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9.事件発生!?
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「……塩素、アルゴン、カリウム、えーと……アルミニウム」
「ちげーよ。カルシウムだ」
「あ、そっか」
なにをしているのかというと、壁にはってあった元素の周期表を覚えて、お互いに暗記テストをしていたのだ。
バタンッ。
オレたちがそんなまじめなひまつぶしをしていると、理科室のドアが開き、長谷川先生がフラフラとした足どりで入ってきた。
顔色が青白く、見るからに元気がなさそうだ。
「先生、顔色が悪いよ。風邪なの? 大丈夫?」
タマキが長谷川先生の様子に驚き、心配そうな声で聞く。
「……おや。キミたち……来ていたのかい」
「コマは無事に見つかりました。昨日はありがとうございました」
「先生のおかげ! ホントにありがとー」
「あ、うん……そいつは、よかった」
オレたちがお礼をいうが、長谷川先生はどこかボンヤリとした表情を浮かべている。
(どうしたんだろ?)
タマキの言うように、長谷川先生も風邪を引いたのかもしれない。
用事をすませてすぐに帰るか。
「先生、水瀬の家の場所って、わかります?」
「……水瀬さん……か……」
「カオリちゃん、今日は風邪で休んでるみたいだから、お見舞いにいきたいの。教えてもらえないかな?」
「……………………」
オレたちの頼みを聞いて、あごに手をあてて、長谷川先生は考えこむ。
普段は見たこともない真剣な表情に、オレはごくりとつばを飲みこんだ。
やがて、長谷川先生は顔を上げると、「少し待って」と言った。
そして、入り口のドアまで早足で歩いていき、カギをかける。
まだ外は明るいのに、黒くて分厚い遮光カーテンを閉めて、部屋の電気をつけた。
(なんだ? 先生はどうしちまったんだ?)
長谷川先生のわけのわからない行動に、オレたちはポカーンと見ているしかなかった。
ひととおり準備が終わると、長谷川先生は言った。
「朝丘くん、佐倉さん。これから話すことは大切なことだから、しずかに聞いてほしい。あと、絶対にヒミツにね」
「は、はい」
「わかりました」
長谷川先生の言葉に、オレたちはコクコクとうなずく。
(すっげー、イヤな予感がする)
オレは、背中にじっとりと汗がにじむのを感じる。
そしてその予感は、完全に的中してしまった。
「どうやら水瀬さんは、昨日の夜、帰宅とちゅうに誘拐されてしまったようだ」
「えぇえええええええっ!!!」
「ゆゆゆゆゆ、誘拐って!!!」
「シー、キミたち、しずかに」
誘拐と聞いて騒ぎだしたオレたちに、長谷川先生は口に指を立てて、あわてて注意する。
「すいません」
「でも、先生。誘拐ってどういうこと?」
今度は小さな声で、タマキが聞く。
「昨日、水瀬さんは友だちと別れたあと、『これから帰ります』とスマホで親に連絡したらしい。だけど、そこから家に帰るまでの道で、誘拐されてしまったんだ」
「そんな……、あたしと別れたあとじゃん……」
タマキがガックリとうなだれる。
「でも、水瀬ならテレパシーで家の人に助けをもとめれば…………あっ!」
オレはポケットにあるペンダントに手をふれ、がくぜんとする。
サイキックストーンのない水瀬は、テレパシーで助けを呼べるわけがない。
(なんてことだ! チクショー!)
オレはつめが食いこむぐらい、コブシをきつくにぎりしめた。
「先生、犯人から身代金の要求ってあったの?」
「うん。明日、受けわたすことになっているらしい」
「お金を払えば、カオリちゃんは無事に解放される?」
「……わからない。水瀬さんが犯人の顔を見ていたら、あぶないかもしれない。警察は全力をつくすと言ってるらしいけど……。手がかりがまったくないから、直接助けにいくのは不可能だ。お金の受けわたしのときに、犯人を捕まえようとするらしい」
「そんな……」
水瀬の命があぶないと知って、タマキの顔が真っ青になった。
オレは考える。
(このまま、警察にまかせていいのか?)
犯人を捕まえても、水瀬が殺されてしまったら、なんの意味もない。
昨日一日、いっしょに遊んで仲よくなった。
コマをさがすのを手伝ってくれた。
オレにペンダントを貸してくれたせいで、誘拐されても助けを呼べなかった。
水瀬を助けたい理由、助けなくてはいけない理由が、次々とオレの頭に浮かぶ。
(絶対に、水瀬を助けるんだ! 今のオレなら、なにかできるはずだ!)
