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悪魔狩り
悪魔狩り 第七話
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何故かテーブルに並んでいる北海道のお菓子をつまみながらも無言のまま時間は流れていた。
甘いものからしょっぱいものまで各種取り揃えられているし、うまなちゃんたちが持ってきたドリンクも独特な風味や味わいが癖になるようなモノばかりだった。
こちらから話を振った方がいいのかとも考えてみたけれど、野城圭重の表情はこわばっていて話すタイミングをうかがっているように見えるので黙って見守ることにした。
うまなちゃんも俺と同じようにお菓子を食べながら野城圭重が口を開くのを待っている。いや、うまなちゃんの場合は純粋に北海道のお菓子を楽しんでいるようにも見えるな。
「一つだけ気になることがあるので確認したいのだけど、ここで話したことは誰にも言わないんだよな?」
「もちろん。カフェで話したことは他の人に聞かれる可能性もあるけど、ココでの会話はこの部屋にいる三人の胸の内に秘めておくことになるよ。俺もうまなちゃんも誰にも言うつもりはないからね」
「誰に持ってのは、お嬢さんがいつも一緒にいるあの子やメイドさんにも言わないって事でいいんだよな?」
「言っても良いって言うんだったら別だけど、俺もうまなちゃんたちも今まで誰かの秘密を漏らしたことなんて無いよ」
「そうだよね。イザーちゃんもココであったことは一切話してくれないもんね。お兄ちゃんは私たち以外に話しかけるような人がいないから安心しても良いと思うよ。私も圭重先輩の悩んでることを誰かに言ったりなんてしないですよ」
「ただ確認したかっただけなんで気を悪くさせてしまったら申し訳ない。でも、それくらい俺は悩んでるって事なんだよ。俺のせいでこの世界が大変なことになってしまうんじゃないかと思ってるんだ」
自分のせいで世界が大変なことになってしまう可能性がある。そんなたいそうなことを悩んでいるとは思えないのだが、それを考えるのは野城圭重の話を全部聞いてからでも遅くはないと思った。
うまなちゃんは大きめにちぎってしまったビタミンカステーラを飲み込むのに苦労しているのか牛乳で流し込んでいた。もっとゆっくり味わって食べればいいのにと思って見ていたが、一口かじってしばらく咀嚼していると飲み込むのが苦労してしまうのがわかったのだ。
「このカステラ美味しいけど危険だよ。飲み物が無い時に食べちゃダメなやつだよ」
「俺ものどに詰まりそうになったよ。でも、よく噛んで食べたら大丈夫かも」
「そうだね。面倒だからって中途半端なところで飲み込むと大変なことになるかもね。それで、圭重先輩の世界が大変なことになるようなことっていったいどんなことなのかな?」
野城圭重の顔色が悪くなっているのはビタミンカステーラをのどに詰まらせてしまったからなのか、本当に世界が大変なことになってしまうようなことをしてしまったという後悔が顔色に出ている事なのだろうか。
慌てて牛乳を飲んでいる姿を見ると前者のようにも思えるのだが、彼の口から出た言葉は全く予想もしないものであった。
「信じてもらえるとは思っていないが、聞くだけは聞いてほしい。俺は今でこそこうして学校に通えているんだけど、約一年前のあの日に恐ろしい事件に巻き込まれたんだ。いや、アレは事件と言っていいのかもわからないが、とにかく恐ろしいことに巻き込まれたのだ」
野城圭重が一年近く入院することになった理由は聞いていないので病気なのか怪我なのかもわかっていなかったけれど、この口ぶりからすると何かの事件に巻き込まれたことでおった怪我か精神的な傷が原因なんだろう。
高校生の時点でそのようなことに巻き込まれてしまうなんて不幸だとは思うが、彼の様子を見ている限りではそこまで不幸だとは思っていないようにも見える。
「その事件って何なのかな?」
「俺もよく覚えていないのだが、あの日は何か変わったことをしてみようと考えていたことだけは覚えている。学生寮の屋上に忍び込んだ俺は誰にも気付かれないように悪魔召喚の儀式を行ったんだ。何日か前に古本屋で見つけた魔導書を参考にしてやってみることにしたんだよ。その時の俺はこんな事で本当に悪魔なんて召喚できるわけはないと思っていたんだ。でも、その本の通りに悪魔召喚の儀式を行ったところ、何か得体の知れないものを呼び出してしまったんだよ。お嬢さんはわからないかもしれないけど、男にはそういった儀式にあこがれてしまう時があるもんなんだよ。お兄さんもそんな経験はあるだろ?」
悪魔召喚の儀式を行ったことなんてもちろんないけど、頭の中でそれに近いことを考えたことはあった。
漫画やアニメやゲームなんかに影響されてそんな事を考えるのは誰でもあることなんじゃないかと思ったけれど、うまなちゃんを見ていると少し引いているように見えるので男子特有の行動なのかもしれないと思ってしまった。
「それに近いことを考えたことはあるかもしれない。でも、俺はそんな儀式をやろうなんて思ったことはないよ。本当にやろうと思ったことはないよ」
「別にお兄ちゃんがそんな事をしてたとしても私は気にしてないよ。お兄ちゃんがそういう事をするのはちょっと危ないかなとも思うけど、考えてただけなら大丈夫だと思うんだ。何かあったとしてもイザーちゃんがいるから大丈夫だし」
確かに、イザーちゃんがいれば俺が変な儀式を行って何かを呼び寄せたとしても解決してくれそうだな。
それに、なんだかんだ言って愛華ちゃんも強力な味方になってくれそうな気がしていた。うまなちゃんを誘拐した人に何の躊躇もなく行動を起こすことが出来ていたのもあるし、野城圭重が本当に悪魔を呼び出したとしても二人がどうにかしてくれるだろう。
