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悪魔狩り
悪魔狩り 第十六話
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強いモノが正義であるかという事に関しては議論もあるだろうが、弱いモノが正義だという事に関しては誰もが否定するだろう。正義となるためには負けない強さが必要になるのだ。
野城圭重は弱者ではないことは間違いないのだが、強者なのかと言われると返答に困ってしまう。
うまなちゃんが誘拐された時に見たイザーちゃんと愛華ちゃんの躊躇のない強さを見てしまった俺には野城圭重も普通の人にしか見えないのだ。
悪魔の夢を見る。そんな奇妙なことが日常になりつつあった彼は少しずつ精神を蝕まれていき、己が強者であるという事を忘れてしまいそうになっていたのだった。
「圭重先輩が見る夢って、私たちも見ることが出来るのかな?」
「出来ると思いますよ。今すぐにって事は難しいかもしれないですけど、イザーさんと奈緒美さんが協力してくれたらそんなに時間はかからないと思います」
人の見ている夢を覗き見ることなんて許されることではないと思う。だが、野城圭重は悪魔の夢を見ている間は少しずつ体も心も弱っているようで、相談に来るたびに体力も無くなっているようにしか見えないのだ。
それにしても、イザーちゃんと愛華ちゃんと奈緒美さんが手を組むとどんな不可能なことでも可能にしてしまう装置を作るというのはやりすぎなような気もしている。
イザーちゃんが他の世界から連れてきた人とこの世界に住んでいる人を入れ替えるという事もズルいことだとは思うのだけど、それ以上に三人がやっていることは反則だと思ってしまう。ゲームやアニメの世界でそんな事をしてしまうと、自分たちがやってきたことがただの時間稼ぎでしかなかったんだと思ってしまいそうだ。
俺は野城圭重の夢を見るという事に関して否定的は立場をとっているのだが、俺以外の人達は彼の見ている夢を覗くことに対して肯定的な意見を持っている。教師である瑠璃は何がそこまで気になるのかわからないが、野城圭重の見ている夢を覗くことの肯定派の中でも一番その思いが強いのかもしれない。
「お兄ちゃんは圭重先輩の夢を見たくないのに瑠璃先生は見たいって思うんだね。先生が生徒の夢を覗いちゃうのって大丈夫なのかな?」
「大丈夫じゃないかな。私は野城君の悩みを解決したいって思ってるだけだし、野城君が見ている夢を私たちが見ることで彼の悩みを解決することが出来るんじゃないかなって思うんだ。悪魔とかがどんな姿なのか見てみたいって好奇心だけで言ってるわけじゃないからね」
「そんな風に言うと、お前がそう思っているようにしか聞こえないんだが」
「兄貴は黙ってて。あと、お前って言うな」
「瑠璃先生のいう事もわかるな。私も圭重先輩が悩んでいるって打ち明けてくれたことに対して力になりたいって思ってるもん。そのためにはイザーちゃんたちに圭重先輩の見ている夢を覗く装置を早く作ってもらわないとね」
「その装置が完成したらまずは兄貴で試さないとね。どんな悪いことを考えてるのか妹として知らないといけないと思うし」
「あ、その時は私も見たいかも。やっぱり、みんなを集めて上映会とかした方が良いかもね。お兄ちゃんの見ている夢をみんなで見守るってのは面白いかもしれないね」
ココはあえて俺が反応しないことで俺の話題を忘れ去ってもらおうという作戦に出たのだが、人が増えるたびに俺の夢を見るという話になってしまって忘れてもらうことは出来そうになかった。
それどころか、その話を聞いたイザーちゃんをはじめとする装置開発チームの面々がやる気になっているというのは気になってしまった。イザーちゃんと愛華ちゃんと奈緒美さんの他にも白衣を着ている研究者にしか見えない人たちが俺の事をじっと見てくるのだが、彼女たちはいったい何者なのだろうか。
「そう言えば紹介して無かったね。この人たちは私たちの作っている装置を手伝ってもらうために別の世界線からやってきてもらった各分野の天才の人達です。彼女たちの知識と経験も借りて何とか装置を作ろうと思ってるんだ。私たち三人だけだったら時間もかかってしまいそうだしね」
イザーちゃんの紹介に合わせて彼女たちも何かしゃべってはいるのだが、残念なことに彼女たちの言葉を理解することは俺には出来なかった。
横を見た感じでは、瑠璃もうまなちゃんも彼女たちの言葉を理解していないんだろうなという事は伝わってきた。うまなちゃんは何故か彼女たちの言葉をわかった風を装っているのだけど、うまなちゃんの目を見る限りでは俺と同じく何も理解していないようにしか見えなかった。
俺たちは終わることのなさそうなたこ焼きブームの波にしっかりと乗っているので今回もお茶請けとしてたこ焼きを食べているのだ。
いつ食べても瑠璃とうまなちゃんの味を再現していると思うのだが、うまなちゃんも瑠璃も自分が教えている方のたこ焼きを食べようとはしなかった。食べなれているはずの自分のたこ焼きよりも隣にいる相手が作っているたこ焼きの方が食べたいという事なのかもしれないな。
「夢を見る装置が完成するまでもう少し時間がかかるかもしれないからさ、お兄さん以外のみんなは仮眠でもとってていいからね。お兄さんは私たちに夢を見せるまでは寝るの禁止ですよ」
寝るのを禁止されるのは酷い話だと思ったが、それ以上に酷いと思ったのは彼女たちの間ではもうすでに俺の夢を見るという事が決定事項になってしまっているようだ。
俺は当然そんな事を許可するつもりなんてないのだが、俺は逃げることも隠れることも出来ないのだ。
