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誘拐事件
誘拐事件 第十話
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男の質問に上手く答えられなかった俺ではあったが、男たちが本当に聞きたいことはここがどこかというモノではなかった。
本当に聞きたかったことは、イザーちゃんについての事だった。
「あの少女からは恐ろしい力を感じたのですが、あの少女は伝説の銀色の悪魔でしょうか?」
イザーちゃんは確かに銀髪だし人の命も何とも思わないようなところも見受けられるけど、銀色の悪魔なんて呼ばれているところは見たことがない。
この人たちがいた世界にはイザーちゃんに似た見た目の悪魔でもいたというのだろうか。
「銀色の悪魔なんて呼ばれているかは知らないけど、イザーちゃんは悪魔ってほどではないと思うよ。いや、悪魔っぽいところもあるかもしれないけど、そんなに悪い子じゃないと思うんだ」
そこまで長い付き合いでもない俺とイザーちゃんなので深いところや過去なんて知らない。
ただ、短い付き合いなりに色々と知ることが出来ているのだけど、悪魔的なところは多少あったりもしたと思う。
あんなに重そうな手甲を軽々と身につけたり、人の命を何のためらいもなく奪うことが出来たり、この三人を見張るためと言って何か良くわからない危険そうな銃を渡してきたりしていただけだ。
いや、そう考えると、銀色の悪魔という表現は相応しいのかもしれない。
そんな事を思うなんて良くないかもしれないが、銀色の悪魔と呼ばれても不思議ではないようなことをたくさん見てきたように思えてきた。
「あなたはあの少女と親しいように見えたのですが、いったいどのようなご関係なのでしょうか?」
「どのような関係と言われてもな。俺もよくわかってないんだよね」
イザーちゃんと知り合ったのはつい最近の事ではあるが、イザーちゃんの話を信じるのであれば俺とイザーちゃんは別の世界で一緒に過ごしていたらしい。
今俺たちがこうして暮らしている世界と違う世界で、俺の目の前にいる男たちがいた世界とも違う世界での話だそうだ。
その話が嘘なのか本当なのかわからないけれど、こうして何度も目の前で起こる不思議な体験がイザーちゃんの話に信ぴょう性を持たせてしまうのだ。
「よくわかっていないという事は、銀色の悪魔に何らかの暗示をかけられているという事でしょうか?」
「そういう事でもないと思うよ。俺の妹もイザーちゃんの事を知っていたっぽいけど、悪魔だって話は聞いたことがないな」
「ですが、あなたも銀色の悪魔の伝説くらいは聞いたことがあるはずですよね」
「いや、そんな伝説は聞いたこともないよ」
男たちが住んでいる世界には金色の天使と銀色の悪魔と呼ばれる二人の魔法使いがいるそうだ。
金色の天使は人々に幸福と安定をもたらし、何不自由ない楽園を与えてくれるのだが、銀色の悪魔はそれとはうって変わって人々に絶望と永遠の苦痛を与えてくるらしい。
金色の天使と銀色の悪魔は表裏一体で見た目も色が違うだけでそっくりだそうだ。
金色の天使と銀色の悪魔はどちらかがいる時にはもう片方は出てこないので、二人が同時に存在することはない。誰もが金色の天使がやって来ることを願うのだが、ここ数十年は銀色の悪魔が世界中を渡り歩いて恐怖を振りまいているとのことだ。
俺もその二人を選べるのであれば金色の天使がいいなとは思ったけれど、表裏一体で見た目も似ているとのことだが、うまなちゃんとイザーちゃんも金髪と銀髪で見た目が凄く似ている。
でも、金色の天使と銀色の悪魔とは違って二人とも同じ場所にいる。
うまなちゃんはみんなに幸福を与えてくれるので金色の天使と共通点があるのかもしれないけど、イザーちゃんは不幸や絶望を振りまいたりなんてしていないと思う。
さっきの行動だったり、ちょっとしたことで俺をからかったりすることもあるのだけど、それくらいでは悪魔と呼ばれて恐れられる理由にはならないだろう。
「確かに、イザーちゃんは銀色の髪でちょっと悪いことをするかもしれないけど、悪魔って呼ばれるほどには酷いことをしてないと思うな。度を越えたイタズラとかもされたことがないし、そこまで悪い子ではないと思うよ」
「あなたがそうおっしゃるならそうなのかもしれないですね。でも、私たちが見たことのある銀色の悪魔にそっくりだったんですよ」
そう言えば、この世界とよく似た別の世界に自分によく似た人がいるという話を聞いていた。
もしかしたら、この人たちの暮らしている世界にいるイザーちゃんによく似ている人が銀色の悪魔と呼ばれているという可能性もあるんだろうな。その可能性は大いにあると思うのだけど、そうなると悪魔と呼ばれるほどの人に似ているイザーちゃんも心のどこかで悪魔のような面が眠っているという事なのだろうか。
まあ、躊躇せずに誘拐犯を殺してしまうような人に狂気が無いというのも変な話になりそうだし、イザーちゃん流に言うと、この世界のイザーちゃんは悪い人ではないという評価になってしまうのだろう。でも、俺にとってのイザーちゃんはそこまで悪い人ではないと思うんだよな。
「あの少女が銀色の悪魔ではないとしたのなら、ココはやはり私たちの住んでいる世界とは違う世界なのでしょうね。あの恐ろしい銀髪の悪魔とよく似ているのに違うという事は、この世界には銀髪の悪魔はいないという事なんですね。……一つ聞きたいのですが、私たちは元の世界に戻れるのでしょうか?」
