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義之と明美の物語
俺の飼ってる猫は美少女になりました
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俺が彼女に振られた理由は理不尽に感じつつもなぜか納得出来るものであった。その理由とは、俺よりも擬人化したペットの犬が素敵だからというどうすることも出来ないものだったのだ。
俺も彼が人になる前に何度も会っているが、頭も良くて人懐っこくて見た目もシュッとしているとてもいい犬だと思う。彼が人間だったとして、俺が勝っている部分なんてあるのだろうかと思う事もあったのだが、実際に人間になって会ってみると、確かに俺が振られるのも仕方ないのかなと思ってしまうくらいにはいいやつだった。
彼女に対する真っすぐな思いでは負けないと思っていた俺ではあったが、彼が彼女に向けた愛情は俺よりも強いものであったし、彼女もまた俺よりも彼の方を溺愛しているのが傍から見ても丸わかりであった。少しくらい自重して欲しいと思ってはいたものの、自分が今まで愛情を注いで育てていたペットが人間になって意思の疎通も図れるようになったんだったら仕方ないかとも思っていた。
「お前も人間になったら凄い美人になったりしてな。そうしたら俺もあの子みたいにお前と付き合ったりするのかな」
俺の横で無防備な姿をさらしているペットの猫を撫でながら俺は呟いていた。いつかこの子も人間になるのかなと期待しつつも、その兆候は一切見られることは無かった。愛情はそれなりに注いできたと思うし、嫌がられるようなこともしては来なかったと思う。その証拠に、こいつは今も俺の隣で何の警戒心を抱くことも無く無防備な姿をさらしているのだ。
「明日は休みだからゆっくり寝ちゃおうかな。何か美味しいものでも食べに行っちゃおうかな。隣町に出来た猫も一緒に行ける店に行ってみるのもいいかもしれないな」
いつもよりも遅く起きた朝、休みの日なので少しくらいはゆっくりしててもいいかと思っていた。俺はまだ完全起きてはいないのだが可愛い猫ちゃんの為に餌を用意してあげようと台所へ向かった。
「餌と水をあげたらもう少し寝ようかな」
「僕のごはんなら気にしなくていいよ。勝手に食べてたから」
「そうか。それならいいんだけど、あんまり食べ過ぎるなよ」
「うん、いつもくらいの量で我慢するね」
俺の飼っている猫ちゃんは今までもこうして自分で餌を出して食べていたことはあった。餌箱を開けて食べている姿は何度か見たことがあるのだが、俺が普段与えている量以上を食べることは無かったのだ。好きなだけ食べてもいいとは思うのだけれど、こいつなりの優しさなのだろうな。
「ん、今俺は誰と喋ってたんだ?」
慌てて振り返ると、そこには俺の見知らぬ女の子が椅子に座ってカリカリを食べているのだ。餌皿に入れたカリカリを一つずつ不器用に手で摘まんでは顔を近付けて美味しそうに食べている。
いや、これは誰かが俺を貶めようとして仕組んだ罠かもしれない。最近は手の込んだイタズラをする者もいると聞くし、ちーちゃんが人間になったとすぐに決めつけるのは良くない。
俺は玄関の鍵も窓もすべてチェックしたのだが、誰かが外から侵入した形跡は一切なかった。念のため確認した防犯カメラにも不審な動きは確認出来なかったのである。
「なあ、君はちーちゃんなのか?」
「そうだよ。僕はちーちゃんだよ。お兄ちゃんは僕の事忘れちゃったの?」
「忘れてはいないけどさ、猫じゃなくて人間になってるから一瞬わからなかったんだよ」
「そう言えば、僕もお兄ちゃんみたいになれたんだね。ちょっと動きづらくなってるけどさ、お兄ちゃんとこうしてお話しできるようになって嬉しいよ」
俺の飼っている猫のちーちゃんは雑種で茶色い短い毛が綺麗な子だったのだが、人間になってもその特徴は失われていなかった。短めの髪にうっすらと見える猫耳と猫っぽい表情。じっくり見てみると、ちーちゃんの面影が残っているように見える。
