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第20話 中華風たい焼きの新しい謎
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あんとクリームのたい焼きは生地がしっかりとして食べ応えのあるものだった。
久しぶりに食べたたい焼きが美味しかったのは好きな人と一緒に食べたからなのかもしれない。栗宮院うまなはそう思っていた。
「それにしても、珠希ちゃんがそんなナイフを持ってたなんて全く気付かなかったよ」
「あんまり見せびらかすようなモノでもないからね。太郎から貰ったんだけど、切れ味はいいのに銃刀法に引っかからないようにしてるんだって。いざという時に身を守れって言われてるんだけど、こんなナイフで自分の身を守れる状況だったら他の物を使った方がよさそうだよね」
「確かにそうかもね。でも、珠希ちゃんが危ない目に遭ってるんだったら、きっと私たちが全力で守ってるはずだよ。そもそも珠希ちゃんが危ない目に遭う事なんて無いと思うけどね。私たちも太郎ちゃんも守れないような状況になってるんだったとしたら、珠希ちゃんを助けることなんて誰にも出来ないような気もするけど」
「そう言われてみたらそうかもね。だけどさ、ボクだってみんなに迷惑をかけないように頑張ろうとは思ってるんだからね」
工藤太郎とイザーが手を組めばこの世界だけではなくどの世界の誰が相手でも負けないと思われる。
実際に二人が今現在いる世界の魔王を難なく討伐しているという事実もあるのだ。誰もが不可能だと思った課題をあっという間にクリアしてしまっただけではなく、課題外の魔王も時間が余っているという理由だけで殲滅してしまったのだ。
その二人の行動に対して、最初は新しい魔王として君臨しようとしているのではないかと警戒していた人たちも工藤太郎にその気がないことを知ると心から喜んでいたのだ。その喜びが世界を巻き込んだ大宴会へと発展しているのである。
お腹もわりと膨れている栗宮院うまなではあったが、中華風たい焼きの正体が気になって気になって仕方なかった。
普通のたい焼きを食べ終わったこのタイミングで切り出すのは食い意地が張っていると思われそうで嫌ではあったのだが、このタイミングを逃してしまうとバスの時間が来てしまいそうで言い出すのはここしかないと思っていたのだ。
だが、今食べたばかりなのに次のたい焼きを催促するのははしたないようにも思えてしまうし、どうしたらいいのか答えが出なかった。
「中華風たい焼きって美味しいのかな?」
「どうなんだろう。私は全然想像つかないかも。何が中華風なのかなってずっと思ってたからね」
「持った感じは普通のたい焼きとあんまり変わらないような気もするんだけど、ボクはもうお腹いっぱいだからうまなちゃんが持って帰ってもいいよ。どんな感じだったかは明日教えてくれたらいいからね」
「それは悪いから半分ずつ食べようよ。どんな感じなのか気になるし、珠希ちゃんも気になってるでしょ?」
「うん、ボクも気にはなってるんだけど、ここで見ちゃったら食べなきゃいけないような気になってしまうし」
「大丈夫。袋を二重にして持っていけば汚れないと思うよ。私の分はそのまま持って帰るから気にしなくていいし」
「それは悪いって。ボクの方が歩いて家に帰れる距離なんだしそのまま持って帰るよ」
「でも、中に入ってるあんが春巻きとか餃子みたいな感じのあんだったら持って帰るのも大変だと思うよ」
「そうかもしれないけど、そういったあんじゃないと思うよ。持った感じはもっとずっしりとしている印象だもん」
「確かに、結構ずっしりとした重みがあるね。それに、さっき食べたたい焼きよりも厚みがあるように思えるんだけど」
「そうなんだよね。それに、形も違うみたいだしうまなちゃんが見て確認してよ」
「わかった。どんなもんなのか見てみるよ」
中華風たい焼きは他のたい焼きと違って厚めの紙袋に入れられているのでなんとなく透けて形がわかるという事は無い。それに、持った感じも今までのたい焼きと違って柔らかい弾力ではなく力を入れたら割れてしまいそうな固さであった。
袋の入り口を開いて中を確認してみると、そこに入っていたのは、先ほど食べたたい焼き二個分くらいありそうな厚さの魚がいた。
背びれが見えているので魚だとは思うのだけれど、背びれが無ければ筒状の何かとしか思えないような形状であった。
何が一体中華風なのかと思って取り出してみたのだが、口の横に長いひげがあることに気が付いた。髭のある魚なんて鯉か鯰くらいしか思い浮かばなかった。
「何だか太い魚だね。魚に対して太いって表現があってるのかわからないけど、とにかく太いね」
「ちゃんとその太さに見合った重さもあるからね。これって、髭だと思うんだけど、この魚って鯉なのかな?」
「そう言われたら鯉に見えてきたかも。鯉と言うか鯉のぼりにしか見えないかも。そんな感じのが空を泳いでたと思う」
「確かに鯉のぼりかも。こんな感じのをみたことあるよ。でもさ、なんで鯉のぼりが中華風たい焼きになるんだろう。鯉って中国の魚なのかな?」
「中国の魚だったとは思うけど、それで中華風ってのはどうなんだろう。何か他に中華風を名乗ってる理由があるとボクは思うんだけど、うまなちゃんは何かわかりそうかな?」
「どうだろう。全然想像もつかないかも」
中華風たい焼きを二つに割ってみると、中に入っていたのはみっちりと詰まったこしあんであった。
たい焼きに入っていた粒あんと中華風たい焼きに入っていたこしあん。
