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恋愛コレクション
第三話
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いつもは誰よりも早く登校している今日は珍しく宮崎が遅刻しそうになっていた。それも、西森たちと一緒に慌ててやってきたのだった。そして、四人はそのまま山口の席席を取り囲むようにすると、西森が山口に向かっていきなり怒りだしていたのだった。
「朝の公園なら大丈夫だって言ったのはお前なのになんで来ないわけ?」
「私は一言もお前らに会いに行くなんて言ってないんだけど、お前らの中では勝手に私が行くことになってたってだけの話だろ。私が朝からお前らに会いに行って何の得があるって言うんだよ。どうせ、奥谷と仲良くするなとかそういう話がしたいだけなんだろうけど、私は最初から奥谷に対して恋愛感情なんか持ってないし、小さい時から一緒にいるから家族とか兄妹としか見えてないんだよ。いい加減説明するのもうざいから少しは理解しろよな。そんなんだからお前らは勉強も出来ないで男ばっか追っかけてんだろ」
いきなり山口が西森たちに責められているのかと思って見ていたら、山口の口から俺の名前が出てきたので俺はびっくりしてしまった。いったい何の話なんだろうと思って聞いていたんだけど、俺は皆の前で山口の口からただの幼馴染で恋愛感情なんて一切持っていないという事がハッキリと明言されてしまった。俺は山口の事が好きなんだけど、山口は俺の事をどう思っているのだろうとずっと思っていたし、なんとなく俺に対して恋愛感情なんか無いんじゃないかなって思ってはいたんだけど、こうもはっきりと宣言されると俺はただただ落ち込むだけだった。
「なあ、あいつらに何があったのかは知らんけど、お前ってみんなの前で山口に振られちゃったな。あんまり気を落とさずに頑張れよ。部活休みの日にみんなでカラオケでも行って残念会やろうや」
「そうだな。信寛を慰める会を開く必要があるかもしれないな。山口はきっと誘っても来ないだろうし、泉ちゃんとか誘ってパーッと騒いで失恋の傷を癒そうぜ」
「おい、朋英はしれっと宮崎の事誘おうとしてるんだよ。お前は絶対に宮崎から好印象を持たれてないから諦めろって。誘ったってお前と話したりしないと思うぞ」
「馬鹿、俺はただ泉ちゃんがいれば盛り上がるかなって思っただけだって。深い意味なんてなんも無いからさ。それにさ、俺は信寛の事を思って言っているだけなんだからな」
「お前らさ、山口が俺に対して男として興味が無いって言っただけなんだから慰めるとか残念とか言うなって。家族としか見てないって事は、一緒に暮らせるってことだろ。みんなの前で俺の事を好きだって言えない山口なりの告白かもしれないだろ」
「それは無いだろ」
「お前はどれだけポジティブなんだよ」
「全くだ。その気持ちは見習いたいわ」
そんなやり取りをしていると、西森が山口の顔をひっぱたいてしまった。そして、そのタイミングを見計らったかのように早坂先生が教室の中へと入ってきてしまったのだった。俺は山口が叩かれた瞬間は見ていなかったのだけれど、早坂先生はその瞬間をばっちりと見てしまったようで西森に詰め寄っていた。
早坂先生はクラスのみんなに何があったか説明するように言っているのだけれど、俺はいったい何があったのかわかってないので答えられることは何もなかった。それはクラスの大半も同じだったようで、誰も答えられずにうつむいていたのだった。今まで生きてきて一番長く感じた時間だったけれど、何があったかなんて知っているのは山口と西森達だけだと思うのに誰も口を開こうとはしなかったのだった。
一時間目も早坂先生の授業なので今日はこのまま気まずくて重い時間が続いてしまうんだろうなと思っていたんだけれど、その空気を破ったのは西森に叩かれた山口だったのだった。
山口は明らかに西森を庇っているような説明をしていたのだけれど、それを聞いて納得するものは誰もいないんじゃないかと思うような説明だった。そんな説明だったけれど頼之と朋英はその説明を聞いて何か納得しているようだった。
「なあ、西森って派手な見た目をしてるのに悪魔と戦ってるなんてカッコイイよな」
「確かに。アレがギャップってやつなんじゃないか。俺って西森の事を見る目が変わったかも」
「じゃあ、宮崎の事はもうあきらめたってことなのか?」
「いやいや、西森は凄いって思うけどそれとこれとは話が違うだろ。俺はずっと泉ちゃん一筋で行くからさ」
「そんなん聞いてないわ。でもよ、西森ってなんでそんな力を隠してたんだろうな」
「そりゃアレだろ、俺達を巻き込まないように隠してたってことなんじゃないか。正直に言って、西森ってちょっと近づきがたい感じだしさ。同じギャルでも河野は話しやすいとこあるからその差じゃね」
「そうかもしれないな」
こいつらはバカなんだろうなって思うけれど、そんなところがあるから一緒にいて楽しいところもあるんだよな。ただ、こいつらって将来詐欺の被害に遭ったりしないか心肺になっちゃうよな。
