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真昼のストレンジャー
第六章 4
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ルイの指先には鋭い爪はない。くにくにと指の腹でまだ硬い窄まりを小さな弧を描きながら捏ね始める。庄野の猛りは再びルイの口に収められ、舌に搦みつかれていた。後ろと前を同時に責められて、荒波のような刺激が庄野を翻弄していく。
「やだっ! 止めてくれ、それっ」
指先が中に潜り始め、庄野は思わず叫んだ。痛みはなかったが、その異物感に体が強張る。やはりあのときの恐怖は簡単には消えそうもない。
「ナオ、大丈夫だから。オレはあの猫じゃない」
くぐもったルイの声が下肢から響く。
「んっ、わ、分かってるっ。でも――っ、ああ」
中に入ってきたルイの指は、頑なに拒もうとしている庄野の後孔を宥めるように解していく。
「痛くないだろ? だんだん柔らかくなってきてる」
一本ならば。しかし二本三本と増やされて、さすがにそれ以上は無理だと思った。
「少し我慢してくれよ。これしとかないと大変なんだろ? 今のオレのはトゲはないけど、ナオのよりも大きいみたいだから」
「――は? トゲ?」
今、何て? 解さなければいけないのは、分かる。で、トゲ? それから何て言った?
「何だ、猫のとき自分の見なかったのか? 先っぽに細かいトゲがびっしりあるんだよ、猫って。これで交尾したときメスを妊娠させるんだし」
「そ、そうなんだ。猫も人間以上に神秘だな。じゃあ、あの黒マスクに突っ込まれたとき、死ぬかと思うくらい痛かったのは、トゲのせいか?」
「多分。形自体は人間みたいに先が膨らんでなくて、するってしてるからな。じゃあそういうことで続きな」
ぐりっとねじ込むように中で指が動いた。
「はぅっ! ルイ、ま、待って!!」
ルイの指を銜えたまま、庄野は肘をついて身を起こすが、ルイは俯せになっていて下肢は見えない。
「待たない。オレ、もう体がヘンなんだ」
「変?」
ルイは、何かに耐えるように息を吐き、顔を顰める。
「オレのアレが……なんか、どん、どんって。すごく痛いんだ。自分が発情してるってのは分かるんだけど、こんなに苦しいのは初めてだ」
「ルイ……、俺ばっか気持ちよくなってちゃ、いけないよな」
ごくりと喉を鳴らした庄野は、羞恥を覚えながら自らの足を左右に割った。
「ナオ……?」
「お前がくれる痛みなら、俺きっと平気だ。来いよ。でも急かさないでくれよ。ゆっくり頼む」
「――分かった、ナオ」
指を引き抜いたルイが庄野の腰を抱きかかえて、綻んだとはまだ少しいい難い後孔に、凶器のような猛りを宛がった。そのままぐいっと押し込み始める。
「くっ。大丈夫か? ナオ?」
「ああ――っ」
息がつまって答えられない。それでも大丈夫と伝えたくて、何度も頷く。
「きつっ――。いつもこんなに大変なのかよ、人間同士の交尾って……うっ」
ルイが呻く。庄野は楽に受け入れられない自分の体がもどかしかった。
「でも、すごいや。ナオの中、オレのに吸いついてくる。今からここをオレの形にするからな」
「ルイ――あうっ」
