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悪魔狩り
悪魔狩り 第三話
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長くはない昼休みの時間にわざわざカフェまでやってきてくれる生徒は何人かいるのだ。ほとんどの生徒はサンドイッチなどの軽食を取りつつ友人と談笑すると言った和やかな感じで過ごしているのだけれど、その日のカフェはいつもとは違う緊張感に包まれていた。
中央のテーブル席に一人座っている女子生徒に店中の視線が集まっているのだが、そんな事は意に介さないのか女子生徒はゆっくりと紅茶とクッキーを楽しんでいるようだ。
彼女が少し動くだけでも店内にいる他の生徒たちも反応しているのだった。
昼休みが終わる少し前に彼女は席を立って学校へと戻っていく。
その様子を見守るように他の生徒たちもそれぞれの教室へと戻っていっているようだが、残っている職員たちは生徒たちが見えなくなってからそれぞれの職場へと戻っていっていた。
そんな事が一週間も続くと昼休みの時間にやって来るのは彼女だけになっていた。
このカフェが営利目的であれば経営的に問題になりそうな事ではあるが、幸か不幸かこのカフェはそうではないので特に問題とはならなかった。
ただ、彼女の目的が何なのかさっぱりわからないという事に俺も珠希ちゃんも戸惑ってはいたのである。
「あの、一つよろしいでしょうか?」
「はい、紅茶のおかわりでしょうか?」
彼女が話しかけてきたことは今までもあったし、その時には紅茶のおかわりを催促されていたので今回もそうだと思っていた。
珠希ちゃんが彼女の席に近付きたくないという事もあって俺が彼女の用件を聞くことになっていたが、今回はいつもと違う様子でじっと俺の顔を見つめてきていた。
今まで注文を受ける時も配膳をする時も、どんな時も一度だって正面から顔を見られたことが無かったのだが、その曇りなき眼で俺の事を見つめてきたのだ。
「こちらでは悩み事を聞いていただけると伺っているのですが、あなた様が私の悩み事を聞いてくださるのでしょうか?」
「そうなんですけど、今だと相談室の利用が出来ないのでここで話を聞くことになるんですが」
「そうですか。こちらだと他の方に聞かれてしまうかもしれませんよね。相談室で聞いてもらえるにはどうすればよろしいのでしょうか?」
俺は相談室で話を聞くにはイザーちゃんが一緒ではないといけないという事を伝えた。これは誰かに強制された決まりではなく、俺の中で決めたルールの一つなのだが自分だけではなく相談者の事も守るために必要だという事を説明したのだ。
彼女はそれらを理解してくれたうえで改めて相談に来るという事を言うと紅茶のおかわりを希望していつものように昼休みが終わる少し前に学校へと戻っていった。
「あのお嬢様の相談って何なんだろうね。私じゃなくてうまなちゃんが変わりにいた方がいいと思うんだけど、お兄さんはうまなちゃんよりも私の方がいいと思う?」
「俺が決めるんじゃなくてあの子に決めてもらった方がいいんじゃないかな。俺はよく知らないんだけど、あの子って何か特別な家の子なの?」
「そっか、お兄さんは何も知らないんだね。じゃあ、相談を聞く前にあの子について簡単に説明しておくよ」
イザーちゃんの説明によると、彼女は栗鳥院柘榴と言いうまなちゃんとは遠縁の親戚にあたるらしい。
栗宮院家と栗鳥院家には特に因縁めいたものは何もないのだが、何も知らない周りの人たちが面白おかしく噂話に花を咲かせた結果、ありもしない確執が生まれているという事になっていったそうだ。
しかし、両家間にそのようなわだかまり等はなく遠縁とはいえ親戚付き合いもそれなりにあるのでうまなちゃんと彼女は学年は違うものの一緒に過ごすことも多いようだ。
俺がココに来るまでは特待生寮で一緒に食事をすることもあったという。
「それでみんながあの子の事を気にしてたんだ。でも、なんで周りがそんなに気にするんだろうね」
「さあ、みんながみんな真実を知っているわけではないって事だし、良いことよりも悪いことの方が気になるってやつじゃない。ほら、他人の幸せも嬉しいけど、他人の不幸の方が嬉しいって思う人間も多いんでしょ」
誰もがみんな人の不幸を願うわけではないと思う。
だが、世の中には他人の不幸を願う人がいることも事実なのだ。
俺がいじめられていた時も、俺を心配してくれるのは家族だけでソレ以外のほとんどの人は俺に関心を持っていないかより不幸になるようにと思っているような感じだったな。
「それにしても、こんないい天気の日に受ける相談が暗い話じゃないといいよね」
「そうだね。これだけ天気がいいとどこかに遊びに行きたくなっちゃうよね」
「良いね、栗鳥院柘榴の悩みが軽いやつだったらうまなちゃんも入れて四人でどこかに遊びに行こうよ」
カフェにやってきた彼女はいつもの制服とは違い黒いワンピースに黒い帽子で高校生には見えない大人びたいでたちであった。
「お待たせして申し訳ございません。本日はよろしくお願いします」
「俺たちもさっき来たところですよ。相談を受ける前に何か飲みますか?」
彼女は相変わらず誰とも目を合わせることはなかった。
それでも俺たちに気を使ってくれているという事はその仕草から理解することが出来た。
しばらくメニューを見ていた彼女ではあったが、いつものように紅茶を飲むのだと思って俺はその準備を始めていた。
イザーちゃんは相手に合わせたものを飲むので同じものでいいかと思っていた。
「それでは、アイスコーヒーをお願いします」
