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第8話 レジスタンスの願い
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サキュバス寮の寮長がシスターとイザーに向かって一つの提案をした。その提案は横で聞いていた栗宮院うまなにとっては受け入れがたいものであったのだ。
「ちょっと待ってもらっていいかな。そんな事したらイザーちゃんがこの学校に居られなくなっちゃうんじゃない?」
「確かに、その可能性は高いかもしれませんね。でも、それはそちらにとって都合が割ることかもしれないですけど、レジスタンスにとっては良いことなんじゃないですかね。イザーさんがいないという事は、圧倒的な力の差がなくなるという事でもあるんですから」
「そうかもしれないけど、私はイザーちゃんがいなくなるようなことはしてほしくないよ」
珍しく感情的になってしまった栗宮院うまなは縋るような目でイザーの事を見ているのだが、イザーは栗宮院うまなと目を合わせることもなくシスターとレジスタンス寮の寮長を交互に見つめていた。
「わかったよ。あなたが言うように私が太郎ちゃんの事を助けてくればいいって事だもんね。太郎ちゃんなら出された課題も問題なく終わらせることが出来ると思うんだけど、私が手伝う事で早く終わらせることが出来るって事なんだもんね。でも、もう魔王の三体くらい片付けちゃってるかもしれないよ」
「太郎君の強さは私たちも知って入るんだけど、強いってのと魔王を見つけることが出来るってのは一緒じゃないんだよ。レジスタンス寮のみんなで毎晩太郎君の活躍を見てはいるんだけど、どういうわけか太郎君は魔王がいない方いない方って感じで進んで行っちゃうんだよね。魔王城があってもそこに向おうとしてないの。お城を出て道なりに進めば魔王城があるってわかってるはずなのに、どうしてもその方向へ進もうとしないんだよ」
「そういう事ね。でも、太郎ちゃんって別に方向音痴じゃないと思うんだけどね。それってちょっと不思議だよね。もしもなんだけど、太郎ちゃんが私を殺しちゃったら魔王を倒した数にカウントされるのかな?」
「されないと思うけど、イザーちゃんは太郎ちゃんに倒されたりしないでしょ」
「それはそうなんだけどさ、私が三回倒されればそれで終わるんじゃないかなって思っただけだよ。太郎ちゃんはそんなズルい手は使わないと思うんだけどね」
「別に私はそれでもいいと思うけどね。だってさ、太郎ちゃんがイザーちゃんと戦ってたらソレだけで時間がどんどん進んで行くことになるでしょ。そうなったら、私たちが珠希ちゃんとデートする時間が増えるって事だもんね」
涙を浮かべつつも強気に振舞う栗宮院うまなではあった。
そんな栗宮院うまなの様子を見てイザーも何か思うところがあったのかもしれないが、あえて突き放すことで心配させないようにしようと配慮したのかもしれない。
「ちょっと待って、イザーちゃんが魔王を倒しに行くってのはわかったんだけど、イザーちゃんは強いから太郎ちゃんよりも先に魔王を倒しちゃう可能性もあるんじゃないかな?」
「その可能性はあると思うんですけど、そこらへんは上手くやってもらえるんじゃないかな。イザーさんは力の加減も上手ですし、魔王の動きを止めてくれるだけでも太郎君は助かると思うよ。イザーさんが魔王の足止めをしてくれるんだとしたら、太郎君は魔王を倒すことだけに集中できるって事だからね」
「三体の魔王を倒すことなんて問題じゃないと思うけど、それ以上に心配なのが、これからもずっとずっと魔王にあえないまま時間だけが過ぎていくのかなと言う事だね」
「それも問題かもしれないけど、君たちは大切なことを忘れてるんじゃないかな?」
心配事の多い二人をさらに不安にさせるような事を栗宮院うまなは述べていた。レジスタンスに対して何か強いストレスを与えようなどとは思っていなかったのだが、レジスタん寮の寮長にとっては思いもよらない事態になってしまっていた。
「大切なコトって、何かな?」
「そこまで言うって事は、何か重要なコトなんですよね?」
「君たち二人は簡単に太郎ちゃんの事を助けに行ってくれとイザーちゃんに言ってるみたいだけど、太郎ちゃんが今いる世界にどうやってイザーちゃんを連れて行くつもりだったのかな?」
「どうやってって、異世界に転送するゲートを使うんじゃないかな。それが一番早くて確実だと思うんだけど。違うのかな?」
「違わないけれど、細かいところは全然違うんだよな。転送ゲートの管理をしているのはレジスタンスではなくサキュバスなんだけど、自分たちの主戦力であるイザーちゃんをみすみす手放すようなことはしないと思う。もしそ手放すとしたら、これ以上育成しても意味が無いと判断したときかな」
シスターはそれほどでもなかったが、レジスタンス寮の寮長は転送ゲートを使えなかったことを想定していなかったのか完全に固まってしまっていた。
誰にも言えないような小さなミスかもしれないが、画面の向こうでは相変わらず工藤太郎が魔王城とは別の方向へと向かっていた。誰も近くにそれを指摘する者がいないのだが、自分たちが勝手に転送ゲートを使うことが出来ないというのは初耳だったと思う。
「こうなったら、どうにかしてこの世界と太郎君がいる世界を融合しなくてはいけない。そうすれば万事解決だ」
「そっちの方が無理だと思うんだけど、イザーさんがどれだけ強い力を持っているのか知らないんです。すごく強いんだとしても、太郎君が魔王を三体倒すのにかなり時間がかかっちゃってるかもしれないな」
誰もが工藤太郎の勝ちを確信しているのだが、問題はどうやってあっちの世界にイザーを送り出すことが出来るかという事なのである。