ルイが腰を揺らした。少し押し込めては引いてを繰り返し、徐々に深くしていく。
「まだだよ。まだ全部入っていない。先だけだ」
「これでも、ま、まだ……?」
引き攣る痛みを懸命にやりすごす。庄野の中で、ルイのものは灼熱の塊にと変化していた。余りの熱さに触れたところから溶かされていくようだった。
「ん、も…、もう、少し」
ルイは庄野の頼みどおり、ゆっくりと中を侵していった。それこそ庄野の内壁をルイの形に作り変えていくようだった。
「や、やっと全部入った。な、今オレら繋がってるんだな」
ルイが感嘆の声を上げる。けれど額に汗を滲ませ眉を寄せていた庄野を見て、心配そうに顔を近づけてきた。
「大丈夫か? 痛い?」
「だ、大、丈夫……痛く…は、ないから」
庄野は短い呼吸を繰り返す。本当に、痛みは皆無ではないが、耐えられなくはない。ただ苦しい。
「ごめんな、ナオ。オレ、ナオの中に入れてすっごく嬉しいけど、ナオは違うんだよな。これじゃ、突っ込むだけの猫の交尾と変わんねえ」
「ばか。そんなことないよ」
庄野は腕を持ち上げて、ルイの背を抱く。
「俺も嬉しいに決まってるだろ」
そうだよ。恋焦がれていた彼と抱き合っているのだから。
「分かった、ナオ。……動くぞ」
「ん――」
ルイが腰を使い始めた。ゆっくり引いて押し込む。ルイが動くたび、猛りが内壁を擦り上げ、後孔がちりちりとする。それでもいつしか刻まれる律動が甘い刺激を呼び始める。
「ルイ……、あ、そ、そこ……っ」
「ここ? ここが、いい?」
庄野に応え、ルイが同じ角度で突きを入れた。
いいのか悪いの考えて口走ったわけではなかった。ただそこに当たると自分の体が怖いほど反応してしまうのだ。
「ナオ、すごい。オレのをぎゅって締めつける」
ルイの動きますます激しくなって、庄野は揺さぶられ続けた。打ち込まれたときの衝撃で、体が跳ね上がる。
もう頭の中、白く色が飛んでいく。自分がどこにいるのか分からなかった。
「ナオ、次目を覚ましたときは、元の世界に戻ってるから」
元の世界……? 朦朧としていく意識の中、ルイの声が響く。
「待ってろ。オレはナオのところに行くから。ナオの望みをちゃんと叶えてやるから」
「俺の望み……叶える……?」
虚ろになった視界の中、前髪に白のメッシュを入れた青年が微笑んでいた。
庄野は体がふわりと持ち上がるのを感じながら、頷く。
そして意識は、白い闇に飲み込まれていった。
「やだっ! 止めてくれ、それっ」
指先が中に潜り始め、庄野は思わず叫んだ。痛みはなかったが、その異物感に体が強張る。やはりあのときの恐怖は簡単には消えそうもない。
「ナオ、大丈夫だから。オレはあの猫じゃない」
くぐもったルイの声が下肢から響く。
「んっ、わ、分かってるっ。でも――っ、ああ」
中に入ってきたルイの指は、頑なに拒もうとしている庄野の後孔を宥めるように解していく。
「痛くないだろ? だんだん柔らかくなってきてる」
一本ならば。しかし二本三本と増やされて、さすがにそれ以上は無理だと思った。
「少し我慢してくれよ。これしとかないと大変なんだろ? 今のオレのはトゲはないけど、ナオのよりも大きいみたいだから」
「――は? トゲ?」
今、何て? 解さなければいけないのは、分かる。で、トゲ? それから何て言った?
