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お祭り、なのです
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ムチムチプリン姫はこの日一睡もしていないのであった。前日に夕方まで寝ていたという事もあったのだろうが、今日からムチムチ王国建国記念を祝う毎年恒例の祭りが盛大に開かれるからである。
ムチムチ王国は今年で建国二十年の節目を迎えるにあたって、他国からのみならず異世界からも多くの人々が押し寄せていた。中にはプリン姫の全く知らない文化圏の食べ物や遊びなどもあり、好奇心旺盛なプリン姫にとってはこれ以上に無い楽しみが待っていたのだった。
「プリン姫おはようございます。こんな時間に起きているなんて珍しい事ですが、本日は天候にも恵まれておりますね。その点を踏まえましても、プリン姫は早起きをなさったのではなく徹夜で朝を迎えたのですね。いくら祭りの主催者ではないとはいえ、プリン姫も参加する行事はたくさんあるのですし、その時に眠そうにしていたら我が国民だけではなく他国の民や異世界人にも示しがつかないとは思うのですが。まあ、プリン姫に威厳などもともと存在しておりませんので問題はないでしょうね」
「百合ちゃんは相変わらず酷いの。プリンだって人前に出た時はちゃんとしてるのを見ているはずなの。それに、ちゃんと寝れなかったのは百合ちゃんにも原因があると思うのだけど、それについてはどう感じているの?」
「私に原因とおっしゃいますと、プリン姫が昨日洗面所で失禁したことでしょうか?」
「それじゃないの。それは言っちゃ駄目なの。誰も知らない二人だけの秘密なんだから誰にも言っちゃ駄目なの。プリンは漏らしたんじゃなくて、トイレに行けなかっただけなんだから気にしないで欲しいの」
「そうですね。そう言うことにしておきましょうか。でも、私とプリン姫が一緒にお風呂に入っている間に床を掃除してくれたのは誰なんでしょうね。掃除をしてくれたメイドにちゃんと説明をしていなかったので、もしかしたらプリン姫が洗面所でお漏らしをしていたんじゃないかって噂になっているかもしれませんが、二人だけの秘密でしたらその噂を肯定することも否定することも出来ないですね」
「そんな噂は今すぐ否定してきて欲しいの。プリンはお漏らしなんてしてないって言ってきて欲しいの」
「あ、でもご安心してください。洗面所を掃除したのは私が魔法で生み出した掃除用の魔導人形ですので。さすがにプリン姫が粗相をした後始末を他のメイドに押し付けるのも気がひけましたからね」
「それなら良かったの。百合ちゃんはプリンの事をいじめ過ぎなの。少しは優しくしてほしいの」
「優しくしてほしいのでしたら、今日も優しくマッサージして差し上げましょうか?」
「そ、それは遠慮させてもらうの」
プリン姫は気付いていなかったことではあるのだが、建国記念祭は今日から開催されることになってはいるが、二週間前からすでに前夜祭が始まっており、プリン姫の騎士でありメイドでもある青薔薇百合百合はすでに祭りのどこに何があるのかも把握していたのだ。ちなみに、本祭は三日間の予定であるが、その後一か月近く後夜祭が続くこともプリン姫は知らないのである。
「そうだ、あいつらも祭りには来るのか?」
「あいつらと言いますと?」
「ほら、一緒に大魔王を討伐しに行った異世界人たちだよ。なんだっけ、ちょっとおかしな男とプリンと百合ちゃんを敵対視してた女のカップルとか何でもかんでも毒をばらまいてた迷惑な女とか、戦闘になるたびに誰も届かないような上空に逃げていた天使とか、色々いたじゃないか」
「プリン姫の中では彼らはそういう扱いになっているんですね。彼らも私達と一緒に戦って大魔王を討伐した英雄なんですよ。もちろん招待はしてあるようなのですが、我々とは全く異なる世界にいるようなので、参加してくれるかは微妙なところではありますね」
「そうか、それは残念なの。久しぶりにみんなと会えるかもと思って期待していただけなの」
「それでプリン姫は興奮して寝られなかったのですね。何とも可愛いところはあるのですね。彼らもプリン姫に会えたら喜ぶとは思うのですが、次元の異なる世界に住んでいる彼らとコンタクトをとるのも街の人々には難しい事かもしれません」
「でも、一緒に戦った英雄っておかしな話なの。あの人達は大魔王を倒すために異世界から召喚したのに全然戦力にならなかったの。プリンが言えることじゃないけど、あの人達が倒した魔物って一体もいなかったと思うの。全部百合ちゃんが倒してただけなの」
「そうおっしゃいますが、彼らがいなければ解けない謎もありましたし、私とプリン姫だけでは世界を救えなかったのも事実なんですよ。それに、彼らの作る料理はこの世界のどの料理よりも美味でしたからね」
「確かに、あの料理はめちゃくちゃ美味かったの。またいつか食べてみたいの」
