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王様リセマラ
王様リセマラ 第十二話
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初めに言っておくが、俺は生まれてから一度も王様と直接話をしたことなどない。
ほとんどの人がそうだと思うけど、柘榴ちゃんはいつもと変わらぬ様子で少しも緊張などしていないようだ。俺は緊張して言葉も態度も変な感じになっているというのに、柘榴ちゃんは何一つ変わらずいつものままであった。
「あら、この世界の王様は意外と余裕が無いのね。私たちはあなたをどうこうするつもりなんて無いのだからそんなに警戒しなくても大丈夫よ。もっと王らしさを見せていただけるかしら」
強者の余裕なのか高い身分の人と接する機会が多かったからなのかわからないが、柘榴ちゃんはシュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世を前にしても慌てることもなく冷静なままであった。
逆に、俺やポンピーノ姫はどうしていいのかわからずに戸惑っていたし、シュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世も一見冷静に見えているが柘榴ちゃんの手が動くたびに口元に力が入っているように見えた。
柘榴ちゃんはシュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世を殺すつもりなんて微塵も無いと思うのだけど、彼から見ると自分を殺しに来た刺客に見えているのかもしれない。
「ポンピーノよ、なぜこのようなモノを部屋に招き入れているのだ。まさか、共謀して俺を殺すつもりなのか?」
「違いますよ。この方たちはお父様を殺すつもりなんて無いんです。お父様を殺すつもりでしたらもうすでにお父様は殺されていると思いますよ。この城にいる誰もが抵抗出来ずに一方的に命を奪われてしまう。それくらいこの方々との力の差は大きいのですよ」
「魔王を倒したというのが事実であるのならばポンピーノの言葉も偽りないものなのだろう。だが、本当にこの城の戦力をそんな人数でどうこう出来るとでも思っているのか?」
「もちろん出来るわよ。今はあなた方を殺す理由が無いからやらないだけで、私のいう事をちゃんと聞いてくださるんだったら命を奪う事なんてしないわ。それとも、この世に思い残すことなんて何もないという事なのかしら?」
柘榴ちゃんから殺気が放たれたのを感じ取ったのだが、俺に向けられたわけではない殺気なのにもかかわらず俺は思わず壁際まで逃げ出してしまった。何の気休めにもならないとは思うが、背後をとられると完全に死んでしまうと感じてしまったのだ。
一瞬とはいえ柘榴ちゃんの殺気をもろに受けてしまったシュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世は立ったまま意識を失っていた。
その横にいたポンピーノ姫はその場に座り込んでしまっていた。その目には涙を浮かべて口も半開きのまま逃げようとしているようだが、完全に腰が抜けてしまっているのかその場から動くこともでき無そうだった。
「ごめんなさいね。変なことを言うからついその気になっちゃったわ。私もまだまだ子供だという事ね。これからは気を付けるので許してくださるかしら。それにしても、お兄ちゃんまでそんな風になるなんて面白いわね。定期的にお兄ちゃんに同じことをやってみた方が良いのかしらね」
柘榴ちゃんは嬉しそうに微笑みながら俺を見つめていたけれど、その瞳の奥には冗談ではなく本気で俺を困らせてみたいという意志が感じられた。本気でないにしても、俺に向かって殺気を放つという事はやめていただきたい。
「私まで殺されるかと思ってしまいましたよ。どれだけの戦場を生き抜けばそれだけの殺気を放つことが出来るんですかね。私達には一生かかっても無理だというのはわかるのですが、この城にいる騎士の中にも柘榴さんほどの意志を持てる者などいないかもしれないですね」
「それはどうかしらね。肉体や精神の強度は人それぞれだと思うわよ。訓練次第では私よりも強くなれる方だっていると思うわ。私よりも強い人なんていくらでもいるんだからね」
柘榴ちゃんよりも強い人がいくらでもいるというのは嘘だと思うのだが、表情を見ている限り嘘をついているようには見えない。
相性の問題などもあるかもしれないが、命を簡単に奪うことが出来る魔法を使う柘榴ちゃんでも魔法が効かない相手だと苦戦するのかな。多分、うまなちゃんやイザーちゃんには柘榴ちゃんの魔法は効かないと思うし、瑠璃の呼び出した巨人に柘榴ちゃんの魔法が当たってもすり抜けていたので効果が無い相手もいるのかもしれない。
「あの、私の思い過ごしだといいのですが、お父様が息をしていないように見えるのですが」
ポンピーノ姫の言葉を受けて俺はシュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世の事を見てみたのだが、手も足も顔も何もかもが固まったまま動いてはいなかった。
単純に気絶をしているだけだと思っていたのだが、柘榴ちゃんの殺気を直接受けた恐怖で心臓が止まってしまったのかもしれない。
こんなことも実際にあるのかと思いながらも応急処置を行っていたのだが、残念なことにシュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世が再び動き出すことはなかった。
「失敗してしまったようね。これから話を聞いてもらおうと思っていたところだったのだけど、思っていたよりも弱い人だったという事なのね。次はお話を聞いてもらえるようにしなくちゃいけないという事なのかしら」
柘榴ちゃんは手を合わせてから部屋を出ていった。
入れ替わるように入ってきたイザーちゃんはシュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世を担いで部屋を出ていったのだ。
「次はちゃんとやってもらわないとね。お兄さんも危ないと思ったら止めないと駄目だからね」
