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第十話 沈黙を破るイケメンは誰の味方だ
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いつも何か話しかけてくる鵜崎唯が黙って俺の顔を見つめてきているのだが、俺はこの沈黙が続いている状況に耐えられないと思っていた。だが、今ここで視線を外してしまうと何かとんでもないことをされてしまうのではないかという思いが頭から離れず、まるで山の中で熊にあった時みたいに無言のまま見つめ合っている時間が続いていたのだった。
実際には見つめ合っていた時間は長くても一分くらいだったとは思うのだが、俺にとっては永遠とも思えるような長さに感じていて段々と呼吸の仕方も忘れてしまいそうなくらい何も出来なくなってしまっていたのだ。
そんな沈黙を破ったのは誰かが鳴らしてくれたインターホンだった。
俺がそれに応える前にドアが勢い良く開いてそこに立っていた鬼仏院右近と目が合ったのだが、こいつは俺と鵜崎唯の姿を確認するとゆっくりとドアを閉めて帰ろうとしやがった。
「あ、悪い。邪魔したな」
「邪魔なんてしてねえって。いいから戻って来いよ」
「いや、そんな見つめ合ってる中に入ってけるわけないだろ。そろそろ俺もバイトの時間だし早めに行って準備しとこうかな」
「早めに行くって、今日は六時からって言ってただろ。今から行ったって二時間くらい早いんじゃないか」
「それは気にしなくていいって。俺も二人の邪魔なんてしたくないからさ。気にしないでいいって」
「ねえ、二人とも私の事無視して話を進めないでもらえるかな。あんまり勝手なこと言ってると私は怒っちゃうかもよ」
「ごめん、そう言うつもりじゃないんだけどさ、右近がそんな感じに受け取っちゃったから」
「なんで俺のせいにするんだよ。俺のせいじゃなくてお前らが無言で見つめ合ってるからそう言う感じなのかなって思って空気読んだだけなのに」
再び俺達の間に気まずい沈黙が流れてしまったのだが、その沈黙を破ったのは鵜崎唯だった。
「なんでそんなに二人ともビクビクしてるのかな。本当に面白いよね。いつも二人ってそうやって私を笑わそうとするけどさ、何回見ても笑いをこらえるのが大変だよ」
俺も鬼仏院右近も鵜崎唯を笑わせるつもりでやっていたのではなく本気でそう思っていのだけれど、鵜崎唯はなぜか俺達が鵜崎唯と俺の緊迫していた時間をわざと演出しているのだと勘違いしているようだ。俺にはそんなつもりはないのだけれど、鵜崎唯は俺がそういう反応をするように仕向けて生きているようなのだ。ただ、俺は鵜崎唯が俺に対してしてくる質問が本気なのか誘導なのかわからなくて素直に答えてしまってはいるのだ。
「政虎の困った顔って本当に可愛いよね。私はそれが見れただけでも今日は満足してしまったかも。じゃあ、愛華ちゃんもそろそろ来ると思うし、私は料理の準備でもしておこうかな。二人は先にゲームとかしてていいからね。あとね、政虎が桜さんの事を好きなのはずっと前から知ってるし、その桜さんが右近君の事を好きなのも私は知ってるよ。だからさ、私は右近君が桜さんと付き合っちゃえば政虎は桜さんの事を諦めて私の事を好きになってくれるんじゃないかなって思ってるんだ。でも、政虎の親友で優しい右近君は政虎の気持ちを考えて桜さんとは付き合わないんだもんね。桜さんじゃなかったら誰とでも付き合うのに、なんで桜さんとだけ付き合わないんだろうね。今日だって同じシフトでバイトに入ってて帰りだって一緒なんだし、そのまま付き合っちゃえばみんな幸せになるのにね。あ、政虎だけ幸せじゃないのかもしれないけど」
