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「ビーインヒート、ファッシネイト!!」
続けて……少女の声が聞こえた。いったい、誰?
痛みに耐えながら顔を上げると、そこには、「カツン」とハイヒールを地面に打ちつけ鳴らす音も高らかな、自分とよく似たコスチュームをまとった少女が立っていた。ただ違うのは、瑚志岐がウサ耳でイメージを「白」とするなら、その少女はネコ耳で「黒」だった。それに、ぱうんと揺れるふくよかな胸もあった。
《誰だ、お前は。まさか、お前も〈ファッシネイター〉なのか?》
「そうですが何か。――まったく、見てられないですね。パル・スパル、本当を言われたぐらいで何を戦意喪失しているのです?」
透きとおる涼やかな声のネコ耳少女は、ピシッとパルを指さした。
「初体験は痛いと言いますが、準備を万全にすれば、いくらか回避できるものです。それをこんな行き当たりばったりで」
「それは……、ショーゴが早く元に戻せっていうから……」
「オレかよ!!」
瑚志岐は、もごもご言葉を濁すパルに突っ込む。
パルの首根っこをつかまえて振り回してやりたいところだが、〈ディストレス〉が間にいて、ちょっと無理だった。
それにしても「初体験」って――
初めて体験するのだからこれも初体験に違いないが、クールなネコ耳美少女に言われると、ついぞくりとしてしまう。
「立ちなさい、白ウサ。腰のスティックを手にして構えなさい」
え、え? 白ウサってオレのこと?
ウサ耳を頭のてっぺんから生やしているのは自分だけだったが、瑚志岐は念のために周囲を見渡し、他に該当する者がいないことを確認する。
それからおもむろに言われたとおり、例のアレを腰のホルダーから抜いた。
「構えるって、どうんなふうに……あっ」
ビーインヒート
ファッシネイト
先ほど黒ネコが言った言葉が頭の中でこだまする。そういえばこれはまだ口にしていなかった。
「ビーインヒート、ファッシネイト!!」
スティックを正面に構えて叫ぶ。体の中心が熱くなって、まるでエネルギーが湧き上がってくるみたいだと思った。
それがとっても気持ちがよくて――
「あ、ああ、あぅん、あ――……」
こんな敵と対峙している最中なのに、吐き出す息が艶を帯びてしまう。熱を一番覚える下腹の辺りがさらに熱くなって、強く力がみなぎってくるのだ。
「ああ、あふぅん、んんっ」
胸が苦しくてたまらない。いったいどうしたのだと胸元に目線を落とすと、さっきまでささやかにしかなかった膨らみが、きゅうううん、とはち切れんばかりに成長していた。
「あふ、ふうん、うんっ」
構えたスティックはずしりと重くなり、つけ根部分から光が溢れ出し長剣をかたどる。
瑚志岐は逆さまに持っていたことに気づいて慌てて持ち直す。するとスティックのとき根元に入っていた筋からぴょこんと翼を模した鍔が出現した。
「はあ、はあ、はあ、あ、こ、これ」
「ファルス・ソード。それがあなたの武器です。これであなたは、〈ファッシネイター〉本来の姿になりました。胸は〈リブレイト〉するためのエネルギーが詰まっています。言い換えれば、おっぱいがばいんばいんの巨乳状態でないと必殺技の〈イジャクレイト〉が使えません。男が勃起して射精するのと似たようなものですね」
黒ネコは表情一つ変えず、澄んだ声で説明した。
「――っ!?」
勃起して射精って、わかりやすいが、できれば美少女が口にして欲しくなかった。おっぱいばいんばいんも……
いやいや今そっちは考えまい。
「これがオレの……剣……」
これで一方的にやられることはなくなるのだ、と気を取り直した瑚志岐は、瑚志岐は剣を〈ディストレス〉に向けて構える。
「白ウサ、思いきりやりなさい。その剣が貫くのは〈ディストレス〉のみ。人の肉体そのものを傷つけることはありません」
「わかった」
剣なんて、高校のときの体育で、剣道を選択で取ったとき以来だ。だから十年以上も昔。まともに扱えるのかどうか怪しいが、やるしかない。
間合いを取り様子を窺う。痴漢男の体はぐったりとし、電池の切れた人形のようだ。それを後ろから無理やり動かしているのが〈ディストレス〉だ。
瑚志岐は地面を蹴って正面から切り込む。
