初恋迷路

稲葉海三

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7.交錯する想い

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 わたしとカケルは『若宮ファンタジーランド』の正面ゲートまでやってきた。

「ここにくるのも、久々だね」
「ああ、4年ぶりくらいか」
「そんなにたつんだ」

 小学生のとき、わたしとカケルの家族で、遊びにきたことがあるんだ。

「あのときは、身長制限でのれないのもあったなー」
「さすがに今なら、どのアトラクションでも大丈夫だよね」

 ま、身長制限がなくても、小さいころのカケルは怖がりで、ジェットコースターなんてムリだっただろうけど。
 お化け屋敷では怖がって、わたしにギュッとしがみついてきたんだ。

(フツーは逆でしょって! ……でも、かわいかったな)

 あのころのわたしは、カケルのことを完全に弟みたいに思っていたんだよね。

「なんだよ、ニヤニヤして気持ち悪い」
「な、失礼な!」

 と言っても、カケルの言葉で、わたしは腹を立てることはない。

 華やかな飾り付け。
 にぎやかな音楽。
 楽しそうな人々。

 すべてがわたしたちのテンションを上げてくれて、楽しい気持ちがあふれてくる。
 カケルもはしゃいでいるっぽい。

 まあ、今日は遊ぶだけでなく、大切な役目もある。

 ……そりゃ、フクザツな想いもあるよ。

 だけど、みんなで遊園地に遊びにきたってことを、楽しまないともったいないじゃん!

 今日はね……。

 全力で楽しんで、全力で祝福して、みんなの最高の思い出にする!

 わたしは、そう、決めたんだ!

「まだかな?」
「もうすぐ集合時間だし、すぐにくるだろ」

 腕時計を見ると、集合時間まであと5分くらいだ。

「これだけ人がいると、やよいちゃんたち、わたしたちのことがわかるかな?」

 休日なだけあって、家族連れやカップルが多い。
 集合場所は、この正面ゲートのあたりってだけで、アバウトである。

「そうだな。じゃあ、オレはこっちを見てるから、あずさはあっちを見とけよ」
「うん、りょーかい!」

 わたしたちはちがう方向を向きながら、やよいちゃんたちの姿を見のがさないように、目を皿のようにしてさがす。

(あ、いたっ!)

 人がきの向こうに、やよいちゃんと八代くんの姿が見えた。

「おーい!」と大きく両手をふったら気づいたみたい。

 ふたりがこっちに向かって、小走りでやってきた。

「待たせちゃった?」
「ううん、大丈夫だよ。わたしたちもきたばっかだし。それより、今日のやよいちゃんの服、すっごくかわいいね」
「……何を着ていくか、迷ってたの。そう言ってくれるとうれしいわ。ありがとう」

 わたしが服をほめると、やよいちゃんはうれしそうに笑った。
 やよいちゃんは、レースの白いTシャツの上に、ピンクと白のギンガムチェック柄のワンピースを着ている。
 派手すぎずに、上品に華やかで楽しそうな服装だ。すごくかわいい。
 
 本当はカケルがほめるべきなんだろうけど、そんな気の利いたことをするわけがない。
 目を向けると、八代くんとふたりで、じゃれあっていた。

(今日は、がんばってね)
(うん、ありがと)

 小声でエールを送ると、やよいちゃんは、しっかりとうなずく。
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