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第25話 中華まんじゅうと中華まん
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言わなくても良いことを言ってしまう。誰でもそんな経験はあると思うのだが、工藤珠希は驚いている顔を見せている太郎を見て実感してしまった。
自分で何を言ってしまったのか理解した時、工藤珠希の周りは時が止まったかのように何も感じることが出来なかった。
「それで、中華風たい焼きって名前の由来なんだけど」
工藤太郎はフォローのつもりでそう言ったのだが、工藤珠希の耳には真っすぐ届いてはいなかった。覚えていないふりをしていたのにもかかわらず、ハッキリと覚えていたという事がバレてしまった。そんな事も恥ずかしいと思ってしまうくらい工藤珠希は純情なんであった。
「珠希ちゃんはさ、中華まんじゅうって言われたらどんなのを想像するのかな?」
「どんなのって、普通に肉まんとかあんまんとかだけど。ピザまんとかカレーマンとかも見たことはあるんだけど、やっぱりイメージするのは肉まんじゃないかな。冬になるとおやつ代わりに食べてたってのもあるけどね」
「やっぱりそうだよね。俺も中華まんじゅうって言われたら肉まんとか想像してたもん。あんまんも美味しいとは思うんだけど、やっぱり肉まんの方が好きなんだよね」
「わかった。普通のたい焼きって粒あんになってるけど、中華風たい焼きはこしあんだったもんね。それって、中華まんのあんまんがこしあんだから中華風たい焼きもこしあんって事になってるんでしょ。さすがはボク、少ないヒントで正解にたどり着いちゃったね。正解したから誉めてくれてもいいんだよ」
「ああ、残念だけど正解じゃないね。そう言われたらそうかもしれないって思ったけど、おじさんが中華風ってつけたのはそういう意味じゃないんだよ。ちゃんと理由があるって事なのさ」
「だから、不正解なら不正解でその正解を教えなさいよ。こうして通話してる時間だって制限もあると思うし、あんまり無駄な時間を使わない方がいいと思うんだけどな」
「それもそうだね。で、最初に戻るんだけど、珠希ちゃんは中華まんじゅうって食べたことあるのかな?」
「そりゃ、あるに決まってるでしょ。肉まんもあんまんもピザまんも食べたことあるし。カレーマンとか変わったやつは食べたことないけど、中華まんは冬になったらよく食べてるよね?」
「うん、中華まんは良く食べてるよね。珠希ちゃんは気付いていないと思うけど、去年の冬に何回か俺が作った肉まんも食べてたんだよ。みんな美味しいって言ってくれてたけど、珠希ちゃんは何か首をかしげてたね」
工藤珠希は去年の冬に家族みんなで肉まんを食べた事を今でも鮮明に覚えている。
なぜなら、他の人に比べて工藤珠希に出された肉まんだけ通常よりも倍以上大きかったのだ。どこでそんなモノを買ってきたのかと思っていたし、なぜこれほどまでに大きい肉まんが太郎にではなく自分の所に置かれているのかも気になっていたのだ。
一口食べても皮しか口に入らなかったので皮しかないドッキリなのかとも考えながら食べ進んで行ったところ、二口目には粗びき肉の餡がたくさん詰まっていたのでホッとしたのも思い出していた。
「あのバカみたいに大きかったやつでしょ。なんでボクのだけ大きいんだろうって思ってたんだけど、太郎が作ったんだったら納得だよ。太郎って昔からボクにやたらと物を食べさせようとしてくるけど、ボクを太らせて食べようとしてたりしないよね?」
「そんなんじゃないって。ただ、珠希ちゃんが美味しそうに食べてる顔を見るのが好きなだけなんだって。深い意味はないよ」
「まあ、美味しいには美味しいんだけどさ、量が多すぎると後半は苦痛でしかないよね。太郎は普通の女子高生が美味しく食べられる限度ってものを理解した方がいいと思うな。美味しいものはたくさん食べたいって気持ちもあるんだけど、食べ過ぎるとその後が大変なことになるからね」
太郎はどれだけ食べても太らない体質なのだと思っていた時もあったのだが、太郎の日常を見ていると摂取した分のカロリーはその日のうちに運動で消費していることが多い。少なくとも、その週のうちには余計なカロリーを消費しているというのは見ていた。
おそらく、太郎と同じ生活をしていたら太ることなんて無いと思うのだけど、そんな生活を続けることなんて普通の人間には不可能なのだ。途中で怪我をしてしまったり面倒になってしまうのが目に見えている。それくらい太郎の行っている運動は常軌を逸しているのであった。
「食べ過ぎたとしても運動すればいいって思ってるだろうけど、太郎がやってるのは運動とかじゃなくて修行だって言われても納得出来るものがあるからね。普通の人は食べ過ぎたからと言って腕の力だけで崖を上ったり、川の流れに逆らって泳いだりなんてしないからね。太郎の事を知らない人が見たら通報されちゃうようなことをしているんだって自覚はあるのかな?」
「それなりに自覚はあるけど、みんな俺の事を知っててくれるって思ってるからね。何かあった時のために珠希ちゃんも見守っててくれるし、俺は大丈夫だよ」
「はあ、あんたがそれでいいんだったらそうしてればいいと思うよ。で、中華まんがどうしたって言うのさ?」
「珠希ちゃんが食べてるのは中華まんで、おじさんがイメージして作ってるのは中華まんじゅうなんだよ。馴染みが無ければ同じものじゃないかって思っちゃうけど、この二つは違う食べ物なんだよね。珠希ちゃんにはソレがわかるかな?」
