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第十七話 右近と唯菜
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バイト先でもらったサンドイッチは冷蔵庫に入れておけば明日の朝に食べても問題はないだろう。そんな事を考えながら制服から着替え終わって更衣室を出ると、楽しそうに社員さんと話をしている唯が俺の方をチラッと見て手を振ってきた。
「お疲れ様。今日も右近君は大変だったみたいだね」
「常連さんがいつもより多かったからかな。でも、普段とやることはそんなに変わらないし、忙しい方が時間の過ぎるのも早くていいかも」
「右近君も唯菜ちゃんも常連さんに好かれてるから助かるわ。二人とも家に入ってくれて本当に良かったと思ってるからね」
「右近君が人気なのはわかりますけど、私ってそんな感じじゃないと思うんですけど」
「そんな事ないわよ。唯菜ちゃんのファンの常連さんもたくさんいるのよ。だからってわけじゃないけど、唯菜ちゃんが変な人に絡まれないように家まで送ってくれてる右近君には感謝してるからね」
「まあ、俺の家から唯菜の家はそんなに離れてないですし、今日みたいに約束がある時はそのまま友達の家に行くから本当に通り道なんですよね」
「あらあら、そんないい方しなくてもいいのに。ね、唯菜ちゃん」
「そうですよね。でも、右近君は本当にお友達と約束してるみたいなんですよ。バイト終わった後にちょっとお話したいなって思っても約束があるからっていなくなっちゃうんですよ」
「そうなの、でも、ここで働いている姿を見ても二人はお似合いだと思うけどな。って、変な事言っちゃったわね。ごめんなさい、気を付けて帰るんだよ」
社員の大木さんは何かと俺と唯菜をくっつけようとするんだよな。学校だと俺と愛華をくっつけようとする人が多いんである意味新鮮に思えるんだけど、俺は唯菜とも愛華とも付き合うつもりはないんだよな。唯菜からは何度も告白されてその度に断っているという事があるんだけど、愛華は一度も俺に告白してきた事が無い。唯も愛華と一緒で俺に対して恋愛感情なんて持ち合わせていないと思うけど、そんな二人だから女子でも特別仲よく遊ぶことが出来るんだと思う。俺の事を好きだという女子と違って普通に遊ぶことが出来ているというのは嬉しいんだよな。
バイト先のカフェから俺の家までは歩いて十分ちょっとで着くのだけれど、そこから五分くらいで唯菜の家に着く。いつもであれば唯菜を家まで送った後にコンビニでも寄って帰るのだけど、今日は政虎の家に寄って唯と愛華が作ったお弁当を回収して帰らないといけないのだ。別に明日取りに行っても大丈夫だとは思うのだけれど、せっかく二人が作ってくれたんだから早いうちに食べてみたいという気持ちもあるのだ。
「大木さんはあんな事言ってたけどさ、右近君はどうしても私と付き合ってはくれないんだよね?」
「うん、何度も断って申し訳ないと思うけど、俺は君とだけは付き合うことは出来ないんだ」
「それってさ、他の人だったら誰でも付き合えるけど、私とは付き合えないって事だもんね?」
「うん、そう言うことになるね」
「それってさ、政虎君が私の事を好きだから。右近君の親友の政虎君の好きな人が私だから親友の好きな人とは付き合えないって事なんだよね?」
「うん、そうなんだよ」
「政虎君が私の事を好きじゃなかったら他の子みたいに私とも付き合ってくれてたって事なのかな?」
「たぶん、そうだと思うよ」
「右近君は告白してくる相手だったら誰でもいいって事なんだよね?」
「まあ、その時に彼女がいなければって話だけどね」
「本当に私ってついてないんだな。初めて見た時は右近君の事カッコイイ男子だなって思って見てたんだけど、少しずつ話すようになってだんだんと内面も見えてきてさ、外見だけじゃなくて中身もイイ男なんだなって思ってるんだよ。誰とでも付き合うって話は私も聞いてたからタイミングを見て告白したんだけど、私だけいつも振られちゃうんだよね。その理由を聞いて納得は出来てないけどさ、右近君の気持ちは理解出来たよ。右近君が政虎君の事を大切な親友だって思ってることもわかるんだけどさ、私の気持ちもわかってもらえたら嬉しいな」
俺は唯菜の言葉に対して何も返すことが出来なかった。おそらく、政虎が唯菜の事を好きじゃなかったとしたら、俺は唯菜に告白された段階でタイミングが合えば付き合っていたと思う。でも、付き合ったとしても形式だけのお付き合いで手も握らずに三日くらいで関係も終わってしまうだろう。
