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王様リセマラ
王様リセマラ 第四話
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バラバラに飛び散った肉片を綺麗に片付けると、何事も無かったかのようにイザーちゃんが玉座に座って周りを見回していた。
目も口もあけたままのお姫様はイザーちゃんと目が合うと声にならない悲鳴を上げてその場に座り込んでしまった。
「あなたお姫様でしょ。お漏らしなんてはしたないわよ」
お姫様のスカートが一部変色しているのはそういう理由なのかと思ったが、お姫様はそんな事を気にするわけもなくイザーちゃんから離れようと体をのけ反らせていた。
だが、腰が抜けているのかお姫様はその場から動くことは出来なかった。
「あなたも子供じゃないんだから自分の不始末くらいは自分で何とかしなさいよ。じゃあ、私たちが殺した人たちを連れてくるからそれまでに着替えも済ませておきなさいよ」
「ちょちょちょちょっと、意味が分からないんだけど。なんで、なんでなんでなんでなんで、なんでみんな殺されたの?」
「なんでって、あなたたちがお兄さんの事をバカにしたからでしょ」
「そうよ。お兄ちゃんの事バカにした罰よ」
「別にバカになんてしてないと思うけど」
「バカにしてないって事は、アレはあなたたちの素って事になるけど良いのかな?」
「そっちの方がタチが悪いと思うんだけど」
「そ、そそそそ、そういう意味じゃなくて、私たちは勇者様のお召し物が珍しいと思って興味を持っただけですし」
「そんな感じじゃなかったと思うけどな。ねえ、勇者の称号を与える儀式ってあんな一言で終わるようなものなの?」
「一言ではなかったと思うけど」
「そういう事を言ってるんじゃないってわかるよね?」
みんなから詰められているお姫様を見ると少し気の毒に思えてきた。
彼らからしてみれば俺みたいな良くわからない男とあまり長い時間関わりたくないと思ってしまうかもしれないな。立場が逆なら俺もそう思っていたかもしれない。
でも、それでみんなの怒りを買ってしまうんだとしたら、考え方を改めた方が良いかもしれないな。
「お兄さんは私達には出来ない魔王を倒すって事が出来る勇者であることはわかってるよね?」
「はい、それはみんなわかってます」
「それをわかってるのに、あんな態度をとるなんてどうなのかな?」
「良くないと思います」
「それがわかってるならいいんだよ。でも、他の人達はその事をわかってなかったのかな?」
「そうだと思います」
完全に答えを誘導しているようにしか思えないのだが、お姫様はイザーちゃんが動くたびに表情をこわばらせていた。
何か一つでも選択を間違えると殺されてしまう。そんな緊張感がお姫様から感じられていた。
「そんなに緊張しなくても大丈夫だよ。私たちはあなたをどうこうしようなんて思ってないから。ほら、お姉ちゃんだけは私達よりも少し年上だけどさ、あなたと私たちは年齢も近いと思うのよ。だから、あなたなら私たちの気持ちを理解してくれると思って生かしているのよ」
お姫様はその言葉を聞いて小さく頷いていたが、その意味を理解することはないだろう。
俺だってイザーちゃんが他の世界に行ったり来たりして人を連れてきて交換してるなんて信じられないのだ。この目で何度も見てるはずなのに、そんな事が本当に起こっているなんて信じられないのだ。
「そうだ、お姫様の名前を聞いてなかったわね。お名前を教えて貰っても良いかな?」
「私の名前ですか。私はポンピーノです」
「私の話をよく聞いてね。今から私はココにいた人たちを連れてくるんだけど、今までと同じように接してあげてね。あなたが少しでも変な言動をとってしまったら私はあなたの事も殺さないといけなくなっちゃうのよ。それだけは理解してほしいな。ポンピーノ、あなたはお利口さんだから私の言いたいことはわかるよね?」
ポンピーノ姫はイザーちゃんの言葉を理解しているのかはわからないけど、怯えた表情のまま深く頷いていた。
イザーちゃんはポンピーノ姫の手を引いてそのまま玉座の奥にある扉へと向かっていった。とても楽しそうなイザーちゃんとは対照的にポンピーノ姫は浮かない表情でややうつむき気味に歩いていた。
「イザーちゃんが連れてくる王様たちはみんなちゃんとしてる人たちだといいね」
「そうね。全員がちゃんとしてる可能性は低いかもしれないけれど、王様くらいはまともだといいわね」
「またおかしなことを言う人だったら私が撃ち殺してあげますよ」
「兄貴の事をバカにされるのは悔しいもんね」
俺の事で怒ってくれるのは嬉しいことではあるけれど、他の世界から同じ人たちを連れてくることが出来るとは言えこんなに簡単に王様たちを殺してしまってもいいのだろうか。この世界だけではなく他の世界にも良くない影響を与えてしまうような気がするのだが、彼女たちにとってはそんな影響なんて気にする必要もない些細なコトだとでも言うのだろうか。
俺たちが最初に入ってきた扉が開くと何事も無かったかのように貴族たちが入ってきていた。
相変わらず俺の事を小バカにしたような態度をとっている人たちばかりなのだが、イザーちゃんが連れてきた人たちは先ほどまで生きていた人たちと何も変わっていないのかもしれない。