ただ、イザー自身は全く焦る様子もなくモニターに映っている工藤太郎の姿を目で追っているのであった。
「ちょっと待ってもらっていいかな。そんな事したらイザーちゃんがこの学校に居られなくなっちゃうんじゃない?」
「確かに、その可能性は高いかもしれませんね。でも、それはそちらにとって都合が割ることかもしれないですけど、レジスタンスにとっては良いことなんじゃないですかね。イザーさんがいないという事は、圧倒的な力の差がなくなるという事でもあるんですから」
「そうかもしれないけど、私はイザーちゃんがいなくなるようなことはしてほしくないよ」
珍しく感情的になってしまった栗宮院うまなは縋るような目でイザーの事を見ているのだが、イザーは栗宮院うまなと目を合わせることもなくシスターとレジスタンス寮の寮長を交互に見つめていた。
「わかったよ。あなたが言うように私が太郎ちゃんの事を助けてくればいいって事だもんね。太郎ちゃんなら出された課題も問題なく終わらせることが出来ると思うんだけど、私が手伝う事で早く終わらせることが出来るって事なんだもんね。でも、もう魔王の三体くらい片付けちゃってるかもしれないよ」
「太郎君の強さは私たちも知って入るんだけど、強いってのと魔王を見つけることが出来るってのは一緒じゃないんだよ。レジスタンス寮のみんなで毎晩太郎君の活躍を見てはいるんだけど、どういうわけか太郎君は魔王がいない方いない方って感じで進んで行っちゃうんだよね。魔王城があってもそこに向おうとしてないの。お城を出て道なりに進めば魔王城があるってわかってるはずなのに、どうしてもその方向へ進もうとしないんだよ」
「そういう事ね。でも、太郎ちゃんって別に方向音痴じゃないと思うんだけどね。それってちょっと不思議だよね。もしもなんだけど、太郎ちゃんが私を殺しちゃったら魔王を倒した数にカウントされるのかな?」
「されないと思うけど、イザーちゃんは太郎ちゃんに倒されたりしないでしょ」
「それはそうなんだけどさ、私が三回倒されればそれで終わるんじゃないかなって思っただけだよ。太郎ちゃんはそんなズルい手は使わないと思うんだけどね」
「別に私はそれでもいいと思うけどね。だってさ、太郎ちゃんがイザーちゃんと戦ってたらソレだけで時間がどんどん進んで行くことになるでしょ。そうなったら、私たちが珠希ちゃんとデートする時間が増えるって事だもんね」
涙を浮かべつつも強気に振舞う栗宮院うまなではあった。
そんな栗宮院うまなの様子を見てイザーも何か思うところがあったのかもしれないが、あえて突き放すことで心配させないようにしようと配慮したのかもしれない。
「ちょっと待って、イザーちゃんが魔王を倒しに行くってのはわかったんだけど、イザーちゃんは強いから太郎ちゃんよりも先に魔王を倒しちゃう可能性もあるんじゃないかな?」
「その可能性はあると思うんですけど、そこらへんは上手くやってもらえるんじゃないかな。イザーさんは力の加減も上手ですし、魔王の動きを止めてくれるだけでも太郎君は助かると思うよ。イザーさんが魔王の足止めをしてくれるんだとしたら、太郎君は魔王を倒すことだけに集中できるって事だからね」
「三体の魔王を倒すことなんて問題じゃないと思うけど、それ以上に心配なのが、これからもずっとずっと魔王にあえないまま時間だけが過ぎていくのかなと言う事だね」
「それも問題かもしれないけど、君たちは大切なことを忘れてるんじゃないかな?」
心配事の多い二人をさらに不安にさせるような事を栗宮院うまなは述べていた。レジスタンスに対して何か強いストレスを与えようなどとは思っていなかったのだが、レジスタん寮の寮長にとっては思いもよらない事態になってしまっていた。
「大切なコトって、何かな?」
「そこまで言うって事は、何か重要なコトなんですよね?」
「君たち二人は簡単に太郎ちゃんの事を助けに行ってくれとイザーちゃんに言ってるみたいだけど、太郎ちゃんが今いる世界にどうやってイザーちゃんを連れて行くつもりだったのかな?」
「どうやってって、異世界に転送するゲートを使うんじゃないかな。それが一番早くて確実だと思うんだけど。違うのかな?」
「違わないけれど、細かいところは全然違うんだよな。転送ゲートの管理をしているのはレジスタンスではなくサキュバスなんだけど、自分たちの主戦力であるイザーちゃんをみすみす手放すようなことはしないと思う。もしそ手放すとしたら、これ以上育成しても意味が無いと判断したときかな」
シスターはそれほどでもなかったが、レジスタンス寮の寮長は転送ゲートを使えなかったことを想定していなかったのか完全に固まってしまっていた。
誰にも言えないような小さなミスかもしれないが、画面の向こうでは相変わらず工藤太郎が魔王城とは別の方向へと向かっていた。誰も近くにそれを指摘する者がいないのだが、自分たちが勝手に転送ゲートを使うことが出来ないというのは初耳だったと思う。
「こうなったら、どうにかしてこの世界と太郎君がいる世界を融合しなくてはいけない。そうすれば万事解決だ」
「そっちの方が無理だと思うんだけど、イザーさんがどれだけ強い力を持っているのか知らないんです。すごく強いんだとしても、太郎君が魔王を三体倒すのにかなり時間がかかっちゃってるかもしれないな」
誰もが工藤太郎の勝ちを確信しているのだが、問題はどうやってあっちの世界にイザーを送り出すことが出来るかという事なのである。
ただ、イザー自身は全く焦る様子もなくモニターに映っている工藤太郎の姿を目で追っているのであった。
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