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誘拐事件
誘拐事件 第二話
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誰一人として心配していないのが不思議なのだが、このクラスのお金持ちになると誘拐されることが頻繁に起こりえることなのだろうか。
もしかしたら、俺が知らないうちに身代金のやり取りなんかがあってうまなちゃんは救出されたという事なのかもしれないな。それならイザーちゃんと愛華ちゃんが冷静でいられるのも納得できるものだ。
「俺が知らないだけかもしれないんだけど、誘拐事件って珍しいことじゃないの?」
「どうだろう。私がいた世界では誘拐とか殺人は良く起こっていたけど、こっちの世界では珍しいんじゃないかな。テレビとかでニュースとして取り上げられるくらいには珍しいことなんだと思うよ」
「一般的な話じゃなくてさ、栗宮院家の人間は誘拐されやすいとかあったりするのかなって思って」
「栗宮院家に限って言えば今まで誘拐事件の被害者になったことなんて無いんじゃないかな。昔から有名なお金持ちではあったから狙われる機会もあったんだろうけど、それ以上にセキュリティがしっかりしているから被害に遭うことなんて無かったんだと思うな」
「でも、うまなちゃんは誘拐されてるって事だよね?」
「そうだね。うまなちゃんは誘拐されちゃったね」
うまなちゃんが誘拐されたというのにここまで落ち着いていられるものだろうか。
いや、普通であればもっと心配して取り乱していたりしてもおかしくないと思う。
それなのに、こんなに落ち着き払っているという事は、二人は犯人の事を知っているという事なのではないだろうか。
考えたくはないけれど、二人が誘拐犯の仲間という可能性だってあるのかもしれない。
「もしかしてなんだけど、二人って誘拐犯の事を知っていたりしないよね。そんなわけないとは思って聞いてるんだけどさ、誘拐犯の事なんて知らないよね?」
「知ってるよ。うまなちゃんがどこにいるのかも知っているし」
「当然だよね。うまなさんがどこにいるかはイザーさんが把握してますもんね。誘拐犯ってどんな人なんですか?」
またしても俺が考えていた答えとは違う答えが返ってきた。
ただ、うまなちゃんの事を誘拐した犯人の事を知っているのはイザーちゃんだけで愛華ちゃんは知らないようではある。二人とも嘘をついている感じではないのでおかしいところは無いような気もするけれど、よくよく考えてみると何も知らないはずの愛華ちゃんが落ち着いているというのは少し引っかかるものがある。
もう少し心配したりしてあげてもいいのではないかと思うのだけど、最近の若い女の子はこれくらい冷静なのが当たり前なのかもしれないな。
「新しい紅茶をいれてもらってもいいかな?」
イザーちゃんは空になったカップを愛華ちゃんに見せると、愛華ちゃんはカップを受け取ってキッチンへと向かっていった。
紅茶をいれるのが楽しいと言っていた愛華ちゃん。愛華ちゃんはうまなちゃんが誘拐されているなんてことをまるで忘れているかのように嬉しそうに鼻歌を歌いながらキッチンへと消えていった。紅茶をいれるのが好きだからと言ってこの状況で鼻歌を歌いながら変なテンポでスキップをしなくてもいいのではないかと思うのだが、本人が満足しているのならそれでいいのかもしれないな。
「愛華がいなくなったことだし、本当の事をお兄さんには教えるね。たぶんなんだけど、うまなちゃんを誘拐したのって魔王アスモデウスが転生した悪い奴だと思うんだ。お兄さん以外は誰も傷一つ付けることが出来なかった魔王アスモデウスの処刑を行ったって通信があったんだけど、魔王アスモデウスが死んだタイミングでうまなちゃんが誘拐されたって言うのは、絶対に魔王アスモデウス関連だと思うんだ。タイミング的にも魔王アスモデウスが関わっていることに間違いないと思うの」
