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10.想いのたどりつく場所
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話が終わると、やよいちゃんは、コウタくんとの待ち合わせ場所に行ってしまった。あの二人は、神社の入り口付近で待ち合わせてるみたい。
「あなたたちの関係がどうなったとしても、わたしにとって、あずさは一番の親友のままだから」
別れぎわにも、やよいちゃんは、わたしのことを励ましてくれた。わたしの親友は、本当にやさしくていい子だ。わたしは、やよいちゃんと親友になれてよかったよ。
やよいちゃんの話だと、もうすぐ、カケルがやってくるはず。
カケルと二人っきり。
そう考えるだけで、心臓がトクンと跳ねる。小学生のときは毎日のように遊んでいて、夏祭りなんて何度もいっしょに行ったのに……。
今のわたしは、こんなにも緊張している。
わたしはしばらく、ドキドキしながら夕日を眺めていると、
「よぉ」
と声をかけられた。
ゆっくり振り返ると、カケルが立っていた。Tシャツにジーパンと動きやすそうなカッコウだ。
「……久しぶり、カケル」
「おぅ」
部活をがんばっていたせいか、顔は小麦色に焼けていて、また体が大きくなった気がする。
さあ、がんばらないと!
カケルが来たら、わたしはいつも通りに話しかけようと決めていた。
「あのさ……」
「そのゆか……」
カケルと同時に口を開いてしまい、あわててだまった。
「…………」
「…………」
カケルと目が合った状態で、どちらが先に口を開こうか迷ってしまう。とても気まずい。
ギクシャクしている。
いつもどうやって話していたんだっけ? とあせる頭で考えるが、まったくわからない。こないだまでなら、カケルと二人っきりでも、いつまでも話していられたのに……。
今のわたしたちは、リズムが合っていない。
カケルが気まずさにたえられなくなったのか、わたしから目をそらす。
でも、すぐに驚いたように、
「あ、虹だ!」
と大きな声で言った。
「え、どこどこ?」
「ほら、河川敷のグラウンドのあたり!」
カケルが指さすあたりを見ると、大きな虹がかかっていた。
「うわぁっ、きれい!」
「ああ、すげーな」
「これなら、今夜はずっと晴れだね」
「そうなのか?」
「夕虹は晴れの合図なんだって。お母さんが言ってた」
「なるほど、それなら今夜の花火大会は大丈夫そうだな」
「うん、楽しみだね」
「どこで見るか……。神社の中だと、結構混んでそうなんだよな」
「あ、せっかくだから、秘密基地に行かない? あそこからなら、きれいに見えると思う」
「それいいな! 久々に行ってみるか!」
「うん!」
気付いたら、カケルとフツーにしゃべっていた。すごく心地いい。なんか、さっきまで難しく考えていたのが、バカみたいだ。
「じゃあ、花火が始まるまで、お祭りを楽しもうよ!」
「よし、行こうぜ!」
それからは、神社のお祭り会場に行って、カケルと色んな屋台を回った。
焼きそば、わたがし、たこ焼きなどを色んな屋台で買って食べて、わなげや射的なんかでも遊んだ。
いっぱい食べて、遊んで、わたしたちはお祭りを、大いに楽しんだ。
時間はあっという間にすぎていき、あたりはすっかり暗くなる。
「あなたたちの関係がどうなったとしても、わたしにとって、あずさは一番の親友のままだから」
別れぎわにも、やよいちゃんは、わたしのことを励ましてくれた。わたしの親友は、本当にやさしくていい子だ。わたしは、やよいちゃんと親友になれてよかったよ。
やよいちゃんの話だと、もうすぐ、カケルがやってくるはず。
カケルと二人っきり。
そう考えるだけで、心臓がトクンと跳ねる。小学生のときは毎日のように遊んでいて、夏祭りなんて何度もいっしょに行ったのに……。
今のわたしは、こんなにも緊張している。
わたしはしばらく、ドキドキしながら夕日を眺めていると、
「よぉ」
と声をかけられた。
ゆっくり振り返ると、カケルが立っていた。Tシャツにジーパンと動きやすそうなカッコウだ。
「……久しぶり、カケル」
「おぅ」
部活をがんばっていたせいか、顔は小麦色に焼けていて、また体が大きくなった気がする。
さあ、がんばらないと!
カケルが来たら、わたしはいつも通りに話しかけようと決めていた。
「あのさ……」
「そのゆか……」
カケルと同時に口を開いてしまい、あわててだまった。
「…………」
「…………」
カケルと目が合った状態で、どちらが先に口を開こうか迷ってしまう。とても気まずい。
ギクシャクしている。
いつもどうやって話していたんだっけ? とあせる頭で考えるが、まったくわからない。こないだまでなら、カケルと二人っきりでも、いつまでも話していられたのに……。
今のわたしたちは、リズムが合っていない。
カケルが気まずさにたえられなくなったのか、わたしから目をそらす。
でも、すぐに驚いたように、
「あ、虹だ!」
と大きな声で言った。
「え、どこどこ?」
「ほら、河川敷のグラウンドのあたり!」
カケルが指さすあたりを見ると、大きな虹がかかっていた。
「うわぁっ、きれい!」
「ああ、すげーな」
「これなら、今夜はずっと晴れだね」
「そうなのか?」
「夕虹は晴れの合図なんだって。お母さんが言ってた」
「なるほど、それなら今夜の花火大会は大丈夫そうだな」
「うん、楽しみだね」
「どこで見るか……。神社の中だと、結構混んでそうなんだよな」
「あ、せっかくだから、秘密基地に行かない? あそこからなら、きれいに見えると思う」
「それいいな! 久々に行ってみるか!」
「うん!」
気付いたら、カケルとフツーにしゃべっていた。すごく心地いい。なんか、さっきまで難しく考えていたのが、バカみたいだ。
「じゃあ、花火が始まるまで、お祭りを楽しもうよ!」
「よし、行こうぜ!」
それからは、神社のお祭り会場に行って、カケルと色んな屋台を回った。
焼きそば、わたがし、たこ焼きなどを色んな屋台で買って食べて、わなげや射的なんかでも遊んだ。
いっぱい食べて、遊んで、わたしたちはお祭りを、大いに楽しんだ。
時間はあっという間にすぎていき、あたりはすっかり暗くなる。
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