「猫の時も思ってたけど、人間になってもちーちゃんは可愛いままだな」
「そうかな。お兄ちゃんが喜んでくれるなら嬉しいな。たまに来てたお姉さんよりも僕の方が可愛いかな?」
たまに来ていたお姉さんは元彼女の事だろう。可愛いちーちゃんと綺麗系の元彼女ではジャンルが違うと思うのだが、こうして見てみるとちーちゃんの方が俺の好みなのかもしれない。
「うん、ちーちゃんの方が可愛いよ」
カリカリを食べる手を止めて俺の顔をじーっと見ているちーちゃんは嬉しそうな表情を浮かべていた。
「そうか。僕の方が可愛いのか。お兄ちゃんはいつもそう言ってくれてたし、僕のお兄ちゃんの事が好きだよ」
「俺もちーちゃんの事が好きだからね。それってさ、美味しいの?」
俺は前から疑問に思っていたのだが、買い置きしてあるカリカリはちーちゃんの好みに合っているのだろうか。何種類か買って好みを調べたこともあったのだが、人間と一緒でちーちゃんも小さい時と比べて味覚は変化しているかもしれない。どんなものが好きなのか気になっていたのだ。
「美味しいよ。でも、今までと違ってちょっと食べずらいかも。体を思ったよりも曲げれないし、お兄ちゃんみたいに手も上手に使えないからね。食べるのに時間がかかっちゃうかも」
「人間と猫では体の造りも違うもんな。ちーちゃんが食べやすいように何か考えないといけないかもな。水は飲まないの?」
「水は飲みたいけど、どうやったら飲めるの?」
俺はいつもの水飲み皿に水を入れるべきか、普通にコップに水を入れて差し出すべきか悩んでいた。いつもの皿を使った方が良いのかもしれないが、今の姿のちーちゃんには飲みずらいかもしれない。そうなると、コップに入れて渡した方が良いのかもしれないけれど、カリカリを上手にモテないところを見るとコップも器用に持つことは出来ないだろう。
とりあえず、俺はコップに水を汲んでストローを刺してちーちゃんの前に置いてみた。
ちーちゃんは目の前にある水を飲もうとしていたのだが、ストローが邪魔をしてコップの水まで舌が届いていないようだ。やっぱり、ちーちゃんはストローの使い方を知らないんだと思ったので、俺はストローとコップを持って飲み方を教えてあげた。
よほど喉が渇いていたのかちーちゃんはコップの水を一気に飲み干していた。
「これだと僕も飲みやすいかも。この体だと今までと出来ること違うけど、お兄ちゃんが優しくしてくれるの嬉しいかも」
「いつも優しくしてるじゃない」
「そうなんだけどさ、こうしてお話出来るの嬉しいって思ってるの。優しいお兄ちゃんにお願いがあるんだけどさ、聞いてもらえるかな?」
「お願いって何かな?」
「僕のご飯なんだけどさ、食べさせて欲しいな」
「それくらいだったらいいよ。どうせならさ、スプーンの使い方も覚えようか」
俺はカレー用のスプーンを持ってきた。これであれば一度に多くのカリカリを食べることが出来るだろう。今みたいに一つ一つ食べるのは時間もかかって大変そうだし、これの使い方を覚えればもっと効率的に食べることも出来るはずだ。
「それの使い方は今度教えてね。今はそれじゃなくて、お兄ちゃんがたまにしてくれるみたいに手に乗せて食べさせて欲しいな。ねえ、ダメかな?」
ちーちゃんは元彼女がきている時に限って僕の手から餌を食べたがっていた。俺はそんな事を思い出しながらも、元彼女の言った「愛されてるんだね」という言葉が脳裏をよぎっていた。
俺は急かしてくるちーちゃんに促されるままに手のひらにカリカリを置いてちーちゃんの顔に近づけていった。
いつもとは違う角度でちーちゃんが俺の手からカリカリを食べているのだが、時々手のひらに当たる舌の感触はいつもとは違っていた。
最後の一つを食べ終えたちーちゃんは俺の手をペロペロと舐めていた。いつもと同じようにくすぐったいのだが、俺の手を舐めているのが猫のちーちゃんではなく美少女のちーちゃんだと思うと、なんだか変な気持ちになりそうだった。