それにしても、山口ってやっぱりいいやつだよな。昔から困っている人をほっとけない女の子だったんだもんな。
「朝の公園なら大丈夫だって言ったのはお前なのになんで来ないわけ?」
「私は一言もお前らに会いに行くなんて言ってないんだけど、お前らの中では勝手に私が行くことになってたってだけの話だろ。私が朝からお前らに会いに行って何の得があるって言うんだよ。どうせ、奥谷と仲良くするなとかそういう話がしたいだけなんだろうけど、私は最初から奥谷に対して恋愛感情なんか持ってないし、小さい時から一緒にいるから家族とか兄妹としか見えてないんだよ。いい加減説明するのもうざいから少しは理解しろよな。そんなんだからお前らは勉強も出来ないで男ばっか追っかけてんだろ」
いきなり山口が西森たちに責められているのかと思って見ていたら、山口の口から俺の名前が出てきたので俺はびっくりしてしまった。いったい何の話なんだろうと思って聞いていたんだけど、俺は皆の前で山口の口からただの幼馴染で恋愛感情なんて一切持っていないという事がハッキリと明言されてしまった。俺は山口の事が好きなんだけど、山口は俺の事をどう思っているのだろうとずっと思っていたし、なんとなく俺に対して恋愛感情なんか無いんじゃないかなって思ってはいたんだけど、こうもはっきりと宣言されると俺はただただ落ち込むだけだった。
「なあ、あいつらに何があったのかは知らんけど、お前ってみんなの前で山口に振られちゃったな。あんまり気を落とさずに頑張れよ。部活休みの日にみんなでカラオケでも行って残念会やろうや」
「そうだな。信寛を慰める会を開く必要があるかもしれないな。山口はきっと誘っても来ないだろうし、泉ちゃんとか誘ってパーッと騒いで失恋の傷を癒そうぜ」
「おい、朋英はしれっと宮崎の事誘おうとしてるんだよ。お前は絶対に宮崎から好印象を持たれてないから諦めろって。誘ったってお前と話したりしないと思うぞ」
「馬鹿、俺はただ泉ちゃんがいれば盛り上がるかなって思っただけだって。深い意味なんてなんも無いからさ。それにさ、俺は信寛の事を思って言っているだけなんだからな」
「お前らさ、山口が俺に対して男として興味が無いって言っただけなんだから慰めるとか残念とか言うなって。家族としか見てないって事は、一緒に暮らせるってことだろ。みんなの前で俺の事を好きだって言えない山口なりの告白かもしれないだろ」
「それは無いだろ」
「お前はどれだけポジティブなんだよ」
「全くだ。その気持ちは見習いたいわ」
そんなやり取りをしていると、西森が山口の顔をひっぱたいてしまった。そして、そのタイミングを見計らったかのように早坂先生が教室の中へと入ってきてしまったのだった。俺は山口が叩かれた瞬間は見ていなかったのだけれど、早坂先生はその瞬間をばっちりと見てしまったようで西森に詰め寄っていた。
早坂先生はクラスのみんなに何があったか説明するように言っているのだけれど、俺はいったい何があったのかわかってないので答えられることは何もなかった。それはクラスの大半も同じだったようで、誰も答えられずにうつむいていたのだった。今まで生きてきて一番長く感じた時間だったけれど、何があったかなんて知っているのは山口と西森達だけだと思うのに誰も口を開こうとはしなかったのだった。
一時間目も早坂先生の授業なので今日はこのまま気まずくて重い時間が続いてしまうんだろうなと思っていたんだけれど、その空気を破ったのは西森に叩かれた山口だったのだった。
山口は明らかに西森を庇っているような説明をしていたのだけれど、それを聞いて納得するものは誰もいないんじゃないかと思うような説明だった。そんな説明だったけれど頼之と朋英はその説明を聞いて何か納得しているようだった。
「なあ、西森って派手な見た目をしてるのに悪魔と戦ってるなんてカッコイイよな」
「確かに。アレがギャップってやつなんじゃないか。俺って西森の事を見る目が変わったかも」
「じゃあ、宮崎の事はもうあきらめたってことなのか?」
「いやいや、西森は凄いって思うけどそれとこれとは話が違うだろ。俺はずっと泉ちゃん一筋で行くからさ」
「そんなん聞いてないわ。でもよ、西森ってなんでそんな力を隠してたんだろうな」
「そりゃアレだろ、俺達を巻き込まないように隠してたってことなんじゃないか。正直に言って、西森ってちょっと近づきがたい感じだしさ。同じギャルでも河野は話しやすいとこあるからその差じゃね」
「そうかもしれないな」
こいつらはバカなんだろうなって思うけれど、そんなところがあるから一緒にいて楽しいところもあるんだよな。ただ、こいつらって将来詐欺の被害に遭ったりしないか心肺になっちゃうよな。
それにしても、山口ってやっぱりいいやつだよな。昔から困っている人をほっとけない女の子だったんだもんな。
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