しかし傷つけることはないと言われても、人に向かって剣を振り上げるなんて、と躊躇いが出てしまう。
《浅い!!》
「うわっ!! ――っ」
柄を握る腕を手刀で叩かれた。手が痺れ、剣を落としそうになるのを辛うじて堪え、瑚志岐は体勢を整える。
「――切ろうと思わなくていいです。相手は人じゃないんです。スイカ割りするように、ぶっ叩いてください」
「OK、スイカ割りね」
黒ネコに言われた瑚志岐は再び構え、相手を見据える。不思議と手にしている剣の重さを感じなかった。アレがこの剣の状態に変化したときはずしりときたのだが、今は体の一部のように軽い。
ただ少し気になるのは握る剣よりも、大きく膨らんだこの胸だった。上に重心がきてしまったみたいで転びそうで、体のバランスが取りづらいのだ。それにミニスカートで動き回るのは、足がスースーして股間が心許ない。だがそんなことを気にしている余裕はない。
「いきますよ、白ウサ」
瑚志岐を援護するように、黒ネコが〈ディストレス〉の動きを牽制してくれている。その黒ネコが手にしている武器は、あのスティックが自分の剣と同じように変化した物だった。形状は棍棒で、トゲのついた玉が二つ、鎖で繋がっている。まるで玉二個つきのケンダマのようだ。その棍棒を巧みに降り回して鎖を伸ばし、トゲ玉を〈ディストレス〉に叩き込んでいる。
あきらかにずっと戦闘慣れしている黒ネコは、現実問題片手サイズのパルよりも、〈ファッシネイター〉初心者の瑚志岐を助けてくれていた。
「白ウサ、そろそろ時間です。あと五分でケリをつけてください」
「え? 五分?」
そんな時間制限があるのか? 三分しかいられないあの正義の味方よりはいいだろうけれど――
《何が五分だ。そんな短い時間で倒せるものか!!》
「黙りなさい!! たかが〈ディストレス〉の分際で」
黒ネコが凛とした声で言い放つ。
瑚志岐は目の前の黒衣の美少女が、ふと誰かに似ている気がするのだったが、思い出せない。
「白ウサ! ぼんやりしないで」
「すまんっ」
ガツン、ガツン、と黒ネコとタイミングを合わせて剣と棍棒で攻撃する。初めて会ったはずなのに、何度も共闘しているような連携だった。
《な、何だ、この小娘のくせに。生意気な――》
黒ネコが棍棒から伸びたトゲ玉の鎖で、黒靄の〈ディストレス〉を痴漢男ごとぐるぐるに縛め、身動きできなくした。
「今です!!」
「おうっ!!」
瑚志岐は、〈ディストレス〉に向かって剣を振り上げると、上段から一気に打ち込んだ。
「イジャクレイト!! ――邪欲浄化、ラスト・リブレイト!!」
ああ、気持ちイイ――
体の中のエネルギーが、剣の先から一気に放出する。まるでかちこちに昂り切った肉茎が、恥ずかしげもなく白濁を噴き上げるときと同じだった。
そのとき瑚志岐――白ウサは、白い蜜に塗れるように、自ら放射した光のシャワーを浴びていた。
続けて……少女の声が聞こえた。いったい、誰?
痛みに耐えながら顔を上げると、そこには、「カツン」とハイヒールを地面に打ちつけ鳴らす音も高らかな、自分とよく似たコスチュームをまとった少女が立っていた。ただ違うのは、瑚志岐がウサ耳でイメージを「白」とするなら、その少女はネコ耳で「黒」だった。それに、ぱうんと揺れるふくよかな胸もあった。
《誰だ、お前は。まさか、お前も〈ファッシネイター〉なのか?》
「そうですが何か。――まったく、見てられないですね。パル・スパル、本当を言われたぐらいで何を戦意喪失しているのです?」
透きとおる涼やかな声のネコ耳少女は、ピシッとパルを指さした。
「初体験は痛いと言いますが、準備を万全にすれば、いくらか回避できるものです。それをこんな行き当たりばったりで」
「それは……、ショーゴが早く元に戻せっていうから……」
「オレかよ!!」
瑚志岐は、もごもご言葉を濁すパルに突っ込む。
パルの首根っこをつかまえて振り回してやりたいところだが、〈ディストレス〉が間にいて、ちょっと無理だった。
それにしても「初体験」って――
初めて体験するのだからこれも初体験に違いないが、クールなネコ耳美少女に言われると、ついぞくりとしてしまう。
「立ちなさい、白ウサ。腰のスティックを手にして構えなさい」
え、え? 白ウサってオレのこと?
