上 下
71 / 111
王様リセマラ

王様リセマラ 第十一話

しおりを挟む
 ポンピーノ姫は何かに押し潰されているのではないかと思うくらいに頭を低い位置まで下げて俺たちに謝っていた。
 結果は何一つ出ていない状況ではあるが、俺としてはポンピーノ姫は十分にやってくれているとは思っている。ただ、あの王様たちの考えがあまりにも偏り過ぎているという事もあってポンピーノ姫一人だけではうまく説得しきれないのではないかという事になっていった。

「そういうわけですから、これからはシュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世を説得するのはポンピーノ姫だけではなくて真琴さんと誰か一人が一緒について説得するという事にしましょう」
「なんでお兄ちゃんが一緒なのは確定なの?」

 愛華ちゃんの提案で行われることになったポンピーノ姫を助けるメンバーは俺だけが固定であとは一人ずつ順番にという事になった。もちろん、一人目で上手くいけばそこで終わりになるのだが、みんなどことなく自信は無いように見えていた。
 ポンピーノ姫があれだけ熱心に話をしていたにもかかわらず、何の手ごたえも無い相手を俺たちが加わっただけで説得しきれるのかという気持ちがみんなからも滲み出ていた。

「真琴さんが確定なのに理由はいくつかあるんですけど、一番大きな理由としては真琴さんが魔王を倒したという実績があるからです。シュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世だって真琴さんがどんな人か知りたいと思ってるはずですし、お互いにどんな人なのか知ることが出来れば今までのような失礼な態度はとらなくなると思うんですよ」
「その理屈は何となくわかるんだけど、あのエラそうな王様が兄貴と会っただけでそんなに変わるとは思えないんだよね。周りの貴族の人達もそうだと思うんだけど、あの人たちって自分たち以外の人間を同じ人間だと思ってないんじゃないかな?」

「それはあるかもしれないです。同じ貴族としても家柄や家格で差別や区別が当たり前ですからね。お父様の代になってだいぶそれも和らいだという話ではありますが、母方のおじいさまは私が城下へ降りて友人を作ることに苦言を呈しているそうです」
「貴族って言うのは難しいのね。でも、私も少しだけその気持ちは理解できるかもしれないわ。うまなちゃん達にはわからないかもしれないけど、私も差別とまではいかないまでも仲間外れにされることが多かったからね。ほら、喫茶店でお話を聞いていただくときも周りの生徒たちは私と距離をとっていましたでしょ」
「柘榴ちゃんはみんなから怖がられていたもんね。私から見たら怖いところなんて何もないと思ってるけど、小さい時からしっかりしてるんで大人っぽいところがそう思われていたのかもね」

「そうなのね。私はそんなつもりはなかったんだけど、大人っぽいとマイナスなところもあったりするのは意外だわ。うまなちゃんも大人っぽいところはあると思うんだけど、子供っぽい無邪気さもあるのでそこがみんなから好かれる要因なのかもしれないわね」
「うまなちゃんに大人っぽいところとかあんまりないと思うけどな。すぐムキになるし」
「私はそんなにムキになったりしないよ。大人だからそんなことないし」

 いや、それがムキになってるって事じゃないか。と、心の中で叫んでいたが他のみんなも何か言いたそうな顔でうまなちゃんの事を見ているのであった。

 落ち着きや仕草なんかを見ていると先生である瑠璃よりも高校生である柘榴ちゃんの方が大人っぽく見えてしまう。俺から見れば柘榴ちゃんも子供にしか見えないのだけれど、彼女たちの同年代の仲間から見るとあの落ち着き方と何でも見透かしているような視線は恐怖に感じることもあるかもしれない。俺にはそんな経験はないのだけど、俺が高校生の時に同級生に柘榴ちゃんのような人がいたら話しかけずらいかもしれないな。

「それだったら、一番目に説得に行くのは柘榴さんが良いんじゃないですかね。私たちの中でも身分の高い人たちと接する機会が一番多かったと思いますし」
「あら、それなら私よりもうまなちゃんの方が相応しいと思うわよ。うまなちゃんはご両親と一緒に何度もそういった方たちと接しているんですからね。栗宮院家の一人娘として様々な場に訪れているのだから私よりも相応しいんじゃないかしら」

「それはどうだろう。私が見てる限りだけど、うまなちゃんは年配のおじさんたちに気に入られる才能もあると思うんだ。でも、あの王様たちは身近にポンピーノがいるからうまなちゃんの魅力もあんまり効果ないような気がしているよ。それだったら、私もうまなちゃんじゃなくて柘榴ちゃんが最初に行った方が良いと思うんだよね」
「そうね。でも、それだったら私よりも瑠璃先生の方が相応しいのではないかしら。みんなからどう見られているかは正直分かっていないけれど、私はまだまだ子供ですからね。そんな子供である私よりも大人である瑠璃先生が最初に行った方がよろしいのではないかしら」

 気配を消して空気に徹している瑠璃は突然の指名に驚いていた。
 どんな事にも逃げずに立ち向かっていた瑠璃がこの話になったとたんに存在感を消しているのに気付いていたのであまり触れないようにしていたのだが、そんな瑠璃の気持ちを無視して柘榴ちゃんは嬉しそうに瑠璃を指名していたのだ。

「ごめんなさい。私にはそういった偉い人たちと触れ合った経験が無いから難しいと思う。もちろん、やれと言われれば全力は出すつもりだけど、最初は可能性の高い柘榴さんが行った方が良いんじゃないかな。兄貴と柘榴さんのコンビでパパっと終わらせるのも良いんじゃないかと思うよ」

 申し訳なさそうな瑠璃と自信満々といった感じの柘榴ちゃんの表情はとても対照的であった。
 柘榴ちゃんと一緒に王様を説得出来るといいな。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

男女比1:10。男子の立場が弱い学園で美少女たちをわからせるためにヒロインと手を組んで攻略を始めてみたんだけど…チョロいんなのはどうして?

ファンタジー
貞操逆転世界に転生してきた日浦大晴(ひうらたいせい)の通う学園には"独特の校風"がある。 それは——男子は女子より立場が弱い 学園で一番立場が上なのは女子5人のメンバーからなる生徒会。 拾ってくれた九空鹿波(くそらかなみ)と手を組み、まずは生徒会を攻略しようとするが……。 「既に攻略済みの女の子をさらに落とすなんて……面白いじゃない」 協力者の鹿波だけは知っている。 大晴が既に女の子を"攻略済み"だと。 勝利200%ラブコメ!? 既に攻略済みの美少女を本気で''分からせ"たら……さて、どうなるんでしょうねぇ?

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...