「それは俺にはわからないな。イザーちゃんや瑠璃に聞いてみないとわからないかもしれない」
本当に聞きたかったことは、イザーちゃんについての事だった。
「あの少女からは恐ろしい力を感じたのですが、あの少女は伝説の銀色の悪魔でしょうか?」
イザーちゃんは確かに銀髪だし人の命も何とも思わないようなところも見受けられるけど、銀色の悪魔なんて呼ばれているところは見たことがない。
この人たちがいた世界にはイザーちゃんに似た見た目の悪魔でもいたというのだろうか。
「銀色の悪魔なんて呼ばれているかは知らないけど、イザーちゃんは悪魔ってほどではないと思うよ。いや、悪魔っぽいところもあるかもしれないけど、そんなに悪い子じゃないと思うんだ」
そこまで長い付き合いでもない俺とイザーちゃんなので深いところや過去なんて知らない。
ただ、短い付き合いなりに色々と知ることが出来ているのだけど、悪魔的なところは多少あったりもしたと思う。
あんなに重そうな手甲を軽々と身につけたり、人の命を何のためらいもなく奪うことが出来たり、この三人を見張るためと言って何か良くわからない危険そうな銃を渡してきたりしていただけだ。
いや、そう考えると、銀色の悪魔という表現は相応しいのかもしれない。
そんな事を思うなんて良くないかもしれないが、銀色の悪魔と呼ばれても不思議ではないようなことをたくさん見てきたように思えてきた。
「あなたはあの少女と親しいように見えたのですが、いったいどのようなご関係なのでしょうか?」
「どのような関係と言われてもな。俺もよくわかってないんだよね」
イザーちゃんと知り合ったのはつい最近の事ではあるが、イザーちゃんの話を信じるのであれば俺とイザーちゃんは別の世界で一緒に過ごしていたらしい。
今俺たちがこうして暮らしている世界と違う世界で、俺の目の前にいる男たちがいた世界とも違う世界での話だそうだ。
その話が嘘なのか本当なのかわからないけれど、こうして何度も目の前で起こる不思議な体験がイザーちゃんの話に信ぴょう性を持たせてしまうのだ。
「よくわかっていないという事は、銀色の悪魔に何らかの暗示をかけられているという事でしょうか?」
「そういう事でもないと思うよ。俺の妹もイザーちゃんの事を知っていたっぽいけど、悪魔だって話は聞いたことがないな」
「ですが、あなたも銀色の悪魔の伝説くらいは聞いたことがあるはずですよね」
「いや、そんな伝説は聞いたこともないよ」
男たちが住んでいる世界には金色の天使と銀色の悪魔と呼ばれる二人の魔法使いがいるそうだ。
金色の天使は人々に幸福と安定をもたらし、何不自由ない楽園を与えてくれるのだが、銀色の悪魔はそれとはうって変わって人々に絶望と永遠の苦痛を与えてくるらしい。
金色の天使と銀色の悪魔は表裏一体で見た目も色が違うだけでそっくりだそうだ。
金色の天使と銀色の悪魔はどちらかがいる時にはもう片方は出てこないので、二人が同時に存在することはない。誰もが金色の天使がやって来ることを願うのだが、ここ数十年は銀色の悪魔が世界中を渡り歩いて恐怖を振りまいているとのことだ。
俺もその二人を選べるのであれば金色の天使がいいなとは思ったけれど、表裏一体で見た目も似ているとのことだが、うまなちゃんとイザーちゃんも金髪と銀髪で見た目が凄く似ている。
でも、金色の天使と銀色の悪魔とは違って二人とも同じ場所にいる。
うまなちゃんはみんなに幸福を与えてくれるので金色の天使と共通点があるのかもしれないけど、イザーちゃんは不幸や絶望を振りまいたりなんてしていないと思う。
さっきの行動だったり、ちょっとしたことで俺をからかったりすることもあるのだけど、それくらいでは悪魔と呼ばれて恐れられる理由にはならないだろう。
「確かに、イザーちゃんは銀色の髪でちょっと悪いことをするかもしれないけど、悪魔って呼ばれるほどには酷いことをしてないと思うな。度を越えたイタズラとかもされたことがないし、そこまで悪い子ではないと思うよ」
「あなたがそうおっしゃるならそうなのかもしれないですね。でも、私たちが見たことのある銀色の悪魔にそっくりだったんですよ」
そう言えば、この世界とよく似た別の世界に自分によく似た人がいるという話を聞いていた。
もしかしたら、この人たちの暮らしている世界にいるイザーちゃんによく似ている人が銀色の悪魔と呼ばれているという可能性もあるんだろうな。その可能性は大いにあると思うのだけど、そうなると悪魔と呼ばれるほどの人に似ているイザーちゃんも心のどこかで悪魔のような面が眠っているという事なのだろうか。
まあ、躊躇せずに誘拐犯を殺してしまうような人に狂気が無いというのも変な話になりそうだし、イザーちゃん流に言うと、この世界のイザーちゃんは悪い人ではないという評価になってしまうのだろう。でも、俺にとってのイザーちゃんはそこまで悪い人ではないと思うんだよな。
「あの少女が銀色の悪魔ではないとしたのなら、ココはやはり私たちの住んでいる世界とは違う世界なのでしょうね。あの恐ろしい銀髪の悪魔とよく似ているのに違うという事は、この世界には銀髪の悪魔はいないという事なんですね。……一つ聞きたいのですが、私たちは元の世界に戻れるのでしょうか?」
「それは俺にはわからないな。イザーちゃんや瑠璃に聞いてみないとわからないかもしれない」
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