ウサ耳を頭のてっぺんから生やしているのは自分だけだったが、瑚志岐は念のために周囲を見渡し、他に該当する者がいないことを確認する。
それからおもむろに言われたとおり、例のアレを腰のホルダーから抜いた。
「構えるって、どうんなふうに……あっ」
ビーインヒート
ファッシネイト
先ほど黒ネコが言った言葉が頭の中でこだまする。そういえばこれはまだ口にしていなかった。
「ビーインヒート、ファッシネイト!!」
スティックを正面に構えて叫ぶ。体の中心が熱くなって、まるでエネルギーが湧き上がってくるみたいだと思った。
それがとっても気持ちがよくて――
「あ、ああ、あぅん、あ――……」
こんな敵と対峙している最中なのに、吐き出す息が艶を帯びてしまう。熱を一番覚える下腹の辺りがさらに熱くなって、強く力がみなぎってくるのだ。
「ああ、あふぅん、んんっ」
胸が苦しくてたまらない。いったいどうしたのだと胸元に目線を落とすと、さっきまでささやかにしかなかった膨らみが、きゅうううん、とはち切れんばかりに成長していた。
「あふ、ふうん、うんっ」
構えたスティックはずしりと重くなり、つけ根部分から光が溢れ出し長剣をかたどる。
瑚志岐は逆さまに持っていたことに気づいて慌てて持ち直す。するとスティックのとき根元に入っていた筋からぴょこんと翼を模した鍔が出現した。
「はあ、はあ、はあ、あ、こ、これ」
「ファルス・ソード。それがあなたの武器です。これであなたは、〈ファッシネイター〉本来の姿になりました。胸は〈リブレイト〉するためのエネルギーが詰まっています。言い換えれば、おっぱいがばいんばいんの巨乳状態でないと必殺技の〈イジャクレイト〉が使えません。男が勃起して射精するのと似たようなものですね」
黒ネコは表情一つ変えず、澄んだ声で説明した。
「――っ!?」
勃起して射精って、わかりやすいが、できれば美少女が口にして欲しくなかった。おっぱいばいんばいんも……
いやいや今そっちは考えまい。
「これがオレの……剣……」
これで一方的にやられることはなくなるのだ、と気を取り直した瑚志岐は、瑚志岐は剣を〈ディストレス〉に向けて構える。
「白ウサ、思いきりやりなさい。その剣が貫くのは〈ディストレス〉のみ。人の肉体そのものを傷つけることはありません」
「わかった」
剣なんて、高校のときの体育で、剣道を選択で取ったとき以来だ。だから十年以上も昔。まともに扱えるのかどうか怪しいが、やるしかない。
間合いを取り様子を窺う。痴漢男の体はぐったりとし、電池の切れた人形のようだ。それを後ろから無理やり動かしているのが〈ディストレス〉だ。
瑚志岐は地面を蹴って正面から切り込む。
しかし傷つけることはないと言われても、人に向かって剣を振り上げるなんて、と躊躇いが出てしまう。
《浅い!!》
「うわっ!! ――っ」
柄を握る腕を手刀で叩かれた。手が痺れ、剣を落としそうになるのを辛うじて堪え、瑚志岐は体勢を整える。
「――切ろうと思わなくていいです。相手は人じゃないんです。スイカ割りするように、ぶっ叩いてください」
「OK、スイカ割りね」
黒ネコに言われた瑚志岐は再び構え、相手を見据える。不思議と手にしている剣の重さを感じなかった。アレがこの剣の状態に変化したときはずしりときたのだが、今は体の一部のように軽い。
ただ少し気になるのは握る剣よりも、大きく膨らんだこの胸だった。上に重心がきてしまったみたいで転びそうで、体のバランスが取りづらいのだ。それにミニスカートで動き回るのは、足がスースーして股間が心許ない。だがそんなことを気にしている余裕はない。
「いきますよ、白ウサ」
瑚志岐を援護するように、黒ネコが〈ディストレス〉の動きを牽制してくれている。その黒ネコが手にしている武器は、あのスティックが自分の剣と同じように変化した物だった。形状は棍棒で、トゲのついた玉が二つ、鎖で繋がっている。まるで玉二個つきのケンダマのようだ。その棍棒を巧みに降り回して鎖を伸ばし、トゲ玉を〈ディストレス〉に叩き込んでいる。
あきらかにずっと戦闘慣れしている黒ネコは、現実問題片手サイズのパルよりも、〈ファッシネイター〉初心者の瑚志岐を助けてくれていた。
「白ウサ、そろそろ時間です。あと五分でケリをつけてください」
「え? 五分?」
そんな時間制限があるのか? 三分しかいられないあの正義の味方よりはいいだろうけれど――
《何が五分だ。そんな短い時間で倒せるものか!!》
「黙りなさい!! たかが〈ディストレス〉の分際で」
黒ネコが凛とした声で言い放つ。
瑚志岐は目の前の黒衣の美少女が、ふと誰かに似ている気がするのだったが、思い出せない。
「白ウサ! ぼんやりしないで」
「すまんっ」
ガツン、ガツン、と黒ネコとタイミングを合わせて剣と棍棒で攻撃する。初めて会ったはずなのに、何度も共闘しているような連携だった。
《な、何だ、この小娘のくせに。生意気な――》
黒ネコが棍棒から伸びたトゲ玉の鎖で、黒靄の〈ディストレス〉を痴漢男ごとぐるぐるに縛め、身動きできなくした。
「今です!!」
「おうっ!!」
瑚志岐は、〈ディストレス〉に向かって剣を振り上げると、上段から一気に打ち込んだ。
「イジャクレイト!! ――邪欲浄化、ラスト・リブレイト!!」
ああ、気持ちイイ――
体の中のエネルギーが、剣の先から一気に放出する。まるでかちこちに昂り切った肉茎が、恥ずかしげもなく白濁を噴き上げるときと同じだった。
そのとき瑚志岐――白ウサは、白い蜜に塗れるように、自ら放射した光のシャワーを浴びていた。
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