オレはポケットの中のペンダントを強くにぎりしめて、決心した。
「ちげーよ。カルシウムだ」
「あ、そっか」
なにをしているのかというと、壁にはってあった元素の周期表を覚えて、お互いに暗記テストをしていたのだ。
バタンッ。
オレたちがそんなまじめなひまつぶしをしていると、理科室のドアが開き、長谷川先生がフラフラとした足どりで入ってきた。
顔色が青白く、見るからに元気がなさそうだ。
「先生、顔色が悪いよ。風邪なの? 大丈夫?」
タマキが長谷川先生の様子に驚き、心配そうな声で聞く。
「……おや。キミたち……来ていたのかい」
「コマは無事に見つかりました。昨日はありがとうございました」
「先生のおかげ! ホントにありがとー」
「あ、うん……そいつは、よかった」
オレたちがお礼をいうが、長谷川先生はどこかボンヤリとした表情を浮かべている。
(どうしたんだろ?)
タマキの言うように、長谷川先生も風邪を引いたのかもしれない。
用事をすませてすぐに帰るか。
「先生、水瀬の家の場所って、わかります?」
「……水瀬さん……か……」
「カオリちゃん、今日は風邪で休んでるみたいだから、お見舞いにいきたいの。教えてもらえないかな?」
「……………………」
オレたちの頼みを聞いて、あごに手をあてて、長谷川先生は考えこむ。
普段は見たこともない真剣な表情に、オレはごくりとつばを飲みこんだ。
やがて、長谷川先生は顔を上げると、「少し待って」と言った。
そして、入り口のドアまで早足で歩いていき、カギをかける。
まだ外は明るいのに、黒くて分厚い遮光カーテンを閉めて、部屋の電気をつけた。
(なんだ? 先生はどうしちまったんだ?)
長谷川先生のわけのわからない行動に、オレたちはポカーンと見ているしかなかった。
ひととおり準備が終わると、長谷川先生は言った。
「朝丘くん、佐倉さん。これから話すことは大切なことだから、しずかに聞いてほしい。あと、絶対にヒミツにね」
「は、はい」
「わかりました」
長谷川先生の言葉に、オレたちはコクコクとうなずく。
(すっげー、イヤな予感がする)
オレは、背中にじっとりと汗がにじむのを感じる。
そしてその予感は、完全に的中してしまった。
「どうやら水瀬さんは、昨日の夜、帰宅とちゅうに誘拐されてしまったようだ」
「えぇえええええええっ!!!」
「ゆゆゆゆゆ、誘拐って!!!」
「シー、キミたち、しずかに」
誘拐と聞いて騒ぎだしたオレたちに、長谷川先生は口に指を立てて、あわてて注意する。
「すいません」
「でも、先生。誘拐ってどういうこと?」
今度は小さな声で、タマキが聞く。
「昨日、水瀬さんは友だちと別れたあと、『これから帰ります』とスマホで親に連絡したらしい。だけど、そこから家に帰るまでの道で、誘拐されてしまったんだ」
「そんな……、あたしと別れたあとじゃん……」
タマキがガックリとうなだれる。
「でも、水瀬ならテレパシーで家の人に助けをもとめれば…………あっ!」
オレはポケットにあるペンダントに手をふれ、がくぜんとする。
サイキックストーンのない水瀬は、テレパシーで助けを呼べるわけがない。
(なんてことだ! チクショー!)
オレはつめが食いこむぐらい、コブシをきつくにぎりしめた。
「先生、犯人から身代金の要求ってあったの?」
「うん。明日、受けわたすことになっているらしい」
「お金を払えば、カオリちゃんは無事に解放される?」
「……わからない。水瀬さんが犯人の顔を見ていたら、あぶないかもしれない。警察は全力をつくすと言ってるらしいけど……。手がかりがまったくないから、直接助けにいくのは不可能だ。お金の受けわたしのときに、犯人を捕まえようとするらしい」
「そんな……」
水瀬の命があぶないと知って、タマキの顔が真っ青になった。
オレは考える。
(このまま、警察にまかせていいのか?)
犯人を捕まえても、水瀬が殺されてしまったら、なんの意味もない。
昨日一日、いっしょに遊んで仲よくなった。
コマをさがすのを手伝ってくれた。
オレにペンダントを貸してくれたせいで、誘拐されても助けを呼べなかった。
水瀬を助けたい理由、助けなくてはいけない理由が、次々とオレの頭に浮かぶ。
(絶対に、水瀬を助けるんだ! 今のオレなら、なにかできるはずだ!)
オレはポケットの中のペンダントを強くにぎりしめて、決心した。
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