能力が舞い戻っちゃいました

花結 薪蝋

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【序章】破壊者の再来

【7】集団制裁

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***

 急に腕を掴まれた横水 齋斗さいとは驚いて、相手の顔を見た。

初めて見る親友の真剣な表情に戸惑う。

「俺見たぞ……。今朝、お前、河村さんにタッチして、馬鹿にしてたよな」

おかしい、だってあれは……。

「おまえが押したんだろが……」

あまりの衝撃に言葉が途切れる。
何言ってんだこいつ。
おれを突き飛ばしたのは、おまえだろ。
おれは悪くねぇ。
おまえ……おれに罪をなすりつけようってのか?
成績優秀とは言えない横水 齋斗であるが、この時ばかりはフル回転していた。

「ちげーし!!俺、押してねーよ!」

そう言った親友の顔は真っ青だ。
やめろそんな顔するな。
おれもしてしまったのか?
こいつが青褪めるほどのことを。

「おおおおれだって、そんなん……」

平然としていれば、バレない。
おれたち以外誰も知らない。
あの女は苛められっ子だ。
他にもたくさんおれたちより酷い仕打ちをした奴らがいるじゃないか。

「オイ!コイツら二人ともいじめ加担者だ!!」
おれも親友も、吃驚びっくり仰天。
焦りだした矢先に秘密を晒された。
そう叫んだのは、おれたちの秘密をよく知る、あの時同じ場所にいて同じようなことをした、よくつるむメンバーのひとりだった。

お・ま・えもだろがああああああああああああああああ!!!!

ブワワワワ
怒りで毛が逆立った。

「捕まえろ!!」
奴の冷や汗が、安全な傍観者の位置にいることが真実を物語っている。

「お……ぃ、待てよ!そいつもーーー

指を指す前に大群がのし掛かってきた。

「俺が!!」
「私のよッ!邪魔すんな!」
「どケェ!!ウチや!生き残んの、ウチじゃあああッッッ」

爪を立てた無数の手がおれの体にめり込んだ。

「ウワッ!痛えやめろ、何すんだああああああああ!!!!!」
痛い痛い痛い!!
隙間がないくらい食らいつかれる。
光を飲み込む肌色。
ガツッ
頬骨を抉る強烈な拳。
ピョーンと歯が飛んでいった。
うおおおおおお!!!
バキャ
ピンポイントで殴られ、俺の高い鼻は折れた。
どぱっと溢れる血液。
「イッテエエエエエエエエエエエエエエッッッ!!!!」

「おい、おまえどこに行くんだ?」

横から、おれの親友だけを掻っ攫った誰かが見えた。
待て!
おれも連れてってくれ!

「重い重いィィィ」
内臓が悲鳴をあげているのに誰も退かない。
本気で潰れちまう!!

「もたもたしてんじゃねーよ、このくそったれ!!!」
「やめやめ……やめてッ!やめてッ」

「待てエエエエエエ!!一人で逃げる気カアッ!!」

遠ざかっていく。
ああああああ………。
なんであいつだけ!!
おれより悪いくせに!!!

「クソクソクソ」
「どけどけどけどけどけどけどけ」
「渡せ渡せ渡せこの野郎」
あ、絡まった!!
プチプチプチ
「ちぎれるぅッ!頭ちぎれるぅうう」
毟られる音がプチプチプチ。
プチプチプチプチプチプチ
「のおおおおお……」
涙、鼻水、涎で息ができない。

「アイツ逃げやがったアアアア!!!!」

「死ねよ、死ね死ね!ううううう」
「おゴッ!」
膝がもろに後頭部を殴打した。
ぐわんぐわん
揺れる揺れる。
「渡さんぞ!こいつは渡さんぞぉぉおおおおお」
ボカバキャドッカ!
拳、平手、肘鉄。
しまいには頭まで飛んできやがる。
「うばうばうば」
所々穴が空いた歯列から、舌が出る。
ちりっとした痛みは噛んでしまった所為だ。
口内は変な味がする。
顎はヌルヌルする
これは血だ。
おれの血だ。


おれを物のように扱うこいつら。
見知った顔のこいつらはいったい誰なのか?

「邪魔すんならころすうううううううう」

決して目立たないがいつもお淑やかで優しい、そんな響子きょうこも今は半狂乱。

おれは好きな人のことさえ何も知らなかったんだ。
そう、思った。
虚しさが痛みに鈍くなった脳を覆って、


おれは意識の遠のきに身を委ねた---。



「ああああああああ!来やがったアアアア!!」
「逃げても無駄だ、ハハハハ!!」

「やめろお!二人で引っ張るなァ!さけるう、裂けるからっあ゛あ゛あ゛あ゛!!」

「くっ!離せよぉ!」
「誰が離すかああああ!」

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」

耳がおかしくなりそうな狂乱のなか、遠のき始めた意識のなか、これだけは聞き逃さなかった。

ふはははは!!

「おまえだけ逃げようったってそうはいかないぞお!おまえも捕まっちまえ!!おまえもおまえもおまえも!!フハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハいちゃいィィィイ!!やめろっやめろよぉぉぉ……おれは悪くない。あいつに押されたんだよぉぉぉ」


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