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第41話 週末の夜の一人行動
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久しぶりに工藤太郎と通話が出来た工藤珠希は少しだけテンションが上がって夜だというのを忘れてコンビニに買い物に行ってしまった。
一人での夜間の外出は避けるようにと言われていたのだけれど、子供じゃないのだからそんな事を気にする必要も無いと思ってしまったのだ。
交通量の多い幹線道路まで出てしまえば怪しい人なんて遭遇することもないだろうと軽い気持ちでいたのだが、どう見ても普通の人間ではない人たちが奇声をあげながら逆立ちで歩道を進んでいた。
工藤珠希はこのままでは危険だと思って引き返そうとしたのだが、そう簡単に逃げだすことは出来なかった。
「お姉さん、お姉さん、お姉さん、お姉さん、お姉さん。お姉さんは僕たちが見えてるんだね。見え、見え、見見見見見見えてるんだね。ごま、ごまか、ごまかそうとしても、しても、してもももももも、無駄だよ。お姉さんの目には僕たちが映っちゃってるからね」
嬉しいからと言って軽い気持ちで夜に外に出たのを後悔した工藤珠希ではあったが、こうなってしまってはもう遅い。
大声で叫んで助けを呼ぼうと思ったのだけれど、逃げ場が完全に塞がれてしまっているうえに見える範囲全てが逆立ちをした奇妙な生物だらけなのだ。叫んだところで誰も助けになんか来てくれるはずもないのだ。
「あれ、あれ、あれあれあれ、あれ、あれあれ。お姉さん、お姉さんは、お姉さんは怖がって、いるいるいるいいいいるるるるいるいる?」
「怖がらなくても、大丈夫夫夫夫夫。隊長が、隊長がいれば、大丈夫夫夫夫」
「大丈夫、隊長いる、大丈夫、隊長。隊長いる?」
言っていることも理解出来ないし、逆立ちで近付いたり離れたりしている事にも理解できないが、何よりも理解出来ないのがこんなに怪しい集団に囲まれてしまっているのに道路を通り過ぎていく車が一切止まって助けてくれようとしないのだ。それどころか、こんなに怪しい集団がいるのに誰一人としてスピードを上げることもしなかったのだ。
もしかしたら、この人たちが見えているのは自分だけなのではないかと思っていたのだ。そんな特別な状態になんてなりたくないと思いながらも、零楼館高校に入学してからの事を思い出すと変なことばかり起こっていたという事実にも気付かされたのだ。
このままここにいても良いことなんて無い。今すぐ逃げださなくてはいけない。そう思ってはいたのだけれど、どうやったらここから逃げ出すことが出来るというのだろうか。ごく普通の人間である工藤珠希にはこの状況を打破する事など出来ないのだ。
そんなタイミングで一人の男が逆立ちをしている人たちの間をすり抜けながらやってきた。
服装や表情から何となくお笑い芸人なのではないかと思ってしまう印象を受けたけれど、工藤珠希の前まで来ると逆立ちをしている人たちに対して一喝していた。
「お嬢さんが怖がってるでしょ。この世界では逆立ちなんてしなくても死にませんから。ほら、俺がこうして普通にしてるのが何よりの証拠でしょ。そもそも、逆立ちしないと死んじゃう世界なんて今まで一度しか見たことなかっただろ。ほら、先輩方も俺みたいに普通にしてこのお嬢さんに隊長の事を聞きましょうよ」
逆立ちをしないと死んでしまう世界と言うのがあるのだとしたら、工藤珠希は数秒で死んでしまうなと考えてしまった。
ただ、お笑い芸人のような見た目のお兄さんは普通に喋ることが出来るのでこの状況を何とかしてもらえるのではないかと期待したのだ。
「ところで、お嬢さんは俺たちの隊長の事を知っていますよね?」
完全に油断したタイミングで凄まれてしまい、工藤珠希は逆立ちをしている人に囲まれて時よりも恐怖を感じて少しだけ泣きそうになっていた。
「すいません、そういうつもりで聞いたんじゃないです。お嬢さんが俺たちの隊長の事を知ってるんじゃないかと思って聞いたんですよ。だって、お嬢さんから少しだけ隊長の匂いがしてますからね。お嬢さんからはほんのりとですけど、隊長のメスの匂いがしてるんですよ。俺たちの前では絶対に出さない隊長のメスの匂いがしてるんですよ」
隊長とかメスの匂いとかいきなり言われてしまった事で、この人はまともそうだと思った自分の判断力の無さを恨む工藤珠希であった。
「副長もそんなことしちゃダメですよ。いくら隊長が恋しいからって、そんな事をしたらこのお嬢さんが困っちゃうでしょ。隊長の事を好きなのは副長だけじゃないんですからね。俺たちもみんな隊長の事が好きだからこんな星までやってきたんですよ」
「すまない。このお嬢さんから隊長のメスの匂いがしてたんで興奮してしまったみたいだ。ちょっとだけ頭を冷やしてくるので、その間にこのお嬢さんから何か情報を引き出しておけよ」
「できるだけ頑張ります。俺一人じゃなくてみんなで頑張ります」
揉め事をしているタイミングでこの場から抜け出そうとした工藤珠希ではあったが、話をしている二人以外の人達の視線が自分に集中していることに気付いた瞬間に工藤珠希は全てを諦めたのだ。
