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引きこもりからの脱却
第十四話 男一人に女が四人で
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今まで見たことのある建物と何もかもが違う特待生寮に瑠璃は中へ入ることを躊躇していた。
最初は目だけを動かしていた瑠璃もいつの間にか顔を動かして建物の中を見始めていて、最終的には体を大きく動かして隅から隅まで見ようとしていたようだ。
「お姉さんは教員なんでアポさえとってくれればいつでもここに来れますよ。うまなちゃんや愛華が招待することがあるかもしれないですけど、招待されなくても愛華の様子を見に来るとか適当な理由をつけて入ってくればいいですからね」
「そんなことしていいのかな。悪いことのような気もするんだけど、大丈夫なの?」
「大丈夫大丈夫。ここはお兄さんの住んでるところとは違ってセキュリティはしっかりしてるんだよ。正規の手順を踏んでおけば何の心配もないからね」
瑠璃はずっと俺の後ろに隠れているのだ。こんなに気弱になっている瑠璃を見るのは俺が小学生になる前くらいまで記憶を遡らなければ思い出せないくらいレアな出来事だった。
「そんなに心配しなくても大丈夫だぞ。ここは凄くいいところなんだからな」
「その言い方は何だからうさん臭いな。兄貴がそう言うんだったら大丈夫なんだろうけど、
何か騙されてたりしないよね?」
「何もだますことなんて無いぞ」
何かを警戒している瑠璃は一歩動くだけでもかなり時間をかけようとしていた。そんな様子に焦れてしまった俺は瑠璃の手を掴むとそのまま奥へと連れて行った。
「あ、お兄ちゃんが綺麗な女の人と手を繋いでる」
「本当ですね。真琴さんの彼女なんですかね?」
「お兄ちゃんに彼女なんているわけないよ。だって、ちょっと前まで引きこもりでニートやってたんだよ。そんな人と付き合う女の人なんていないって。愛華はそんなお兄さんと付き合うことが出来る?」
「さすがに無理ですね。引きこもりでニートとか何か凄い取り柄があったとしても厳しいと思いますよ」
「やっぱりそうだよね。じゃあ、あの女の人はいったい誰なんだろう?」
瑠璃を品定めするように見ていた二人ではあったが、何かを思い出したのか奥から一冊の本を持ってきて中を確認していた。
パラパラと本をめくっている二人を黙って見ているとイザーちゃんが二人のもとへ駆け寄って本を受け取って何かを二人に見せていたのだ。
二人は本と瑠璃を交互に見てから不思議そうな顔をして俺の事を見ていた。
「ねえ、なんでお兄ちゃんが新しい先生と手を繋いでるの?」
「なんでって、瑠璃が固まってて一歩も動こうとしないからここに連れてくるために手を握っただけだけど」
「そういう事を聞いているんじゃなくて、なんでお兄ちゃんが新しい先生と手を繋ぐのかって聞いてるんだよ。お兄ちゃんって誰とでも手を繋ぐような人じゃないよね?」
「兄妹なら手くらい繋ぐこともあるだろ。最後に手を繋いだのがいつだったかは覚えてないけど、今回みたいな時は繋ぐこともあるんじゃないかな」
「え、兄妹ってどういう事?」
「どういう事って、そのまんまの意味だけど。うまなちゃんも愛華ちゃんも兄妹って知らないの?」
「それくらい知ってるって。言われてみれば、先生とお兄ちゃんってちょっと似てるような気もするけど」
俺と瑠璃が似ていると言われたのは初めてかもしれない。身長も体型も全く似てはいないと思うけど、言われてみれば顔の雰囲気は似ているかもしれない。俺と瑠璃が似ていると言われたことがない一番の理由は、俺がずっと引きこもっていて他人と関わってこなかったからだろう。家族以外と会う事もなかった俺が瑠璃と似ているなんて言われる機会なんてそもそも無かったのだった。
「私と兄貴ってそんなに似てるかな?」