鵜崎唯はそう言いながら鍋を一つ手に取ると、それをコンロの上に置いて手慣れた感じで調味料を次々と入れていっていた。計量スプーンもカップも使わずに目分量で入れていく様を見ていると普段から料理をやっている事もわかるのだ。
「なあ、さっきのお前のアレって演技じゃなくて本気だったんだよな?」
「そうだけど、いつも演技だって思われてるんだよな。毎回思うんだけどさ、鵜崎が俺に桜の話をしてくる時って本気なんじゃないかって思うんだよ。答えを間違えたら殺されてしまうかもしれないって思ってるけどさ、嘘をついて鵜崎の方が好きだって言った後の方が大変な気がしてるんだよな」
「お前も大変だな。もてる男はつらいってやつだな」
「それをお前が言うのはおかしくないか。俺よりもお前の方がモテてるだろ」
「数で言えばそうかもしれないけどさ、俺の事を好きだっていう女は上辺しか見てくれなてないって事なんだよ。見た目が良いとか俺の彼女になったら他の女子にマウント取れるとかそう言う軽い気持ちで俺と付き合いたいってだけなんだよ。それに比べてさ、唯はお前の事を本気で好きなんだぜ。俺の事を好きだって言う百人の女の軽い気持ちを合わせてもお前の事を好きだって言う唯一人の方が気持ちも入ってると思うんだけどな」
こいつは鵜崎唯の何をそんなに恐れることがあるんだろう。一緒に行った時に見た部屋が強烈だったという事もあるのだろうけど、それにしては恐れ方も尋常ではない。
「なあ、何か嫌な事でもあったのか?」
「別に何もないけど。なんでそう思うんだ?」
「なんでって、鵜崎が近くにいるからってそんなに鵜崎の事を持ち上げる必要なんてないだろ。そんなに鵜崎の事が怖いのか?」。
「バカ、そんなわけないだろ。唯の事を怖がる要素なんて無いだろ。料理も上手だし見た目も可愛いし胸だって大きいし一途だしお前を幸せにしてくれると思うし、お前が今まで出会った女の子の中で一番お前に相応しいと思うぞ」
「まあ、右近の言いたいことはわかるけどさ、それでもあの部屋を見てしまった後だからそう素直に思えないんだよな」
「ちょっと待てよ。そう言う本気で怖い話はやめにしようや。その話しを出されると俺もひくしかなくなっちゃうしな」
実際には見つめ合っていた時間は長くても一分くらいだったとは思うのだが、俺にとっては永遠とも思えるような長さに感じていて段々と呼吸の仕方も忘れてしまいそうなくらい何も出来なくなってしまっていたのだ。
そんな沈黙を破ったのは誰かが鳴らしてくれたインターホンだった。
俺がそれに応える前にドアが勢い良く開いてそこに立っていた鬼仏院右近と目が合ったのだが、こいつは俺と鵜崎唯の姿を確認するとゆっくりとドアを閉めて帰ろうとしやがった。
「あ、悪い。邪魔したな」
「邪魔なんてしてねえって。いいから戻って来いよ」
「いや、そんな見つめ合ってる中に入ってけるわけないだろ。そろそろ俺もバイトの時間だし早めに行って準備しとこうかな」
「早めに行くって、今日は六時からって言ってただろ。今から行ったって二時間くらい早いんじゃないか」
「それは気にしなくていいって。俺も二人の邪魔なんてしたくないからさ。気にしないでいいって」
「ねえ、二人とも私の事無視して話を進めないでもらえるかな。あんまり勝手なこと言ってると私は怒っちゃうかもよ」
「ごめん、そう言うつもりじゃないんだけどさ、右近がそんな感じに受け取っちゃったから」
「なんで俺のせいにするんだよ。俺のせいじゃなくてお前らが無言で見つめ合ってるからそう言う感じなのかなって思って空気読んだだけなのに」
再び俺達の間に気まずい沈黙が流れてしまったのだが、その沈黙を破ったのは鵜崎唯だった。
「なんでそんなに二人ともビクビクしてるのかな。本当に面白いよね。いつも二人ってそうやって私を笑わそうとするけどさ、何回見ても笑いをこらえるのが大変だよ」