「あ、アイスコーヒーですね。わかりました」
制服と私服でいつもと違う印象を持っていたのだが、いつもの紅茶ではなくアイスコーヒーだった事でもいつもと違うという印象を強く持ってしまった。
中央のテーブル席に一人座っている女子生徒に店中の視線が集まっているのだが、そんな事は意に介さないのか女子生徒はゆっくりと紅茶とクッキーを楽しんでいるようだ。
彼女が少し動くだけでも店内にいる他の生徒たちも反応しているのだった。
昼休みが終わる少し前に彼女は席を立って学校へと戻っていく。
その様子を見守るように他の生徒たちもそれぞれの教室へと戻っていっているようだが、残っている職員たちは生徒たちが見えなくなってからそれぞれの職場へと戻っていっていた。
そんな事が一週間も続くと昼休みの時間にやって来るのは彼女だけになっていた。
このカフェが営利目的であれば経営的に問題になりそうな事ではあるが、幸か不幸かこのカフェはそうではないので特に問題とはならなかった。
ただ、彼女の目的が何なのかさっぱりわからないという事に俺も珠希ちゃんも戸惑ってはいたのである。
「あの、一つよろしいでしょうか?」
「はい、紅茶のおかわりでしょうか?」
彼女が話しかけてきたことは今までもあったし、その時には紅茶のおかわりを催促されていたので今回もそうだと思っていた。
珠希ちゃんが彼女の席に近付きたくないという事もあって俺が彼女の用件を聞くことになっていたが、今回はいつもと違う様子でじっと俺の顔を見つめてきていた。
今まで注文を受ける時も配膳をする時も、どんな時も一度だって正面から顔を見られたことが無かったのだが、その曇りなき眼で俺の事を見つめてきたのだ。
「こちらでは悩み事を聞いていただけると伺っているのですが、あなた様が私の悩み事を聞いてくださるのでしょうか?」
「そうなんですけど、今だと相談室の利用が出来ないのでここで話を聞くことになるんですが」
「そうですか。こちらだと他の方に聞かれてしまうかもしれませんよね。相談室で聞いてもらえるにはどうすればよろしいのでしょうか?」
俺は相談室で話を聞くにはイザーちゃんが一緒ではないといけないという事を伝えた。これは誰かに強制された決まりではなく、俺の中で決めたルールの一つなのだが自分だけではなく相談者の事も守るために必要だという事を説明したのだ。
彼女はそれらを理解してくれたうえで改めて相談に来るという事を言うと紅茶のおかわりを希望していつものように昼休みが終わる少し前に学校へと戻っていった。
「あのお嬢様の相談って何なんだろうね。私じゃなくてうまなちゃんが変わりにいた方がいいと思うんだけど、お兄さんはうまなちゃんよりも私の方がいいと思う?」
「俺が決めるんじゃなくてあの子に決めてもらった方がいいんじゃないかな。俺はよく知らないんだけど、あの子って何か特別な家の子なの?」
「そっか、お兄さんは何も知らないんだね。じゃあ、相談を聞く前にあの子について簡単に説明しておくよ」
イザーちゃんの説明によると、彼女は栗鳥院柘榴と言いうまなちゃんとは遠縁の親戚にあたるらしい。
栗宮院家と栗鳥院家には特に因縁めいたものは何もないのだが、何も知らない周りの人たちが面白おかしく噂話に花を咲かせた結果、ありもしない確執が生まれているという事になっていったそうだ。
しかし、両家間にそのようなわだかまり等はなく遠縁とはいえ親戚付き合いもそれなりにあるのでうまなちゃんと彼女は学年は違うものの一緒に過ごすことも多いようだ。
俺がココに来るまでは特待生寮で一緒に食事をすることもあったという。
「それでみんながあの子の事を気にしてたんだ。でも、なんで周りがそんなに気にするんだろうね」
「さあ、みんながみんな真実を知っているわけではないって事だし、良いことよりも悪いことの方が気になるってやつじゃない。ほら、他人の幸せも嬉しいけど、他人の不幸の方が嬉しいって思う人間も多いんでしょ」
誰もがみんな人の不幸を願うわけではないと思う。
だが、世の中には他人の不幸を願う人がいることも事実なのだ。
俺がいじめられていた時も、俺を心配してくれるのは家族だけでソレ以外のほとんどの人は俺に関心を持っていないかより不幸になるようにと思っているような感じだったな。
「それにしても、こんないい天気の日に受ける相談が暗い話じゃないといいよね」
「そうだね。これだけ天気がいいとどこかに遊びに行きたくなっちゃうよね」
「良いね、栗鳥院柘榴の悩みが軽いやつだったらうまなちゃんも入れて四人でどこかに遊びに行こうよ」
カフェにやってきた彼女はいつもの制服とは違い黒いワンピースに黒い帽子で高校生には見えない大人びたいでたちであった。
「お待たせして申し訳ございません。本日はよろしくお願いします」
「俺たちもさっき来たところですよ。相談を受ける前に何か飲みますか?」
彼女は相変わらず誰とも目を合わせることはなかった。
それでも俺たちに気を使ってくれているという事はその仕草から理解することが出来た。
しばらくメニューを見ていた彼女ではあったが、いつものように紅茶を飲むのだと思って俺はその準備を始めていた。
イザーちゃんは相手に合わせたものを飲むので同じものでいいかと思っていた。
「それでは、アイスコーヒーをお願いします」
「あ、アイスコーヒーですね。わかりました」
制服と私服でいつもと違う印象を持っていたのだが、いつもの紅茶ではなくアイスコーヒーだった事でもいつもと違うという印象を強く持ってしまった。
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