仮に、政虎が唯と付き合うようになったとしたら俺は唯菜と付き合うことになるのかもしれない。今まで何度もアプローチや告白をしてきてくれた唯菜の気持ちに報いたというという思いもあるのでそう言うことになると思うのだけれど、今までの積み重ねがあったとしても俺と唯菜は現時点で構築しているこの関係性から前に踏み出すことは無いと思う。唯菜から何かしてこようとしても、俺はその行動にストップをかけてしまうと思うのだ。
「でもね、そんな風に親友の気持ちを優先することが出来ることって凄いと思うよ。大木さんも言ってくれてたけど、私だってそれなりに容姿には自信あるんだからね。綺麗さで言ったら愛ちゃんにはかなわないし、胸の大きさだったら唯ちゃんには負けてるよ。でも、客観的に見たら私だってイケてる方の女子だと思うんだけどな。右近君の隣にいても見劣りしないんじゃないかなって思ってるくらいにはさ、自身もあるんだからね。それなのに、政虎君には負けちゃうってのが納得できないんだよね。右近君の気持ちは理解出来るけどさ、どうしてそこまで右近君が政虎君の事を大切にしているのかが私には理解出来ていないんだよね」
たぶん、俺の気持ちを理解してくれる人は唯だけなんだろうな。愛華も理解はしてくれないだろうし、政虎にいたっては俺の気持ちを伝える事すら出来ない。俺の本当の気持ちを伝えてしまうと、俺達の関係は壊れてしまうだろう。政虎はもしかしたら俺の気持ちは受け止めてはくれるかもしれないけど、受け入れてはくれないような気もしている。それだったら、今のような親友ポジションでいた方が俺にとっても都合が良いことになるんだよな。
政虎は唯菜の事が好きだけど唯菜は政虎の事が嫌いなのです。普通に考えて他人の目から見た時に政虎の事を好きになる人なんていないと思う。言っている事もやっている事も単純に政虎の敵を増やすような事ばかりなのだし、そんな人間が他人から好かれるはずもないのだ。
そんな政虎の事が好きな唯は残念なことに政虎に好かれてはいても、それは恋愛感情の好きとは違うものなのです。
たぶん、政虎の周りで政虎の事を好きな人間なんて俺と唯くらいのものだろう。高校生以前を含めても政虎の事を好きだという人間に俺は出会ったことは無いのだ。
俺は唯が政虎の事を好きだという事に衝撃を受けてしまっていた。
俺以外にも政虎の事を好きになる人がいるなんてこの世がひっくり返ってもあり得ない話だと思っていたからなのだ。
「お疲れ様。今日も右近君は大変だったみたいだね」
「常連さんがいつもより多かったからかな。でも、普段とやることはそんなに変わらないし、忙しい方が時間の過ぎるのも早くていいかも」
「右近君も唯菜ちゃんも常連さんに好かれてるから助かるわ。二人とも家に入ってくれて本当に良かったと思ってるからね」
「右近君が人気なのはわかりますけど、私ってそんな感じじゃないと思うんですけど」
「そんな事ないわよ。唯菜ちゃんのファンの常連さんもたくさんいるのよ。だからってわけじゃないけど、唯菜ちゃんが変な人に絡まれないように家まで送ってくれてる右近君には感謝してるからね」
「まあ、俺の家から唯菜の家はそんなに離れてないですし、今日みたいに約束がある時はそのまま友達の家に行くから本当に通り道なんですよね」
「あらあら、そんないい方しなくてもいいのに。ね、唯菜ちゃん」
「そうですよね。でも、右近君は本当にお友達と約束してるみたいなんですよ。バイト終わった後にちょっとお話したいなって思っても約束があるからっていなくなっちゃうんですよ」
「そうなの、でも、ここで働いている姿を見ても二人はお似合いだと思うけどな。って、変な事言っちゃったわね。ごめんなさい、気を付けて帰るんだよ」
社員の大木さんは何かと俺と唯菜をくっつけようとするんだよな。学校だと俺と愛華をくっつけようとする人が多いんである意味新鮮に思えるんだけど、俺は唯菜とも愛華とも付き合うつもりはないんだよな。唯菜からは何度も告白されてその度に断っているという事があるんだけど、愛華は一度も俺に告白してきた事が無い。唯も愛華と一緒で俺に対して恋愛感情なんて持ち合わせていないと思うけど、そんな二人だから女子でも特別仲よく遊ぶことが出来るんだと思う。俺の事を好きだという女子と違って普通に遊ぶことが出来ているというのは嬉しいんだよな。