「俺はさ、転生とか生まれ変わるとか転移するとかよくわかってないんだけど、最近処刑された魔王アスモデウスがうまなちゃんを誘拐できるくらいの大人になってるってことなの?」
「そういう事になるかな。お兄さんもそれなら納得出来るでしょ?」
「どうなんだろう。一つ気になることがあるんだけど、俺も瑠璃も愛華ちゃんもこの世界に転生してるって事なんだよね?」
「うん、それがどうかしたの?」
「愛華ちゃんも俺たちと一緒なのかはわからないけど、俺と瑠璃はこの世界に生まれてからこうして大人になるまでの時間を過ごしてきたんだよ。多分、愛華ちゃんもこの世界に生まれてから俺と同じように実際の時間を過ごしてきたと思うんだ。そう考えると、魔王アスモデウスが処刑されてすぐにこの世界にやってきたんだとしても赤ちゃんの状態になってるんじゃないかな?」
「そんなの知らないよ。魔王なんだから何でもありって事でしょ。そういう細かいところばっかり気にしていると、女の子にモテなくなっちゃうよ」
「いや、細かいって言うか、大事なことだと思うんだけど。イザーちゃんだって気になってるでしょ?」
「別に、そんな事ないもん。犯人が魔王アスモデウスの生まれ変わりか知らないけど、うまなちゃんがいる場所はわかってるもん。犯人の事なんて別にどうでもいいんだもん」
これ以上イザーちゃんをいじめるのもかわいそうだと思っていたタイミングで愛華ちゃんから呼び出しを受けた。
高いところにある茶葉を取ってほしいという事なのでキッチンへと向かったのだが、俺を呼び出した愛華ちゃんはその手にしっかりと茶葉の入った缶を持っていた。
「イザーちゃんには内緒にしておいてほしいんだけど、たぶんうまなちゃんを誘拐したのって、魔王アスモデウスの生まれ変わりなんだと思うよ」
君もそう考えているのか。そう言いかけた俺は黙って愛華ちゃんの顔を見つめていた。
二人がそう言うのであれば間違いないのだと思うけど、魔王アスモデウスの生まれ変わりがうまなちゃんを誘拐したとしたら、もう少し焦った方がいいと思うんだよな。
もしかしたら、俺が知らないうちに身代金のやり取りなんかがあってうまなちゃんは救出されたという事なのかもしれないな。それならイザーちゃんと愛華ちゃんが冷静でいられるのも納得できるものだ。
「俺が知らないだけかもしれないんだけど、誘拐事件って珍しいことじゃないの?」
「どうだろう。私がいた世界では誘拐とか殺人は良く起こっていたけど、こっちの世界では珍しいんじゃないかな。テレビとかでニュースとして取り上げられるくらいには珍しいことなんだと思うよ」
「一般的な話じゃなくてさ、栗宮院家の人間は誘拐されやすいとかあったりするのかなって思って」
「栗宮院家に限って言えば今まで誘拐事件の被害者になったことなんて無いんじゃないかな。昔から有名なお金持ちではあったから狙われる機会もあったんだろうけど、それ以上にセキュリティがしっかりしているから被害に遭うことなんて無かったんだと思うな」
「でも、うまなちゃんは誘拐されてるって事だよね?」
「そうだね。うまなちゃんは誘拐されちゃったね」
うまなちゃんが誘拐されたというのにここまで落ち着いていられるものだろうか。
いや、普通であればもっと心配して取り乱していたりしてもおかしくないと思う。
それなのに、こんなに落ち着き払っているという事は、二人は犯人の事を知っているという事なのではないだろうか。
考えたくはないけれど、二人が誘拐犯の仲間という可能性だってあるのかもしれない。
「もしかしてなんだけど、二人って誘拐犯の事を知っていたりしないよね。そんなわけないとは思って聞いてるんだけどさ、誘拐犯の事なんて知らないよね?」
「知ってるよ。うまなちゃんがどこにいるのかも知っているし」
「当然だよね。うまなさんがどこにいるかはイザーさんが把握してますもんね。誘拐犯ってどんな人なんですか?」
