恋愛アプリを使ってみたら幼馴染と両想いになれました

釧路太郎

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第四話

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 僕は奥谷君の今までのやり取りを見て特徴はある程度掴んでいたと思う。もしかしたらバレるんじゃないかと思っていたことはあったけれど、ちゃんと話を聞いてみたところ、実はかなり早い段階でやり取りをしている相手は奥谷君ではないのではないかという疑問が生まれていたようだ。上手くは言えないが、そう感じる部分はたくさんあったらしい。ただ、それでも他の人にはわからないような話も出ていたのでその考えは間違っているのではないかと思っていたと聞いた。奥谷信寛として宮崎泉とやり取りをしているのは複数人居てその中に時々奥谷信寛本人が加わっているのではないかと思うことにしたらしい。
 それを聞くと、いつからか日常的な話題ばかりになっていて最初にやり取りをしていた時のように一方的に好意を向けられることは無くなっていた。もっとも、僕が奥谷信寛本人でなかったという事を考えとそれも仕方ないとは思う。彼女が好きになったのは奥谷信寛で僕ではないのだから当然と言えば当然だ。
 もっとも、彼女はやり取りをしていた相手が複数人ではなく一人しかいないという事には納得してくれてはいなかったが、一応信じてくれるとは言ってくれた。
 こうなると、今までのように素性を偽ってやり取りすることも無いだろうと思い、僕は宮崎泉とのやり取りを運営のアカウントを使って行うことにした。ただ、運営と言っても何か特殊なものではなく、運営している僕が持っているアカウントの一つであるというだけの話だ。もちろん、公式マークなんてついていないし、何か特別な事があるわけでもない。ただ一つを除いてではあるが。僕と宮崎泉は奥谷信寛のアカウントを経由せずに直接やり取りをすることになったのだが、その際に発生するポイントは宮崎泉と奥谷信寛のフレンドポイントに加算することにした。そうでもしなければ宮崎泉が僕とのやり取りをしなくなってしまうのではないかと思ったからだ。

「運営さんはどうして奥谷君に成りすまして私とやり取りをしたかったのかな?」
「それについては特に深い意味は無いんだけど、たまたま目についたからってだけかな。君の事を登録している人がとても多いってのもあるんだけど、そんな君が登録している彼もとても登録している人が多いんだよね。それで、君たち二人がどんな人なのか気になったってのはあるかな」
「奥谷君が多いってのはわかるんですけど、私も多いってどうしてですかね?」
「多分なんだけど、見た目と性格がいいからじゃないかな。僕は直接君に会ったことが無いのでハッキリとは断言できないけれど、君の名前の後に続く会話は美人とか可愛いとかそういうのが多いし、いい人って女子の間でも言われているからね」
「なんだかそう言ってもらえるのは嬉しいんですけど、こういうことしても大丈夫なんですか?」
「大丈夫って、どういう意味かな?」
「勝手に奥谷君に成りすまして私とこうしてやり取りをするのって大丈夫なのかなって思ったんですよね」
「それに関しては問題無いと思うよ。僕は運営者であり管理者であるわけだし、この行為が運営をするうえでも必要な事だと思うし、管理するという意味でも重要な事だとは思うんだよね。何せ、君と奥谷君はこのアプリに登録されている片思われ者の中でも群を抜いて数が多いからね。そんな人が普段はどんなことを思ってどんなことをしているのかって興味があるわけだしね。うまく行けば、見た目は無理でもいい人って思われている君達みたいな性格に近付けるかもしれないからね」
「それって、褒められてるって受け取ってもいいんですよね?」
「もちろん。でもさ、君が僕とではなく奥谷君とのやり取りを純粋に楽しみたいって思うなら今からこの行為はやめるけど。やめた方がいいかな?」
「そうですね。奥谷君とやり取りをしたいなって気持ちはあるんですよ。でも、私は幼稚園の時からずっと奥谷君と一緒に過ごしてきたのに、ちゃんと目の前で顔を見ながら話したのってつい最近になってからなんですよね。なんでなのかわからないですけど、奥谷君の近くに行くと他の人とは違って緊張してしまって、何を話したらいいのかわからなくなっちゃうんですよね。それって、私の気が小さいからなんですかね?」
「どうだろう。僕も過去に好きな人がいたことがあるし、話すことに緊張するってことはあったんだけど、そこまで深刻に考えたことは無かったな。僕は奥谷君じゃないので宮崎さんの事をどう思っているかは断言できないけど、悪い風には思ってないんじゃないかな」
「そうだといいんですけど。でも、私は何となく奥谷君が私の事を見てくれない理由は分かっているんですよ。何となくですけど」
「そうなんだね。でもさ、君に可能性が全くないってわけでもないと思うし、きっとそのうち大丈夫になる時が来ると思うよ」
「ですよね。うん、私はこれからもっと頑張ります。運営さんからたくさんポイントを貰えたみたいだし、それを使ってでも奥谷君ともっと仲良くなれるように頑張ります。チャンスはもう少なくなっていると思いますけど、それでも私に出来ることはちゃんとやって、自分の気持ちを素直に奥谷君にぶつけたいと思います」
「うん、頑張ってね。あんまり無責任な事を言いたくは無いんだけど、君ならきっと大丈夫だと思うよ。でも、思い詰め過ぎないようにするんだよ」
「ありがとうございます。そうだ、運営さんって奥谷君が好きな人を知ってるんですよね?」
「えっと、そうだけど。教えることは出来ないよ」
「大丈夫ですよ。私はずっと奥谷君を見てきたんですよ。奥谷君が好きなのは私じゃないってことくらいは知ってますから。私が彼女に負けている部分なんて頭の良さくらいしかないと思うんだけどな」
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