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第38話 クリームパイの好きなモノ
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あっという間にクラスに溶け込んだクリームパイはサキュバスたち同様に外見だけでは宇宙人だと思えなかった。
ただ、身長が平均よりもかなり低いこともあって小学生と間違えられそうだったが、その事に触れると烈火のごとく怒りだしてしまうのでソコだけは注意するようにしていた。それさえ気を付ければ変なことをされる事は無いのだ。
「今日もうまなちゃんの事をやっちゃったね。クリームパイちゃんってうまなちゃんの事が嫌いだったりするの?」
「ワシは別にあの女の事を嫌ってはいないんだ。ただ、どういうわけなのか毎日しつこくワシの身長についてバカにしてくるからついつい手が出てしまうのだよ。本当ならワシもあの女と仲良くしてみたいのだが、あの女がワシの身長の事をとやかく言うので手が出てしまっているという事になるのかね」
「確かにね。開口一番に身長を聞いてくるってのはどうかと思うんだよね。でも、クリームパイちゃんってうまなちゃんの部屋にルームシェアしてるよね。部屋にいる時は喧嘩とかしてないの?」
「喧嘩も何も、あの女は出会ってから一度も夜を一緒に過ごした事は無いな。毎晩のように処置室でドクターポンピーノのお世話になってるはずだが」
「そう言えばそうだったね。うまなちゃんを連続で殺したって記録があればさ、クリームパイちゃんって完全に世界チャンピオンだね。他にそんなことが出来そうなのはイザーちゃんと太郎ちゃんくらいだろうけど、二人ともそんな事をしないと思うし」
クリームパイは真面目に勉強をしているのだ。
自分たちの星とは違う歴史に興味を持ち、クラスメイトを巻き込んで日本史の研究も始めていたのだ。
その事が自分の故郷に帰った時に何の役に立つのかなんて関係なく、クリームパイが興味を持ったことに意味があるのだ。
「なんでそんなに日本史に興味なんて持ったの?」
工藤珠希が率直に聞いてみると、クリームパイは何も隠さずに素直に答えてきた。
「文化的なことはよくわからないけど、今のこの国と違って戦いが日常の中に溢れているなんて凄いことだと思ったんだよ。国中のいたるところで戦いが起きていて、戦士だけではなく農民や僧侶まで戦いに参加しているなんてありえないよ。しかも、戦士よりも農民や僧侶の方が強い場合もあったなんて異常だよね。ワシの所では戦士と農民は役割がはっきり分かれていたし、僧侶が武装するなんて話は漫画でも聞いたことが無いぶっ飛んだ設定だと思う。それなのに、この国の人達はそんな異常な時代をわずかなページにまとめてしまうなんて恐ろしいとしか言いようがない。そのような歴史を隠したいのか、それともそのような事は特別ではなく日常でしかないからあえて説明する必要が無いとでもいうのか、真意は定かではないけれど、そんな恐ろしい時代を経ているのにも関わらずこの国は平穏な時を過ごしているというのも不思議な話だと思ったんだよ」
「そう言われたら面白いかも。近所のお寺のお坊さんが武装してるとか想像も出来ないよね」
「その当時って、社会が大きく乱れていて、広大な土地を持っていてソレを守る必要があったお寺の人達は、盗賊だけじゃなく国や他の領主なんかの武装勢力とも紛争を抱えていたから強くたくましくないといけなかったんだよね」
「野城君は何でも知ってるな。先生に聞くよりも早く答えてもらえるよね」
教科書には数行でまとめられているようなことでも深く掘り下げると面白い発見が多く存在することを知った。
今までは当たり前のように読み飛ばしていたことでも、クリームパイのように何も知らない者が興味を持って深く掘り下げていくと意外と歴史も楽しいものだという事がみんなに知られて行っていた。
零楼館高校に通う生徒が受験とはほぼ無縁なこともあってこそ出来ることなのかもしれないが、どのようなことでも知識を深めることに損は無いと思う生徒たちであった。
「食べ物とかはどうかな。この星の料理ってクリームパイちゃんの口に合うかな?」
「最初はちょっと戸惑ったけど、慣れてくるととても美味しいよ。ワシが今まで食べていたのはこの世界で言う素材でしかなかったからね。調理と言う言葉もなかったくらいだし、口の中に広がる複雑な味わいはとても言葉に出来ない素晴らしい体験だよ。でも、ワシらにはそこまで重要なことではないのかもしれないな。この世界のように安定して作物を育てることも家畜を飼育することも難しいと思われるぞ」
「その辺はクリームパイちゃんの他にも誰か留学に来てもらえばいいんじゃないかな。何でも一人に任せるってのは負担が大きすぎるからね」
「そんな難しいことなんて考えないでさ、今日の放課後も瑠璃先生のお兄さんのお店に美味しいものを食べに行こうよ。クリームパイちゃんの食べたいものがあれば今からリクエストしておくけど、何か食べたいものとかあったりするかな?」
「えっと、この前食べた焼きそばが美味しかったからまた食べたいかも。あっさりした方がワシは好みだったんでそれがいいかな」
「じゃあ、瑠璃先生のお兄さんにお願いしておくね。クリームパイちゃんの好きなしょうゆ焼きそばとたこ焼きでお願いしておくよ」
クリームパイの食の好みを考えると、お祭りに参加して屋台巡りをしてみるととんでもないことになってしまうだろうなと考える者が多数だった。