何をしても逃げ出すことが出来ないのだとしたら、逃げ出さない中で精一杯の抵抗をしてやろうと心に誓った工藤珠希であった。
一人での夜間の外出は避けるようにと言われていたのだけれど、子供じゃないのだからそんな事を気にする必要も無いと思ってしまったのだ。
交通量の多い幹線道路まで出てしまえば怪しい人なんて遭遇することもないだろうと軽い気持ちでいたのだが、どう見ても普通の人間ではない人たちが奇声をあげながら逆立ちで歩道を進んでいた。
工藤珠希はこのままでは危険だと思って引き返そうとしたのだが、そう簡単に逃げだすことは出来なかった。
「お姉さん、お姉さん、お姉さん、お姉さん、お姉さん。お姉さんは僕たちが見えてるんだね。見え、見え、見見見見見見えてるんだね。ごま、ごまか、ごまかそうとしても、しても、してもももももも、無駄だよ。お姉さんの目には僕たちが映っちゃってるからね」
嬉しいからと言って軽い気持ちで夜に外に出たのを後悔した工藤珠希ではあったが、こうなってしまってはもう遅い。
大声で叫んで助けを呼ぼうと思ったのだけれど、逃げ場が完全に塞がれてしまっているうえに見える範囲全てが逆立ちをした奇妙な生物だらけなのだ。叫んだところで誰も助けになんか来てくれるはずもないのだ。
「あれ、あれ、あれあれあれ、あれ、あれあれ。お姉さん、お姉さんは、お姉さんは怖がって、いるいるいるいいいいるるるるいるいる?」
「怖がらなくても、大丈夫夫夫夫夫。隊長が、隊長がいれば、大丈夫夫夫夫」
「大丈夫、隊長いる、大丈夫、隊長。隊長いる?」
言っていることも理解出来ないし、逆立ちで近付いたり離れたりしている事にも理解できないが、何よりも理解出来ないのがこんなに怪しい集団に囲まれてしまっているのに道路を通り過ぎていく車が一切止まって助けてくれようとしないのだ。それどころか、こんなに怪しい集団がいるのに誰一人としてスピードを上げることもしなかったのだ。
もしかしたら、この人たちが見えているのは自分だけなのではないかと思っていたのだ。そんな特別な状態になんてなりたくないと思いながらも、零楼館高校に入学してからの事を思い出すと変なことばかり起こっていたという事実にも気付かされたのだ。
このままここにいても良いことなんて無い。今すぐ逃げださなくてはいけない。そう思ってはいたのだけれど、どうやったらここから逃げ出すことが出来るというのだろうか。ごく普通の人間である工藤珠希にはこの状況を打破する事など出来ないのだ。
そんなタイミングで一人の男が逆立ちをしている人たちの間をすり抜けながらやってきた。
服装や表情から何となくお笑い芸人なのではないかと思ってしまう印象を受けたけれど、工藤珠希の前まで来ると逆立ちをしている人たちに対して一喝していた。
「お嬢さんが怖がってるでしょ。この世界では逆立ちなんてしなくても死にませんから。ほら、俺がこうして普通にしてるのが何よりの証拠でしょ。そもそも、逆立ちしないと死んじゃう世界なんて今まで一度しか見たことなかっただろ。ほら、先輩方も俺みたいに普通にしてこのお嬢さんに隊長の事を聞きましょうよ」
逆立ちをしないと死んでしまう世界と言うのがあるのだとしたら、工藤珠希は数秒で死んでしまうなと考えてしまった。
ただ、お笑い芸人のような見た目のお兄さんは普通に喋ることが出来るのでこの状況を何とかしてもらえるのではないかと期待したのだ。
「ところで、お嬢さんは俺たちの隊長の事を知っていますよね?」
完全に油断したタイミングで凄まれてしまい、工藤珠希は逆立ちをしている人に囲まれて時よりも恐怖を感じて少しだけ泣きそうになっていた。
「すいません、そういうつもりで聞いたんじゃないです。お嬢さんが俺たちの隊長の事を知ってるんじゃないかと思って聞いたんですよ。だって、お嬢さんから少しだけ隊長の匂いがしてますからね。お嬢さんからはほんのりとですけど、隊長のメスの匂いがしてるんですよ。俺たちの前では絶対に出さない隊長のメスの匂いがしてるんですよ」
隊長とかメスの匂いとかいきなり言われてしまった事で、この人はまともそうだと思った自分の判断力の無さを恨む工藤珠希であった。
「副長もそんなことしちゃダメですよ。いくら隊長が恋しいからって、そんな事をしたらこのお嬢さんが困っちゃうでしょ。隊長の事を好きなのは副長だけじゃないんですからね。俺たちもみんな隊長の事が好きだからこんな星までやってきたんですよ」
「すまない。このお嬢さんから隊長のメスの匂いがしてたんで興奮してしまったみたいだ。ちょっとだけ頭を冷やしてくるので、その間にこのお嬢さんから何か情報を引き出しておけよ」
「できるだけ頑張ります。俺一人じゃなくてみんなで頑張ります」
揉め事をしているタイミングでこの場から抜け出そうとした工藤珠希ではあったが、話をしている二人以外の人達の視線が自分に集中していることに気付いた瞬間に工藤珠希は全てを諦めたのだ。
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