外してポンピーノ姫に話しかけていた。
「王様ってあんな感じの人だったっけ。もう少し落ち着いた感じの人だったと思うんですけど」
「私もそれは感じていました。見た目も声も確かにお父様なのですが、私にはどうも別人にしか見えないのです。イザーさんが連れてきた別の世界のお父様だという事を知らなければお父様だとは思えなかったと思います」
「一番最初に見た王様だったら兄貴を掴んで投げ飛ばしたりなんて出来なかっただろうしね。そういう違いもあるという事は、私たちの話をちゃんと聞いてくれる王様もいるって事だもんね」
見た目も声も一緒だとしても性格まで完璧に一緒だという事はないのだろう。生まれた場所が一緒で環境が同じだとしても全く同じように成長するとは限らないし、そういった点を踏まえるとちゃんと俺たちの話を聞いてくれる王様がいるかもしれないという希望が持てるという事だ。
俺と瑠璃はそれを理解して次に希望をつなぐことが出来ると確信したのだが、今回のシュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世も俺たちの話を聞く気なんて更々ないという事がわかったのはマイナス要因かもしれない。
「大変です。私の予感が外れるとよいのですが、お父様はお二人で機械人形の試験をするつもりなのかもしれないです。さすがのお二人も機械人形の相手をするのは危険だと思いますので、今のうちにお逃げください」
「その気持ちはありがたいんだけど、王様はもう戻ってきたみたいですよ」
シュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世の周りを囲むように六体の人形が立っている。
表情を持たない人形はゆっくりと瑠璃の方へ顔を向けるとそのままこちらへと歩みを進めていた。
どれくらい強いのかわからない機械人形なので出方をうかがう瑠璃であった。
瑠璃の目の前まで進んできた機械人形は瑠璃の顔を下から覗き込むように見上げると、そのまま口からミサイルを発射していた。
「イザーさんにこれ以上迷惑かけないようにしなくちゃね。兄貴は私の邪魔をしないようにしてくれたらそれでいいから。変なことしないでよ」
「俺は見てるだけで何もしないよ。瑠璃に任せた方が失敗もしないと思うし」
「そうだよ。やっぱり兄貴はわかってくれてるね。じゃあ、サクッと終わらせてみんなでこの世界を楽しもうね」
新しいシュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世は先ほどまでとは見た目は一緒なのだが、歩き方や言葉遣いは別人ではないかと思ってしまうくらい変わっていた。
ポンピーノ姫もやってきたシュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世が自分の父親なのか確信が持てない様子であった。
「なんだお前らは、俺の娘の部屋で何をしている。返答次第では殺すぞ」
いきなり喧嘩腰で向かってくるシュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世に胸ぐらをつかまれた俺は少しだけビビってしまったが、瑠璃が俺たちの間に割って入ってシュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世を宥めようとしていた。
「勇者の称号を貰う前に陛下とお話をしておいた方が良いと思ってお姫様にご協力いただいていたんですよ。何もやましいことなどしてないですからね」
「そう言えばそんな話も聞いていたな。我が領土にいる魔王を倒したものが現れたという事だが、こいつのような軟弱物が魔王を倒したなど信じられぬな」
老人に近い年齢だと思われるシュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世ではあったが俺を掴む手は力強くこのまま抜け出すことは出来そうになかった。
俺の胸ぐらをつかんだままのシュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世は顔だけ瑠璃に向けると値踏みするようにつま先から頭の先までじっくりと見定めているようだ。
「お前はこの男の家族か?」
「そうですけど、それが何かありますか?」
「そうか、それは良いな。この男の罪を家族である貴様に償ってもらう事にしよう。たまには貴様のようなモノを相手にするのも良い余興となるであろうな」
「お父様、どうかそのようなことはおやめください。この方たちは魔王を討伐してくださったんですよ。そんな方を慰み者にしようなどと愚かなお考えはおやめください」
「案ずるな。お前のお前の思っているようなことはせぬ。魔王と戦って五体満足でいられるような強者だぞ、そんなモノたちに我が国の兵器を試させてもらうというのは良い案だと思うのだがな」
「いけません。それだけはダメです。そんな事をしても誰も幸せになりません」
「大丈夫だ。あの兵器が完成すればこの国は平和に近付くというものだ」
相変わらず俺の胸ぐらをつかんだままのシュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世ではあったが、俺の目の前であまり興奮してしゃべらないでほしいと心から願っていた。
瑠璃を使って兵器を試したいと言っているみたいだが、いったいどんな兵器が出てくるのだろうと少しだけ心躍らせてしまった。
何歳になっても男子というものは平気という言葉に心惹かれてしまうようだ。
俺の胸ぐらをつかんだまま部屋を出ようとしたシュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世ではあったが、さすがに俺を持ったまま部屋を出るのは面倒になったようで俺を壁に向かって投げていなくなってしまった。
俺は壁に当たったときに受け身をとったのでそこまでダメージは無かったのだ。壁に向かって投げられるという経験は過去にもしたことがあったので受け身をとることが出来たのかもしれないが、そんな経験をしたことに当然感謝などするはずも無かった。
「兄貴大丈夫か?」
瑠璃はシュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世には目もくれずに俺のもとへと駆け寄ってくれた。
どんな時でも俺の事を心配してくれる良い妹だと思いながら見ていたのだが、その事が気に入らなかったのか瑠璃は俺の顔を軽く押しのけると気まずそうに視線を外してポンピーノ姫に話しかけていた。
「王様ってあんな感じの人だったっけ。もう少し落ち着いた感じの人だったと思うんですけど」
「私もそれは感じていました。見た目も声も確かにお父様なのですが、私にはどうも別人にしか見えないのです。イザーさんが連れてきた別の世界のお父様だという事を知らなければお父様だとは思えなかったと思います」
「一番最初に見た王様だったら兄貴を掴んで投げ飛ばしたりなんて出来なかっただろうしね。そういう違いもあるという事は、私たちの話をちゃんと聞いてくれる王様もいるって事だもんね」
見た目も声も一緒だとしても性格まで完璧に一緒だという事はないのだろう。生まれた場所が一緒で環境が同じだとしても全く同じように成長するとは限らないし、そういった点を踏まえるとちゃんと俺たちの話を聞いてくれる王様がいるかもしれないという希望が持てるという事だ。
俺と瑠璃はそれを理解して次に希望をつなぐことが出来ると確信したのだが、今回のシュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世も俺たちの話を聞く気なんて更々ないという事がわかったのはマイナス要因かもしれない。
「大変です。私の予感が外れるとよいのですが、お父様はお二人で機械人形の試験をするつもりなのかもしれないです。さすがのお二人も機械人形の相手をするのは危険だと思いますので、今のうちにお逃げください」
「その気持ちはありがたいんだけど、王様はもう戻ってきたみたいですよ」
シュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世の周りを囲むように六体の人形が立っている。
表情を持たない人形はゆっくりと瑠璃の方へ顔を向けるとそのままこちらへと歩みを進めていた。
どれくらい強いのかわからない機械人形なので出方をうかがう瑠璃であった。
瑠璃の目の前まで進んできた機械人形は瑠璃の顔を下から覗き込むように見上げると、そのまま口からミサイルを発射していた。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜
八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。
第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。
大和型三隻は沈没した……、と思われた。
だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。
大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。
祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。
※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています!
面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※
※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる