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王様リセマラ
王様リセマラ 第五話
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「余がシュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世である。貴様が魔王を倒したというのか。にわかには信じられぬ話ではあるが、貴様らが魔王城から生還したというのが何よりの証拠ではあろうな。それにしても、何とも奇妙な服装であるな。そのような軽装で魔王と戦ったという事なのか?」
「私たちが魔王城で見た時も今と同じ服装でした。この男だけは鎧も盾も身につけず武器の類も使用している形跡はありませんでした」
「なるほど。余程自分の腕に自信があるという事ですな。一般市民よりも軽装で魔王に挑むなど愚策かとも思いますが、それだけ自信があるという事なのでしょう。ですが、この者の仲間の女性は皆王国内でも並ぶものが無いほどの特別な素材の服を着ているようですぞ」
「やはりそうであるか。余もその方達の服を一目見た時から只ならぬモノを感じておったぞ」
「さすが陛下でございます。誰よりも真実を見抜く目をお持ちですな」
真実の目をお持ちである陛下が俺が魔王を倒したという事を信じていないのはどういうことなのだろうか。まあ、俺も最後の一撃をたまたま入れただけでしかないので魔王を倒したという実感はないのだけど、疑われてしまうのは魔王と戦ってくれていた五人にも申し訳ない気持ちになってしまう。
それに、瑠璃たちを見ているこいつらの視線が魔王を倒した俺たちをたたえるモノではなく、娼婦を品定めしている男にしか見えない。
女性は瑠璃たち以外にはあの姫しかいないというのもあるが、鼻の下を伸ばして口角が上がっている男ばかりが目に付いていた。
「となると、あのむさ苦しい男の着ている物も何か特別な」
「この男の着ている服はこの世界の素材を使用してはいませんが、ごく普通の衣類としての機能しかないようございます」
「そうではないかと思ったところだ。何か特別な素材を使ってはいるように見えるのだが、精霊の加護なども無いごくありふれた普段着のように見えるぞ」
「さすがは陛下。敬服いたします」
このやり取りはいったい何なんだろう。こんなものを見せられるのは少しつらいものがある。
これであれば、先ほどみたいに一言二言で終わってくれた方がマシだったという思いまであるな。
「ねえ、あの王様ってヤバくない。何もわかってないみたいだよ」
「そうかもしれないね。もっと普通の人を連れてこれたらよかったんだけど、一番近い世界線の所から連れてきちゃったから仕方ないのかな」
「別の世界の住人を見たのは初めてだけど、見た目は同じなのに中身が全然違う事もあるのね。私と同じ人も私と違う性格をしているのかしら」
「柘榴さんならどこの世界でも変わらない感じがするけど、そういった人の方が大きく違ったりするのかもしれないね。イザーさんはどう思うの?」
「他の世界の柘榴達には会わないようにしてるからわからないな。私が一緒にいる人たちに向こうで会うと良くない影響が出るかもしれないんだ。だから、あんまり知り合いには会わないようにしてるんだよ」
「そうなのね。少し残念だわ。という事は、イザーちゃんが他の世界で会ってるのってこっちの世界で死んだ人だけって事になるのかしら?」
「基本的にはそういう事になるね。でも、あのお姫様は向こうの世界だと昔のお兄さんみたいに自分の部屋に引きこもってたみたいだよ」
俺と同じ引きこもりか。何か急に親近感がわいてきたけど、この世界のお姫様は普通にココに出てきてる時点で引きこもりではないんだよな。そう考えると、別の世界線の俺は普通に高校を卒業して大学にでも行って就職しているのかもしれないな。
そんな姿は想像できないけど、俺も瑠璃みたいに普通に就職しているかのせいもあったという事なんだ。いや、普通に就職なんて出来ていないかもしれない。今みたいな生活スタイルが一番俺にあっているようにも思えるけど、知らない世界に勝手に連れていかれるというのはあまり好きではないかもしれない。
「あの人たちって、私たちの事をエッチな目で見てるよね。私みたいに大人の女性をそういう目で見るのは仕方ないけど、みんなはまだ高校生なんだからそんな目で見られるのは良くないことよね」
「傷付けてしまったらごめんなさいだけど、たぶんみんなは瑠璃先生じゃなくて愛華の事を見てるんだと思うよ。ほら、瑠璃先生があの人たちを見ても誰とも目が合わないでしょ。それって、瑠璃先生の事を見てるわけじゃないって事なんじゃないかな?」
愛華ちゃんみたいに胸に迫力がある人は男なら誰でも見てしまうかもしれないな。
今みたいに学者風の服を着て胸をつぶしているのにもかかわらず、ここにいる女性よりもふくよかなモノをお持ちなのだ。
瑠璃はうまなちゃんに言い返そうとしていたみたいだけど、瑠璃の口から何か反論が出てくることはなかった。
自分の事を確かめるように足元を確認している瑠璃を見てしまったわけだが、そのすぐ後に顔をあげた状態の瑠璃と目が合ってしまったのは失敗だったかもしれない。
何かを言われるというわけではないが、あんなに悲しそうな顔をした瑠璃を見るのは胸が締め付けられる思いだ。俺の方が胸囲があるというのも悲しい現実かもしれない。