そもそも、鍵が一つもないあの部屋から逃げ出すなんて無理な話なのだ。
俺が逃げ出す前に簡単に捕まってしまうだろうな。
野城圭重は弱者ではないことは間違いないのだが、強者なのかと言われると返答に困ってしまう。
うまなちゃんが誘拐された時に見たイザーちゃんと愛華ちゃんの躊躇のない強さを見てしまった俺には野城圭重も普通の人にしか見えないのだ。
悪魔の夢を見る。そんな奇妙なことが日常になりつつあった彼は少しずつ精神を蝕まれていき、己が強者であるという事を忘れてしまいそうになっていたのだった。
「圭重先輩が見る夢って、私たちも見ることが出来るのかな?」
「出来ると思いますよ。今すぐにって事は難しいかもしれないですけど、イザーさんと奈緒美さんが協力してくれたらそんなに時間はかからないと思います」
人の見ている夢を覗き見ることなんて許されることではないと思う。だが、野城圭重は悪魔の夢を見ている間は少しずつ体も心も弱っているようで、相談に来るたびに体力も無くなっているようにしか見えないのだ。
それにしても、イザーちゃんと愛華ちゃんと奈緒美さんが手を組むとどんな不可能なことでも可能にしてしまう装置を作るというのはやりすぎなような気もしている。
イザーちゃんが他の世界から連れてきた人とこの世界に住んでいる人を入れ替えるという事もズルいことだとは思うのだけど、それ以上に三人がやっていることは反則だと思ってしまう。ゲームやアニメの世界でそんな事をしてしまうと、自分たちがやってきたことがただの時間稼ぎでしかなかったんだと思ってしまいそうだ。
俺は野城圭重の夢を見るという事に関して否定的は立場をとっているのだが、俺以外の人達は彼の見ている夢を覗くことに対して肯定的な意見を持っている。教師である瑠璃は何がそこまで気になるのかわからないが、野城圭重の見ている夢を覗くことの肯定派の中でも一番その思いが強いのかもしれない。
「お兄ちゃんは圭重先輩の夢を見たくないのに瑠璃先生は見たいって思うんだね。先生が生徒の夢を覗いちゃうのって大丈夫なのかな?」
「大丈夫じゃないかな。私は野城君の悩みを解決したいって思ってるだけだし、野城君が見ている夢を私たちが見ることで彼の悩みを解決することが出来るんじゃないかなって思うんだ。悪魔とかがどんな姿なのか見てみたいって好奇心だけで言ってるわけじゃないからね」
「そんな風に言うと、お前がそう思っているようにしか聞こえないんだが」
「兄貴は黙ってて。あと、お前って言うな」
「瑠璃先生のいう事もわかるな。私も圭重先輩が悩んでいるって打ち明けてくれたことに対して力になりたいって思ってるもん。そのためにはイザーちゃんたちに圭重先輩の見ている夢を覗く装置を早く作ってもらわないとね」
「その装置が完成したらまずは兄貴で試さないとね。どんな悪いことを考えてるのか妹として知らないといけないと思うし」
「あ、その時は私も見たいかも。やっぱり、みんなを集めて上映会とかした方が良いかもね。お兄ちゃんの見ている夢をみんなで見守るってのは面白いかもしれないね」
ココはあえて俺が反応しないことで俺の話題を忘れ去ってもらおうという作戦に出たのだが、人が増えるたびに俺の夢を見るという話になってしまって忘れてもらうことは出来そうになかった。
それどころか、その話を聞いたイザーちゃんをはじめとする装置開発チームの面々がやる気になっているというのは気になってしまった。イザーちゃんと愛華ちゃんと奈緒美さんの他にも白衣を着ている研究者にしか見えない人たちが俺の事をじっと見てくるのだが、彼女たちはいったい何者なのだろうか。
「そう言えば紹介して無かったね。この人たちは私たちの作っている装置を手伝ってもらうために別の世界線からやってきてもらった各分野の天才の人達です。彼女たちの知識と経験も借りて何とか装置を作ろうと思ってるんだ。私たち三人だけだったら時間もかかってしまいそうだしね」
イザーちゃんの紹介に合わせて彼女たちも何かしゃべってはいるのだが、残念なことに彼女たちの言葉を理解することは俺には出来なかった。
横を見た感じでは、瑠璃もうまなちゃんも彼女たちの言葉を理解していないんだろうなという事は伝わってきた。うまなちゃんは何故か彼女たちの言葉をわかった風を装っているのだけど、うまなちゃんの目を見る限りでは俺と同じく何も理解していないようにしか見えなかった。
俺たちは終わることのなさそうなたこ焼きブームの波にしっかりと乗っているので今回もお茶請けとしてたこ焼きを食べているのだ。
いつ食べても瑠璃とうまなちゃんの味を再現していると思うのだが、うまなちゃんも瑠璃も自分が教えている方のたこ焼きを食べようとはしなかった。食べなれているはずの自分のたこ焼きよりも隣にいる相手が作っているたこ焼きの方が食べたいという事なのかもしれないな。
「夢を見る装置が完成するまでもう少し時間がかかるかもしれないからさ、お兄さん以外のみんなは仮眠でもとってていいからね。お兄さんは私たちに夢を見せるまでは寝るの禁止ですよ」
寝るのを禁止されるのは酷い話だと思ったが、それ以上に酷いと思ったのは彼女たちの間ではもうすでに俺の夢を見るという事が決定事項になってしまっているようだ。
俺は当然そんな事を許可するつもりなんてないのだが、俺は逃げることも隠れることも出来ないのだ。
そもそも、鍵が一つもないあの部屋から逃げ出すなんて無理な話なのだ。
俺が逃げ出す前に簡単に捕まってしまうだろうな。
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