このままだと、王様も貴族たちも誰一人として何も変わらないのかもしれないな。
目も口もあけたままのお姫様はイザーちゃんと目が合うと声にならない悲鳴を上げてその場に座り込んでしまった。
「あなたお姫様でしょ。お漏らしなんてはしたないわよ」
お姫様のスカートが一部変色しているのはそういう理由なのかと思ったが、お姫様はそんな事を気にするわけもなくイザーちゃんから離れようと体をのけ反らせていた。
だが、腰が抜けているのかお姫様はその場から動くことは出来なかった。
「あなたも子供じゃないんだから自分の不始末くらいは自分で何とかしなさいよ。じゃあ、私たちが殺した人たちを連れてくるからそれまでに着替えも済ませておきなさいよ」
「ちょちょちょちょっと、意味が分からないんだけど。なんで、なんでなんでなんでなんで、なんでみんな殺されたの?」
「なんでって、あなたたちがお兄さんの事をバカにしたからでしょ」
「そうよ。お兄ちゃんの事バカにした罰よ」
「別にバカになんてしてないと思うけど」
「バカにしてないって事は、アレはあなたたちの素って事になるけど良いのかな?」
「そっちの方がタチが悪いと思うんだけど」
「そ、そそそそ、そういう意味じゃなくて、私たちは勇者様のお召し物が珍しいと思って興味を持っただけですし」
「そんな感じじゃなかったと思うけどな。ねえ、勇者の称号を与える儀式ってあんな一言で終わるようなものなの?」
「一言ではなかったと思うけど」
「そういう事を言ってるんじゃないってわかるよね?」
みんなから詰められているお姫様を見ると少し気の毒に思えてきた。
彼らからしてみれば俺みたいな良くわからない男とあまり長い時間関わりたくないと思ってしまうかもしれないな。立場が逆なら俺もそう思っていたかもしれない。
でも、それでみんなの怒りを買ってしまうんだとしたら、考え方を改めた方が良いかもしれないな。
「お兄さんは私達には出来ない魔王を倒すって事が出来る勇者であることはわかってるよね?」
「はい、それはみんなわかってます」
「それをわかってるのに、あんな態度をとるなんてどうなのかな?」
「良くないと思います」
「それがわかってるならいいんだよ。でも、他の人達はその事をわかってなかったのかな?」
「そうだと思います」
完全に答えを誘導しているようにしか思えないのだが、お姫様はイザーちゃんが動くたびに表情をこわばらせていた。
何か一つでも選択を間違えると殺されてしまう。そんな緊張感がお姫様から感じられていた。
「そんなに緊張しなくても大丈夫だよ。私たちはあなたをどうこうしようなんて思ってないから。ほら、お姉ちゃんだけは私達よりも少し年上だけどさ、あなたと私たちは年齢も近いと思うのよ。だから、あなたなら私たちの気持ちを理解してくれると思って生かしているのよ」
お姫様はその言葉を聞いて小さく頷いていたが、その意味を理解することはないだろう。
俺だってイザーちゃんが他の世界に行ったり来たりして人を連れてきて交換してるなんて信じられないのだ。この目で何度も見てるはずなのに、そんな事が本当に起こっているなんて信じられないのだ。
「そうだ、お姫様の名前を聞いてなかったわね。お名前を教えて貰っても良いかな?」
「私の名前ですか。私はポンピーノです」
「私の話をよく聞いてね。今から私はココにいた人たちを連れてくるんだけど、今までと同じように接してあげてね。あなたが少しでも変な言動をとってしまったら私はあなたの事も殺さないといけなくなっちゃうのよ。それだけは理解してほしいな。ポンピーノ、あなたはお利口さんだから私の言いたいことはわかるよね?」
ポンピーノ姫はイザーちゃんの言葉を理解しているのかはわからないけど、怯えた表情のまま深く頷いていた。
イザーちゃんはポンピーノ姫の手を引いてそのまま玉座の奥にある扉へと向かっていった。とても楽しそうなイザーちゃんとは対照的にポンピーノ姫は浮かない表情でややうつむき気味に歩いていた。
「イザーちゃんが連れてくる王様たちはみんなちゃんとしてる人たちだといいね」
「そうね。全員がちゃんとしてる可能性は低いかもしれないけれど、王様くらいはまともだといいわね」
「またおかしなことを言う人だったら私が撃ち殺してあげますよ」
「兄貴の事をバカにされるのは悔しいもんね」
俺の事で怒ってくれるのは嬉しいことではあるけれど、他の世界から同じ人たちを連れてくることが出来るとは言えこんなに簡単に王様たちを殺してしまってもいいのだろうか。この世界だけではなく他の世界にも良くない影響を与えてしまうような気がするのだが、彼女たちにとってはそんな影響なんて気にする必要もない些細なコトだとでも言うのだろうか。
俺たちが最初に入ってきた扉が開くと何事も無かったかのように貴族たちが入ってきていた。
相変わらず俺の事を小バカにしたような態度をとっている人たちばかりなのだが、イザーちゃんが連れてきた人たちは先ほどまで生きていた人たちと何も変わっていないのかもしれない。
このままだと、王様も貴族たちも誰一人として何も変わらないのかもしれないな。
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