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12.結成!? (超)自然科学部
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「タクヤくん、タクヤくん!」
声が聞こえる。
「タクヤくん。お願い、起きて……」
女の子の泣きそうな声だ。
「う……ああっ……」
オレは返事をしようとしたら、寝起きみたいな声が出た。
目をゆっくりと開けると、水瀬が泣きそうな顔で、見おろしていた。
ビックリするくらい、顔が近い。
手をにぎられていた。
「うぉっ!」
オレはあわてて起き上がる。
どうやら、ベンチで横になっていたようだ。
「タクヤくん……よかった」
だんだんと頭がはっきりしてきて、状況を思い出す。
水瀬にあわててたずねた。
「長谷川先生は、大丈夫だったか?」
「う、うん。タクヤくんが拳銃の弾を受け止めてくれたおかげで、ケガしなかったよ。今は倉庫の方にいってる。残っている誘拐犯はあと二人しかいないから、ついでに捕まえておくみたい。不意打ちを食らわなければ、拳銃なんて怖くないって」
(……すげーな、あの先生は)
「タクヤくんは、衝撃で気を失っていただけらしいけど、どこかイタいとこない?」
水瀬が心配そうな顔でたずねてきた。
オレは自分の体を、ペタペタとさわってみるが、異常はなさそうだ。
「いや、特にイタいところは…………あっ!」
胸から下がったペンダントのサイキックストーンは、砕けて半分以下の大きさになってしまっている。
「ごめんな。これ、大切なものだろ?」
「いいよ。タクヤくんたちが無事だったし」
水瀬はニッコリと笑うと、オレのとなりに座った。
「これで二度目だね。タクヤくんに命を助けてもらうの。本当にありがとう」
水瀬が深々と頭を下げた。
「そっか……オレは、おまえの命の恩人ってことになるのか?」
「もちろん」
「じゃあ、一つお願いを聞いてもらえるか?」
「うん。なんでも言ってよ。わたしの身代金は十億円の予定だったみたいだから、そのくらいなら大丈夫だよ」
「いらねーよ」
冗談だと思うが、欲しいと言えばホントにもらえそうなのがこわいところだ。
マンガやゲームどころか、店ごと買えてしまいそうなお金をもらっても困る。
「それじゃ、七月のテストが終わったあたりに、予定を空けとけよ。出かけるからな」
水瀬は、とまどったような顔をする。
「そんなことでいいの?」
「ああ、絶対だぞ」
「うん、わかった」
「よっしゃ!」
水瀬を助けて、遊ぶ約束もできた。
これですべての目的を果たしたことになる。
オレはベンチから立ち上がって、大きくのびをした。
潮風の匂いがする空気を一杯に吸い込む。
心地よい達成感で、胸の中が満たされた。
「長谷川先生はまだかな……お、きたきた」
長谷川先生が道の向こうから、小走りで駆けてくるのが見えた。
ポツポツとある照明に、白衣が反射するので、この距離でも一発でわかった。
「白衣を着てくる必要はないよな」
オレが長谷川先生の姿に苦笑していると、水瀬もベンチから立ち上がった。
「あれはきっと、自分が目立って、タクヤくんが狙われないようにするためじゃないかな」
「あ、そうだったのか。なるほど……」
白衣姿は完全に趣味だと思っていたので、オレは心の中で「ごめんなさい」とあやまった。
声が聞こえる。
「タクヤくん。お願い、起きて……」
女の子の泣きそうな声だ。
「う……ああっ……」
オレは返事をしようとしたら、寝起きみたいな声が出た。
目をゆっくりと開けると、水瀬が泣きそうな顔で、見おろしていた。
ビックリするくらい、顔が近い。
手をにぎられていた。
「うぉっ!」
オレはあわてて起き上がる。
どうやら、ベンチで横になっていたようだ。
「タクヤくん……よかった」
だんだんと頭がはっきりしてきて、状況を思い出す。
水瀬にあわててたずねた。
「長谷川先生は、大丈夫だったか?」
「う、うん。タクヤくんが拳銃の弾を受け止めてくれたおかげで、ケガしなかったよ。今は倉庫の方にいってる。残っている誘拐犯はあと二人しかいないから、ついでに捕まえておくみたい。不意打ちを食らわなければ、拳銃なんて怖くないって」
(……すげーな、あの先生は)
「タクヤくんは、衝撃で気を失っていただけらしいけど、どこかイタいとこない?」
水瀬が心配そうな顔でたずねてきた。
オレは自分の体を、ペタペタとさわってみるが、異常はなさそうだ。
「いや、特にイタいところは…………あっ!」
胸から下がったペンダントのサイキックストーンは、砕けて半分以下の大きさになってしまっている。
「ごめんな。これ、大切なものだろ?」
「いいよ。タクヤくんたちが無事だったし」
水瀬はニッコリと笑うと、オレのとなりに座った。
「これで二度目だね。タクヤくんに命を助けてもらうの。本当にありがとう」
水瀬が深々と頭を下げた。
「そっか……オレは、おまえの命の恩人ってことになるのか?」
「もちろん」
「じゃあ、一つお願いを聞いてもらえるか?」
「うん。なんでも言ってよ。わたしの身代金は十億円の予定だったみたいだから、そのくらいなら大丈夫だよ」
「いらねーよ」
冗談だと思うが、欲しいと言えばホントにもらえそうなのがこわいところだ。
マンガやゲームどころか、店ごと買えてしまいそうなお金をもらっても困る。
「それじゃ、七月のテストが終わったあたりに、予定を空けとけよ。出かけるからな」
水瀬は、とまどったような顔をする。
「そんなことでいいの?」
「ああ、絶対だぞ」
「うん、わかった」
「よっしゃ!」
水瀬を助けて、遊ぶ約束もできた。
これですべての目的を果たしたことになる。
オレはベンチから立ち上がって、大きくのびをした。
潮風の匂いがする空気を一杯に吸い込む。
心地よい達成感で、胸の中が満たされた。
「長谷川先生はまだかな……お、きたきた」
長谷川先生が道の向こうから、小走りで駆けてくるのが見えた。
ポツポツとある照明に、白衣が反射するので、この距離でも一発でわかった。
「白衣を着てくる必要はないよな」
オレが長谷川先生の姿に苦笑していると、水瀬もベンチから立ち上がった。
「あれはきっと、自分が目立って、タクヤくんが狙われないようにするためじゃないかな」
「あ、そうだったのか。なるほど……」
白衣姿は完全に趣味だと思っていたので、オレは心の中で「ごめんなさい」とあやまった。
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