栗宮院うまなだけに毎日行われる殺害行動を除けば勉強熱心でいい子なのだと思う素敵な女の子なクリームパイであった。
ただ、身長が平均よりもかなり低いこともあって小学生と間違えられそうだったが、その事に触れると烈火のごとく怒りだしてしまうのでソコだけは注意するようにしていた。それさえ気を付ければ変なことをされる事は無いのだ。
「今日もうまなちゃんの事をやっちゃったね。クリームパイちゃんってうまなちゃんの事が嫌いだったりするの?」
「ワシは別にあの女の事を嫌ってはいないんだ。ただ、どういうわけなのか毎日しつこくワシの身長についてバカにしてくるからついつい手が出てしまうのだよ。本当ならワシもあの女と仲良くしてみたいのだが、あの女がワシの身長の事をとやかく言うので手が出てしまっているという事になるのかね」
「確かにね。開口一番に身長を聞いてくるってのはどうかと思うんだよね。でも、クリームパイちゃんってうまなちゃんの部屋にルームシェアしてるよね。部屋にいる時は喧嘩とかしてないの?」
「喧嘩も何も、あの女は出会ってから一度も夜を一緒に過ごした事は無いな。毎晩のように処置室でドクターポンピーノのお世話になってるはずだが」
「そう言えばそうだったね。うまなちゃんを連続で殺したって記録があればさ、クリームパイちゃんって完全に世界チャンピオンだね。他にそんなことが出来そうなのはイザーちゃんと太郎ちゃんくらいだろうけど、二人ともそんな事をしないと思うし」
クリームパイは真面目に勉強をしているのだ。
自分たちの星とは違う歴史に興味を持ち、クラスメイトを巻き込んで日本史の研究も始めていたのだ。
その事が自分の故郷に帰った時に何の役に立つのかなんて関係なく、クリームパイが興味を持ったことに意味があるのだ。
「なんでそんなに日本史に興味なんて持ったの?」
工藤珠希が率直に聞いてみると、クリームパイは何も隠さずに素直に答えてきた。
「文化的なことはよくわからないけど、今のこの国と違って戦いが日常の中に溢れているなんて凄いことだと思ったんだよ。国中のいたるところで戦いが起きていて、戦士だけではなく農民や僧侶まで戦いに参加しているなんてありえないよ。しかも、戦士よりも農民や僧侶の方が強い場合もあったなんて異常だよね。ワシの所では戦士と農民は役割がはっきり分かれていたし、僧侶が武装するなんて話は漫画でも聞いたことが無いぶっ飛んだ設定だと思う。それなのに、この国の人達はそんな異常な時代をわずかなページにまとめてしまうなんて恐ろしいとしか言いようがない。そのような歴史を隠したいのか、それともそのような事は特別ではなく日常でしかないからあえて説明する必要が無いとでもいうのか、真意は定かではないけれど、そんな恐ろしい時代を経ているのにも関わらずこの国は平穏な時を過ごしているというのも不思議な話だと思ったんだよ」
「そう言われたら面白いかも。近所のお寺のお坊さんが武装してるとか想像も出来ないよね」
「その当時って、社会が大きく乱れていて、広大な土地を持っていてソレを守る必要があったお寺の人達は、盗賊だけじゃなく国や他の領主なんかの武装勢力とも紛争を抱えていたから強くたくましくないといけなかったんだよね」
「野城君は何でも知ってるな。先生に聞くよりも早く答えてもらえるよね」
教科書には数行でまとめられているようなことでも深く掘り下げると面白い発見が多く存在することを知った。
今までは当たり前のように読み飛ばしていたことでも、クリームパイのように何も知らない者が興味を持って深く掘り下げていくと意外と歴史も楽しいものだという事がみんなに知られて行っていた。
零楼館高校に通う生徒が受験とはほぼ無縁なこともあってこそ出来ることなのかもしれないが、どのようなことでも知識を深めることに損は無いと思う生徒たちであった。
「食べ物とかはどうかな。この星の料理ってクリームパイちゃんの口に合うかな?」
「最初はちょっと戸惑ったけど、慣れてくるととても美味しいよ。ワシが今まで食べていたのはこの世界で言う素材でしかなかったからね。調理と言う言葉もなかったくらいだし、口の中に広がる複雑な味わいはとても言葉に出来ない素晴らしい体験だよ。でも、ワシらにはそこまで重要なことではないのかもしれないな。この世界のように安定して作物を育てることも家畜を飼育することも難しいと思われるぞ」
「その辺はクリームパイちゃんの他にも誰か留学に来てもらえばいいんじゃないかな。何でも一人に任せるってのは負担が大きすぎるからね」
「そんな難しいことなんて考えないでさ、今日の放課後も瑠璃先生のお兄さんのお店に美味しいものを食べに行こうよ。クリームパイちゃんの食べたいものがあれば今からリクエストしておくけど、何か食べたいものとかあったりするかな?」
「えっと、この前食べた焼きそばが美味しかったからまた食べたいかも。あっさりした方がワシは好みだったんでそれがいいかな」
「じゃあ、瑠璃先生のお兄さんにお願いしておくね。クリームパイちゃんの好きなしょうゆ焼きそばとたこ焼きでお願いしておくよ」
クリームパイの食の好みを考えると、お祭りに参加して屋台巡りをしてみるととんでもないことになってしまうだろうなと考える者が多数だった。
栗宮院うまなだけに毎日行われる殺害行動を除けば勉強熱心でいい子なのだと思う素敵な女の子なクリームパイであった。
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