恋愛アプリを使ってみたら幼馴染と両想いになれました

釧路太郎

文字の大きさ
上 下
31 / 71
恋愛コレクション

第六話

しおりを挟む
 宮崎から来た招待に何となく乗ってみたのだけれど、俺は誰かとメッセージのやり取りをすることが得意ではない。したがって、宮崎とメッセージのやり取りをすることも無かったのだ。そもそも、恋愛アプリに山口の情報を登録した時以来開いていなかったし、存在自体も覚えていなかったのだ。山口が俺の情報を登録したのかなと思って確認をしようと思っていたりもしたが、両想いになると通知が来るらしいのでその必要も無いのであれば俺がアプリを開く必要も無いというわけだった。

「あのさ、奥谷にちょっと話があるんだけどいいかな?」
「ここじゃダメなの?」
「あんまり人に聞かれたくない話だからさ、ダメだったらいいんだけどさ」
「別にいいけど、すぐ終わる?」
「うん、そんなに時間はかからないと思う」
「なんだなんだ、信寛に告白でもするのか?」
「でもさ、河野って彼氏いるんじゃなかったっけ」
「そんな話を聞いたことあるかも」
「あのさ、告白とかそういう話じゃないから。お前らは余計なこと言わないで黙っててもらえるかな。ウチは奥谷に話があるだけなんだよ」
「ごめん」

 俺は河野に謝っている頼之と朋英の肩をポンっと叩いてから河野についていった。人気のない場所に連れていかれるのかと思っていたけれど着いた場所は体育館への連絡通路で意外と人の往来があった場所だった。

「あのさ、奥谷って泉の事より愛莉の事の方が好きだろ?」
「え、どういう事?」

 俺は河野の質問の内容よりも山口の事を名前で呼んでいることの方に衝撃を受けた。

「いや、ほとんどのやつは気付いてないかもしれないけど、奥谷が愛莉の事を好きだってのは知ってるよ。泉も亜梨沙も亜紀たちも気付いていないと思うけど、ウチは入学した時から気付いていたよ。泉から奥谷の話を聞くたびに、奥谷って愛莉の事を好きなんじゃないかって思ってたからね」
「話ってそれの事なの?」
「ちげーよ。これは奥谷の気持ちを確認したかっただけで、本題はここからなんだ。奥谷が愛莉の事を好きじゃないんだったらどうでもいい話になっちゃうかもしれないけど、奥谷が愛莉の事を好きだったらこれは奥谷にとっても大きな問題になると思うんだよ。もう一度聞くけど、奥谷って泉よりも愛莉の事が好きだよな?」
「なんだよ。そんな事を言う必要はないだろ。好きとか嫌いとか誰かに言う事じゃないし、俺は山口と付き合うとか考えてるわけじゃないし。いったい何なんだよ」
「まあいいや。じゃあさ、ウチは奥谷が愛莉の事を好きだって前提で話すんだけど、もしもそうじゃなかったらこの話は聞かなかったことにしてくれ。ウチのクラスのほとんどのやつが愛莉を悪者扱いしているのはわかってると思うんだけど、それって亜紀のためにやってると思ってるつもりで亜梨沙とか歩たちが暴走してるだけじゃないかって思うんだよ。あいつらは亜紀の気持ちを確認しないで愛莉を責めてると思うんだけど、それって本当に正しい事なのかなって思うんだよ。愛莉が亜紀に対してあんなことを言ったのだって亜紀が行った暴力から先生たちの目を背けるためだって考えたら見方も変わると思うんだけどさ、亜梨沙たちって自分が正しいと思い込んでるからそういう風に見ることが出来ないんだよね。奥谷って愛莉が悪いやつじゃないって知ってると思うんだけど、本当に愛莉が亜紀に対して悪意だけであんなことを言ったと思ってるのかな?」
「俺も山口が西森に対して何か貶めようとかそういうつもりで言ったんじゃないって思っているけど、どうして河野が若林とかと違う考え方で山口を見てるわけなの?」
「それはさ、ウチって見た目はこんなんだけど実はアニメとかゲームが好きなんだよね。クラスに馴染めてなかったときに同中だったダチに愛莉の事を聞いて話しかけてみたんだ。そしたら、意外とウチと愛莉って趣味が合っちゃって意気投合したんだよね。でも、愛莉って直接人と話すのって苦手みたいでメールとかチャットの方がやり取りが多かったんだ。一緒にオンラインでゲームやったり、ゲームやりながらアニメの同時視聴して感想を言い合ったりもしてたんだけど、そんな友達が今までできた事なかったから嬉しかったな。他の人には言ってないけど、ウチと愛莉ってゲーム内でカップルなんだよ」
「ゲームがきっかけで付き合ってるって事?」
「違う違う。ゲームの中で付き合ってるって事。ウチは可愛い女のキャラなんだけどさ、愛莉ってああ見えてイケメンキャラを使ってるんだよ。あれ、ちょっと待って。よくよく見てみたら、愛莉の使ってるキャラって奥谷に似てんじゃね。ほら、スクショあるから見てみ」

