百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話

釧路太郎

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おパンツ戦争

第59話 朝に囲まれるのは良くある話

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 真っすぐに学校へと向かっていた工藤珠希は謎の女性集団に囲まれて前へ進むことが出来なくなっていた。登校途中に道を塞がれてしまう事なんて初めての経験だったので焦ってしまった工藤珠希はその人達のど真ん中を突っ切ろうとしていたのだ。工藤珠希を囲んでいた集団は当然道を開けることもなく工藤珠希の行く手を完全に遮ったのだ。

「申し訳ないんだけど、少し私たちに時間を貰うよ。大丈夫学校にはちゃんと伝えてあるから遅刻の心配とかしなくてもいいからね」
「学校に伝えてくれているんだったら大丈夫ですね。って、そんなわけないでしょ。あなたたちはいったい誰なんですか。何の目的でボクを誘拐しようとしてるんですか?」
「別に誘拐なんてしないわよ。それに、ちょっと話を聞いてくれればすぐに開放するし」
「そんな事言ったって騙されないですよ、今までもそんな事を言ってボクの事を誘拐しようとした人がいたんですからね。あなたたちだってその人達と一緒でしょ?」
「一緒じゃないわよ。本当にすぐに開放するから安心して頂戴。本題に入らせてもらえないと余計に時間をかけることになっちゃうんだけど」
「そんな事言ってボクを騙そうとしてるんですよね。今すぐに警察を呼んだっていいんですよ?」

 警察と聞いて動揺するかと思っていたのだが、工藤珠希の思惑は外れてしまった。工藤珠希を取り囲んでいる集団は警察と言う言葉を聞いても誰一人として焦る様子は見られなかった。
 これは本当に何か聞きたいだけなのかもしれないと思いつつも、緊急通報用に登録してあるアプリの起動だけはしておく工藤珠希であった。

「聞きたいことを聞いたらすぐに開放するからね。あんまり余計なことをしてると本当に無駄な時間を過ごすことになるから。これから質問をいくつかさせてもらうんだけど、答えたくないことだったら答えたくないって言ってくれていいからね」
「強力はしますけど、答えたら本当に開放してくださいよ。それじゃないと、助けを呼ぶことになりますからね」
「そうしてくれてかまわないよ。それに、助けを呼ぶんだったら警察よりも君のクラスメイトにした方がいいと思うよ」

 それもそうかと思って警察ではなく栗鳥院柘榴にすぐに連絡をとれるようにしたのだが、その行動を見ていた女は諭すように話しかけてきた。

「その子も助けには来てくれると思うんだけど、どっちかって言うとその子よりもサキュバスの子にしておいた方がいいんじゃないかな。サキュバスの子と言っても、強いこと凄く強い子がいると思うんだけど、君はどっちに助けてもらいたいのかな?」

 全てを見通しているのではないかと思えるような女の口ぶりに戸惑ってしまいどうでもいいようなスタンプを栗鳥院柘榴に送ってしまったのだが、すぐに既読がついてよくわからないスタンプが送られてきたのであった。何の意味もなく再びスタンプを送ってしまったのだが、目の前にいる女の表情が少しだけ固くなったのを見てすぐにスマホを鞄にしまったのだった。

「そこまでしなくてもいいんだけど。何かあった時にすぐに連絡をとれるようにしておいた方がいいんじゃないかな。こんな風に囲んでる私が言うのも変だと思うけど、あなたはもう少し危機感を抱いておいた方がいいと思うよ」

 それもそうだと思いなおして工藤珠希は素直に鞄からスマホを取り出したのだが、この時になって初めてこの人たちは自分を誘拐しようとしているのではないのだろうと思始めていた。
 ただ、これだけの理由でこの人たちの全てを信じてしまう程甘い女ではない。そう思った工藤珠希であった。

「余計な話はこれくらいにしておいて、さっそく本題に入らせてもらうわね。単刀直入に聞くけど、あなたのクラスにやってきた二人組の宇宙人って、この世界を支配しようとしているって話は聞いてたりするかしら?」
「そんな話は聞いてないですね。どちらかと言うと、この世界の事を学びに来たって感じだと思います。ボクから見てもこの世界を支配しようとしてる感じだとは思えないですよ」
「あの学校にはイザーちゃんがいるからそんな態度は見せないと思うんだけどね。でも、こんな噂があるんだけど、君も聞いたことないかな?」
「どんな噂ですか?」

「遠い星からやってきた宇宙人がこの星を侵略するために多くの仲間を呼び寄せていて、少しずつこの世界を侵略しようとしている。って話なんだけど」
「その噂は聞いたことないですけど、クリームパイちゃんの部下の人達ならあそこの公園で暮らしていますよ」

 工藤珠希が指をさしたすぐ先にある公園にはサキュバス星人たちが人知れず住んでいるのだが、この人たちも気付いていなかったという事であれば本当に誰も彼らに気が付いていなかったという事なのだろう。
 文明レベルが違うとこんなにも気付かれないものなのだなと思ったと同時に、うすら寒いものを感じた工藤珠希であった。

「そんな冗談を言ってもらっては困るな。我々も君がここに来るまでの間だが一部の者があの公園で休憩してたんだぞ。そんなところに宇宙人がいれば気付かないはずがないだろ。全くおかしなことを言うものだ」

 そう言いながらも明らかに動揺している女たちはしきりに公園を気にしていた。今もこちらに向かって親しげに手を振ってくれているサキュバス星人が何人もいるのだけれど、本当にこの人たちには見えていないようだ。
 その事を指摘しても誰一人として信じようとはしていないのだが、サキュバス星人の一人が工藤珠希の隣に来て指先を動かすストレッチのようなことをすると同時に周りの女たちが一斉に戦闘態勢になっていた。

「すいません、驚かせるつもりはなかったんですよ。そんなに警戒しなくても大丈夫ですよ。自分はあなたたちにも危害を加えるつもりはないですから」

 自分が一番最初に行ったことをこの人たちも行っているんだなと感じた工藤珠希。
 それに、本当にこの宇宙人の人達は姿を認識出来ないようにすることが出来ていたんだと思っていたのだった。
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