「兄貴さ、家に帰ったら言いたいことがあるから」
「私もお兄ちゃんに言いたいことできたかも」
「私もお兄さんに言っちゃおうかな」
「あら、それなら私もお兄ちゃんに何か言ってみようかしら」
「それよりも、あの王様の名前って凄い名前だよね。大丈夫なのかな?」
愛華ちゃんが何を心配しているのかわからないが、俺の事も心配してほしいなと思ってしまった。
「私たちが魔王城で見た時も今と同じ服装でした。この男だけは鎧も盾も身につけず武器の類も使用している形跡はありませんでした」
「なるほど。余程自分の腕に自信があるという事ですな。一般市民よりも軽装で魔王に挑むなど愚策かとも思いますが、それだけ自信があるという事なのでしょう。ですが、この者の仲間の女性は皆王国内でも並ぶものが無いほどの特別な素材の服を着ているようですぞ」
「やはりそうであるか。余もその方達の服を一目見た時から只ならぬモノを感じておったぞ」
「さすが陛下でございます。誰よりも真実を見抜く目をお持ちですな」
真実の目をお持ちである陛下が俺が魔王を倒したという事を信じていないのはどういうことなのだろうか。まあ、俺も最後の一撃をたまたま入れただけでしかないので魔王を倒したという実感はないのだけど、疑われてしまうのは魔王と戦ってくれていた五人にも申し訳ない気持ちになってしまう。
それに、瑠璃たちを見ているこいつらの視線が魔王を倒した俺たちをたたえるモノではなく、娼婦を品定めしている男にしか見えない。
女性は瑠璃たち以外にはあの姫しかいないというのもあるが、鼻の下を伸ばして口角が上がっている男ばかりが目に付いていた。
「となると、あのむさ苦しい男の着ている物も何か特別な」
「この男の着ている服はこの世界の素材を使用してはいませんが、ごく普通の衣類としての機能しかないようございます」
「そうではないかと思ったところだ。何か特別な素材を使ってはいるように見えるのだが、精霊の加護なども無いごくありふれた普段着のように見えるぞ」
「さすがは陛下。敬服いたします」
このやり取りはいったい何なんだろう。こんなものを見せられるのは少しつらいものがある。
これであれば、先ほどみたいに一言二言で終わってくれた方がマシだったという思いまであるな。
「ねえ、あの王様ってヤバくない。何もわかってないみたいだよ」
「そうかもしれないね。もっと普通の人を連れてこれたらよかったんだけど、一番近い世界線の所から連れてきちゃったから仕方ないのかな」
「別の世界の住人を見たのは初めてだけど、見た目は同じなのに中身が全然違う事もあるのね。私と同じ人も私と違う性格をしているのかしら」
「柘榴さんならどこの世界でも変わらない感じがするけど、そういった人の方が大きく違ったりするのかもしれないね。イザーさんはどう思うの?」
「他の世界の柘榴達には会わないようにしてるからわからないな。私が一緒にいる人たちに向こうで会うと良くない影響が出るかもしれないんだ。だから、あんまり知り合いには会わないようにしてるんだよ」
「そうなのね。少し残念だわ。という事は、イザーちゃんが他の世界で会ってるのってこっちの世界で死んだ人だけって事になるのかしら?」
「基本的にはそういう事になるね。でも、あのお姫様は向こうの世界だと昔のお兄さんみたいに自分の部屋に引きこもってたみたいだよ」
俺と同じ引きこもりか。何か急に親近感がわいてきたけど、この世界のお姫様は普通にココに出てきてる時点で引きこもりではないんだよな。そう考えると、別の世界線の俺は普通に高校を卒業して大学にでも行って就職しているのかもしれないな。
そんな姿は想像できないけど、俺も瑠璃みたいに普通に就職しているかのせいもあったという事なんだ。いや、普通に就職なんて出来ていないかもしれない。今みたいな生活スタイルが一番俺にあっているようにも思えるけど、知らない世界に勝手に連れていかれるというのはあまり好きではないかもしれない。
「あの人たちって、私たちの事をエッチな目で見てるよね。私みたいに大人の女性をそういう目で見るのは仕方ないけど、みんなはまだ高校生なんだからそんな目で見られるのは良くないことよね」
「傷付けてしまったらごめんなさいだけど、たぶんみんなは瑠璃先生じゃなくて愛華の事を見てるんだと思うよ。ほら、瑠璃先生があの人たちを見ても誰とも目が合わないでしょ。それって、瑠璃先生の事を見てるわけじゃないって事なんじゃないかな?」
愛華ちゃんみたいに胸に迫力がある人は男なら誰でも見てしまうかもしれないな。
今みたいに学者風の服を着て胸をつぶしているのにもかかわらず、ここにいる女性よりもふくよかなモノをお持ちなのだ。
瑠璃はうまなちゃんに言い返そうとしていたみたいだけど、瑠璃の口から何か反論が出てくることはなかった。
自分の事を確かめるように足元を確認している瑠璃を見てしまったわけだが、そのすぐ後に顔をあげた状態の瑠璃と目が合ってしまったのは失敗だったかもしれない。
何かを言われるというわけではないが、あんなに悲しそうな顔をした瑠璃を見るのは胸が締め付けられる思いだ。俺の方が胸囲があるというのも悲しい現実かもしれない。
「兄貴さ、家に帰ったら言いたいことがあるから」
「私もお兄ちゃんに言いたいことできたかも」
「私もお兄さんに言っちゃおうかな」
「あら、それなら私もお兄ちゃんに何か言ってみようかしら」
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