俺も鬼仏院右近も鵜崎唯を笑わせるつもりでやっていたのではなく本気でそう思っていのだけれど、鵜崎唯はなぜか俺達が鵜崎唯と俺の緊迫していた時間をわざと演出しているのだと勘違いしているようだ。俺にはそんなつもりはないのだけれど、鵜崎唯は俺がそういう反応をするように仕向けて生きているようなのだ。ただ、俺は鵜崎唯が俺に対してしてくる質問が本気なのか誘導なのかわからなくて素直に答えてしまってはいるのだ。
「政虎の困った顔って本当に可愛いよね。私はそれが見れただけでも今日は満足してしまったかも。じゃあ、愛華ちゃんもそろそろ来ると思うし、私は料理の準備でもしておこうかな。二人は先にゲームとかしてていいからね。あとね、政虎が桜さんの事を好きなのはずっと前から知ってるし、その桜さんが右近君の事を好きなのも私は知ってるよ。だからさ、私は右近君が桜さんと付き合っちゃえば政虎は桜さんの事を諦めて私の事を好きになってくれるんじゃないかなって思ってるんだ。でも、政虎の親友で優しい右近君は政虎の気持ちを考えて桜さんとは付き合わないんだもんね。桜さんじゃなかったら誰とでも付き合うのに、なんで桜さんとだけ付き合わないんだろうね。今日だって同じシフトでバイトに入ってて帰りだって一緒なんだし、そのまま付き合っちゃえばみんな幸せになるのにね。あ、政虎だけ幸せじゃないのかもしれないけど」
鵜崎唯はそう言いながら鍋を一つ手に取ると、それをコンロの上に置いて手慣れた感じで調味料を次々と入れていっていた。計量スプーンもカップも使わずに目分量で入れていく様を見ていると普段から料理をやっている事もわかるのだ。
「なあ、さっきのお前のアレって演技じゃなくて本気だったんだよな?」
「そうだけど、いつも演技だって思われてるんだよな。毎回思うんだけどさ、鵜崎が俺に桜の話をしてくる時って本気なんじゃないかって思うんだよ。答えを間違えたら殺されてしまうかもしれないって思ってるけどさ、嘘をついて鵜崎の方が好きだって言った後の方が大変な気がしてるんだよな」
「お前も大変だな。もてる男はつらいってやつだな」
「それをお前が言うのはおかしくないか。俺よりもお前の方がモテてるだろ」
「数で言えばそうかもしれないけどさ、俺の事を好きだっていう女は上辺しか見てくれなてないって事なんだよ。見た目が良いとか俺の彼女になったら他の女子にマウント取れるとかそう言う軽い気持ちで俺と付き合いたいってだけなんだよ。それに比べてさ、唯はお前の事を本気で好きなんだぜ。俺の事を好きだって言う百人の女の軽い気持ちを合わせてもお前の事を好きだって言う唯一人の方が気持ちも入ってると思うんだけどな」
こいつは鵜崎唯の何をそんなに恐れることがあるんだろう。一緒に行った時に見た部屋が強烈だったという事もあるのだろうけど、それにしては恐れ方も尋常ではない。
「なあ、何か嫌な事でもあったのか?」
「別に何もないけど。なんでそう思うんだ?」
「なんでって、鵜崎が近くにいるからってそんなに鵜崎の事を持ち上げる必要なんてないだろ。そんなに鵜崎の事が怖いのか?」。
「バカ、そんなわけないだろ。唯の事を怖がる要素なんて無いだろ。料理も上手だし見た目も可愛いし胸だって大きいし一途だしお前を幸せにしてくれると思うし、お前が今まで出会った女の子の中で一番お前に相応しいと思うぞ」
「まあ、右近の言いたいことはわかるけどさ、それでもあの部屋を見てしまった後だからそう素直に思えないんだよな」
「ちょっと待てよ。そう言う本気で怖い話はやめにしようや。その話しを出されると俺もひくしかなくなっちゃうしな」
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