「もしかしたら、今日の祭りに彼らの世界の住人がきているかもしれませんので、あの料理にありつけるかもしれませんよ」
「ん、百合ちゃんがそんな風に言うって事は、今回の祭りでは食べられない予感がしているの。百合ちゃんはプリンに意地悪な事を言うって知っているのだから、プリンはとっても悲しい気持ちなの」
プリン姫と一緒に大魔王を討伐した異世界人である彼らは特別な能力を手にした異世界人だった。特別な能力は戦闘には全くもって役に立つことは無かったのだが、苦痛でしかない大冒険を快適にする事が出来たのは大きな功績と言えよう。彼らの能力が無ければプリン姫は最後の舞台に立つことは無く、大魔王にとどめを刺すことが出来なかったのも事実である。だが、プリン姫はその事に気付いておらず、異世界からやってきた勇者である彼らも百合ちゃんだけに戦闘を押し付けたという負い目があったりするのだった。
「そろそろ支度を始めていただかないと開会式に間に合いませんよ」
「わかっているんだけど、なんだか急に眠くなってきてしまったの。百合ちゃんの魔法で何とかこの眠気をどうにかして欲しいの」
「眠気を魔法で先送りにすることは出来ますが、屋台を回れなくなってしまうかもしれませんよ。それでもいいんでしたら試してみますが」
「それは困るの。プリンは屋台が楽しみなの」
「では、別の方法で試してみますね」
そう言ってプリン姫の体を抱き寄せた百合ちゃんは、二人の唇が触れるか触れないかの微妙な距離で目を見つめていた。プリン姫はその近さで恥ずかしくなって目を閉じてしまったのだが、百合ちゃんがおもむろに左手でプリン姫のプリプリとした尻を揉みしだくと、突然の出来事にプリン姫は目を見開いてしまった。
「ちょっと、これって何なの?」
「どうです、目が覚めましたか?」
「びっくりして目が覚めちゃったけど、こういう覚め方を望んだわけじゃないの」
「おや、そうでしたか」
百合ちゃんの言葉を遮るように唇を重ねたプリン姫はイタズラっぽくほほ笑んでいた。
「プリンはいつもやられっぱなしじゃないって知っててね」
勝ち誇ったようなプリン姫は笑顔と戸惑っている百合ちゃんの表情は対照的であったが、ほんの数秒でその立場は逆転してしまったのだ。
「プリン姫からくるというのは意外でしたが、隙が大きのはいつもの事ですね」
「ちょっと、いきなり胸を触るのは反則なの」
「大丈夫ですよ。去年の時期より成長しているみたいですから、その点は安心してくださいね」
「どっちの成長を言っているのか詳しく教えて欲しいの」
ムチムチ王国の建国二十周年を祝うその日に行われていた二人のやり取りを知る国民は誰一人いないのであったが、この国が平和であるという証拠でもあったので気にすることは無いのである。
ムチムチ王国は今年で建国二十年の節目を迎えるにあたって、他国からのみならず異世界からも多くの人々が押し寄せていた。中にはプリン姫の全く知らない文化圏の食べ物や遊びなどもあり、好奇心旺盛なプリン姫にとってはこれ以上に無い楽しみが待っていたのだった。
「プリン姫おはようございます。こんな時間に起きているなんて珍しい事ですが、本日は天候にも恵まれておりますね。その点を踏まえましても、プリン姫は早起きをなさったのではなく徹夜で朝を迎えたのですね。いくら祭りの主催者ではないとはいえ、プリン姫も参加する行事はたくさんあるのですし、その時に眠そうにしていたら我が国民だけではなく他国の民や異世界人にも示しがつかないとは思うのですが。まあ、プリン姫に威厳などもともと存在しておりませんので問題はないでしょうね」
「百合ちゃんは相変わらず酷いの。プリンだって人前に出た時はちゃんとしてるのを見ているはずなの。それに、ちゃんと寝れなかったのは百合ちゃんにも原因があると思うのだけど、それについてはどう感じているの?」
「私に原因とおっしゃいますと、プリン姫が昨日洗面所で失禁したことでしょうか?」
「それじゃないの。それは言っちゃ駄目なの。誰も知らない二人だけの秘密なんだから誰にも言っちゃ駄目なの。プリンは漏らしたんじゃなくて、トイレに行けなかっただけなんだから気にしないで欲しいの」
「そうですね。そう言うことにしておきましょうか。でも、私とプリン姫が一緒にお風呂に入っている間に床を掃除してくれたのは誰なんでしょうね。掃除をしてくれたメイドにちゃんと説明をしていなかったので、もしかしたらプリン姫が洗面所でお漏らしをしていたんじゃないかって噂になっているかもしれませんが、二人だけの秘密でしたらその噂を肯定することも否定することも出来ないですね」
「そんな噂は今すぐ否定してきて欲しいの。プリンはお漏らしなんてしてないって言ってきて欲しいの」
「あ、でもご安心してください。洗面所を掃除したのは私が魔法で生み出した掃除用の魔導人形ですので。さすがにプリン姫が粗相をした後始末を他のメイドに押し付けるのも気がひけましたからね」
「それなら良かったの。百合ちゃんはプリンの事をいじめ過ぎなの。少しは優しくしてほしいの」
「優しくしてほしいのでしたら、今日も優しくマッサージして差し上げましょうか?」