俺はその感情をぐっと抑えて、ちーちゃんの事を抱きしめると、ちーちゃんもそれに応えてくれたのだ。
「僕はお兄ちゃんの所に来れてよかったよ。ありがとうね」
俺も彼が人になる前に何度も会っているが、頭も良くて人懐っこくて見た目もシュッとしているとてもいい犬だと思う。彼が人間だったとして、俺が勝っている部分なんてあるのだろうかと思う事もあったのだが、実際に人間になって会ってみると、確かに俺が振られるのも仕方ないのかなと思ってしまうくらいにはいいやつだった。
彼女に対する真っすぐな思いでは負けないと思っていた俺ではあったが、彼が彼女に向けた愛情は俺よりも強いものであったし、彼女もまた俺よりも彼の方を溺愛しているのが傍から見ても丸わかりであった。少しくらい自重して欲しいと思ってはいたものの、自分が今まで愛情を注いで育てていたペットが人間になって意思の疎通も図れるようになったんだったら仕方ないかとも思っていた。
「お前も人間になったら凄い美人になったりしてな。そうしたら俺もあの子みたいにお前と付き合ったりするのかな」
俺の横で無防備な姿をさらしているペットの猫を撫でながら俺は呟いていた。いつかこの子も人間になるのかなと期待しつつも、その兆候は一切見られることは無かった。愛情はそれなりに注いできたと思うし、嫌がられるようなこともしては来なかったと思う。その証拠に、こいつは今も俺の隣で何の警戒心を抱くことも無く無防備な姿をさらしているのだ。
「明日は休みだからゆっくり寝ちゃおうかな。何か美味しいものでも食べに行っちゃおうかな。隣町に出来た猫も一緒に行ける店に行ってみるのもいいかもしれないな」
いつもよりも遅く起きた朝、休みの日なので少しくらいはゆっくりしててもいいかと思っていた。俺はまだ完全起きてはいないのだが可愛い猫ちゃんの為に餌を用意してあげようと台所へ向かった。
「餌と水をあげたらもう少し寝ようかな」
「僕のごはんなら気にしなくていいよ。勝手に食べてたから」
「そうか。それならいいんだけど、あんまり食べ過ぎるなよ」
「うん、いつもくらいの量で我慢するね」
俺の飼っている猫ちゃんは今までもこうして自分で餌を出して食べていたことはあった。餌箱を開けて食べている姿は何度か見たことがあるのだが、俺が普段与えている量以上を食べることは無かったのだ。好きなだけ食べてもいいとは思うのだけれど、こいつなりの優しさなのだろうな。
「ん、今俺は誰と喋ってたんだ?」
慌てて振り返ると、そこには俺の見知らぬ女の子が椅子に座ってカリカリを食べているのだ。餌皿に入れたカリカリを一つずつ不器用に手で摘まんでは顔を近付けて美味しそうに食べている。
いや、これは誰かが俺を貶めようとして仕組んだ罠かもしれない。最近は手の込んだイタズラをする者もいると聞くし、ちーちゃんが人間になったとすぐに決めつけるのは良くない。
俺は玄関の鍵も窓もすべてチェックしたのだが、誰かが外から侵入した形跡は一切なかった。念のため確認した防犯カメラにも不審な動きは確認出来なかったのである。
「なあ、君はちーちゃんなのか?」
「そうだよ。僕はちーちゃんだよ。お兄ちゃんは僕の事忘れちゃったの?」
「忘れてはいないけどさ、猫じゃなくて人間になってるから一瞬わからなかったんだよ」
「そう言えば、僕もお兄ちゃんみたいになれたんだね。ちょっと動きづらくなってるけどさ、お兄ちゃんとこうしてお話しできるようになって嬉しいよ」
俺の飼っている猫のちーちゃんは雑種で茶色い短い毛が綺麗な子だったのだが、人間になってもその特徴は失われていなかった。短めの髪にうっすらと見える猫耳と猫っぽい表情。じっくり見てみると、ちーちゃんの面影が残っているように見える。
「猫の時も思ってたけど、人間になってもちーちゃんは可愛いままだな」
「そうかな。お兄ちゃんが喜んでくれるなら嬉しいな。たまに来てたお姉さんよりも僕の方が可愛いかな?」