瑠璃はちょっと不満そうな感じでイザーちゃんに聞いていた。イザーちゃんは困ったような感じで俺に視線を送っていた。その視線に対して俺は目を逸らすという答えを返したのだ。
「そうだね。言われてみれば雰囲気が似てるなって感じるくらいかな。凄く似てるって感じではないけど、兄妹だって言われたら納得する感じではあると思うよ」
「そうなんだ。兄貴と似てるって言われたの初めてだったからちょっとだけビックリしちゃった。私の友達の西ちゃんは私と兄貴が似てるって言ったことなかったんだよね」
少しずつここに慣れてきたのか瑠璃はイザーちゃんと普通に会話が出来るくらいにはなっていたようだ。まだうまなちゃんたちの方を見ることは出来ないみたいだけど、それでも自分から行動できるようになってきたので一安心だろう。
そんな時うまなちゃんと愛華ちゃんが俺の事を手招きで呼んでいるのに気付いた。俺は瑠璃から手を離してうまなちゃんたちの方へと近付いていった。
「ねえ、先生ってお兄さんの事を兄貴って呼んでるの?」
「そうだけど。それがどうかした?」
「先生って可愛いのに兄貴って呼ぶんだなって思って意外だよ。私もお兄ちゃんの事を兄貴って呼んだ方がいいのかな?」
「さすがにそれはやめてほしいかな。うまなちゃんに兄貴ってのは似合わないと思うし」
「それなら、私は真琴さんの事を兄貴って呼んでもいいですか?」
「いや、愛華ちゃんはうまなちゃん以上に兄貴呼びが似合ってないよ」
兄貴呼びをしないでほしいと伝えただけではあったが二人は何故か物凄く落ち込んでいるようだ。呼び名なんてどうでもいいとは思うけど、さすがにうまなちゃんと愛華ちゃんのような少女に兄貴と呼ばせるのは違うんじゃないかという気がするのだ。
「私とイザーちゃんと愛華と先生でお兄ちゃんを奪い合うってのは楽しいかも。愛華ちゃんはお兄ちゃんに興味ないかもしれないけど、そんな風になったら楽しいかもね」
「そうですね。私は別に真琴さんに対して興味なんてないですけど、うまなさんの提案ってゲームみたいで面白いかもしれないですね」
気にしてはいないと思っているけれど、目の前で自分に興味が無いと言われるのはさすがにショックを受けてしまうな。そういう風に見ていないのは俺も一緒なんだけど、興味が無いと言われるのは本当にショックだ。
最初は目だけを動かしていた瑠璃もいつの間にか顔を動かして建物の中を見始めていて、最終的には体を大きく動かして隅から隅まで見ようとしていたようだ。
「お姉さんは教員なんでアポさえとってくれればいつでもここに来れますよ。うまなちゃんや愛華が招待することがあるかもしれないですけど、招待されなくても愛華の様子を見に来るとか適当な理由をつけて入ってくればいいですからね」
「そんなことしていいのかな。悪いことのような気もするんだけど、大丈夫なの?」
「大丈夫大丈夫。ここはお兄さんの住んでるところとは違ってセキュリティはしっかりしてるんだよ。正規の手順を踏んでおけば何の心配もないからね」
瑠璃はずっと俺の後ろに隠れているのだ。こんなに気弱になっている瑠璃を見るのは俺が小学生になる前くらいまで記憶を遡らなければ思い出せないくらいレアな出来事だった。
「そんなに心配しなくても大丈夫だぞ。ここは凄くいいところなんだからな」
「その言い方は何だからうさん臭いな。兄貴がそう言うんだったら大丈夫なんだろうけど、
何か騙されてたりしないよね?」
「何もだますことなんて無いぞ」
何かを警戒している瑠璃は一歩動くだけでもかなり時間をかけようとしていた。そんな様子に焦れてしまった俺は瑠璃の手を掴むとそのまま奥へと連れて行った。
「あ、お兄ちゃんが綺麗な女の人と手を繋いでる」
「本当ですね。真琴さんの彼女なんですかね?」
「お兄ちゃんに彼女なんているわけないよ。だって、ちょっと前まで引きこもりでニートやってたんだよ。そんな人と付き合う女の人なんていないって。愛華はそんなお兄さんと付き合うことが出来る?」
「さすがに無理ですね。引きこもりでニートとか何か凄い取り柄があったとしても厳しいと思いますよ」