「そ、それは遠慮させてもらうの」
プリン姫は気付いていなかったことではあるのだが、建国記念祭は今日から開催されることになってはいるが、二週間前からすでに前夜祭が始まっており、プリン姫の騎士でありメイドでもある青薔薇百合百合はすでに祭りのどこに何があるのかも把握していたのだ。ちなみに、本祭は三日間の予定であるが、その後一か月近く後夜祭が続くこともプリン姫は知らないのである。
「そうだ、あいつらも祭りには来るのか?」
「あいつらと言いますと?」
「ほら、一緒に大魔王を討伐しに行った異世界人たちだよ。なんだっけ、ちょっとおかしな男とプリンと百合ちゃんを敵対視してた女のカップルとか何でもかんでも毒をばらまいてた迷惑な女とか、戦闘になるたびに誰も届かないような上空に逃げていた天使とか、色々いたじゃないか」
「プリン姫の中では彼らはそういう扱いになっているんですね。彼らも私達と一緒に戦って大魔王を討伐した英雄なんですよ。もちろん招待はしてあるようなのですが、我々とは全く異なる世界にいるようなので、参加してくれるかは微妙なところではありますね」
「そうか、それは残念なの。久しぶりにみんなと会えるかもと思って期待していただけなの」
「それでプリン姫は興奮して寝られなかったのですね。何とも可愛いところはあるのですね。彼らもプリン姫に会えたら喜ぶとは思うのですが、次元の異なる世界に住んでいる彼らとコンタクトをとるのも街の人々には難しい事かもしれません」
「でも、一緒に戦った英雄っておかしな話なの。あの人達は大魔王を倒すために異世界から召喚したのに全然戦力にならなかったの。プリンが言えることじゃないけど、あの人達が倒した魔物って一体もいなかったと思うの。全部百合ちゃんが倒してただけなの」
「そうおっしゃいますが、彼らがいなければ解けない謎もありましたし、私とプリン姫だけでは世界を救えなかったのも事実なんですよ。それに、彼らの作る料理はこの世界のどの料理よりも美味でしたからね」
「確かに、あの料理はめちゃくちゃ美味かったの。またいつか食べてみたいの」
「もしかしたら、今日の祭りに彼らの世界の住人がきているかもしれませんので、あの料理にありつけるかもしれませんよ」
「ん、百合ちゃんがそんな風に言うって事は、今回の祭りでは食べられない予感がしているの。百合ちゃんはプリンに意地悪な事を言うって知っているのだから、プリンはとっても悲しい気持ちなの」
プリン姫と一緒に大魔王を討伐した異世界人である彼らは特別な能力を手にした異世界人だった。特別な能力は戦闘には全くもって役に立つことは無かったのだが、苦痛でしかない大冒険を快適にする事が出来たのは大きな功績と言えよう。彼らの能力が無ければプリン姫は最後の舞台に立つことは無く、大魔王にとどめを刺すことが出来なかったのも事実である。だが、プリン姫はその事に気付いておらず、異世界からやってきた勇者である彼らも百合ちゃんだけに戦闘を押し付けたという負い目があったりするのだった。
「そろそろ支度を始めていただかないと開会式に間に合いませんよ」
「わかっているんだけど、なんだか急に眠くなってきてしまったの。百合ちゃんの魔法で何とかこの眠気をどうにかして欲しいの」
「眠気を魔法で先送りにすることは出来ますが、屋台を回れなくなってしまうかもしれませんよ。それでもいいんでしたら試してみますが」
「それは困るの。プリンは屋台が楽しみなの」
「では、別の方法で試してみますね」
そう言ってプリン姫の体を抱き寄せた百合ちゃんは、二人の唇が触れるか触れないかの微妙な距離で目を見つめていた。プリン姫はその近さで恥ずかしくなって目を閉じてしまったのだが、百合ちゃんがおもむろに左手でプリン姫のプリプリとした尻を揉みしだくと、突然の出来事にプリン姫は目を見開いてしまった。
「ちょっと、これって何なの?」
「どうです、目が覚めましたか?」
「びっくりして目が覚めちゃったけど、こういう覚め方を望んだわけじゃないの」
「おや、そうでしたか」
百合ちゃんの言葉を遮るように唇を重ねたプリン姫はイタズラっぽくほほ笑んでいた。
「プリンはいつもやられっぱなしじゃないって知っててね」
勝ち誇ったようなプリン姫は笑顔と戸惑っている百合ちゃんの表情は対照的であったが、ほんの数秒でその立場は逆転してしまったのだ。
「プリン姫からくるというのは意外でしたが、隙が大きのはいつもの事ですね」
「ちょっと、いきなり胸を触るのは反則なの」
「大丈夫ですよ。去年の時期より成長しているみたいですから、その点は安心してくださいね」
「どっちの成長を言っているのか詳しく教えて欲しいの」
ムチムチ王国の建国二十周年を祝うその日に行われていた二人のやり取りを知る国民は誰一人いないのであったが、この国が平和であるという証拠でもあったので気にすることは無いのである。
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