たまに来ていたお姉さんは元彼女の事だろう。可愛いちーちゃんと綺麗系の元彼女ではジャンルが違うと思うのだが、こうして見てみるとちーちゃんの方が俺の好みなのかもしれない。
「うん、ちーちゃんの方が可愛いよ」
カリカリを食べる手を止めて俺の顔をじーっと見ているちーちゃんは嬉しそうな表情を浮かべていた。
「そうか。僕の方が可愛いのか。お兄ちゃんはいつもそう言ってくれてたし、僕のお兄ちゃんの事が好きだよ」
「俺もちーちゃんの事が好きだからね。それってさ、美味しいの?」
俺は前から疑問に思っていたのだが、買い置きしてあるカリカリはちーちゃんの好みに合っているのだろうか。何種類か買って好みを調べたこともあったのだが、人間と一緒でちーちゃんも小さい時と比べて味覚は変化しているかもしれない。どんなものが好きなのか気になっていたのだ。
「美味しいよ。でも、今までと違ってちょっと食べずらいかも。体を思ったよりも曲げれないし、お兄ちゃんみたいに手も上手に使えないからね。食べるのに時間がかかっちゃうかも」
「人間と猫では体の造りも違うもんな。ちーちゃんが食べやすいように何か考えないといけないかもな。水は飲まないの?」
「水は飲みたいけど、どうやったら飲めるの?」
俺はいつもの水飲み皿に水を入れるべきか、普通にコップに水を入れて差し出すべきか悩んでいた。いつもの皿を使った方が良いのかもしれないが、今の姿のちーちゃんには飲みずらいかもしれない。そうなると、コップに入れて渡した方が良いのかもしれないけれど、カリカリを上手にモテないところを見るとコップも器用に持つことは出来ないだろう。
とりあえず、俺はコップに水を汲んでストローを刺してちーちゃんの前に置いてみた。
ちーちゃんは目の前にある水を飲もうとしていたのだが、ストローが邪魔をしてコップの水まで舌が届いていないようだ。やっぱり、ちーちゃんはストローの使い方を知らないんだと思ったので、俺はストローとコップを持って飲み方を教えてあげた。
よほど喉が渇いていたのかちーちゃんはコップの水を一気に飲み干していた。
「これだと僕も飲みやすいかも。この体だと今までと出来ること違うけど、お兄ちゃんが優しくしてくれるの嬉しいかも」
「いつも優しくしてるじゃない」
「そうなんだけどさ、こうしてお話出来るの嬉しいって思ってるの。優しいお兄ちゃんにお願いがあるんだけどさ、聞いてもらえるかな?」
「お願いって何かな?」
「僕のご飯なんだけどさ、食べさせて欲しいな」
「それくらいだったらいいよ。どうせならさ、スプーンの使い方も覚えようか」
俺はカレー用のスプーンを持ってきた。これであれば一度に多くのカリカリを食べることが出来るだろう。今みたいに一つ一つ食べるのは時間もかかって大変そうだし、これの使い方を覚えればもっと効率的に食べることも出来るはずだ。
「それの使い方は今度教えてね。今はそれじゃなくて、お兄ちゃんがたまにしてくれるみたいに手に乗せて食べさせて欲しいな。ねえ、ダメかな?」
ちーちゃんは元彼女がきている時に限って僕の手から餌を食べたがっていた。俺はそんな事を思い出しながらも、元彼女の言った「愛されてるんだね」という言葉が脳裏をよぎっていた。
俺は急かしてくるちーちゃんに促されるままに手のひらにカリカリを置いてちーちゃんの顔に近づけていった。
いつもとは違う角度でちーちゃんが俺の手からカリカリを食べているのだが、時々手のひらに当たる舌の感触はいつもとは違っていた。
最後の一つを食べ終えたちーちゃんは俺の手をペロペロと舐めていた。いつもと同じようにくすぐったいのだが、俺の手を舐めているのが猫のちーちゃんではなく美少女のちーちゃんだと思うと、なんだか変な気持ちになりそうだった。
俺はその感情をぐっと抑えて、ちーちゃんの事を抱きしめると、ちーちゃんもそれに応えてくれたのだ。
「僕はお兄ちゃんの所に来れてよかったよ。ありがとうね」
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