「何だ、猫のとき自分の見なかったのか? 先っぽに細かいトゲがびっしりあるんだよ、猫って。これで交尾したときメスを妊娠させるんだし」
「そ、そうなんだ。猫も人間以上に神秘だな。じゃあ、あの黒マスクに突っ込まれたとき、死ぬかと思うくらい痛かったのは、トゲのせいか?」
「多分。形自体は人間みたいに先が膨らんでなくて、するってしてるからな。じゃあそういうことで続きな」
ぐりっとねじ込むように中で指が動いた。
「はぅっ! ルイ、ま、待って!!」
ルイの指を銜えたまま、庄野は肘をついて身を起こすが、ルイは俯せになっていて下肢は見えない。
「待たない。オレ、もう体がヘンなんだ」
「変?」
ルイは、何かに耐えるように息を吐き、顔を顰める。
「オレのアレが……なんか、どん、どんって。すごく痛いんだ。自分が発情してるってのは分かるんだけど、こんなに苦しいのは初めてだ」
「ルイ……、俺ばっか気持ちよくなってちゃ、いけないよな」
ごくりと喉を鳴らした庄野は、羞恥を覚えながら自らの足を左右に割った。
「ナオ……?」
「お前がくれる痛みなら、俺きっと平気だ。来いよ。でも急かさないでくれよ。ゆっくり頼む」
「――分かった、ナオ」
指を引き抜いたルイが庄野の腰を抱きかかえて、綻んだとはまだ少しいい難い後孔に、凶器のような猛りを宛がった。そのままぐいっと押し込み始める。
「くっ。大丈夫か? ナオ?」
「ああ――っ」
息がつまって答えられない。それでも大丈夫と伝えたくて、何度も頷く。
「きつっ――。いつもこんなに大変なのかよ、人間同士の交尾って……うっ」
ルイが呻く。庄野は楽に受け入れられない自分の体がもどかしかった。
「でも、すごいや。ナオの中、オレのに吸いついてくる。今からここをオレの形にするからな」
「ルイ――あうっ」
ルイが腰を揺らした。少し押し込めては引いてを繰り返し、徐々に深くしていく。
「まだだよ。まだ全部入っていない。先だけだ」
「これでも、ま、まだ……?」
引き攣る痛みを懸命にやりすごす。庄野の中で、ルイのものは灼熱の塊にと変化していた。余りの熱さに触れたところから溶かされていくようだった。
「ん、も…、もう、少し」
ルイは庄野の頼みどおり、ゆっくりと中を侵していった。それこそ庄野の内壁をルイの形に作り変えていくようだった。
「や、やっと全部入った。な、今オレら繋がってるんだな」
ルイが感嘆の声を上げる。けれど額に汗を滲ませ眉を寄せていた庄野を見て、心配そうに顔を近づけてきた。
「大丈夫か? 痛い?」
「だ、大、丈夫……痛く…は、ないから」
庄野は短い呼吸を繰り返す。本当に、痛みは皆無ではないが、耐えられなくはない。ただ苦しい。
「ごめんな、ナオ。オレ、ナオの中に入れてすっごく嬉しいけど、ナオは違うんだよな。これじゃ、突っ込むだけの猫の交尾と変わんねえ」
「ばか。そんなことないよ」
庄野は腕を持ち上げて、ルイの背を抱く。
「俺も嬉しいに決まってるだろ」
そうだよ。恋焦がれていた彼と抱き合っているのだから。
「分かった、ナオ。……動くぞ」
「ん――」
ルイが腰を使い始めた。ゆっくり引いて押し込む。ルイが動くたび、猛りが内壁を擦り上げ、後孔がちりちりとする。それでもいつしか刻まれる律動が甘い刺激を呼び始める。
「ルイ……、あ、そ、そこ……っ」
「ここ? ここが、いい?」
庄野に応え、ルイが同じ角度で突きを入れた。
いいのか悪いの考えて口走ったわけではなかった。ただそこに当たると自分の体が怖いほど反応してしまうのだ。
「ナオ、すごい。オレのをぎゅって締めつける」
ルイの動きますます激しくなって、庄野は揺さぶられ続けた。打ち込まれたときの衝撃で、体が跳ね上がる。
もう頭の中、白く色が飛んでいく。自分がどこにいるのか分からなかった。
「ナオ、次目を覚ましたときは、元の世界に戻ってるから」
元の世界……? 朦朧としていく意識の中、ルイの声が響く。
「待ってろ。オレはナオのところに行くから。ナオの望みをちゃんと叶えてやるから」
「俺の望み……叶える……?」
虚ろになった視界の中、前髪に白のメッシュを入れた青年が微笑んでいた。
庄野は体がふわりと持ち上がるのを感じながら、頷く。
そして意識は、白い闇に飲み込まれていった。
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【オレンジとシェリー】
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