「やっぱりそうだよね。じゃあ、あの女の人はいったい誰なんだろう?」
瑠璃を品定めするように見ていた二人ではあったが、何かを思い出したのか奥から一冊の本を持ってきて中を確認していた。
パラパラと本をめくっている二人を黙って見ているとイザーちゃんが二人のもとへ駆け寄って本を受け取って何かを二人に見せていたのだ。
二人は本と瑠璃を交互に見てから不思議そうな顔をして俺の事を見ていた。
「ねえ、なんでお兄ちゃんが新しい先生と手を繋いでるの?」
「なんでって、瑠璃が固まってて一歩も動こうとしないからここに連れてくるために手を握っただけだけど」
「そういう事を聞いているんじゃなくて、なんでお兄ちゃんが新しい先生と手を繋ぐのかって聞いてるんだよ。お兄ちゃんって誰とでも手を繋ぐような人じゃないよね?」
「兄妹なら手くらい繋ぐこともあるだろ。最後に手を繋いだのがいつだったかは覚えてないけど、今回みたいな時は繋ぐこともあるんじゃないかな」
「え、兄妹ってどういう事?」
「どういう事って、そのまんまの意味だけど。うまなちゃんも愛華ちゃんも兄妹って知らないの?」
「それくらい知ってるって。言われてみれば、先生とお兄ちゃんってちょっと似てるような気もするけど」
俺と瑠璃が似ていると言われたのは初めてかもしれない。身長も体型も全く似てはいないと思うけど、言われてみれば顔の雰囲気は似ているかもしれない。俺と瑠璃が似ていると言われたことがない一番の理由は、俺がずっと引きこもっていて他人と関わってこなかったからだろう。家族以外と会う事もなかった俺が瑠璃と似ているなんて言われる機会なんてそもそも無かったのだった。
「私と兄貴ってそんなに似てるかな?」
瑠璃はちょっと不満そうな感じでイザーちゃんに聞いていた。イザーちゃんは困ったような感じで俺に視線を送っていた。その視線に対して俺は目を逸らすという答えを返したのだ。
「そうだね。言われてみれば雰囲気が似てるなって感じるくらいかな。凄く似てるって感じではないけど、兄妹だって言われたら納得する感じではあると思うよ」
「そうなんだ。兄貴と似てるって言われたの初めてだったからちょっとだけビックリしちゃった。私の友達の西ちゃんは私と兄貴が似てるって言ったことなかったんだよね」
少しずつここに慣れてきたのか瑠璃はイザーちゃんと普通に会話が出来るくらいにはなっていたようだ。まだうまなちゃんたちの方を見ることは出来ないみたいだけど、それでも自分から行動できるようになってきたので一安心だろう。
そんな時うまなちゃんと愛華ちゃんが俺の事を手招きで呼んでいるのに気付いた。俺は瑠璃から手を離してうまなちゃんたちの方へと近付いていった。
「ねえ、先生ってお兄さんの事を兄貴って呼んでるの?」
「そうだけど。それがどうかした?」
「先生って可愛いのに兄貴って呼ぶんだなって思って意外だよ。私もお兄ちゃんの事を兄貴って呼んだ方がいいのかな?」
「さすがにそれはやめてほしいかな。うまなちゃんに兄貴ってのは似合わないと思うし」
「それなら、私は真琴さんの事を兄貴って呼んでもいいですか?」
「いや、愛華ちゃんはうまなちゃん以上に兄貴呼びが似合ってないよ」
兄貴呼びをしないでほしいと伝えただけではあったが二人は何故か物凄く落ち込んでいるようだ。呼び名なんてどうでもいいとは思うけど、さすがにうまなちゃんと愛華ちゃんのような少女に兄貴と呼ばせるのは違うんじゃないかという気がするのだ。
「私とイザーちゃんと愛華と先生でお兄ちゃんを奪い合うってのは楽しいかも。愛華ちゃんはお兄ちゃんに興味ないかもしれないけど、そんな風になったら楽しいかもね」
「そうですね。私は別に真琴さんに対して興味なんてないですけど、うまなさんの提案ってゲームみたいで面白いかもしれないですね」
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