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稲葉海三

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5.はじめてのデート

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 あっというまに、約束の日曜日になった。

(いい天気だな)

 玄関のドアを開けて空を見上げると、雲ひとつない青空が広がっていた。
 これだけ天気がいいと、絶好のデート日和であろう。

(デート……はじめてのデートかぁ……)

 これからデート……って考えるだけで、オレは顔が熱くなるのを感じる。
 クラスのモテる男子から、彼女とデートした話を聞いたことがあったが、オレにとっては別の世界の話であった。
 今でも、信じられない気分である。

(あれっ……?) 

 ボーッと空を眺めていると、足もとになにか白いものが見えた気がする。
 けど、すぐに気のせいか、と思ってドアを閉めた。

 なんだか頭の中がフワフワした気分で、待ち合わせの場所に向かって歩く。
 とちゅう、若宮市民公園の広場をとおると、日曜なせいか、たくさんのカップルが手をつないだり、腕を組んだりしながら歩いている。
 水瀬とそんなことをするのかと想像してしまい、あわてて首をふった。

(いやいや、オレたちはカップルじゃないから! お礼なだけだから! いっしょに遊びにいくだけだから!)

 広場を早足で通り抜けると、ドーム状の建物が見えてきた。
 今日の待ち合わせ場所は、この建物――若宮市立天文台の入り口付近である。

 腕時計を確認してみると、待ち合わせの十五分まえ。
 おくれるとまずいので、早めに家を出てきたせいか、少し早すぎたようだ。
 水瀬が来るのを待っていようとしたら、

「朝丘くん、おはよう」

 と、うしろから声をかけられた。
 ふりむくと、水瀬が立っていた。

「お、おはよう。早いな、もう来ていたのか?」

 水瀬の方が早かったことに軽く驚きながらも、とりあえずあいさつをした。

「とても楽しみにしていたから、早くきちゃった。今日はよろしくね」

 水瀬はほほえみかけてくる。

(うわ、やっぱ、かわいいよな)

 白いカーディガンとライトブルーのロングスカートがよく似合っている。
 笑顔といっしょに、キラキラした粉がまっているようだ。
 とても自分と二人っきりでいていいような子には思えない。
 心臓の鼓動が早くなってきた気がする。

「……よ、よし、さっそく中に入るか!」
「うん」

 内心ではかなりドギマギしていたが、できるだけフツーなふりをした。
 タマキと遊んでいるようなものだ、とがんばってそう思いこもうとする。


 白いドーム状の建物に入ると、入り口でプラネタリウムのチケットを買う。
 水瀬はチケットといっしょに受け取ったパンフレットを、大事そうに抱えていた。 

「楽しみだねー」
「ああ」

 水瀬の口調がはずんでいた。
 すごく機嫌が良さそうである。

(水瀬って、よっぽどプラネタリウムが好きなんだな)

 今日のプラネタリウムというのは、水瀬のリクエストであったのだ。
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