バイト先のカフェから俺の家までは歩いて十分ちょっとで着くのだけれど、そこから五分くらいで唯菜の家に着く。いつもであれば唯菜を家まで送った後にコンビニでも寄って帰るのだけど、今日は政虎の家に寄って唯と愛華が作ったお弁当を回収して帰らないといけないのだ。別に明日取りに行っても大丈夫だとは思うのだけれど、せっかく二人が作ってくれたんだから早いうちに食べてみたいという気持ちもあるのだ。
「大木さんはあんな事言ってたけどさ、右近君はどうしても私と付き合ってはくれないんだよね?」
「うん、何度も断って申し訳ないと思うけど、俺は君とだけは付き合うことは出来ないんだ」
「それってさ、他の人だったら誰でも付き合えるけど、私とは付き合えないって事だもんね?」
「うん、そう言うことになるね」
「それってさ、政虎君が私の事を好きだから。右近君の親友の政虎君の好きな人が私だから親友の好きな人とは付き合えないって事なんだよね?」
「うん、そうなんだよ」
「政虎君が私の事を好きじゃなかったら他の子みたいに私とも付き合ってくれてたって事なのかな?」
「たぶん、そうだと思うよ」
「右近君は告白してくる相手だったら誰でもいいって事なんだよね?」
「まあ、その時に彼女がいなければって話だけどね」
「本当に私ってついてないんだな。初めて見た時は右近君の事カッコイイ男子だなって思って見てたんだけど、少しずつ話すようになってだんだんと内面も見えてきてさ、外見だけじゃなくて中身もイイ男なんだなって思ってるんだよ。誰とでも付き合うって話は私も聞いてたからタイミングを見て告白したんだけど、私だけいつも振られちゃうんだよね。その理由を聞いて納得は出来てないけどさ、右近君の気持ちは理解出来たよ。右近君が政虎君の事を大切な親友だって思ってることもわかるんだけどさ、私の気持ちもわかってもらえたら嬉しいな」
俺は唯菜の言葉に対して何も返すことが出来なかった。おそらく、政虎が唯菜の事を好きじゃなかったとしたら、俺は唯菜に告白された段階でタイミングが合えば付き合っていたと思う。でも、付き合ったとしても形式だけのお付き合いで手も握らずに三日くらいで関係も終わってしまうだろう。
仮に、政虎が唯と付き合うようになったとしたら俺は唯菜と付き合うことになるのかもしれない。今まで何度もアプローチや告白をしてきてくれた唯菜の気持ちに報いたというという思いもあるのでそう言うことになると思うのだけれど、今までの積み重ねがあったとしても俺と唯菜は現時点で構築しているこの関係性から前に踏み出すことは無いと思う。唯菜から何かしてこようとしても、俺はその行動にストップをかけてしまうと思うのだ。
「でもね、そんな風に親友の気持ちを優先することが出来ることって凄いと思うよ。大木さんも言ってくれてたけど、私だってそれなりに容姿には自信あるんだからね。綺麗さで言ったら愛ちゃんにはかなわないし、胸の大きさだったら唯ちゃんには負けてるよ。でも、客観的に見たら私だってイケてる方の女子だと思うんだけどな。右近君の隣にいても見劣りしないんじゃないかなって思ってるくらいにはさ、自身もあるんだからね。それなのに、政虎君には負けちゃうってのが納得できないんだよね。右近君の気持ちは理解出来るけどさ、どうしてそこまで右近君が政虎君の事を大切にしているのかが私には理解出来ていないんだよね」
たぶん、俺の気持ちを理解してくれる人は唯だけなんだろうな。愛華も理解はしてくれないだろうし、政虎にいたっては俺の気持ちを伝える事すら出来ない。俺の本当の気持ちを伝えてしまうと、俺達の関係は壊れてしまうだろう。政虎はもしかしたら俺の気持ちは受け止めてはくれるかもしれないけど、受け入れてはくれないような気もしている。それだったら、今のような親友ポジションでいた方が俺にとっても都合が良いことになるんだよな。
政虎は唯菜の事が好きだけど唯菜は政虎の事が嫌いなのです。普通に考えて他人の目から見た時に政虎の事を好きになる人なんていないと思う。言っている事もやっている事も単純に政虎の敵を増やすような事ばかりなのだし、そんな人間が他人から好かれるはずもないのだ。
そんな政虎の事が好きな唯は残念なことに政虎に好かれてはいても、それは恋愛感情の好きとは違うものなのです。
たぶん、政虎の周りで政虎の事を好きな人間なんて俺と唯くらいのものだろう。高校生以前を含めても政虎の事を好きだという人間に俺は出会ったことは無いのだ。
俺は唯が政虎の事を好きだという事に衝撃を受けてしまっていた。
俺以外にも政虎の事を好きになる人がいるなんてこの世がひっくり返ってもあり得ない話だと思っていたからなのだ。
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