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恋愛コミュニケーション
第二十二話
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奥谷君を襲った犯人が捕まることも無いまま時間だけが過ぎていったのだけれど、私達はその話題を出すことは控えていた。誰かが決めたわけではないのだけれど、それは最初から決まっていたことのように誰も話題にすることは無かったのだ。
ただ、夏が終わり街路樹の色が変わり始めたころになると、奥谷君のように襲われる事件が発生してしまった。襲われたのは名前も聞いたことのない一年生ではあったのだけれど、その話題になるとみんな自然と奥谷君の事を見るようになってしまった。奥谷君を襲った犯人と一年生を襲った犯人が同一人物なのかはわからないけれど、こんな小さな町で似たような事件が起こるようなことがあるのだろうかという疑問は残ったのだった。
私はいまだに奥谷君と恋愛アプリのフレンドメッセージで他愛のないやり取りを続けているのだが、気が付いた時には二人で使い切れないくらいのポイントが貯まっていたのだった。ここ一か月くらいはお互いに忙しかったので休みの日に出かけることが無かったのものあるのだが、私が梓ちゃんに聞いているよりも全然速いペースでポイントが貯まっているという事もあった。何故か恋人同士よりも友人同士の方がポイントが貯まりやすいようなのだけれど、それは私が奥谷君の事を好きだと登録しているからなのかもしれない。
この頃になると、私と奥谷君が付き合ってはいないが頻繁に遊んでいるという噂も流れていたし、それをきっかけに奥谷君を諦めた女子が他の男子を新しく恋愛アプリに登録して恋人になるという事もあったようだ。だが、そんな人達を見ると、周りに流されて奥谷君の事を登録していただけで本当に好きな人は別にいたんではないかと思えるくらい幸せそうな姿を見せてきていた。
今にして思うと、私と奥谷君が休みの日に会っているという噂が流れ始めたくらいから奥谷君が私と休みの日に会ってくれなくなっているようにも思えたのだけれど、それは木っと忙しくなったタイミングとたまたま重なっただけだと思う。奥谷君は私と噂になるのが恥ずかしいのではなく、本当に忙しかったんだ。そうでなければ、私は本気で落ち込んでしまうだろう。
学校祭前に行われた中間テストの結果は良くなかったのだけれど、悪いとも言い切れない微妙な結果に終わってしまった。ただ、赤点が無かったのは良かったし、今回は平均点もそこまで高くなかったので私だけが悪いという事でもなかったのだ。奥谷君も赤点は無かったみたいなのだけれど、今回も成績はそこまで良くなかったみたいだった。山口は、いつも以上に成績が良かったようで、皆が点数を落としている中で点数とちゃんととっている数少ない生徒であったようだし、結果的には学年一位になっていたのだった。
勉強が出来ないよりは出来た方が全然いいとは思うのだけれど、私は山口くらい勉強ができる人の頭の構造がどうなっているのか知りたかった。知ったところで私が勉強出来るわけでもないのだけれど、山口の勉強方法を知ることが出来れば今よりも成績が上がるかもしれないとは漠然と考えていたのだった。
「宮崎も赤点は無かったんだろ?」
「うん、奥谷君も赤点は無かったんだよね?」
「そうなんだよ。今回赤点とってたら学祭の下準備と片付けを手伝わされるらしいから危なかったよ。俺は学祭を楽しみたいなって思ってるからな」
「へえ、今年も演劇部は何かやるの?」
「そうなんだよ。勉強出来る組で脚本とか演出を考えてるみたいなんだけどさ、俺みたいな勉強が苦手な奴らはその集まりにも参加できなかったし、どんな話を作る予定なのかも教えてもらえなかったんだよね。俺ってさ、勉強に対する集中力が全然ないのみんなにバレてるんで本当に誰も教えてくれないんだよな。確かにさ、どんな話か知ったら勉強どころではなくなっちゃうと思うんだけどさ、それでも少しくらい教えてくれてもいいんじゃないかなって思うよな」
「でもさ、奥谷君が勉強に集中出来ないってのはわかるし、私も一緒だから気持ちはわかるよ。勉強よりも奥谷君と連絡とりあってる時の方が楽しかったしね」
「俺も宮崎と連絡とってるときは勉強から解放されたみたいで嬉しかったよ。自分から送るんじゃなくて相手から来るメッセージを無視するのって良くないって言われたし、相手が宮崎って言ったらちゃんと返事を返すようにって言われたからな」
「って事は、奥谷君は白岩君たちと勉強していたんだね」
「あ、ああ。そうだな。ああ見えてあいつらは俺よりも勉強は出来るからな。それよりもさ、アプリのポイントってメッチャ貯まってるんだけど宮崎の方も凄いことになってるのか?」