見た目と中身が違うだけで中華風という名前になっているのは、何か納得が出来ない栗宮院うまなであった。
久しぶりに食べたたい焼きが美味しかったのは好きな人と一緒に食べたからなのかもしれない。栗宮院うまなはそう思っていた。
「それにしても、珠希ちゃんがそんなナイフを持ってたなんて全く気付かなかったよ」
「あんまり見せびらかすようなモノでもないからね。太郎から貰ったんだけど、切れ味はいいのに銃刀法に引っかからないようにしてるんだって。いざという時に身を守れって言われてるんだけど、こんなナイフで自分の身を守れる状況だったら他の物を使った方がよさそうだよね」
「確かにそうかもね。でも、珠希ちゃんが危ない目に遭ってるんだったら、きっと私たちが全力で守ってるはずだよ。そもそも珠希ちゃんが危ない目に遭う事なんて無いと思うけどね。私たちも太郎ちゃんも守れないような状況になってるんだったとしたら、珠希ちゃんを助けることなんて誰にも出来ないような気もするけど」
「そう言われてみたらそうかもね。だけどさ、ボクだってみんなに迷惑をかけないように頑張ろうとは思ってるんだからね」
工藤太郎とイザーが手を組めばこの世界だけではなくどの世界の誰が相手でも負けないと思われる。
実際に二人が今現在いる世界の魔王を難なく討伐しているという事実もあるのだ。誰もが不可能だと思った課題をあっという間にクリアしてしまっただけではなく、課題外の魔王も時間が余っているという理由だけで殲滅してしまったのだ。
その二人の行動に対して、最初は新しい魔王として君臨しようとしているのではないかと警戒していた人たちも工藤太郎にその気がないことを知ると心から喜んでいたのだ。その喜びが世界を巻き込んだ大宴会へと発展しているのである。
お腹もわりと膨れている栗宮院うまなではあったが、中華風たい焼きの正体が気になって気になって仕方なかった。
普通のたい焼きを食べ終わったこのタイミングで切り出すのは食い意地が張っていると思われそうで嫌ではあったのだが、このタイミングを逃してしまうとバスの時間が来てしまいそうで言い出すのはここしかないと思っていたのだ。
だが、今食べたばかりなのに次のたい焼きを催促するのははしたないようにも思えてしまうし、どうしたらいいのか答えが出なかった。
「中華風たい焼きって美味しいのかな?」
「どうなんだろう。私は全然想像つかないかも。何が中華風なのかなってずっと思ってたからね」
「持った感じは普通のたい焼きとあんまり変わらないような気もするんだけど、ボクはもうお腹いっぱいだからうまなちゃんが持って帰ってもいいよ。どんな感じだったかは明日教えてくれたらいいからね」
「それは悪いから半分ずつ食べようよ。どんな感じなのか気になるし、珠希ちゃんも気になってるでしょ?」
「うん、ボクも気にはなってるんだけど、ここで見ちゃったら食べなきゃいけないような気になってしまうし」
「大丈夫。袋を二重にして持っていけば汚れないと思うよ。私の分はそのまま持って帰るから気にしなくていいし」
「それは悪いって。ボクの方が歩いて家に帰れる距離なんだしそのまま持って帰るよ」
「でも、中に入ってるあんが春巻きとか餃子みたいな感じのあんだったら持って帰るのも大変だと思うよ」
「そうかもしれないけど、そういったあんじゃないと思うよ。持った感じはもっとずっしりとしている印象だもん」
「確かに、結構ずっしりとした重みがあるね。それに、さっき食べたたい焼きよりも厚みがあるように思えるんだけど」
「そうなんだよね。それに、形も違うみたいだしうまなちゃんが見て確認してよ」
「わかった。どんなもんなのか見てみるよ」
中華風たい焼きは他のたい焼きと違って厚めの紙袋に入れられているのでなんとなく透けて形がわかるという事は無い。それに、持った感じも今までのたい焼きと違って柔らかい弾力ではなく力を入れたら割れてしまいそうな固さであった。
袋の入り口を開いて中を確認してみると、そこに入っていたのは、先ほど食べたたい焼き二個分くらいありそうな厚さの魚がいた。
背びれが見えているので魚だとは思うのだけれど、背びれが無ければ筒状の何かとしか思えないような形状であった。
何が一体中華風なのかと思って取り出してみたのだが、口の横に長いひげがあることに気が付いた。髭のある魚なんて鯉か鯰くらいしか思い浮かばなかった。
「何だか太い魚だね。魚に対して太いって表現があってるのかわからないけど、とにかく太いね」
「ちゃんとその太さに見合った重さもあるからね。これって、髭だと思うんだけど、この魚って鯉なのかな?」
「そう言われたら鯉に見えてきたかも。鯉と言うか鯉のぼりにしか見えないかも。そんな感じのが空を泳いでたと思う」
「確かに鯉のぼりかも。こんな感じのをみたことあるよ。でもさ、なんで鯉のぼりが中華風たい焼きになるんだろう。鯉って中国の魚なのかな?」
「中国の魚だったとは思うけど、それで中華風ってのはどうなんだろう。何か他に中華風を名乗ってる理由があるとボクは思うんだけど、うまなちゃんは何かわかりそうかな?」
「どうだろう。全然想像もつかないかも」
中華風たい焼きを二つに割ってみると、中に入っていたのはみっちりと詰まったこしあんであった。
たい焼きに入っていた粒あんと中華風たい焼きに入っていたこしあん。
見た目と中身が違うだけで中華風という名前になっているのは、何か納得が出来ない栗宮院うまなであった。
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