またしても俺が考えていた答えとは違う答えが返ってきた。
ただ、うまなちゃんの事を誘拐した犯人の事を知っているのはイザーちゃんだけで愛華ちゃんは知らないようではある。二人とも嘘をついている感じではないのでおかしいところは無いような気もするけれど、よくよく考えてみると何も知らないはずの愛華ちゃんが落ち着いているというのは少し引っかかるものがある。
もう少し心配したりしてあげてもいいのではないかと思うのだけど、最近の若い女の子はこれくらい冷静なのが当たり前なのかもしれないな。
「新しい紅茶をいれてもらってもいいかな?」
イザーちゃんは空になったカップを愛華ちゃんに見せると、愛華ちゃんはカップを受け取ってキッチンへと向かっていった。
紅茶をいれるのが楽しいと言っていた愛華ちゃん。愛華ちゃんはうまなちゃんが誘拐されているなんてことをまるで忘れているかのように嬉しそうに鼻歌を歌いながらキッチンへと消えていった。紅茶をいれるのが好きだからと言ってこの状況で鼻歌を歌いながら変なテンポでスキップをしなくてもいいのではないかと思うのだが、本人が満足しているのならそれでいいのかもしれないな。
「愛華がいなくなったことだし、本当の事をお兄さんには教えるね。たぶんなんだけど、うまなちゃんを誘拐したのって魔王アスモデウスが転生した悪い奴だと思うんだ。お兄さん以外は誰も傷一つ付けることが出来なかった魔王アスモデウスの処刑を行ったって通信があったんだけど、魔王アスモデウスが死んだタイミングでうまなちゃんが誘拐されたって言うのは、絶対に魔王アスモデウス関連だと思うんだ。タイミング的にも魔王アスモデウスが関わっていることに間違いないと思うの」
「俺はさ、転生とか生まれ変わるとか転移するとかよくわかってないんだけど、最近処刑された魔王アスモデウスがうまなちゃんを誘拐できるくらいの大人になってるってことなの?」
「そういう事になるかな。お兄さんもそれなら納得出来るでしょ?」
「どうなんだろう。一つ気になることがあるんだけど、俺も瑠璃も愛華ちゃんもこの世界に転生してるって事なんだよね?」
「うん、それがどうかしたの?」
「愛華ちゃんも俺たちと一緒なのかはわからないけど、俺と瑠璃はこの世界に生まれてからこうして大人になるまでの時間を過ごしてきたんだよ。多分、愛華ちゃんもこの世界に生まれてから俺と同じように実際の時間を過ごしてきたと思うんだ。そう考えると、魔王アスモデウスが処刑されてすぐにこの世界にやってきたんだとしても赤ちゃんの状態になってるんじゃないかな?」
「そんなの知らないよ。魔王なんだから何でもありって事でしょ。そういう細かいところばっかり気にしていると、女の子にモテなくなっちゃうよ」
「いや、細かいって言うか、大事なことだと思うんだけど。イザーちゃんだって気になってるでしょ?」
「別に、そんな事ないもん。犯人が魔王アスモデウスの生まれ変わりか知らないけど、うまなちゃんがいる場所はわかってるもん。犯人の事なんて別にどうでもいいんだもん」
これ以上イザーちゃんをいじめるのもかわいそうだと思っていたタイミングで愛華ちゃんから呼び出しを受けた。
高いところにある茶葉を取ってほしいという事なのでキッチンへと向かったのだが、俺を呼び出した愛華ちゃんはその手にしっかりと茶葉の入った缶を持っていた。
「イザーちゃんには内緒にしておいてほしいんだけど、たぶんうまなちゃんを誘拐したのって、魔王アスモデウスの生まれ変わりなんだと思うよ」
君もそう考えているのか。そう言いかけた俺は黙って愛華ちゃんの顔を見つめていた。
二人がそう言うのであれば間違いないのだと思うけど、魔王アスモデウスの生まれ変わりがうまなちゃんを誘拐したとしたら、もう少し焦った方がいいと思うんだよな。
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