「うん。梓ちゃんとも話してたんだけど、私と奥谷君のやり取りで貯まるポイントってさ、梓ちゃんたちの何倍も何十倍もすごい勢いで貯まってるらしいよ。やっぱりさ、恋愛をするのが目的のアプリだから恋人になれるようにポイント沢山貰えてるのかもね。って、梓ちゃんも亜梨沙ちゃんも言ってたんだよ。そんな考えって面白いよね」
「そうだな。そんな考え方もあるんだな。でもさ、こんなに貯まったポイントって普通の高校生である俺らに使い切れないと思うんだよな。もしかしたらさ、これからもっともっと貯まるかもしれないわけだし、今のうちに一回全部使い切ってみないか?」
「え、使い切るってどこか遠くに行ってみるって事?」
「いや、それだと交通費で俺が破産しちゃいそうなんだよな。それよりもさ、いまだに山口と西森の事を誤解している生徒がいるみたいなんだよね。このクラスの奴らは皆わかってると思うんだけど、他のクラスの奴らとか下級生とかではそう思ってる人もいるらしいんだよね。で、俺と宮崎が幹事になって学祭の打ち上げを企画しないか?」
「学祭の打ち上げ?」
「そうそう、俺は演劇部の活動でクラスの方にはあんまり顔を出せないと思うんだけどさ、その罪滅ぼしってわけじゃないんだけどさ、二人で貯めたポイントを使って焼肉食べ放題にでも行かないか?」
「そうだね。それもいいかもしれないね。でもさ、ポイントだけだったら全然足りないと思うんだけど、それはどうしたらいいと思う?」
「それはさ、みんなに足りない分だけ負担してもらえばいいじゃないか。それだと普通に行くよりも一人あたりは全然安くなると思うし、もしかしたら、それまでの間にさらにポイントが貯まるかもしれないしな」
「私はそれでもいいけどさ、その前に一度二人で下見に行ってみない?」
「下見か、それもいいかもな。お互いにテスト勉強も頑張ったし、最近はどこにも行かなかったからちょうどいいかもな。じゃあさ、今週だと時間が取れそうにないんだけど、来週の火曜はどうかな。平日なんで申し訳ないけど、その日を外すと学祭の前日までずっと劇の稽古が入っちゃうんだよな」
「来週の火曜か。うん、大丈夫だよ。私は全然いつでも大丈夫だからさ」
「よかった。来週の火曜がダメだったらどうしようかと思ったよ。じゃあさ、俺はいったん早坂先生に打ち上げをやっていいか聞いてくるよ。大丈夫そうだったら皆にも俺から伝えることにするよ」
二人で貯めたポイントなんで正直に言ってしまえば、二人だけで使いたかった。でも、自分の事だけではなくクラスメイトの事を気にかけてるなんて奥谷君は本当にいい人なんだなと思っていた。
それにしても、亜紀ちゃんは参加してくれると思うけれど、山口は誘っても来なさそうな気がするな。何となく、クラスの集まりとかそういう事に興味が無さそうだと前々から思っていたのだから。
ただ、夏が終わり街路樹の色が変わり始めたころになると、奥谷君のように襲われる事件が発生してしまった。襲われたのは名前も聞いたことのない一年生ではあったのだけれど、その話題になるとみんな自然と奥谷君の事を見るようになってしまった。奥谷君を襲った犯人と一年生を襲った犯人が同一人物なのかはわからないけれど、こんな小さな町で似たような事件が起こるようなことがあるのだろうかという疑問は残ったのだった。
私はいまだに奥谷君と恋愛アプリのフレンドメッセージで他愛のないやり取りを続けているのだが、気が付いた時には二人で使い切れないくらいのポイントが貯まっていたのだった。ここ一か月くらいはお互いに忙しかったので休みの日に出かけることが無かったのものあるのだが、私が梓ちゃんに聞いているよりも全然速いペースでポイントが貯まっているという事もあった。何故か恋人同士よりも友人同士の方がポイントが貯まりやすいようなのだけれど、それは私が奥谷君の事を好きだと登録しているからなのかもしれない。
この頃になると、私と奥谷君が付き合ってはいないが頻繁に遊んでいるという噂も流れていたし、それをきっかけに奥谷君を諦めた女子が他の男子を新しく恋愛アプリに登録して恋人になるという事もあったようだ。だが、そんな人達を見ると、周りに流されて奥谷君の事を登録していただけで本当に好きな人は別にいたんではないかと思えるくらい幸せそうな姿を見せてきていた。
今にして思うと、私と奥谷君が休みの日に会っているという噂が流れ始めたくらいから奥谷君が私と休みの日に会ってくれなくなっているようにも思えたのだけれど、それは木っと忙しくなったタイミングとたまたま重なっただけだと思う。奥谷君は私と噂になるのが恥ずかしいのではなく、本当に忙しかったんだ。そうでなければ、私は本気で落ち込んでしまうだろう。
学校祭前に行われた中間テストの結果は良くなかったのだけれど、悪いとも言い切れない微妙な結果に終わってしまった。ただ、赤点が無かったのは良かったし、今回は平均点もそこまで高くなかったので私だけが悪いという事でもなかったのだ。奥谷君も赤点は無かったみたいなのだけれど、今回も成績はそこまで良くなかったみたいだった。山口は、いつも以上に成績が良かったようで、皆が点数を落としている中で点数とちゃんととっている数少ない生徒であったようだし、結果的には学年一位になっていたのだった。
