能力が舞い戻っちゃいました

花結 薪蝋

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【序章】破壊者の再来

【6】生還のチャンス

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《ジジ……全校生徒の皆さん。異常事態が発生していることを薄々感じているでしょう》

低い落ち着いた女の声がスピーカーから聞こえる。

《その異常事態を引き起こしているのは私です。私はあなた方の命を握っています。外に出ようとした人はわかるでしょうが、ある線を超えた時点で死にます。消滅します。嘘だと思うのなら試してください。

それから、私が今、何故放送しているのかと言うと、皆さんに生きるチャンスをあげます。チャンスを掴み取った方だけ、生還させてあげます》

「チャンス……?」
「犯人、放送室にいるんだぜ?捕まえたら…きっと……」
「静かにしてよ!」

《キィイン---私が今から言う条件をよく聞いてください。それがクリアできた方だけ助けてあげます》

ゴクリ
誰かが生唾を飲んだ。

《2年3組の河村かわむら 世界せかいをいじめた人間を捕まえて2年3組の教室に連れて来てください。いじめの内容も聞きますから、呉々も違う人を連れて来ないでください。一人につき、一人と交換です。それと例外として、同クラスの穂村 和佐の恋人、圭吾も対象と認めます。先着ですので、いなくなった場合にはみーんな死んでもらいます。それでは、2年3組で待ってます。》ブツン


「なにそれ……」


その呟きに同調した者はいなかったが、心境はみんな同じだった。

「わああああああああああああああ!!」
「どいつなの?名乗りでなさいよおお」
「どけええええええええ!!」
「いたいた」
「じゃまじゃまじゃまァ!」
「うははははっはは!!オレは助かるんんんだああああ」
「お前か?お前かっ」
「やめろやめろ」
「アンタなんでしょしょしょしょ」
「ウヘヘヘヘ」
「年下の癖にいいい、おれに寄越せっそいつを寄越せ」
「おまえかああああああ」

殴り合い、掴み合い、誰を連れて行けばいいのかわからないまま、乱闘は続く。
本当は誰だって構わないのだ。
自分以外の誰かなら。
もしもそれが己だったなら理不尽だ、お前たちはそれでも人間か、と怒鳴りつけただろう。
だが、今ここにいるのは三年の生徒で、誰ひとり身に覚えがなかった。
それでも誰かを祭り上げる。
自分以外の誰かを。

***

「ふぅ」

放送室から、教室に戻った私はどかっと机に腰掛けた。
以前ならその強気な行動にお咎めがあっただろうが、今この場の支配者は私だった。
誰も逆らえない。
胸の奥底から愉悦が込み上げて、クッと口を歪めた。
コレをみんな、私を虐めることで感じていたのだ。
まさにカ・イ・カ・ン。
私も同罪になってしまうことに、罪悪感が一ミリも湧かない。
何故なら今は強者だから。
罪悪感如きで、誰が進んでこの立場を手放すだろう。

「……おぃ、……?」
「シッ……か……ろっ」

バッと勢いよく後ろを振り返る。
閉まった引き戸の向こう、こそこそと相談する声が聞こえる。
誰か来たようだ。

「ぃぃ…?せーので………ぞ」

「「「……ーのッ!」」」

バタン!!
「うおおおおおおおおおおお!!!」
瞬く間、その男は威勢良く竹刀を持って、障害物を物ともせず突っ込んできた。

しかし、私が睨みつけると、音もなく消える。

「うそ。コウキ……」
呆気にとられた女が呟く。

「あおおおおおおおおおおおッッ!!!」
もう一人の男が血走った目で猛るも虚しく、視線を移せば塵になった。

最後に腰を抜かした女は仲間のいた時の勇ましい顔の影もない、情けない顔で泣き出した。
「え……、あう……おお、おねがぃ、ころさ
シュン
その女は言い終わらぬ内に消してやった。

「アホどもめ……」

私は怒りを覚えて、呻き声をあげなくなった芋虫に近づいた。
ふるふる、震える彼女たち。
また愉快で残虐な気持ちが浮上する。

ドカっ
私は、中東を蹴り飛ばした。
「ぉぅ……」
彼女の呻き声に混じって聞こえてくる。

「うふふ、あは、あはは」

ーーー私の笑い声。

「おらっ、オラオラ!!」

グリグリグリ
次は担任の顔を上履きのまま踏みつける。
やればやるほど加減がなくなってくる。

「最近ね、この上履き履いてる時に誰かの流し忘れたうんち踏まされちゃって。私、洗おうかと思ったんだけど、一体誰を気にして洗うのか、わからなくって、結局洗わなかったんだ。みんな、廊下やら教室やらで間接的に踏めって思いながら過ごしてたんだよ……。でも、よかった。私がされたより酷いことができるんだから」
わたわたできない体はうねうねに動くだけ。
それじゃ抵抗にならない。

「ほら、口を開けろ」
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