そう言われたものの、俺が彼女たちの事を止めることなんて出来るわけがない。
部屋に残された俺とポンピーノ姫は苦笑いを浮かべることしかできなかった。
ほとんどの人がそうだと思うけど、柘榴ちゃんはいつもと変わらぬ様子で少しも緊張などしていないようだ。俺は緊張して言葉も態度も変な感じになっているというのに、柘榴ちゃんは何一つ変わらずいつものままであった。
「あら、この世界の王様は意外と余裕が無いのね。私たちはあなたをどうこうするつもりなんて無いのだからそんなに警戒しなくても大丈夫よ。もっと王らしさを見せていただけるかしら」
強者の余裕なのか高い身分の人と接する機会が多かったからなのかわからないが、柘榴ちゃんはシュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世を前にしても慌てることもなく冷静なままであった。
逆に、俺やポンピーノ姫はどうしていいのかわからずに戸惑っていたし、シュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世も一見冷静に見えているが柘榴ちゃんの手が動くたびに口元に力が入っているように見えた。
柘榴ちゃんはシュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世を殺すつもりなんて微塵も無いと思うのだけど、彼から見ると自分を殺しに来た刺客に見えているのかもしれない。
「ポンピーノよ、なぜこのようなモノを部屋に招き入れているのだ。まさか、共謀して俺を殺すつもりなのか?」
「違いますよ。この方たちはお父様を殺すつもりなんて無いんです。お父様を殺すつもりでしたらもうすでにお父様は殺されていると思いますよ。この城にいる誰もが抵抗出来ずに一方的に命を奪われてしまう。それくらいこの方々との力の差は大きいのですよ」
「魔王を倒したというのが事実であるのならばポンピーノの言葉も偽りないものなのだろう。だが、本当にこの城の戦力をそんな人数でどうこう出来るとでも思っているのか?」
「もちろん出来るわよ。今はあなた方を殺す理由が無いからやらないだけで、私のいう事をちゃんと聞いてくださるんだったら命を奪う事なんてしないわ。それとも、この世に思い残すことなんて何もないという事なのかしら?」
柘榴ちゃんから殺気が放たれたのを感じ取ったのだが、俺に向けられたわけではない殺気なのにもかかわらず俺は思わず壁際まで逃げ出してしまった。何の気休めにもならないとは思うが、背後をとられると完全に死んでしまうと感じてしまったのだ。
一瞬とはいえ柘榴ちゃんの殺気をもろに受けてしまったシュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世は立ったまま意識を失っていた。
その横にいたポンピーノ姫はその場に座り込んでしまっていた。その目には涙を浮かべて口も半開きのまま逃げようとしているようだが、完全に腰が抜けてしまっているのかその場から動くこともでき無そうだった。
「ごめんなさいね。変なことを言うからついその気になっちゃったわ。私もまだまだ子供だという事ね。これからは気を付けるので許してくださるかしら。それにしても、お兄ちゃんまでそんな風になるなんて面白いわね。定期的にお兄ちゃんに同じことをやってみた方が良いのかしらね」
柘榴ちゃんは嬉しそうに微笑みながら俺を見つめていたけれど、その瞳の奥には冗談ではなく本気で俺を困らせてみたいという意志が感じられた。本気でないにしても、俺に向かって殺気を放つという事はやめていただきたい。
「私まで殺されるかと思ってしまいましたよ。どれだけの戦場を生き抜けばそれだけの殺気を放つことが出来るんですかね。私達には一生かかっても無理だというのはわかるのですが、この城にいる騎士の中にも柘榴さんほどの意志を持てる者などいないかもしれないですね」
「それはどうかしらね。肉体や精神の強度は人それぞれだと思うわよ。訓練次第では私よりも強くなれる方だっていると思うわ。私よりも強い人なんていくらでもいるんだからね」
柘榴ちゃんよりも強い人がいくらでもいるというのは嘘だと思うのだが、表情を見ている限り嘘をついているようには見えない。
相性の問題などもあるかもしれないが、命を簡単に奪うことが出来る魔法を使う柘榴ちゃんでも魔法が効かない相手だと苦戦するのかな。多分、うまなちゃんやイザーちゃんには柘榴ちゃんの魔法は効かないと思うし、瑠璃の呼び出した巨人に柘榴ちゃんの魔法が当たってもすり抜けていたので効果が無い相手もいるのかもしれない。
「あの、私の思い過ごしだといいのですが、お父様が息をしていないように見えるのですが」
ポンピーノ姫の言葉を受けて俺はシュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世の事を見てみたのだが、手も足も顔も何もかもが固まったまま動いてはいなかった。
単純に気絶をしているだけだと思っていたのだが、柘榴ちゃんの殺気を直接受けた恐怖で心臓が止まってしまったのかもしれない。
こんなことも実際にあるのかと思いながらも応急処置を行っていたのだが、残念なことにシュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世が再び動き出すことはなかった。
「失敗してしまったようね。これから話を聞いてもらおうと思っていたところだったのだけど、思っていたよりも弱い人だったという事なのね。次はお話を聞いてもらえるようにしなくちゃいけないという事なのかしら」
柘榴ちゃんは手を合わせてから部屋を出ていった。
入れ替わるように入ってきたイザーちゃんはシュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世を担いで部屋を出ていったのだ。
「次はちゃんとやってもらわないとね。お兄さんも危ないと思ったら止めないと駄目だからね」
そう言われたものの、俺が彼女たちの事を止めることなんて出来るわけがない。
部屋に残された俺とポンピーノ姫は苦笑いを浮かべることしかできなかった。
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