もしかしたら、瑠璃も何かの役に立つかもしれないな。
甘いものからしょっぱいものまで各種取り揃えられているし、うまなちゃんたちが持ってきたドリンクも独特な風味や味わいが癖になるようなモノばかりだった。
こちらから話を振った方がいいのかとも考えてみたけれど、野城圭重の表情はこわばっていて話すタイミングをうかがっているように見えるので黙って見守ることにした。
うまなちゃんも俺と同じようにお菓子を食べながら野城圭重が口を開くのを待っている。いや、うまなちゃんの場合は純粋に北海道のお菓子を楽しんでいるようにも見えるな。
「一つだけ気になることがあるので確認したいのだけど、ここで話したことは誰にも言わないんだよな?」
「もちろん。カフェで話したことは他の人に聞かれる可能性もあるけど、ココでの会話はこの部屋にいる三人の胸の内に秘めておくことになるよ。俺もうまなちゃんも誰にも言うつもりはないからね」
「誰に持ってのは、お嬢さんがいつも一緒にいるあの子やメイドさんにも言わないって事でいいんだよな?」
「言っても良いって言うんだったら別だけど、俺もうまなちゃんたちも今まで誰かの秘密を漏らしたことなんて無いよ」
「そうだよね。イザーちゃんもココであったことは一切話してくれないもんね。お兄ちゃんは私たち以外に話しかけるような人がいないから安心しても良いと思うよ。私も圭重先輩の悩んでることを誰かに言ったりなんてしないですよ」
「ただ確認したかっただけなんで気を悪くさせてしまったら申し訳ない。でも、それくらい俺は悩んでるって事なんだよ。俺のせいでこの世界が大変なことになってしまうんじゃないかと思ってるんだ」
自分のせいで世界が大変なことになってしまう可能性がある。そんなたいそうなことを悩んでいるとは思えないのだが、それを考えるのは野城圭重の話を全部聞いてからでも遅くはないと思った。
うまなちゃんは大きめにちぎってしまったビタミンカステーラを飲み込むのに苦労しているのか牛乳で流し込んでいた。もっとゆっくり味わって食べればいいのにと思って見ていたが、一口かじってしばらく咀嚼していると飲み込むのが苦労してしまうのがわかったのだ。
「このカステラ美味しいけど危険だよ。飲み物が無い時に食べちゃダメなやつだよ」
「俺ものどに詰まりそうになったよ。でも、よく噛んで食べたら大丈夫かも」
「そうだね。面倒だからって中途半端なところで飲み込むと大変なことになるかもね。それで、圭重先輩の世界が大変なことになるようなことっていったいどんなことなのかな?」
野城圭重の顔色が悪くなっているのはビタミンカステーラをのどに詰まらせてしまったからなのか、本当に世界が大変なことになってしまうようなことをしてしまったという後悔が顔色に出ている事なのだろうか。
慌てて牛乳を飲んでいる姿を見ると前者のようにも思えるのだが、彼の口から出た言葉は全く予想もしないものであった。
「信じてもらえるとは思っていないが、聞くだけは聞いてほしい。俺は今でこそこうして学校に通えているんだけど、約一年前のあの日に恐ろしい事件に巻き込まれたんだ。いや、アレは事件と言っていいのかもわからないが、とにかく恐ろしいことに巻き込まれたのだ」
野城圭重が一年近く入院することになった理由は聞いていないので病気なのか怪我なのかもわかっていなかったけれど、この口ぶりからすると何かの事件に巻き込まれたことでおった怪我か精神的な傷が原因なんだろう。
高校生の時点でそのようなことに巻き込まれてしまうなんて不幸だとは思うが、彼の様子を見ている限りではそこまで不幸だとは思っていないようにも見える。
「その事件って何なのかな?」
「俺もよく覚えていないのだが、あの日は何か変わったことをしてみようと考えていたことだけは覚えている。学生寮の屋上に忍び込んだ俺は誰にも気付かれないように悪魔召喚の儀式を行ったんだ。何日か前に古本屋で見つけた魔導書を参考にしてやってみることにしたんだよ。その時の俺はこんな事で本当に悪魔なんて召喚できるわけはないと思っていたんだ。でも、その本の通りに悪魔召喚の儀式を行ったところ、何か得体の知れないものを呼び出してしまったんだよ。お嬢さんはわからないかもしれないけど、男にはそういった儀式にあこがれてしまう時があるもんなんだよ。お兄さんもそんな経験はあるだろ?」
悪魔召喚の儀式を行ったことなんてもちろんないけど、頭の中でそれに近いことを考えたことはあった。
漫画やアニメやゲームなんかに影響されてそんな事を考えるのは誰でもあることなんじゃないかと思ったけれど、うまなちゃんを見ていると少し引いているように見えるので男子特有の行動なのかもしれないと思ってしまった。
「それに近いことを考えたことはあるかもしれない。でも、俺はそんな儀式をやろうなんて思ったことはないよ。本当にやろうと思ったことはないよ」
「別にお兄ちゃんがそんな事をしてたとしても私は気にしてないよ。お兄ちゃんがそういう事をするのはちょっと危ないかなとも思うけど、考えてただけなら大丈夫だと思うんだ。何かあったとしてもイザーちゃんがいるから大丈夫だし」
確かに、イザーちゃんがいれば俺が変な儀式を行って何かを呼び寄せたとしても解決してくれそうだな。
それに、なんだかんだ言って愛華ちゃんも強力な味方になってくれそうな気がしていた。うまなちゃんを誘拐した人に何の躊躇もなく行動を起こすことが出来ていたのもあるし、野城圭重が本当に悪魔を呼び出したとしても二人がどうにかしてくれるだろう。
もしかしたら、瑠璃も何かの役に立つかもしれないな。
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