 河野のスマホに映し出されていたキャラクターは何となく俺に似ているような気もするけれど、じっくり見ないとわからない程度のものだった。俺に似せたキャラを使っているというのは嬉しかったけど、それが本当に俺なのかどうかというのが気になってしまった。

「ああ、一度気になったら答えが知りたくて仕方ないな。よし、愛莉に聞いてみることにしよう。奥谷に似せてたってウチは気にしないし、奥谷もあんまり期待するなよ」
「期待って何だよ。そんなんしないよ」
「そうそう、話は戻すんだけどさ。ウチはクラスのみんなで愛莉の事を仲間外れにするのは良くないと思うんだよね。でもね、もうウチがどういう風に動いたってこれは止められないと思うんだよ。亜紀だって本当はそんな風にしてほしくないって思ってるだろうし、亜梨沙たちの暴走を止めたいって思ってると思うんだよね。でも、ウチも亜紀もそんなことが出来る時期を黙って過ごしちゃったんだよ。もっと早くに気付いて動いていればどうにかなったかもしれないんだけどさ、亜梨沙も歩も茜も吉原たち男子ももう止まれないくらい勢いが付いちゃってるんだよね。先生たちにウチと亜紀で相談したこともあったんだけどさ、肝心の愛莉が先生たちにちゃんとうまく説明できなかったし、変なこと言っちゃったから誤解されてると思うんだよね。もうさ、ウチが出来ることって亜梨沙たちがやりすぎないように見てることしかないんだよ。ウチが止めることはもう出来ないんだって思うからさ、奥谷は今まで見たいに愛莉の味方でいてもらえるかな?」
「俺は誰の味方でもないし敵でもないけど、山口が困ってるんなら助けたいって思うよ」
「あのさ、こんな言い方は良くないと思うんだけど言わせてもらうね。愛莉が困ってから助けたって意味無いんだよ。困る前に助けてもらえないと愛莉が壊れちゃうかもしれないんだよ」
「いや、そう言われてもさ。山口が困ってないのに助けたって迷惑かもしれないだろ。今までだって山口は似たような状況になってても何とかしてたし、今だって本当に気にしていないのかもしれないし」
「奥谷ってさ、愛莉の事を知っているようで何にも知らないんだね。愛莉って一見強そうに見えるけど本当はとても弱い子なんだよ。以前にどういう風にいじめられてたのか知らないけど、その時も本当は辛かったって言ってたし、奥谷や泉が守ってくれたから何とか耐えられたって言ってたんだよ」
「そうだよ。俺が助けるよりも先に宮崎が助けになるって。宮崎って困っている人をほっとけないタイプなんだから、今回だって山口の味方になってくれるんじゃないかな」
「あのね、そんなことが出来るのならウチは奥谷よりも先に泉に話してるって。それが出来ないからウチはわざわざ奥谷に話しているんだよ。奥谷は泉が山口の事が嫌いだって知らなかったでしょ?」
「え、そんなはずないだろ。高校に入ってから仲良くしているところはみてないけど、あいつらってそんな感じじゃないと思うんだけど」
「本当にあんたは鈍いのね。泉が好きなのはあんたで、あんたが好きなのは愛莉なの。泉もあんたが愛莉の事を好きなのは薄々感じてはいると思うんだけど、その直感を信じてはいないと思うのよ。で、その気持ちを亜梨沙たちが利用して泉も山口に敵意を向けるように仕向けてると思うんだよ。男子たちは軽い気持ちで亜梨沙たちに加わってると思うんだけど、女子って意外とそういう恐い面があるからね」
「それはわかったんだけどさ、仮に俺が山口の事を好きだったとして、どうしたらいいと思う?」
「仮にね。ま、いいわ。愛莉の中で奥谷と泉は数少ない仲間のよ。もちろんウチも仲間ではあるんだけど、直接助けることは人間関係もあるし難しいんだ。でも、もしもの時は愛莉を守るつもりだからね。それでさ、奥谷はどんな時でも愛莉を守ってほしいの。クラス中、学校中が愛莉の敵になったとしても、奥谷は最後まで愛莉を信じて守ってほしいの。ただそれだけでいいの」
「守るって、どうすればいいわけ?」
「吉原たちが愛莉に詰め寄った時みたいにしてくれればそれでいいよ。ウチはゲームやりながら愛莉の心を守るんで、奥谷は何かありそうなときに愛莉の身を守ってくれればいいよ」
「わかった。でもさ、俺一人だけだったら守り切れないかもしれないな」
「おいおい、そんな時は俺達を頼ってくれていいんだぜ」
「ま、頼りないかもしれないけどな」
「ちょっと、あんた達って盗み聞きしてたわけ。最低ね」
「まあまあ、そう言うなって。俺達は山口の味方ってわけじゃないけどさ、信寛が山口を守るって言うんなら協力するぜ」
「だな、喧嘩とかはしたくないけどさ、山口だけが悪いってわけじゃないし一人をみんなでいじめるってのはよくない事だもんな」
「あんた達、少し見直したかも」
「もっと見直してくれていいんだぜ」
「それにしてもよ、若林がそんな事を考えてるなんてショックだったな。巨乳の人間に悪いやつはいないって思ってたんだけどな」
「何だよそれ。そんな事を言ったら、俺は泉ちゃんが信寛の事が好きだって事の方がショックだよ」
「お前らって宮崎が信寛の事を好きだって感じてなかったのか。意外と鈍いんだな」
「もう、そういうのは後で勝手にやってていいから。ウチは直接愛莉を守ることが出来なんでお願いします。ウチは出来るだけ愛莉の心を守るから三人は何も無いように愛莉を守ってください」