「え、一緒じゃないって事なの?」
自分で何を言ってしまったのか理解した時、工藤珠希の周りは時が止まったかのように何も感じることが出来なかった。
「それで、中華風たい焼きって名前の由来なんだけど」
工藤太郎はフォローのつもりでそう言ったのだが、工藤珠希の耳には真っすぐ届いてはいなかった。覚えていないふりをしていたのにもかかわらず、ハッキリと覚えていたという事がバレてしまった。そんな事も恥ずかしいと思ってしまうくらい工藤珠希は純情なんであった。
「珠希ちゃんはさ、中華まんじゅうって言われたらどんなのを想像するのかな?」
「どんなのって、普通に肉まんとかあんまんとかだけど。ピザまんとかカレーマンとかも見たことはあるんだけど、やっぱりイメージするのは肉まんじゃないかな。冬になるとおやつ代わりに食べてたってのもあるけどね」
「やっぱりそうだよね。俺も中華まんじゅうって言われたら肉まんとか想像してたもん。あんまんも美味しいとは思うんだけど、やっぱり肉まんの方が好きなんだよね」
「わかった。普通のたい焼きって粒あんになってるけど、中華風たい焼きはこしあんだったもんね。それって、中華まんのあんまんがこしあんだから中華風たい焼きもこしあんって事になってるんでしょ。さすがはボク、少ないヒントで正解にたどり着いちゃったね。正解したから誉めてくれてもいいんだよ」
「ああ、残念だけど正解じゃないね。そう言われたらそうかもしれないって思ったけど、おじさんが中華風ってつけたのはそういう意味じゃないんだよ。ちゃんと理由があるって事なのさ」
「だから、不正解なら不正解でその正解を教えなさいよ。こうして通話してる時間だって制限もあると思うし、あんまり無駄な時間を使わない方がいいと思うんだけどな」
「それもそうだね。で、最初に戻るんだけど、珠希ちゃんは中華まんじゅうって食べたことあるのかな?」
「そりゃ、あるに決まってるでしょ。肉まんもあんまんもピザまんも食べたことあるし。カレーマンとか変わったやつは食べたことないけど、中華まんは冬になったらよく食べてるよね?」
「うん、中華まんは良く食べてるよね。珠希ちゃんは気付いていないと思うけど、去年の冬に何回か俺が作った肉まんも食べてたんだよ。みんな美味しいって言ってくれてたけど、珠希ちゃんは何か首をかしげてたね」
工藤珠希は去年の冬に家族みんなで肉まんを食べた事を今でも鮮明に覚えている。
なぜなら、他の人に比べて工藤珠希に出された肉まんだけ通常よりも倍以上大きかったのだ。どこでそんなモノを買ってきたのかと思っていたし、なぜこれほどまでに大きい肉まんが太郎にではなく自分の所に置かれているのかも気になっていたのだ。
一口食べても皮しか口に入らなかったので皮しかないドッキリなのかとも考えながら食べ進んで行ったところ、二口目には粗びき肉の餡がたくさん詰まっていたのでホッとしたのも思い出していた。
「あのバカみたいに大きかったやつでしょ。なんでボクのだけ大きいんだろうって思ってたんだけど、太郎が作ったんだったら納得だよ。太郎って昔からボクにやたらと物を食べさせようとしてくるけど、ボクを太らせて食べようとしてたりしないよね?」
「そんなんじゃないって。ただ、珠希ちゃんが美味しそうに食べてる顔を見るのが好きなだけなんだって。深い意味はないよ」
「まあ、美味しいには美味しいんだけどさ、量が多すぎると後半は苦痛でしかないよね。太郎は普通の女子高生が美味しく食べられる限度ってものを理解した方がいいと思うな。美味しいものはたくさん食べたいって気持ちもあるんだけど、食べ過ぎるとその後が大変なことになるからね」
太郎はどれだけ食べても太らない体質なのだと思っていた時もあったのだが、太郎の日常を見ていると摂取した分のカロリーはその日のうちに運動で消費していることが多い。少なくとも、その週のうちには余計なカロリーを消費しているというのは見ていた。
おそらく、太郎と同じ生活をしていたら太ることなんて無いと思うのだけど、そんな生活を続けることなんて普通の人間には不可能なのだ。途中で怪我をしてしまったり面倒になってしまうのが目に見えている。それくらい太郎の行っている運動は常軌を逸しているのであった。
「食べ過ぎたとしても運動すればいいって思ってるだろうけど、太郎がやってるのは運動とかじゃなくて修行だって言われても納得出来るものがあるからね。普通の人は食べ過ぎたからと言って腕の力だけで崖を上ったり、川の流れに逆らって泳いだりなんてしないからね。太郎の事を知らない人が見たら通報されちゃうようなことをしているんだって自覚はあるのかな?」
「それなりに自覚はあるけど、みんな俺の事を知っててくれるって思ってるからね。何かあった時のために珠希ちゃんも見守っててくれるし、俺は大丈夫だよ」
「はあ、あんたがそれでいいんだったらそうしてればいいと思うよ。で、中華まんがどうしたって言うのさ?」
「珠希ちゃんが食べてるのは中華まんで、おじさんがイメージして作ってるのは中華まんじゅうなんだよ。馴染みが無ければ同じものじゃないかって思っちゃうけど、この二つは違う食べ物なんだよね。珠希ちゃんにはソレがわかるかな?」
「え、一緒じゃないって事なの?」
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