勉強が出来ないよりは出来た方が全然いいとは思うのだけれど、私は山口くらい勉強ができる人の頭の構造がどうなっているのか知りたかった。知ったところで私が勉強出来るわけでもないのだけれど、山口の勉強方法を知ることが出来れば今よりも成績が上がるかもしれないとは漠然と考えていたのだった。
「宮崎も赤点は無かったんだろ?」
「うん、奥谷君も赤点は無かったんだよね?」
「そうなんだよ。今回赤点とってたら学祭の下準備と片付けを手伝わされるらしいから危なかったよ。俺は学祭を楽しみたいなって思ってるからな」
「へえ、今年も演劇部は何かやるの?」
「そうなんだよ。勉強出来る組で脚本とか演出を考えてるみたいなんだけどさ、俺みたいな勉強が苦手な奴らはその集まりにも参加できなかったし、どんな話を作る予定なのかも教えてもらえなかったんだよね。俺ってさ、勉強に対する集中力が全然ないのみんなにバレてるんで本当に誰も教えてくれないんだよな。確かにさ、どんな話か知ったら勉強どころではなくなっちゃうと思うんだけどさ、それでも少しくらい教えてくれてもいいんじゃないかなって思うよな」
「でもさ、奥谷君が勉強に集中出来ないってのはわかるし、私も一緒だから気持ちはわかるよ。勉強よりも奥谷君と連絡とりあってる時の方が楽しかったしね」
「俺も宮崎と連絡とってるときは勉強から解放されたみたいで嬉しかったよ。自分から送るんじゃなくて相手から来るメッセージを無視するのって良くないって言われたし、相手が宮崎って言ったらちゃんと返事を返すようにって言われたからな」
「って事は、奥谷君は白岩君たちと勉強していたんだね」
「あ、ああ。そうだな。ああ見えてあいつらは俺よりも勉強は出来るからな。それよりもさ、アプリのポイントってメッチャ貯まってるんだけど宮崎の方も凄いことになってるのか?」
「うん。梓ちゃんとも話してたんだけど、私と奥谷君のやり取りで貯まるポイントってさ、梓ちゃんたちの何倍も何十倍もすごい勢いで貯まってるらしいよ。やっぱりさ、恋愛をするのが目的のアプリだから恋人になれるようにポイント沢山貰えてるのかもね。って、梓ちゃんも亜梨沙ちゃんも言ってたんだよ。そんな考えって面白いよね」
「そうだな。そんな考え方もあるんだな。でもさ、こんなに貯まったポイントって普通の高校生である俺らに使い切れないと思うんだよな。もしかしたらさ、これからもっともっと貯まるかもしれないわけだし、今のうちに一回全部使い切ってみないか?」
「え、使い切るってどこか遠くに行ってみるって事?」
「いや、それだと交通費で俺が破産しちゃいそうなんだよな。それよりもさ、いまだに山口と西森の事を誤解している生徒がいるみたいなんだよね。このクラスの奴らは皆わかってると思うんだけど、他のクラスの奴らとか下級生とかではそう思ってる人もいるらしいんだよね。で、俺と宮崎が幹事になって学祭の打ち上げを企画しないか?」
「学祭の打ち上げ?」
「そうそう、俺は演劇部の活動でクラスの方にはあんまり顔を出せないと思うんだけどさ、その罪滅ぼしってわけじゃないんだけどさ、二人で貯めたポイントを使って焼肉食べ放題にでも行かないか?」
「そうだね。それもいいかもしれないね。でもさ、ポイントだけだったら全然足りないと思うんだけど、それはどうしたらいいと思う?」
「それはさ、みんなに足りない分だけ負担してもらえばいいじゃないか。それだと普通に行くよりも一人あたりは全然安くなると思うし、もしかしたら、それまでの間にさらにポイントが貯まるかもしれないしな」
「私はそれでもいいけどさ、その前に一度二人で下見に行ってみない?」
「下見か、それもいいかもな。お互いにテスト勉強も頑張ったし、最近はどこにも行かなかったからちょうどいいかもな。じゃあさ、今週だと時間が取れそうにないんだけど、来週の火曜はどうかな。平日なんで申し訳ないけど、その日を外すと学祭の前日までずっと劇の稽古が入っちゃうんだよな」
「来週の火曜か。うん、大丈夫だよ。私は全然いつでも大丈夫だからさ」
「よかった。来週の火曜がダメだったらどうしようかと思ったよ。じゃあさ、俺はいったん早坂先生に打ち上げをやっていいか聞いてくるよ。大丈夫そうだったら皆にも俺から伝えることにするよ」
二人で貯めたポイントなんで正直に言ってしまえば、二人だけで使いたかった。でも、自分の事だけではなくクラスメイトの事を気にかけてるなんて奥谷君は本当にいい人なんだなと思っていた。
それにしても、亜紀ちゃんは参加してくれると思うけれど、山口は誘っても来なさそうな気がするな。何となく、クラスの集まりとかそういう事に興味が無さそうだと前々から思っていたのだから。
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