 俺たち三人はそれぞれ顔を見合わせた後にうなずくと、河野が安心するように笑顔で答えた。二人が本当はどう思っているのかなんてわからないけれど、俺はどんなことがあっても山口を守ってやらないとなと思っていた。

 山口って俺に似ているキャラクターを作っていたみたいだし、もしかしたら俺の事が好きなのかもしれないしな。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する

美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」 御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。 ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。 ✳︎不定期更新です。 21/12/17 1巻発売! 22/05/25 2巻発売! コミカライズ決定! 20/11/19 HOTランキング1位 ありがとうございます!

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

独身寮のふるさとごはん まかないさんの美味しい献立

水縞しま
ライト文芸
旧題:独身寮のまかないさん ~おいしい故郷の味こしらえます~ 第7回ライト文芸大賞【料理・グルメ賞】作品です。 ◇◇◇◇ 飛騨高山に本社を置く株式会社ワカミヤの独身寮『杉野館』。まかない担当として働く有村千影(ありむらちかげ)は、決まった予算の中で献立を考え、食材を調達し、調理してと日々奮闘していた。そんなある日、社員のひとりが失恋して落ち込んでしまう。食欲もないらしい。千影は彼の出身地、富山の郷土料理「ほたるいかの酢味噌和え」をこしらえて励まそうとする。 仕事に追われる社員には、熱々がおいしい「味噌煮込みうどん(愛知)」。 退職しようか思い悩む社員には、じんわりと出汁が沁みる「聖護院かぶと鯛の煮物(京都)」。 他にも飛騨高山の「赤かぶ漬け」「みだらしだんご」、大阪の「モダン焼き」など、故郷の味が盛りだくさん。 おいしい故郷の味に励まされたり、癒されたり、背中を押されたりするお話です。 

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

瞬間、青く燃ゆ

葛城騰成
ライト文芸
 ストーカーに刺殺され、最愛の彼女である相場夏南(あいばかなん)を失った春野律(はるのりつ)は、彼女の死を境に、他人の感情が顔の周りに色となって見える病、色視症(しきししょう)を患ってしまう。  時が経ち、夏南の一周忌を二ヶ月後に控えた4月がやって来た。高校三年生に進級した春野の元に、一年生である市川麻友(いちかわまゆ)が訪ねてきた。色視症により、他人の顔が見えないことを悩んでいた春野は、市川の顔が見えることに衝撃を受ける。    どうして? どうして彼女だけ見えるんだ?  狼狽する春野に畳み掛けるように、市川がストーカーの被害に遭っていることを告げる。 春野は、夏南を守れなかったという罪の意識と、市川の顔が見える理由を知りたいという思いから、彼女と関わることを決意する。  やがて、ストーカーの顔色が黒へと至った時、全ての真実が顔を覗かせる。 第5回ライト文芸大賞 青春賞 受賞作

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

処理中です...