(超)自然科学部にようこそ!

稲葉海三

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12.結成!? (超)自然科学部

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「お、朝丘くん。目をさましたみたいだね。大丈夫かい?」
「もう大丈夫です。絶好調ですよ。それより誘拐犯はどうでした?」
「うん。全員気絶させて、ロープでしばってきたから。もう安心だよ」

 なにげなくいう長谷川先生に、オレは「すげー!」と感心するばかりである。 

「すまなかったね、ボクが油断していたせいで……。朝丘くんのおかげで、助かったよ」

 長谷川先生は頭をポリポリとかきながら、申し訳なさそうにいった。

「運がよかったですよね。サイキックストーンが受け止めてくれなかったら、やばかったですし」 
「そうだね。それに弾丸をサイコキネシスで弱めていなかったら、朝丘くんは大ケガしていただろう……。本当にヒヤヒヤしたよ」
「オレ、そんなことしてました? たしかにサイコキネシスを使った記憶は、うっすらとありますが」
「おそらく、無意識だったんだろうね。ま、とりあえずはみんな無事でよかった。もう、夜もおそいし、帰ろうじゃないか。水瀬さんを早くご両親に会わせてあげないと」
「あ、そうですね」

 水瀬は、「ありがとうございます」と頭を下げた。
 
 行きはテレポーテーションで一瞬できたけど、帰りは歩きとなる。
 長谷川先生の車まで、オレたちは早歩きで十分以上かかった。
 不便であるが、これがあたりまえのことである。
 ここ最近、超能力に頼りすぎていたことを、思い知らされた気がした。

 長谷川先生の青い車に乗りこむと、すぐに車を発進させる。
 ここまで来れば、もう安心である。
 オレたちはようやく、ホッと一息をつく。
 長谷川先生は車を走らせながら、オレたちに話しかけてきた。

「朝丘くん、水瀬さん。ちょっといいかな?」
「なんですか?」
「なんでしょうか?」
「うん。朝丘くんが超能力実験に協力してくれたときから、考えていたことなんだけど、新しい部活を作ろうと思うんだ。もしよかったら、まずは朝丘くんと水瀬さん、佐倉さんに部員になってほしいと思ってね」
「部活? なんのですか?」

 オレたち三人が部員で、顧問が長谷川先生……。
 どんな部活かわからないが、これだけで興味がわいてきた。

「部活の名前は『自然科学部』。生物や化学や物理、天文など広い分野について、楽しく学ぶことを目的にしていきたいと思う。課外活動として、年に数回は、色んな場所の自然を体験しに、合宿なんかも考えている」

 長谷川先生に教えられながら、みんなで勉強したり、出かけたり……。

(それって、めっちゃ面白そうだな!)

 活動内容を聞いているだけで、ワクワクしてきた。

「さらに、超能力の研究もするので、本当は『超自然科学部』としたかったんだけど……、教頭に怒られそうなので、あきらめたよ」

 たしかに、教頭先生は超がつくほどマジメな人なので、こういうのは許可しないだろう。
 長谷川先生の残念そうな横顔に、オレは思わず笑ってしまう。

「わたし、入ります! みんなで部活動をしたいです!」

 水瀬が真っ先に賛成して手をあげ、オレの方を見てきた。
 積極的な水瀬に驚いたが、オレの返事も決まっていた。

「オレも入ります!」
「よし、決まりだね。佐倉さんはどうだろうか?」
「ああ、あいつは、絶対に入りますよ」
「そうか、よかった! 正式に決まったら、入部届を配るよ」

 新しい部活の話し合いをしていると、オレの家の近くについた。

「さ、ついたよ」
「ありがとうございます」

 オレは水瀬の方を向く。

「それじゃ、またな。
「うん、また明日。タクヤくん」

 オレのあいさつに、カオリはうれしそうに手をふった。
 いつのまにか、カオリに名前で呼ばれていたので、オレも名前で呼んでみたのだ。 
 タマキ以外の女子を名前で呼ぶのははじめてで、ちょっとだけ緊張した。

 明日からは、みんなで楽しい学校生活がはじまる。

(部活も遊びにいく予定も楽しみだぜ!)

 最高の気分で家にこっそりと入ろうとして、手がとまった。

(やっべええええええっ!)

 オレは、すっかり忘れていたことに気づいた。
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